「JOLJUとエダの試練」七章エダ編END
「JOLJUとエダの試練」
JOLJUが語る、エダの秘密の才能。
それは想像していたより壮大なものだった。
全人類の命運のカギはエダ!
そしてJOLJUが語る、皆に課せられた試練。
***
エダは一旦作業の手を止め、晩御飯の用意しようと食材を見ていた時だ。
近くで小型液晶TVのHDに音楽や映画データーを移していたJOLJUが立ち上がった。
「エダ。コレ、エリスから預かってたの、返すJO」
そういってJOLJUが取り出したのは、エダの<オルパル>だった。分析のためエリスに預けていたものだ。
それをエダが受け取ったとき……JOLJUが珍しく真剣な顔でエダを見つめた。
「エダ、よく聞いてだJO?」
「どうしたの? JOLJU」
「前にちょこっと言ったけど……エダにも<BJ>のエノラが投与されたの」
「うん、聞いた。でもあたしには戦闘力とか、すごい技術とかないみたい」
エノラの件……エダは自分の救命処置のため……としか聞かされていない。自分の才能が買われたとは思っていない。
しかし……投与を決断したJOLJUは、知っている。エダの本当の才能を。
「エダ」
珍しく、JOLJUは真剣だ。
「あるんだJO? エダは特別なの」
「?」
「この言葉、覚えてだJO。<パスラ・セラ・ラフェラ>」
「? どういう意味?」
「それでエダのもう一つの……本当の能力が覚醒するJO」
「え?」
「エダの才能はかなり特別でね。現代の地球人には本当は与えられない力の領域だったから、エダが眠っているときオイラが看病のついでに覚醒を制御したの。この言葉はエダの才能の封印を解く言葉だJO。戦闘力はないけど、でも……きっとこれからのエダや祐次には必要になってくると思うし、エダなら悪用せずに使いこなせると思う。どっちかというとロザミィが近い才能持っているから、ロザミィとエダを結びつけることにはなると思う」
「それがあたしの……才能?」
「何かは言えない。……適切な地球の言葉がないからもあるけど……。ただ、もしこの言葉を使うときは必ず<オルパル>を持ってて。<オルパル>が共鳴してきっとエダをもっと強化すると思う。ロザミィに今度会ったら、ロザミィには相談していいけど、エリスやリーには駄目。ゲ・エイルに知られるのはもっと駄目。馬鹿たれ神の二人は発動した瞬間知るだろうけど、そっちはオイラが説得するから気にしなくていいJO」
「…………」
「奇跡が起こるかもしんない。本当に窮地に陥った時……人類を救えるのは祐次じゃなくてエダかもしんない」
「なんでロザミアさんならいいの?」
「ちょっと違うけどロザミィも大別すれば同じ分野の才能あるの。多分ロザミィは会ったら気づくと思う。だけどエリスには才能がないから。だからロザミィはいいJO」
「祐次には?」
「発動が成功してエダが自分で力について理解できたら、祐次には話していいJO。きっと祐次にとって一番の力になるから。でも祐次じゃあエダの才能の助言はできないんだJO」
「…………」
「これだけは忘れないで。覚醒したら、エダは祐次とは別の意味で<地球で唯一の存在>になるJO。祐次は人間として最高レベルの覚醒だけど、人間なの。でもエダの力は<覚醒種>で、人類の能力より一段上の種としての進化になる。不可抗力だけど、エダにはもともとその素質があったみたい」
「…………」
「祐次は<ラマル・トエルム>になった。間違いなく英雄。これから人類の代表として試練に挑むことになるJO。そしてね、エダ。エダも<ラマル・トエルム>なんだJO。二人で一つ、二人で<ラマル・トエルム>なんだJO」
「もしかして、ロンドベルでJOLJUがあたしを助けてくれたのは……それが理由?」
「ううん。あれは偶然だけど……うーーーん……そうだなぁ……<ただのJOLJU>としては本当偶然だけどね。<神のJOLJU>の立場からいうと、必然の運命だJO」
「…………」
「オイラ、今は全能力を封印して今は普通の神でもなんでもない<ただのJOLJU>だけどね。元々地球……この太陽系侵略計画に参加していた頃は制御をしていたけど一応<神のJOLJU>だったの。これはエダにだけ言うけど……オイラは実は全ての<試練>も<未来>も知ってる。元々LV2だもん。他の神はこの地球がどうなるかまでは知らないけど、オイラは結果まで知ってる。そういう意味じゃあある意味黒幕といえるかもしれない」
「……JOLJU……」
こう見えてもJOLJUは<神>……いや、<神>を超越した超生命体で、自分の能力を封印しているのは次元が違いすぎるからだ。人類との干渉が許されている<通常の神>の次元ですら超越している。手を貸したり自分が決断しないのはJOLJUの節度で、別に禁止事項ではない。
「でもね。<未来>……この場合<運命>っていうほうがいいかもしれないけど……オイラの立場からすれば結末は知っているけど、そこに至るルートは不変じゃなくて、色んな道や可能性があるの。だから未来も運命も変えられる。未来は無数にある……というより、みんなの頑張りによって運命を乗り超えることで、結末が少し変わって、流れが変わるんだJO」
「未来がわかっているの?」
「未来はいくつか結末があって……どれが運命になるかは、皆次第だから、確率はわかってもどうなるかまでは今のオイラには分からない。んー、RPGゲームに近いかもしんない。選択するルートによって、話の結末は何パターンかあるうちのどれかになる。オイラが知っているのは、そのゴールが何パターンかあって、それぞれそうなる確率は知ってるけど、祐次やエダたちがどの選択肢を選ぶかまでは分からない。オイラが地球人にかかわることで、未来は変動することになったの。だけど、その鍵は祐次とエダなんだJO」
