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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
七章拓編
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「仲間」12

「仲間」12


JOLJU登場!

ご馳走に有頂天になり大喜びするJOLJU。

しかし喜ばせるためだけが今回の目的ではない。

つい漏らした英雄と祐次の関係!

***



「今度はどんな奴介事ぉ~? 戦争とかALに囲まれたとか遭難したとか言われてもオイラ困るンだけどぉ~? てか時差! 時差!! NYはまだ午前中で、今日は自宅でゴロゴロして美味しいお昼ご飯エダが作ってくれる予定だから早く帰りたいんだけどぉ~」


 と仏頂面のJOLJU。今回も自分の体より大きなリュックを背負っていた。もうJOLJUも召喚される気配が分かるようだ。そこは腐っているが神である。



 しかし今回は厄介ごとではない。パーティーだ。



「お前また宴会したいって言っていたろ? 今回はお前を持て成すために呼んだんだよ」


 拓の言葉で顔を上げたJOLJUは、そこに並ぶ豪華料理を見た瞬間、仏頂面は一瞬で消え去り、満面の笑顔を浮かべると飛び上がって万歳した。



「<京都>の時以来のご馳走だJO! わーいだJO!!」

「前々回な。前回色々助けてもらったし、そのお礼だ」

「わーいだJO!!」


 そしてチャカチャカと一人雀躍りした後、拓たちが料理の説明をするより早くご馳走に飛びつき、後は無我夢中で食べ始めた。



 もう人の話なんか全く聞いていない。

 ここまで無邪気に喜んでくれると拓たちも気持ちがいい。



「幸せだJO~! うンまいJO~!! 最高だJO~!!」


 身長50cmのどこにこれだけの料理が入るのか……まるで数日ナニも食べていなかったかと思うほど、貪るように料理を食べている。その食いっぷりには、拓たちも苦笑いだ。


 今回はJOLJUを喜ばせるのも目的だ。どうやらそれは上手くいったようだ。


 実は他にも用はある。北米の事や航海のノウハウ、そして祐次の事など、重要な本題の話が色々とあるのだが、今のJOLJUには何を聞いても無駄なので好きに食べさせた。


 一時間あるから、とりあえず放置して好きに食べさせる。


 皆はもう腹は十分満たされているので、今はオードブルやデザートや菓子をつまみながら食後のお茶会に移行して、何気ない雑談を楽しんでいた。


 10分後だろうか。拓は時宗を相手に日本酒をなめていたところに、伊崎がやってきた。JOLJUが来たらこっちに合流してほしい、というのが拓の要望だった。


 拓は時宗もそっと呼び寄せ、拓の後ろに座った。


 打ち合わせは終わっている。今からちょっとした重要事項の確認をするのだ。


 相手は、寿司と刺身と海鮮鍋で幸せ絶頂のJOLJUだ。



「JOLJU、美味いか? 寿司は」

「美味いJO!! 特にマグロとカツオとタイ! エビやイカもこんなに美味しいなんて思わなかったJO! やっぱお寿司は旨いJO!!」

「今回は正しい寿司のフルコースだよ。近海の魚だけじゃなく大型魚も使ったしな。今が冬だったらサーモンもあるんだけど」

「へぇ~サーモンもお寿司にあうのかぁー! サーモンはちょっと頑張れば手に入るJO!」

「だろうな。北米じゃあメジャーな魚だし」


 と、和気藹々と会話を弾ませたところで、拓は仕掛けた。



「ところでJOLJU。<ラマル・トエルム>とお前たちは、先日何をしてたんだ? 宇宙船巡りしていたろう?」


「秘密だJO!」


 エッヘン、と胸を張って拒否するJOLJU。


 しかし……こう答えることはわかっている。



「そっか。ところでJOLJU。お前<カツオのタタキ>って食べたことあったっけ?」

「JO??」

「この表面炙ったカツオの刺身なんだけど。これ、ニンニクを乗せてポン酢で食べてみろ、美味いから」


 そういわれてカツオのタタキを食べるJOLJU。



「JO!? なんだコレ、美味しいJO!!」



「タタキにすると味が濃くなるし、収穫後すぐに炙って鮮度を保つから美味いンだ。血合いの臭さもニンニクが消してくれて味も引き立つし。米の飯とも最高に合うんだ」


「ホントだ! 美味いJO!!」


 目を輝かせて、パクパクと幸せそうに食べるJOLJU。


「そして……実はマグロの赤身のタタキもあるんだ。こっちは醤油タレに漬けたヅケマグロを炙ってるンだけど、これが寿司にもご飯にもよく合って飯が旨いぞ」



 今度は炙りマグロを差し出す。それを食べたJOLJUは予想以上の美味しさに思わずガッツポーズした。



 マグロやカツオ、そしてそれをタタキにして食べるのは日本の一般的な食べ方だが、世界が崩壊した今、遠洋漁業はそうそう行けない。寿司を作るにしてもアジやサバなどの地魚で作るのが精いっぱいでマグロやカツオは御馳走だ。しかも普段そういう大型魚は日持ちするよう味噌や醤油で漬けて加工食にしたり佃煮にして冷凍するので、崩壊した日本で刺身や寿司で食べるというのはとんでもない贅沢なのだ。


