「神殺し」
「神殺し」
ゲ・エイルの宣戦布告!
ここまでは想定内
しかし想定外の事が!
禁断の兵器<神殺し>発動!
標的はJOLJU!?
***
現れたゲ・エイル<セリヴド・コゴ>は、ゆっくりと全員を見渡し、最後の祐次たち三人を見ると、驚いたことに無言で胸に拳を当てて、腰を屈めた。
祐次やエダに会釈したではない。先日のゲ・エイルの王<ミドレクト・エアラ>同様、<全宇宙の神>であるJOLJUに敬意を示したのだ。祐次は二度目だから、それはすぐにわかり、DE44をホルスターに戻した。だが安全装置は外した状態だ。
全員の戦闘意思が収まったのを確認した<セリヴド・コゴ>は、おもむろに懐から二つの玉を取り出し、それを軽く投げた。
それはすぐ傍の空間に浮遊した状態で停止すると、50インチほどの立体ホログラムモニターが2つ出現した。
景色からしておそらく北米のどこかだろう。二隻の<プル・サゼト・デパトレバ>が上空を遊弋している。
「あの……何しにきたの? おたく。あ、<グーゼンメーニ>! 英語!」
JOLJUはいつもと変わらず緊張感ゼロで尋ねた。
こいつは基本平和ボケの博愛主義者だから、敵意も戦闘意思もない相手に対してはいつものJOLJUになる。
しかし下っ端ではなく隊長がわざわざ現れたということは、友好的な話ではない。そして重要な話だ。軍使の礼をとっているのは祐次たちに対する敬意ではなくJOLJUやエリスたちに対してだ。
<セリヴド・コゴ>は喋った。今回は素直に従った。
「我々ゲ・エイルは、種族の誇りを賭けて、全ての敵に挑戦する」
ゲ・エイル特融の低い声。やや発音に癖はあるがちゃんと英語で喋った。
「宣戦布告は先日お前たちの王から聞いた。今更何だ」
「ゲ・エイルも存亡を賭けて、最後の戦争をお前たちと行う。拒否権はない」
「元々他の種族と話し合うようなことしないじゃん、お前たち。それに<全種族>ってどういう意味だJO? いうまでもないけどこのテラには今パラの最新鋭艦と銀河連合の最新鋭艦があって、お前たち、手が出ないじゃん。5プセトで制圧されて終わりだJO?」
しかし<セリヴド・コゴ>の態度は変わらない。
「言った。我がゲ・エイルの種族の誇りに賭けて、戦争を起こすと。そのための準備はもう終わった。最早ゲ・エイルの誇りを守ること以外興味はなく、死は恐れるものではなく望むものである」
「…………」
祐次とスコットの目線が偶然鉢合う。
悪い予感がする。
戦争に勝つ……といっているのではない。誇り(プライド)を守るため戦争をする、だ。
地球の紛争でも過去の歴史でも、この手の発言の後起きるのはまともな戦争ではない。全滅するまで戦う。そしてどんな手段も勝つためには取る。
それを宣言しにきた以上、ゲ・エイルたちの準備はもう終わったはずだ。
「あの……一回だけ提案するケド、色々大目にみるから銀河連合に救助要請と降伏を申し入れたらどうだJO? 今の発言、聞かなかったことにするし。<BJ>の試練は途中棄権ってコトでオイラが話してもいいんだけど?」
「<神>JOLJU。その提案は拒否する」
「ぎゃふんだJO」
「そして、我がゲ・エイルは<神>にも宣戦布告する」
そういうと、再び先ほどの時空転送の発動し、光の霧が<セリヴド・コゴ>の体を飲み込んでいく。
「すぐに、始まる。待っていろ」
そして半分ほど姿が飲み込まれたとき……<セリヴド・コゴ>は背中から4本の漆黒の棒のようなものを取り出し、なんとJOLJUに向かって投げた。
「あ……」
JOLJUが呟く……その4本の棒はJOLJUを取り囲んだかと思った瞬間、とてつもない光と雷鳴のような轟音を発生させて、この部屋全体を飲み込み、巨大な光の爆発が起きた。
全員、完全に虚を突かれ、何もできなかった。
凄まじいエネルギーの爆音と発光が終わったときには、ゲ・エイルは転送で退去し終えていた。
「全員無事か!?」
スコット大佐が叫ぶ。
「こっちは無事だ」
祐次はエダの無事を確認して叫ぶ。部屋の中にいた兵士たちも無事のようだ。
だが、無事ではないのが一人いた。
「あー…………これ、<ワルディス>? えー……あいつら、何でこんなもの持ってたの? そんでもってあっさり伝家の宝刀抜くんだ、あいつら?」
