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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
七章拓編
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「仲間」16

「仲間」16



ついに拓、旅立つ!

そして……立ち直った仲間たち!

その時、伊崎は世界の謎の一端を聞かされる!

***




 ついに出港だ。

 <アビゲイル号>が動き出した。


 見送りに来た仲間たちが手を振る。


 船の後部デッキに拓、時宗、姜がそれに応えて、手を振っていた。




「……いっちゃうんだ……」



 優美が涙を拭く。その横で啓吾が微笑んでいた。


 この二人は知っている。海上の旅がいかに大変で孤独で辛いか。


 自分たちはついていかない決断をしたが、行きたい気持ちがなかったわけではない。



 恐らく、これが永別になる。




「笑って送ろう。それが一番だよ」

「そうだね」


 と……優美は何か決意するように頷くと、ショルダーホルスターからコルト・ローマンを抜いた。



「行ってらっしゃい!!」



 優美は叫ぶと、空に向けて銃を放った。

 銃声が東京港に木霊する。

 一瞬……全員が優美をみた。


 優美は笑った。



「祝砲!」

「……優美……」



 伊崎と啓吾はその意味が分かった。




 優美は、再び銃を撃った。



 心の傷を乗り越えて、これからも戦うという意思表示だ。



 ……だから、私の事を心配しないで……!



 その意味をこめて。


 それを理解した伊崎と啓吾も、黙ってホルスターから銃を抜き、続いて空に向けて発砲した。


 それを皮切りに……大庭と麗美も楽しそうに空に発砲し、続いて他の仲間たちも銃を撃つ。


 それが離れていく拓たちにも届いた。




「出航に礼砲ってか?」と笑う時宗。

「じゃあこっちも返すか?」


 拓はヒップホルスターからセカンドガンのコルト・トルーパーを抜いた。時宗も愛用のパイソンを抜くと、空に向けて発砲した。


「弾の無駄使いは感心しない」


 姜だけは撃たず、相変わらず冷めた表情で拓たちを見て煙草を燻らした。


「本当は花火とかあれば良かったですね」


 操縦部屋から出てきた篤志が笑顔で言うと、彼も「えいっ」と笑顔で空に向けて撃った。


 歴史好きの麗美がアドバイスをしたのか、見送りの仲間たちの発砲はきっちり21発だった。拓たちはその返事としてそれぞれ3発ずつ撃った。



「優美、撃ったな」

「だな。やっぱ女は強ぇーよ。俺なんか何日酒浸りだったかわかんねぇーし」



 船はあっという間に港から離れ、東京湾を進んでいく。


 出発の儀式は終わった。


 これからは新しい旅だ。


 皆の姿が見えなくなると、拓は振り返った。



「俺たちの冒険の始まりだ! とりあえず……昼飯の用意でもしよう。東京湾はのんびりクルージングを楽しめばいいさ」

「最初の食事くらい豪華にいこうぜ! 日本を離れたらレトルトばっかになるからよ」


 今回は業務用の大型冷蔵庫を搭載したので、二週間くらいは生鮮食品が食べられる。

 幸い政府の調理班が総菜を作ってくれたので三日くらいは手料理が食べられる。


 食料も消費していく通貨のようなものだ。沢山あるに越したことはない。長期保存食のレトルトや缶詰は半分通貨だ。



「では私が用意しよう」


 といったのは、なんと姜だ。


「姐御、料理できんの?」

「入院中色々本を読んで覚えた。やることがなかったし、一応私だって女だからな」

「マジか」


 時宗は苦笑した。


 ただ拓はちょっと立ち止まり……「俺は飲み物でも取ってくる」と地下に向かった。



 こうして拓の旅は再び始まった。



 これまで以上に過酷で帰ることはできない、冒険だ。





***





 東京港では……拓たちの<アビゲイル号>が視界から消えてからもしばらく、全員が海を見つめて、別れの余韻に浸っていた。


 ただの旅立ちではない。人類の命運がかかっている。



 と……。



 レ・ギレタルが伊崎の袖を引いた。


「伊崎氏。早速で悪いのですが、我々も活動を再開したい」

「山梨の不時着船か?」

「そっちもありますが、実はもう一つ協力を頼みたいことがあります」

「なんだ?」

「確かテラリアンの先進国は核反応発電施設を運営していますよね?」


「原発の事か?」


「はい。原子力核反応発電施設に用があります。ここから一番近いのはどこでしょうか?」


「東海電力か浜松原発かな? どちらも稼働はしていない。そう遠くはなくて半日かからない」


 と……今更だが、妙なことに気づいた。



「火力発電所ならもっと近くにあったと思うが、どこも稼働停止している。しかしよく安全に止まったものだ。一歩違えば大惨事だった」


 停止中の原発はともかく稼働中の原発を停止させるのには技術もいるし時間もかかる。


 常識的に考えれば世界が崩壊して全世界が停電した後どうしたのだろう。非常用電力はあるだろうが長い間使えるわけではないし、第一技師もいない。火力発電所は最悪爆発し、原発は炉心融解するはずだ。そうなっていない。



 が……驚いたことにレ・ギレタルは知っていた。



「ああ、そこはご存じないのですね。それらの施設を安全に機能停止状態にしたのはJOLJUです。日本だけでなく全世界の施設を同時に停止させました」


「なんで知っているんだ?」


「<ハビリス>直撃の後、我らク・プリもテラに遭難しましたが船の機能はまだ生きていて惑星上のエネルギー発生施設が同時に停止したのを確認しました。こんな事ができるのはJOLJUだけです」