 そして、崩壊後に日本に現れたJOLJUはこの料理を知らない。<京都>でも宴会に呼んだが、あの時は川魚と京料理がメインで海鮮はなかった。



 完全に料理に魅了されたJOLJU。ほくほくの笑顔で夢中で食べている。


 それを見ていた拓が、後ろで怪訝そうに見ている時宗と伊崎にアイコンタクトを送った。


 ここで仕掛けた。


「そうそう先日祐次と宇宙船で何かしていたけど、お前たち宇宙船で今、何してるんだ?」

「さっきも言ったJO。<ラマル・トエルム>のことは秘密だJO」


「!?」


「俺同じ質問したっけ? 酒飲んでいるから酔ったかな?」


「だJO~。お酒飲みすぎ? 秘密は秘密なんだJO~」


「まぁいいよ、祐次にあったら聞くから。今日は気にせず腹いっぱい食べろ!」


「わーいだJO!!」



 再びJOLJUは無我夢中に魚料理に幸せそうに舌鼓を打つ。



 時宗と伊崎は顔を見合った。



 引っかかった。



 いや、魚を餌にしたのだから釣れた、というほうがいいかもしれない。


 拓は全く気付いていない無我夢中のJOLJUから離れ、時宗と伊崎のところにやってきて「分かったか?」と笑った。



「こんな簡単に引っかかって喋っていいのか?」

「本当に祐次が<ラマル・トエルム>か」


 時宗と伊崎は唸った。



 そう。



 JOLJUはミスを犯した。



 拓はほぼ同じ質問をしたが、最初は「<ラマル・トエルム>は」と言い、次は「祐次は」と言い換えた。それを料理に感激して気が緩んだJOLJUは「同じ質問」であることを認めた。警告ブザーが鳴らなかったのは、前回祐次が宇宙船にいる情報を拓たちが知ったからだろう。警告が出てもよかった。この質問で警告ブザーが鳴れば、<BJ>が英雄は祐次だと証明したことになる。




 <ラマル・トエルム>=祐次。



 これは事実で、JOLJUにとってはそのこと自体重大事ではなくなっているから、こんな初歩的な言葉遊びに引っかかったワケだ。



「こんな簡単に……しかも実は祐次の奴が英雄だったなんて……世間は狭いつーか安直だつーか……」

「言っただろ? 分かってしまえば簡単な謎かけだって」


「仲間……身近だからこそ気づかないことだってあるさ。お前が言う通り、祐次はそもそも<英雄>って性格じゃなかったからな。俺でもそう思うんだ。親友のお前たちにはむしろ難しい引っかけ問題だったって事だな」と伊崎。


「ええ。現にユイナちゃんや麗美さんは先日のことだけで気づいていました」


 拓は苦笑しながら温かいお茶を一口飲んだ。


「その祐次を変えたのがエダちゃん……って事だろうな。だから二人で<ラマル・トエルム>という認識が正しいって事になるんだと思う」


「女は男を変えるんだ。魔性だよ魔性。俺だってあーんな超美少女のためだったら月にだっていっちまうぜ。しかしあの祐次がロリコンになるとはなぁ……あいつ、年上キラーじゃなかったのかよ? あいつの女性遍歴、年上ばっかだったんだぜ? どっちかというと姉好きのシスコン」


 親戚である時宗の暴露に拓と伊崎は苦笑した。


「俺、昔の祐次は知らないけど、多分祐次の本質は変わってないと思う。一緒だよ。あいつはぶっきらぼうだけど基本的にはフェミニストだし、女性を外見や年齢で差別しない。年上だろうが年下だろうが、相手の中身が重要だと思っているんじゃないかな?」



