「司令官対面」
「司令官対面」
祐次たちはついにスコット大佐と対面!
お互い衝撃を受ける。
そして対ゲ・エイル防衛の話題に。
危機は目前に迫っている!
***
2月15日 フォート・ナオナード・ウッド 午前10時00
祐次とエダとJOLJUは、基地内にある司令本部に案内されて、そこで司令官スコット=ペップ大佐と初対面した。
「聞いてはいたが、驚いたな。本当に目立つ三人だ」
司令官のデスクに座っていたスコット大佐が相好を崩し、笑顔で立ち上がって三人の元にやってきた。
声には出さなかったが、祐次とエダは多少驚いていた。
今の世界では大軍といっていい兵士を統率し、これほどの町を作り上げた偉人といっていい大佐は、思っていたより若く、清潔で身なりもよく、あまり軍人らしさがない。
歳は40歳を少し超えた程度で、髪は軍人らしく短く刈り、少しくたびれた陸軍の通常服であるカーキ色の迷彩服を着て、ショルダーホルスターにM1911系を携帯しているが、雰囲気は大人しそうで軍人というよりインテリ風の会社員を思わせる。
「スコット=ペップ大佐だ」
「俺は日本政府第六班所属兼医師で、今はNY共同体<リーダーズ>No2の黒部祐次だ。こっちの女の子は俺の助手で看護師見習い、エダ=ファーロング。この子は米国人でペンシルバニア出身だ」
「初めまして、エダ=ファーロングです。<エィダ>ではなく<エダ>です」
「JOLJUだJO~。二人の大親友の野良エイリアンだJO」
自己未紹介が終わり、祐次とスコット大佐は握手を交わした。
周囲にいた司令部の軍人たちも、無言で三人の自己紹介を聞き関心を寄せている。
まず日本人が珍しく、さらに貴重な医者だという。
そして彼らですら目を見張るほど秀麗で清潔で目立つ美少女が看護師見習いと、どうみても侵略者には見えない、コミックから抜け出てきたようなコミカルなエイリアンがいる。興味を惹かないはずがない。だがさすがは司令部で働く軍人たちだけあって、好奇心に負けて寄ってきたり声をかけたりする節操のない人間はおらず、日常業務の手を止めない。
「聞きたいことは山ほどあるし、ここは安全だ。ゆっくりしていっていい。それに医者は有難い。診てもらいたい患者はダース単位でいるが、一先ず要件を片付けようか。ベンジャミンから話は聞いている。重要な案件があってここに来た。重要で急ぎだとも聞いている」
「昨日渡したムービーは見たか?」
「司令部と隊長職にある幹部将校は全員みた」
そういうとスコットはやや緊張した笑みを浮かべた。
あのゲ・エイル船での戦闘記録のムービーだ。昨夜到着した時出迎えの将校に簡単に概要を説明した後USBに入れて渡してある。説明するよりムービーを見せたほうが手っ取り早い。ベンジャミンの話を聞いた後だから、軍司令部はすぐにムービーを確認した。
そしていうまでもなく仰天したが、今はもう冷静を取り戻している。
「我々はALに侵略されて滅亡寸前のところをなんとか生きている。この現状で、さらにあの大柄のプレデターもどきの異星人と戦争が始まった……という認識であっているか?」
やはりゲ・エイル人は、どの米国人にも<プレデター>に見えるらしい。確かに見た目や体格や戦い方は<プレデター>とよく似ていてそう表現するほうが分かりやすいが、元々プレデターという言葉には<侵略者・捕食者>という意味もあり、そっちの意味でも合っている。
「その認識でいい。連中は俺を名指しで喧嘩を売ってきたが、見境もこっちの人権も認めていないから、俺が喧嘩を買わなければ同族である地球人にちょっかいをかけるくらいはする。俺があの馬鹿たちと戦う理由はないんだが、こっちはこっちで事情があって、連中の船を一隻だけは破壊せず拿捕して奪わないといけない」
「その協力を我々米軍に求めているわけか? 日本政府も君と共に動いているのか?」
「日本政府の一部は協力している。いや……正しくは、これから協力体制が作られると思うが今はまだこの脅威を知らない。全部話すとややこしいから言わないが、俺の仲間は今協力するため何かしら活動を始める。ただ太平洋の向こうの日本が早々海を渡ってチームを送り込めるわけではないから、今は無視していい」
「ふむ?」
まさか一年タイムスリップしていて、仲間がこの事件を知るのは未来で、動き出すとしたらそれから……ということは言えない。混乱が増すだけだ。