「でもあいつは一人だろ? いくら科学力がすごいといったってそんなことが惑星レベルで同時に出来るものなのか?」


「私たちでも同時にはできません。数も多いしタイムラグは生じますし、第一自分たちの船を安全に着地……墜落させることに精一杯でテラのことまで気は回りません。ですがJOLJUは別です。<ヴィスカバル>を使ったのではなく、さすがに神の力を使ったのでしょう。神の力を使えば一瞬でできまする造作もないことです」


「JOLJUが神なぁ……どう見てもポケモンなんだけどなぁ」



 先日の馬鹿面でご馳走を平らげるJOLJUの姿を思い出し苦笑する伊崎。JOLJUが実は神だと知ったのは拓から教えてもらって知ってはいるが、全く神らしくない奴だ。


 もっともこれは伊崎だけの感想ではなく、ほとんど全宇宙の人類が抱いている感想だが。



「クロベはよく理解していましたし、拓も分かってはいるようですが、アレは本来<神>どころか、<神>すら超絶している<全宇宙の神>です。その気になれば全宇宙消し去って、もう一度作り直すくらい造作もない、そのレベルですよ」


「そんなにすごいのか!?」


「こういうと妥当でしょうか。このテラの事件は我々にとっても大事件ですし、地球人にとっては存亡がかかった大事件ですが、JOLJUにとってはゲージに入れた虫同士が戦っているようなものです。同レベルの視点になりえません。ただ地球人という虫のほうが好きで愛着を持っているだけ。本来はその次元です。我々にとってはゲージの中が世界の全てですが、JOLJUにとって我々は無数にあるペットの虫のゲージの一つです」


「理解できなくなってきた」


「どうやら本当にJOLJUはテラリアンの前では<ただのJOLJU>に徹して神の力は使わないようにしているようです。我々が把握する限り今回の事件でJOLJUが神の力を使った形跡があるのは<ハビリス>の中和とこれ一度だけです。<ヴィスカバル>でも間に合わないと判断したから力を使ったのでしょう。JOLJUはテラが破壊されるようなことは望んではいないという事です」


 完全に次元が違いすぎて実感はない。


 そこまで説明して、レ・ギレタルは苦笑した。



「JOLJUを理解しようと思う事が間違いです。我々は勿論銀河連合評議会に属する宇宙の神々だって理解できない存在です。それにこの話題の本題はJOLJUの行動ではなく、日本に原子力核反応施設があるかどうかです。幸いあるようですね」


 そう。別にJOLJUの行動を議論しているわけではない。


「原子力発電所を稼働させるのか?」


「いえ、欲しいのは核反応が用意に起こせる物質です。水でもできますがエネルギーも道具も必要ですので、簡単に核反応が起こせる物質が欲しいのです。このテラではウランやプルトニウムを使用していたと思います。それが必要なのです」


「構わないが事故は起きないか? それに放射能対策はできるのか?」


「我々には核融合技術も放射能除去技術も対策法もあります。宇宙は放射能濃度の高い空間で我々は星間移動可能科学を持つ種族です。テラリアンが火を使うのと変わりません。火を扱うことはできるが火災による被害をゼロにはできていないでしょう? 我々にとって核は同じようなものです。我々も取り扱いを間違えて事故を起こすことはありますが、テラリアンより扱いには長けています。今の限定された科学しか使えないク・プリでも扱うことはできます」


「分かった。手配する」



 そこは地球より遥かに進んだ科学文明をもつ異星人だ。どうせ今の地球人には無用なものだし、使えるというのならば使わせても問題はない。



 しかし……と、伊崎は思った。



 人類の救済に核反応が必要異星人の科学……話が段々大きくなってきた気がする。



 少なくとも、<ただ生存するのに精いっぱい>の今の地球人には、検討もつかない。



 が……。



 伊崎はこの後、もっと大きな衝撃の世界を知ることになる。




「仲間」16でした。



決意の優美!

最後で立ち直りました!

これで拓も心置きなく旅立てたわけです。


こうして拓は新しいパーティーで激動の北米へ!


そして同時に動き出すことになる伊崎とレ・ギレタル。

実はこっちは最終章につながる伏線だったりします。


そう。

この拓編の時間軸はエダ編だと八章の後です。もう世界の謎を解いています。

つまりJOLJUと接触したレ・ギレタルは何か知ったわけです。


ついでに……ひょんなところで判明したJOLJUの活躍。

実は全世界の発電所や危険施設を全部停止させて安全にしたのはコイツでした。本編にある通り、これをしていないと原子力発電所もですが火力発電所も大事故を起こしています。

第六章でJOLJUが<ハビリス>を中和したとき、ついでに地球も保護していたわけです。


実はしっかり地球文明を守っていたJOLJUです。

とはいえその後勝手に核爆弾を使った朝鮮半島は手を出していません。あれは地球人の判断で核戦争をしたのでJOLJUも口出しはしません。ここは自業自得です。


さて、拓は出発して、これで第七章も終わりか……と思いきや、最後にもう1つ、エピソードがあります。


完全な伊崎さん編です。


そう、祐次が残した開封期限付きの手紙の開放です。

本当の本当に衝撃展開が待っています!


時系列は逆ですが、小説上ではついに伊崎が全人類で初めて世界の謎の秘密を知ります! この拓編の時間軸の祐次はとっくに知っているわけですが、その祐次が知るのはこの後追いかけのエダ編で、これから知る事実です。

ということで読者が知るのはエダ編です。


実はこんなに重要キャラだった伊崎さん!


まぁ……祐次が能力を買っている数少ない人間ですし。


ということで次回、衝撃の七章ラスト!!


ついに人類の命運が決まります!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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