「あたしも?」
「なんでこんな話をエダだけにするかっていうと……祐次はその運命を変える当事者にこれからなっていくはずだから、祐次には言えない。そしてね。本流は大きく分けると二つなの」
「二つ?」
「パラの未来が本流になるか、地球の未来が本流になるか。つまりロザミィの試練が達せられるか、祐次や地球人が試練をなんとか乗り超えて運命に打ち勝つか」
「それがロザミアさんに課せられた試練……なんだね?」
「その両方を、もしかしたらエダは一つにできるかもしれない。エダはそういう存在になっちゃったんだJO」
「…………」
「覚悟しといて。祐次の試練も、エダの試練も、ロザミィの試練も……どれも他とは比べようがないくらい困難で難問で大変だJO。だからロザミィには二人の神がサポートしているし、<BJ>も関わってる。ただエダの試練だけはイレギュラーで発生した特別な要素で……想定外に発生した要素で、オイラがちょこっとだけサポートすることにしたんだJO。それでも……それぞれの成功確率は20%前後で、困難なことには変わりはないんだJO」
「…………」
そこまでいうと、JOLJUはいつもの顔に戻り、グデーと座り込んだ。
「本当はオイラがぜーんぶなんとかしちゃえば……って話もあるにはあるんだけどね。オイラ偉すぎて手を出すと問題は何だって解決はするけど、結局パラのためにも地球のためにもならなっちゃうんだJO。小学校の算数の入試テストをオックスフォード大学の数学教授が代理の替え玉でやるようなもんなんだJO。これじゃあ怒られるでしょ?」
「そうだね。それだと本人のためにならないし、不公平だし、酷いズルだね」
エダはクスクスと笑った。
JOLJUの立場はエダたちが認識しているより本当はもっと偉いし凄い。そしてその分苦悩も多い。それは最近分かってきた。
それでもなんとか力になろうとしてくれている。そういうJOLJUの気持ちは素直に嬉しい。
今のこの会話だって、JOLJUのルールではギリギリのはずだ。それでも悩んだ結果、話した。JOLJUに許された精いっぱいの愛情だ。
それに、エダは感謝もしていた。
命を助けてくれたことだけではない。
自分に祐次を助ける力をくれたことを。
ただ守られているだけは嫌だ。何か出来ることがしたかった。だがただの少女にはそんな力はない。これからの祐次が進む困難な道では自分は足手まといになるという心配と現実がエダの心を寂しくさせていた。
だが力をくれた。
力が何かはわからないが、この力が祐次と人類を救うためになるのであれば、嬉しい。
祐次と共に、人類のために運命と立ち向かうことができる。
「頑張る。だからね、JOLJUはJOLJUのできる範囲であたしたちと一緒に頑張ろう!」
「うん! 頑張ろう! ……ま……それでいうと……本当の本当に一番大変な試練って実はオイラの試練なんだけどね。何せ<ただのJOLJU>で解決だもん」
「JOLJUにも<試練>があるの?」
「うん。一番面倒で大変なんだJO。<神>の力を使わずにLV3の<神>案件……だもん」
「本当は宇宙で一番凄い神様なのにね」
「オイラ神様になりたくてなったわけじゃないし、<ただのJOLJU>のほうが楽しいけど……皆と違って<試練>の内容も難易度も問題の多さも困難さも知った上でやらなきゃいけないっていうのがね……過去も未来も宇宙も種族もぜーんぶだモン。ヤレヤレだJO」
JOLJUの試練は、本来<通常の神>ですら手に余る難題を、神の力を使わず<ただのJOLJU>として、全て解決させることだ。
エダたちには想像もできないレベルであることは間違いない。
「JOLJU、ガンバ! うん!」
「おーだJO」
こうしてJOLJUが自分のことを語るのも、JOLJUなりのサポートであり、信頼と友情の証だと思った。
そして……JOLJU個人としては、なんとか地球人にいい運命を進ませたいのだ。
しかしJOLJUにとってロザミアは家族だ。JOLJUがロザミアを特別に思っていることは知っている。この二つが両立できないことも知っているが、それでもなんとかいい運命にしたい。
JOLJUの試練……それが判明するのは、かなり先の話だ。
それがいかに深刻な困難で苦悩に満ちた運命だということを知るのも、さらに先の話だ。
「JOLJUとエダの試練」でした。
ようやくこれで七章エダ編終了です。
メインエピソードがゲ・エイルエダ誘拐でしたから、かなり長い後日談になりました。
今回、珍しくJOLJUが真面目モードで語ります。
それぞれの試練。その中でも難易度が高い地球とロザミアの試練。
さらに難易度が高いJOLJUの試練。
JOLJUが大変なのは、全部答えも内容も知った上での試練ということですね。つまり普通はどうやっても成功しないことを、神の力を使わず達成することです。難易度はMAXです。それでいて本当の力は使えないけど知能は関係ないから色々知っている分大変です。
そしてエダの秘密の本当の力は何か!
この秘密はまだ明かされません。知っているのはJOLJUだけ。
しかし世界を救うカギは実は祐次ではなくエダ!
どうなる地球の未来!
ということで拓編になります。
こっちは六章の事件の続き。
ややこしいのは、拓編はエダ編の未来ということ。
そのあたりちょこっと伏線が入り乱れてたりします。
これからも「AL」をよろしくお願いします。