拓たちもあの<ハビリス>の時空嵐に巻き込まれてどこかに飛ばされている。
JOLJUは「オイラの計算だと多分拓たちは東アジアのどこかでそんなに日本から離れてないJO。祐次とオイラは意図的に米国にいかせるためにイタリアになったけど、アレは<BJ>のせいだし。何も調整しなきゃ、そこまで大きくは飛ばされないはず」と言っていた。
もし拓たちにはタイムラグがないとしたら、拓が<BJ>と接触して英雄や試練を知るのは3月半ばになる。どっちにしてもまだ先の話だ。
「米軍がどうするか、その判断はアンタらに任せる。俺に命令権はないし強制できることじゃない。ただし情報は基本共有する」
「そうか」
スコット大佐は軽く頷く。
「色々興味深い。ちょっと混み入った話になりそうだね。じゃあ別室でじっくりと聞こう。立ち話で済む話ではないな」
「そうだな」
祐次も同意した。ここでは飽くまで挨拶だけだ。
***
その後、場所は基地内の会議室に移った。
メンバーはスコット大佐と副官のレイス大尉。他に民生担当のアイゼル=グーデン中尉と特殊部隊隊長トマス=ラングレン少佐、司令部専属の参謀リリアン=モートン大尉(元海軍大尉)が同席した。
ごく質素な普通の会議室で、やや広い部屋が用意された。エダとJOLJUがいるからか、全員コーラやソーダの缶ジュースが配られた。
全員が席に着いたところで、祐次は語り始めた。
祐次が知る情報のほぼ全てだ。
ALは地球人を目的に造られたものではなく、地球崩壊は無責任な異星人たちの宇宙戦争に巻き込まれた結果である事。
パラ、ク・プリ星人、ゲ・エイル星人がこの地球で遭難して滞在している事。そこに宇宙の国連というべき銀河連合の戦艦一隻が自主的に調査しにきた事。
そしてパラには4人の神がいて、そのうち二人の神は人類滅亡を主張、一人は地球人の味方。
肝心なのは最後の一人が現在中立で、全種族に何かしらの<試練>を与え、その<試練>を乗り越えた種族に関しては救済する意思がある事。
「この鍵になる神が<BJ>だ。厄介なことに今いる神の中では一番権限を持っていて、地球くらい簡単に消すことができる」
「祐次~、一番偉いのはオイラなんだけど?」
「お前は<ただのJOLJU>だろ? 言い忘れていた、人類に味方している<神>はこいつで基本的に神の力は使わないただのマスコットのポケットモンスターだが、知力と知識だけは使う。科学知識だけは銀河系でも最高だが使える道具はこの地球上にあるものだけだ。異星人の墜落船を使うことはルール違反ではないから、ちょっとしたスーパーアイテムくらいは作れる」
「<アイアンマン>のスーツまでは作れないよな?」
「神としてのランクは宇宙一だがマイティーソーみたいな力はないし魔法もない」
「成程」
「まず一点。俺は現在ク・プリと同盟して、銀河連合も俺に協力すると言っている。で、ビデオを見た通りプレデターもどきのゲ・エイルから先日宣戦布告を受けて戦争に入った。そしてパラはALを使役している侵略者で全員の敵だ。科学力も一番高く、神もいる」
「人類が勝つことは難しそうだな」
スコットは腕を組んだ。
成程、ベンジャミンが言っていた通り難題で、そしてぶっとんだ話のオンパレードだ。
「司令官対面」でした。
今回で祐次たちはスコット大佐と知り合います。
スコット大佐はすでに外伝で主人公格になってエピソードがあるくらい重要人物です。
大佐というわりに若くてあまり軍人らしくないのが特徴です。元々海軍ですし、現場担当というよりは軍政や作戦担当なので歴戦の軍人というわけではありませんが、逆に政治的能力は高い人です。軍人ですがそのあたりは政治官僚に近いかもしれません。だからこそフォート・レオナード・ウッドが拠点として成立できているわけです。
そして祐次が持ち出した課題はいうまでもなくゲ・エイル星人対策!
途中拓編を挟んでいるので分かりづらいですが、実際はゲ・エイルのエダ誘拐事件からそう日は離れていません。ゲ・エイルも宣戦布告した以上、いつ動き出すか分かりません。そして祐次だけでどうにかなる相手でもないです。狙われるのも祐次とエダだけとは限らないですし。
ということで人類も結束です!
次はこの話の後半!
これからも「AL」を宜しくお願いします。