「お前」
なんと、JOLJUは四方1mくらいの、黄金色に光る四角形のエネルギー空間に閉じ込められていた。
「す……すごい力を感じるけど……JOLJU、大丈夫なの?」
「んー……大丈夫だけど、本当は大丈夫じゃないJO」
本人はケロっとしているが、これが超科学の何かなのはわかる。
そして目標は、よりにもよってJOLJUだ。
「お前、封印されたのか? もしかして」
「まーね。封印されたといえばされたし殺されそうになったといえば殺されそうになったJO。多分これ知ったら……知るだろうけど……エリスが血相変えて飛んでくるかも。これ、<ワルディス>って言って、簡単に言うと<対神用抹殺&封印兵器>なんだJO。一般的な神だとこれで一発消滅しちゃう」
「何!?」
さらっととんでもないことを言うJOLJU。
本人は緊張感もなくケロリとしている。
「神を殺せる兵器をゲ・エイルは持っているのか!?」
「ゲ・エイルの科学じゃあ無理だJO。この<ワルディス>、銀河連合の評議会のLV3の神たちが数百年くらいかけて作り上げる<神殺しの兵器>でね。銀河連合の上位科学文明に最大3つだけ授けられている超最終兵器だけど……ゲ・エイルの文明レベルだと譲与されないはずだけど、どこかで手に入れてたんだなー。……でもこんなことで寄りにもよってオイラに使うなんて。地球で例えると、子供町内会のもめ事で核兵器1000発を本当に打ちこんだ、くらいあり得ないことやったんだけど」
「じょ……JOLJUは何ともないの?」
「なんともない。オイラLV2だもん。力を使わない<ただのJOLJU>になってたって体はLV2だし。あー……でもこの中に入っている限り<神の力>を使うと……」
そういうとJOLJUは手を挙げた。
そして自分のジュースの缶を、おそらく念力で引き寄せる。その瞬間、囲っていたエネルギーフィールドが発光し強力な雷撃が結界内を駆け巡る。
力は発動せず、ジュースの缶は地面に転がった。
「こんな感じで力を使うと痛い……普通の神なら一発で死ぬような放電が起きるんだJO。オイラくらいになるとなんともないけど」
「つまり……お前は今封印されているって事か?」
「それなんだけど……甘くみられたのかあいつら馬鹿なのか。この<ワルディス>、元々<対神用兵器>っていったって、基本LV4までが有効で、LV3以上は封印されるけど死なないし時間かければ脱出もできる。作ったのがそもそもLV3の神たちだからねー。LV3でも中の下までは封じれるけどそれ以上は効き目がないJO。どこの世界に超越者の自分を殺せる兵器を神でもない下位の知的生命体に渡す馬鹿はいないJO」
作ったのは銀河連合の最高評議員議長のLV3の神。当然自分が死ぬようなものを開発して神からみれば未熟な人類に渡すはずがない。
与えられているのは銀河連合でも優良で高度な科学文明だけだ。ただしその存在は加盟文明であればほぼ全てが知っている。正に地球でいうところの核兵器だといえば近い。
「宇宙にはいるんだJO、LV6からLV4の野良神が。そいつら、たまに悪さするんだよね。こいつら限定エリア内の宇宙くらいグチャグチャにする力があって宇宙文明に干渉する権利もあるの。こうなると銀河連合評議会の神たちが出向かないといけないけど、それだと問題がもっと大袈裟になるJO。で、評議会がそういう野良神から身を守るために高度文明に最大3つ、この<神殺し>の<ワルディス>を譲与しているんだけど……当然使用するには銀河連合評議会の承認はいるし、使ったからまた貰えるわけでもない。泣いても笑っても最大3つしか貰えない、禁断の伝家の宝刀だJO。あいつらそもそも貰える身分じゃないし、それにしたってこんなにあっさり使うな!! もー、アホかあいつら!」
JOLJUは特に苦痛はなく、ただただ呆れている。だが使われた<ワルディス>は、どうやら物凄くあり得ない超兵器のようだ。
「お前、一番性質の悪い野良神じゃないか」
「本当にJOLJU、何ともないの?」
LV3まで完全に封印できるLV3が創造した<神殺しの兵器>だ。LV2とはいえ影響があるのではないか……?