 とはいえ、男には興味はないと思う。



「かもなぁ……。ほんっと、俺あいつと付き合い長いけど、エロ本とかエロ動画観てるの見たことねぇーし、猥談もやらねぇーし。性欲ねぇーんじゃねぇーの、あいつ」


「いや……あの少女の美貌考えたらそうなるよ。俺が20歳若かったら俺だって特別扱いするよ、あの子」と、いい大人の伊崎までこんなことを言う。



 祐次が英雄であることより、むしろエダの存在のほうが彼らには衝撃的だった。



 とはいえどれだけ魅力的でも彼女は10代前半だ。



「だからエダちゃんとはまだキスもしてないだろうな。でもJOLJUも家族だって言っていたから、絆は間違いないよ。処女神っていう条件もクリアーしているんだろ」


「超がつく純愛主義者……ってトコかな? 時宗じゃないが、俺も見習わないと。いい加減に嫁さん欲しい。もうアラフォーだよ、俺」

「伊崎さんも仕事人間だしな」

「誰か代わってくれよ。それで合コン開いてくれ」

「俺たちの周りにいる女はおっかねぇーのばかりだぜ?」

「言えている」


 伊崎と時宗が勝手に盛り上がる。



「なぁーにぃ? アンタたち男三人集まって恋バナぁ~?」


 突然優美が入ってきた。いつもは酒を好まないが、今日は飲んで少し酔っぱらっていた。

 三人は同時に苦笑した。



「そんなトコだよ。フリーの男三人集まれば女ネタで盛り上がるのが自然だぜ?」

「時宗ぇ~。そんなこというくらいならカノジョくらい作ればぁ~? 私はアンタみたいな口だけスケベはパースだけど!」

「俺はね、沢山の女の子たちと愛を語りたいワケよ? 常にマジなワケ。優美が寂しいンなら俺が口だけスケベじゃないって今夜証明してやるけど?」

「だから私はアンタはパスだって」


 そういうと優美はクスクス笑う。大分アルコールが回っているようだ。


 別に優美は心から時宗を嫌っているわけではない。彼女にとって時宗は親しい友人で恋愛対象にしていないだけだ。ただ、そこに秘密があることを拓は知っている。



 優美は崩壊直後、恋人といっていい好きな男友達がいた。デート最中に世界の崩壊に遭遇し、直後恋人は目の前で死んだ。今はその傷も癒えて明るく逞しくなったが、本当は繊細な女の子だ。それで優美は恋愛に臆病になり友達は作ってもそれ以上の関係は持たない。優美は愛する人間を失う辛さを知っている。



 それを思い出した拓は……優美が銃を持てなくなったのも当然だと、今更気づいた。元々根はそんな強いわけではなくまだ大人にもなりきれていない。いや、優美の年齢を考えれば年相応で拓、時宗、それに祐次は特別なだけだ。



 やはり優美に人を殺させるべきではなかった。


 気が強く行動力もあるが、本当はそれくらい繊細な娘なのだ。そしてその感覚は、日本人としては多分それが普通で正しい。優美はまだ完全には崩壊世界に順応してはいないのだ。



 伊崎もそれを見抜いていた。だからサバイバル能力や戦闘力自体は及第点でも、渡米組からは外した。



 その逆が篤志とユイナだ。



 篤志は見た目も涼しく、ユイナも美少女で、二人とも皆から好かれている。誰から見ても素直で真面目で明るく、とても荒事には向かない雰囲気を持っているが、度胸と世界に対する順応度は高く、勇気も根性も並の大人以上だ。篤志に関しては、本人は語らないが対人戦の経験もあると思える。先日の事件でも篤志は戦闘で躊躇も怯えもなく、恐怖もなかった。篤志が動揺したのは、あの手術の時祐次が消えたアクシデントの時だけで、エダのフォローがあったとはいえ、あの修羅場を自力で乗り越えた少年だ。


 だから伊崎は年齢を無視して篤志を渡米組に入れた。さすがに伊崎はよく見ている。


「仲間」12


今回から仲間編のJOLJU編本格化です。

こいつの場合拓の事情はあまり関係なく、ただ単純に宴会を楽しんでいます。

日本食が大好きですが、実は本格的なお寿司を食べたのは今回が初めて!

まぁ、マグロとかカツオは外洋に出ないと釣れないので、どうしても漁は湾内が多いですしね。

以前JOLJUが食べたお寿司は湾内の、いわゆる江戸前寿司でした。

今回、マグロとカツオの味を知り有頂天になったJOLJU。


そしてあっさり祐次=英雄を認めてしまいました。


頭が異次元レベルにいいのに……それ以上に単細胞で何も考えず生きているのがJOLJUです。

拓としてはこの確認をするために……というのが目的でした。

すでにいいましたが、今回現れているJOLJUはエダ編だと第九章以降。当然祐次は完全に英雄として活動しています。JOLJUにとっては秘密でも何でもなくなっているので、ポロリと言ってしまうわけです。


さて


JOLJU編はもう少し続きます。

一応JOLJUも主人公の一人。

主人公同士だから他のキャラより話題は多いです。

何よりこれからいく米国の情報を持っているのはJOLJUだけです。

ということでこれからは米国情報編。

こっそり色々エダ編の伏線も入っています。

拓にとってはこれからの情報が最重要課題!


拓の旅の目的は何か!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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