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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第八章エダ編前半
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「万策尽きる」

「万策尽きる」


地球消滅まで34時間!

エリスたちも合流するが、結果深刻さが増しただけ

最後の手段JOLJUも使えない!?

***




 2月15日 フォート・レオナード・ウッド 午後19時00分



 基地の活動が俄かに騒がしくなってから、5時間ほど経過した。


 全ての生産作業を停止して、民間人は最低限の装備を持って非常用の地下シェルターに避難が始まった。そして軍の小隊が出動して飛び出していき、残った軍人たちも完全武装で重警戒態勢をとっている。


 こういう避難作戦は住人たちも慣れている。

 だが、ALの姿も、銃声も聞いていない。

 何に対しての避難か、軍人たちに聞いても答えてくれない。



 もっとも……兵士たちも詳しい話は聞かされていないから、答えようがなかった。



 知っているのは司令部と各隊長と各部門の責任者だけで、その上厳重な緘口令が布かれ、話すことはできない。



 まさか、この地球が消滅寸前にあるなど、教えられるはずがない。



 その最高司令部……いや、この世界の最高VIPは、基地の会議室の一室に集まっていた。



 スコット大佐と副官のレイス大尉。祐次とエダとJOLJU。そしてエリスとリーが合流してこの場に来ていた。


 ロザミアはあの後「どうせ銀河連合の艦長が来るでしょ? 私の説明はいらない。乗り込む準備ができたら連絡して。勝手に合流するから」と言ってすぐに去っていった。


 ロザミアが予見した通り、午後16時にエリスとリーが転送で現れた。


 リーはスコットと面識がある。エリスは初めてで髪の色が紫で地球人ではないが、ロザミアを見た後だから混乱は起きなかった。


 二人の深刻な表情から、事態を全て把握していると分かった。


 二人は軽くスコットと挨拶を交わした後、すぐに作戦会議が始まったが、スコットが「折角地球に来てもらって何ももてなさないのは気まずいからね」と、ハンバーガーやサンドイッチといった軽食を人数分用意して提供した。食事の時間には早いが、これからのことを考えると呑気に食事をする時間はない。

 祐次やエダも昼ごはんを食べていないし、やってきた地球人に見える異星人のリーダーたちもそこまで焦っていなかったので、食事をするくらいの時間はあると判断した。それならば親睦を深めたい。スコットは意外にそういう政治的才覚もある。



 エリスもリーも、このもてなしには喜んだ。



 食事中は主にエリスが銀河連合の説明と任務について説明した。ク・プリの説明もエリスの口から話された。

 祐次の時と違い詳細は省き、かつ普通の地球人でも理解できるよう内容に簡潔にまとめられ、聞かれてはまずい話はなかった。


 食事があらかた終わったころ、ようやく今起きている事案に移った。



 最初はJOLJUとロザミアが話した内容とほぼ同じで、あれがゲ・エイルの特攻自爆戦術である事、ゲ・エイルの王を倒すしか地球人にできる事がない事。



 新しい情報としては、何もしなかった場合も地球が滅亡するということだ。



 ロザミアもそんなことを言っていたが、彼女は詳細を説明しなかったから、詳しく聞くのはこれが初めてだ。



「<カサルシン・バドナ>はエネルギーを暴走させる。地球時間だと今から約34時間後に臨界点に達して自爆する。破壊力はこの時が最強だ。その時の爆発エネルギーはこの惑星だけでなくテラ星系の広域を破壊する。ざっというと第二惑星から第四惑星までは完全に砕け散り崩壊して太陽や他の惑星も公転軸が崩れ、この星系は崩壊するだろう」


「金星から火星まで完全に消滅する、という事か」とスコット。



 それでは済まない。結局太陽系は完全に崩壊する。



「なんで自分たちも死ぬのに自爆するんだゲ・エイルは。馬鹿なのか?」これは祐次。



 原理……とは少し違うが、分かりやすく例えると地球人的にいえば原発の暴走に近い。炉心融解し爆発したときが終わりだ。

 それまでであれば、まだ打てる手がある……という事か。



「自分たちも消滅する。それくらい覚悟をしているから逃げるな……というのがゲ・エイルの<デドスック・チージ>だ。性質の悪いことにゲ・エイルが<デドスック・チージ>をするときは脅しではなく本気で自爆する。科学力もそこそこ高くて、私たち銀河連合の最新鋭戦艦でも無力化はできない。下手に手を出せばエネルギーが暴走して原子崩壊爆発を起こす」


「…………」


「まるで手がないわけではない。方法を簡単に説明する。ゲ・エイルの船を厳重に封印してこの星系の安全圏まで光速で引きずっていってそこで爆発させる。かなり危険だがこれならできる。そして私たち<パーツパル>が出来るということは、ロザミア様の<ヴィスカバル>でも出来るが……」


