「仲間」13
「仲間」13
仲間編のJOLJU編、中編!
JOLJUが持ってきた一枚の手紙。
何故か伊崎宛て。しかも開封指示が!
そしてク・プリとの同盟!
***
30分ほど……ようやく満腹になったJOLJUはようやく食べる手が落ち着き、食後の番茶を美味しそうに啜り始めた。
「今回はサイコーだったJO! こういう召喚なら大歓迎だJO~! また呼んでだJO!」
「お前、話を聞いてなかったな? この宴会は俺の出発の送別会だよ。6月1日には出発するから、こんな宴会はない。第一、お前の召喚回数、残り4回だ」
「てことは……次呼ばれるとしたら厄介事か米国に着いた時?」
「だな」
「えー……なんかアンニュイになったJO」
「そういうなよ。たっぷりお土産も用意したんだから。祐次やエダちゃんと一緒に宴会すりゃいいじゃないか。うな重もあるし」
「わーい! もう一回分宴会だJO!!」
単純だな……と拓たちは呆れる。
だが喜ばせてばかりではない。真面目な話もある。
「北米の状況とか、情報があったら欲しい。後、前回祐次が紹介状を用意するって言っていたけど、どうなった?」
「そんなに簡単にフォート・レオナード・ウッドには行けないJO。ミズーリだもん。オイラたちも一旦NYに戻ったし。拓が北米大陸に来るまでには用意できると思うけど」
「ミズーリにあるんだな、米軍基地は」
前回、そんなことを言っていた気がするが、あの時は事件の最中で拓もよく覚えていなかった。
確かミズーリは中部……やや東南寄りだった気がする。すぐには思い出せないがそれは後で確認したらいい。
祐次も最悪待ち合わせはフォート・レオナード・ウッドと言っていたからこの場所だけはしっかり把握しておいたほうがいい。
「んー……ルート次第だけど、山脈越えは大変だからカルアォルニアを南下してメキシコあたりで横断してカリブ海を船で移動する方法もアリかもだJO」
「パナマ運河経由?」
「ルート的にはそんなカンジかしらん? ま、パナマ運河は機能してないから<アビゲイル号>じゃあ行けないけど、あのあたりは船は手に入りやすいって聞いたし、元々スコット大佐もカリブ海からフォート・レオナード・ウッドに移ったらしいし」
そういうとJOLJUはリュックを漁り、手紙の入った封筒を一通取り出した。
「拓の紹介状はまだだけど……祐次から伊崎さん宛てに手紙を預かっているJO」
「俺に?」
意外だ。祐次は伊崎が米国にこないことは知っているはずだ。
JOLJUから封筒を受け取った伊崎。そしてそこに書かれているメモを見て、複雑な表情を浮かべた。
『伊崎さんへ』という宛名書きの下に、注意書きがあった。
「この手紙は拓が出航した後に開封する事?」
開封の期限指定だ。しかも拓ではなく伊崎宛てというのはどういう意味か。
さらに『開封時は伊崎さんだけに限る。その後の判断は伊崎さんに委ねる』と末尾に書かれている。一先ずは政府にも見せるな、という事で特別な意図がある。厚さからして3枚ほど手紙が入っているようだから、ただ別れの挨拶を残したわけではなさそうだ。
ただ、祐次が伊崎に連絡が取れるのはこれが最後だ。祐次はそう考えてこの手紙を書いた。
「どういう事だ? JOLJU君」
「オイラは知らない。祐次が伊崎さんに渡せって」
事実知らないらしく、JOLJUは特に重要な話をしているつもりはなく、すぐに大福とお茶を食べ始めた。甘いものは別腹のようだ。
拓たちは顔を見合わせた。
「祐次からの指示かな?」
どうやら祐次自身、もう自分が<ラマル・トエルム>であることを拓や伊崎たちは勘づいている事は察しているようだ。だからこの手紙は<英雄>である<ラマル・トエルム>からの指示で、間違いなく重大なことが書かれている。だが拓の出航後が開封期限ということは、拓には無縁の情報で米国についてのことではなく日本政府宛てといっていい。
しかし肝心の拓が出航した後、伊崎や日本政府にできることとは何だ?