「蚤かバクテリアか蚊が……まぁ人類とかLV5の神……だとして、LV3以上が哺乳類みたいなものだとするじゃん? 蚤からしたらネズミも人間も途方もなく大きな哺乳類でどうにかなる相手じゃないじゃん? これはネズミ用の捕獲粘着シートみたいなもので、蚤より大きいゴキブリやトカゲはシートに捕まったら死ぬしネズミも動けなくなって死ぬけど、人間が踏んだって『うわ、ベタベタでウザい』くらいじゃん? オイラ的にはそんな程度」
「LV3は<銀河の神>だろ? そんなに差があるのか、LV2は」
「大きく5段階に区分けしているからそうなっているだけで、LV4とLV3の間は実際LV5億くらい差があるしLV3とLV2になると、もう完全に桁違いのLV差……多分LV1000京くらいの差と越えられない壁があるJO。<BJ>が実際はLV3のLV5000くらいで銀河連合の最高評議会議長がLV12000くらい。オイラが知る限りLV3の神でLV20000以上の奴はいない。つまりそこがLV2とLV3の絶対的な天井の壁があるわけだJO」
レベルが大きすぎて分からないが、それでいくとJOLJUはLV3のレベルでいえばLV1垓以上ある。普通の一般的な神(LV5)のLVに換算すると、軽くLV無量大数を超え、無限になる。本当にこいつはすごい奴だった。
「お前は化け物か」
ここまでくると祐次も呆れるしかない。
聞けば聞くほどJOLJUの本当の能力は次元が違いすぎて全く想像できない。当然だ。全宇宙で<もうこの上はない、いくところまでいってしまった、もはや神ですらない超生命体>だけがLV2にランクされる。
現在<神>以上の呼称がないから便宜上<神>にされているだけで、それ以上の、神という存在をはるかに超越したナニかだ。勿論この連中は宇宙が消滅しようがもっと高次元の干渉を受けようが絶対に死ぬことはない。そもそも<死>というものすら超越している連中だ。
だが……それならば何故ゲ・エイルはJOLJUに使ったのか?
そこまで無知なのか、JOLJUの能力を舐めたのか?
蚤やゴキブリは即死する殺虫スプレーを一瞬人間が浴びるようなものだ。鬱陶しいとしか思わない。
「ま……面倒くさいし出るか」
と、JOLJUがエネルギーフィールドから外に出ようとしたときだ。
「駄目、JOLJU。出ないで」
突然女の声がした。
そこにいた全員が仰天した。
いつのまに来たのか……蒼髪の若い女が部屋の隅にいた。
これにはスコットたちも絶句した。
だが祐次とエダとJOLJUは知った相手だ。
「ロザミアさん!?」
「あ、ロザミィ」
ロザミアがいた。むろん転送で現れた。
「これは重大な警告よ。貴方にではなく、私たちに対しての」
どうやら事態は思わぬ方向に進みつつあった。
「神殺し」でした。
宣戦布告!
そして
神殺し!
最後に
ロザミア登場!
と、一気に大事件に突入しました。
JOLJUは殺されかけたのか!? ……本人はケロリとしてますが、本来は神を完全抹殺する兵器です。JOLJUがおかしいだけで、基本<神>と名がつくものは殺せます。LV3ですら封印される代物です。作ったのが<銀河の神>の連中が全能力費やし製造した<神殺し>です。
まぁ……本編にある通りJOLJUは<神>の天井をぶっちぎって超えてしまっている<もう全宇宙で上の存在がない>という存在なので困っているだけで効いていませんが。
しかしこのタイミングでロザミアまで登場!
これには勿論意味があります。
ついにラスボスであるロザミアがエダと祐次以外の地球人の前に現れました!
まぁ……地球人に用があったのではなくJOLJUに用……でしょうけど。
しかしこうなるとスコット大佐も祐次の話は完全に信じざるを得なくなりましたね。
そして何故ロザミアはJOLJUが自由になるのを止めたのか?
実は思っていたよりとんでもない事態が起きています。
ということで一気に事態は急展開!
いきなりクライマックス・モードです!
しかもJOLJUは封印です!
これからも「AL」を宜しくお願いします。
 