「そうすると<一隻拿捕してそれを利用してテラから脱出する>という、我々ク・プリの計画が破綻する。パラがALで撃墜しても同じだ」とリー。


「自分はまだ君たちの事情を完全に呑み込めていないが、この際、ク・プリはその銀河連合の船に乗せてもらって脱出するが一番いいのではないか?」とスコット大佐。


「俺もそう思う。今、<ワルディス>があるから<神>は引っ込んでいるんだろ? ク・プリを全員<パーツパル>に乗せて太陽系から脱出させちゃ駄目なのか? この惑星系から出て行ってしまえば<神の試練>もへったくれもない」



 祐次がいう。



 あの後冷静に考えてみたとき、その手が使える事に気づいた。今ならば神は出てこない。


 そもそも<神の試練>といってもク・プリにとっては種族の命運がかかっているわけではなく、ク・プリの全種族に課せられた試練でもないし、パラの<神>たちはク・プリの<神>ではない。



「それ、できないんだJO」

「無理なんだ」


 JOLJUとエリスが同時に答えた。


 祐次はJOLJUを見た。



 ちなみにJOLJUは「餓死はいやだJO―!」と大騒ぎしたので、山ほど食糧と料理とコーラを用意してもらってその中にいる。むろん<ワルディス>の結界に閉じ込められているが神ではない人間が物を渡す事はできた。

 いうまでもないが別にJOLJUは何百年何千年何万年一切飲み食いしなくても餓死はしない。



「どうしてだ?」


「<ハビリス>が反応しちゃうから。反応して時空嵐が起きちゃうとメチャクチャになるJO」


「破壊波動が到達する前にエリスが中和させるんだろ?」


「テラ側はな。テラ星系の外側を覆っている<ハビリス>まで手が回らない。我々は一隻だ。<ヴィスカバル>はあるがロザミア様御一人では無理だ」



 <ハビリス>は地球を取り巻いているだけではない。この太陽系もすっぽり覆っている第二の<ハビリス>がある。そしてこちらのほうが大きく強力だ。それは外宇宙から入ってきたエリスたちは骨身に染みて知っている。



「それに純粋に技術的に無理なんだJO」


「なんでだ?」


「だって<ヴィスカバル>の運用はほとんどオイラがしてたもん。ロザミィにはエリスたちほど知識ないし、星系を覆っている<ハビリス>のほうが強力で大きいもん。ロザミィの<ヴィスカバル>では無理なんだJO。地球側をやって、取って返して外縁の<ハビリス>に対応するのは<パーツパル>でも間に合わないんだJO」


「よし、お前が<ワルディス>から出てなんとかしてこい」


「それは地球とロザミィの試練に関わるからできないJO。その時はもう<BJ>も<FUJ>たちも<ワルディス>の危険、なくなってるから活動できるもん。そりゃあ無視して強引にやればできるけど、その時は約束違反で<神>たちは問答無用で人類を滅ぼすJO」


「今は出来る。すぐそこから出て、さっさとなんとかしてこい」


「その後それを知った神たちとオイラが大喧嘩になってこの星系がなくなるJO」



 神は使えない。



 一番の脅威はゲ・エイルでもロザミアでもない。一瞬で太陽系ですら消してしまえる力を持つ神たちだ。



 この神たちは、人類の神でもク・プリの神でもないから、人類に情はない。




「万策尽きる」



ということで今回、いかに地球の危機かを説明する回。

エリスたち宇宙文明も使えず、ロザミアの協力でも不可能、最後の最後の手段のJOLJUもバレたら神が怒るのでダメ。


結局地球消滅を防ぐためにはゲ・エイルの決闘を受けるしかないわけです。

ゲ・エイル、さすがにこの作戦に何年もかけただけあってあらゆる妨害手段の手を打っています。意外に頭がいいんです。


まぁ……連中はどのみち勝ったとしても得られるのは「パラ人に勝った!」という事実だけで、生き残ったとしてもエリスたちが報復するのでここにいる連中はどのみち滅亡するしかないんですけど。


一番迷惑を被るのは地球人ですが。

というか元々この宇宙戦争自体地球人は巻き込まれただけですが。それでここまで世界が崩壊したわけです。これでもJOLJUが手を打ってギリギリ現状維持(第六章「宇宙戦争編」参照)なので、宇宙戦争の巻き添えで滅亡危機……というのはこれが二度目だったりします。


しかし今回はワルディスもあったり他の都合もあるのでJOLJUは動けない。


なんだかんだ起死回生の奇策をよく思いつく祐次も今度ばかりは手も足も出ません。


今回は現在地球にきている全種族の、ある意味総力戦みたいな感じです。


その命運は!?



これからも「AL」を宜しくお願いします。

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