拓の支援の依頼なら出航前のはずだし拓にも見せる。例えば増員が欲しいとか、拓以外に必要な人材がいるという事であればすぐに読め、と書くはずだ。
伊崎宛てだが、個人にではないだろう。
しかし、それならば村上総理充てでもいいはずだ。
日本政府に情報を知らせたところで、拓が出発した後では、出来ることはない……はずだ。
祐次は準上層部で村上総理とも面識はある。
「やっぱり祐次は何か人類救済の方法を見つけたんだ」
祐次は拓の手助けを欲している。それとは別に伊崎の協力も必要。
村上宛てにしなかったのも、理由があるのだろう。
しかしこれだけでは予想もつかない。が、今見るわけにもいかない。
「わかった。祐次に受け取った、と伝えておいてくれ。JOLJU君」
「これで今回のオイラの仕事は完了だJO。オイラは戻ってうな重とお寿司と魚料理で宴会だJO! いやぁ~楽しみ楽しみだJO」
まだ食べるのか、この宇宙の神様は。
「いや、待て待て。米国の事とか航海のアドバイスとか聞きたいんだ」
まだ召喚時間内だ。これで帰られては話が半分も終わっていない。
「そうですJOLJU。私も貴方と話があります」
拓たちのやり取りを聞いていたのか、やや離れた席にいたレ・ギレタルが声をかけた。
「レ・ギレタルもいたんだった。そだそだ、これ、リー……ああ、ニ・ソンベから」
そういうとJOLJUはバックの中から手紙の入った封筒を取り出し、トコトコと歩いて行って手渡した。
「リー?」と拓が尋ねる。初めて聞く名前だ。いや、先日JOLJUがそんな名前を言っていたか。
「<デダブ>です。そうですね、司令官兼艦長という意味になるでしょう。我らク・プリのリーダーです。リーというのは地球人に変装しているとき使っている名前で、米国ではそう名乗って活動しているようです」
「てことは重要人物だな」
そういえば先日の時、祐次は誰かといて、JOLJUが「リーは祐次に貸しがあるから」と言っていた。今祐次は地球人とではなくク・プリ……それもリーダーと行動を共にしている。これだけでも他の地球人とは別の次元で動いている。
レ・ギレタルはその場で手紙を開いた。中はどうやらク・プリ語のようで、時宗がちらっと覗き見たが見たことのない文字で書かれていた。
読んでいたギレタルの表情が真剣になった。
「成程」
「何が書いてあった?」と拓。
「ク・プリの現状と拓たちへの助力の指示。そして拓が北米に行くまでに我々ク・プリがやらなければいけないことです。今は言えない内容もありますが半分は拓のサポートの具体的な方法です。ク・プリの技術を提供していいと許可が出てします」
「<アビゲイル号>の改造以外に?」
「ええ、いくつか追加で。しかしこれで私たちが拓にク・プリの技術と科学を提供していい、と許可は出ましたから、出発前に用意しましょう」
これで祐次とク・プリの同盟は確定となった。
日本政府はク・プリアンを保護し、時々その知識や意見を聞くことはあったが、科学面ではルールがあるような事をいってこれまではその方面で協力を得ることはできなかった。それが解禁された。
それだけ重要な事が米国で起きている。
「先日言いましたが、<デダブ>とクロベの活動が成功すれば、私たちもテレポートで合流することになりそうです。伊崎氏、どうやら後一隻ク・プリの宇宙船が日本に墜落してあるようですが、そこで我々が活動することの許可と助力を頼めますか?」
もう一隻のク・プリの船は山梨東部に墜落している。やや距離があるし、横浜の船同様中にはALがいる。その排除の依頼だ。これは拓が出航した後になる。
こちらのほうが船は小さく飛行能力もワープエンジンも壊れているが、完全に死んだわけではなく部品は使える。ただしALが500から1000はいる。伊崎に頼むのは、護衛とALの排除だ。
「それなら政府の戦闘班を完全武装させればできなくはないが」
「あ、そだ。前の横浜の船のフォーファードで弾薬の量産は成功してるJO? オイラが確認した直後ドカンってなったけど間に合ってた」
「本当か!?」
サ・ジリニが宇宙船を起動する前、拓たちは弾薬の量産を頼んでいた。9ミリと38口径と223口径と12Gショットガンの弾薬で、日本政府には十分な備蓄はあるが、絶対に必要な物で消耗品だ。弾薬だけはあればあるほど助かる。
「確かね……ええっと各10万発くらいは増産したJO。もう一年以上前のことだから正確な数は覚えていないけど。船のメイン・フォーファードだから数が作れるし、横浜の船はエネルギーも状態もマシだから。今になるともったいないことしたJO。あれが残っていたら大分楽になったのに。あ、でも無理か。米国までは運べないJO」
「助かるよ」
拓たちにとっては三ヵ月前だが、タイムスリップしたJOLJUと祐次にとってはもう一年以上前のことだ。
拓はすぐに伊崎にこの事を伝えた。これには伊崎も喜んだ。
「仲間」13でした。
今回はJOLJU編中盤。
JOLJUはほとんど重要ではなく、一番重要なのは、祐次が書いた伊崎宛ての手紙!
これが実は第七章の最後でいかに重大か判明します。
後、リーの名前が出てきましたね。
軽いネタバレですが、この段階でリーも死んでいなくて、祐次と色々活動していることが分かります。
次回もJOLJUはオマケで、北米情報編!
そしてある意味エダ編の伏線になります。半分おさらいみたいな感じですが。
さて、仲間編で一番長いJOLJU編!
まぁ……JOLJUはレギュラーではなく一応主人公なので主人公同士ですから長くなるわけです。
ということで次回もJOLJU……というか、北米情報編!
段々拓編とエダ編の合流が見えてきました。
これからも「AL」をよろしくお願いします。




