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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第七章エダ編
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「エダの才能」

「エダの才能」


祐次、帰宅。

出迎えるエダとJOLJU。

もういつもと変わらない生活。

だが、今もエダの中に投与されたエノラが発動しているはずだが?

***




 2月4日 ニューヨーク州 ハイ・フォールズ


 祐次がログハウスに戻ったのは午前10時頃だった。


 エリスは転送で帰った。

 今回は祐次に今後のスケジュールを伝えるだけが目的だったし、今JOLJUと会うと文句が止まらなくなる、と苦笑して一旦去っていった。


 祐次が戻ると、リビングでは風呂から上がり着替え終わったエダとJOLJUが、仲良く談笑しながらカレーライスを食べていた。



「気がついたのか。良かった」

「うん。ありがとう、祐次」

「祐次の分のカレーもあるから食べるといいJO~」

「ああ食う。昨日からまともなもんを食べてないからな。エダの有難味が骨身に染みた」

「カレーライスはオイラが作ったJO?」

「大盛りで食う。ああ、豚を仕留めたから夜は豚汁だな」


 祐次は家の中に入ると、分厚いダウンジャケットを脱ぎ、HK SG1を置くと、さっさとキッチンに行って、自分で大皿一杯にご飯とカレーライスをよそい、コーラを取ってリビングにやってくると食べ始めた。


 いつもの変わらない元気そうな祐次の姿を見て、エダは嬉しそうに微笑んでいる。



「ありがとう、祐次」

「当たり前だろ? 俺たちは……」


 そう言った祐次は一度スプーンを止め、チラリとエダを見た。



「…………」

「どうしたの?」

「いや。……その……何か変わったことはないか?」

「うん。ないよ。体も元気だし、お風呂にも入ったし着替えてすごくさっぱりして気持ちいいよ?」

「……他に異常は……? 何もないのか?」

「うん、ないと思うけど?」

「そうか」


 祐次はそう答えるとカレーライスを食べ始めた。



 しかし、頭の中では様々な考えが駆け巡る。



 ……今、エノラの覚醒期間のはずだ。タイプは少し違うといっても同じ<BJ>のエノラだ。才能開花や覚醒はもう始まっているはずだ……が……?



 何の才能か?



 こればかりはJOLJUも検討がつかなかった。


 エダが寝ている間に、エノラの順応は終わり、ゲ・エイルのエノラの後遺症もない。もう<BJ>のエノラが脳内で活動を始めていることまではJOLJUのスキャンで分かった。 

 ただ祐次と違ってまだ12歳だから、どんな才能があるか自分でも分かっていないと思う。エリスが言っていた基本的な対宇宙用の順応はもうできていると思うが、あの強化能力は地球にいる限りあまり意味がないし自覚もできない。祐次の場合は<BJ>がはっきりと「医学と戦闘力」と言ったから分かっていたが、エダの投与は想定外の出来事だ。


 ……まさか本当に料理や家事とかいうんじゃないだろうな……。


 エダは男性的才能より女の子としての才能が豊かなことはこれまでで分かっている。元々JOLJUが投与したのも、エダを強くさせるためではなく救命処置のためで神に戦士として選ばれたわけではない。


 確かにエダの料理の腕は十分才能と呼べるものだが……才能すべてが開花するわけではない。

 祐次の場合、音楽の才能もあるが、そっちは多少成長した程度で天才化するほどではなかった。ドライビングテクニックや操船技術も上がったが拡大したといえるほどではない。自分が望まなかったからかもしれない。



 エダの場合はどうだ?



 運動神経はいいから、スポーツの才能が開花する可能性もある。エダはサッカーや野球など齧っているが、趣味程度で本格的ではない。今の世界に適応するのであれば戦闘力もあり得るが、エダは祐次と違って武道の心得はないし、まず戦闘に特化するほど体力や筋力はない。超人薬ではないから、エダの細腕で一般人を遥かに超える戦闘力が芽生えるとは思えない。射撃も標準以上の才能はあるが祐次ほど突出した才能ではないし、銃も高い筋力は必要でフィジカル面に依るところも大きい。エダの場合運動神経はいいが筋力は平均を超えていない。


 エダの場合、色んな才能の可能性がある。



 ……ならば、何がある……?



 一つ……気になったことが、あるにはある。



 元気なエダを見て、思わず感じたことだ。



 エダの笑顔を見た祐次は、一瞬呼吸が止まった。



 エダは眩しいほど美しかった。



 エダの美貌が並外れたものであることはとっくに知っている。女性の美貌に無関心な祐次ですら、初めて会ったとき一瞬言葉を失うほど特別だった。


 今は見慣れたが、それでもエダがちょっと見ない超がつくほどのレベルの美少女であるということは祐次も認めている。外見も中身も、こんなに美しく純粋で魅力的な娘は出会ったことがない。これはベンジャミンたち米国人の大人たちも口を揃えてエダの美貌や内面の魅力に感嘆を漏らしていたから、白人社会から見ても特別なのだろう。


 それでも祐次はずっと一緒にいて慣れたはずだが、さっきエダを見たとき、その祐次ですら一瞬見惚れた。



 ……確か<美人>も才能だってJOLJUは言ってなかったか……?



 美貌や女の子としての魅力も才能だとすれば、エダがもっとも傑出した才能はまさに美貌とカリスマとアイドル性かもしれない。以前JOLJUが「そういうのも才能で、美貌って原則黄金比率とバランスだし、その子のオーラとかアイドルの才能とかある」と言っていた。エダの欠点をあえて挙げるとすれば白人にしてはやや小柄で細い点だが、顔は小さく脚は長いのでプロポーションのバランスはいい。



 だがユージはそれにも首を傾げた。



 ……あんなことがあった直後だ。俺の感情も高ぶっているし、助けることができた感動が残っている。今の俺にはその感情があって特別に見えただけだ……。



 そんな気もする。



 起こったことすべてを教える必要はないが、エダにもエノラが投与されて、何かの力が覚醒するということは教えたほうがいいかもしれない。それでエダ自身が自分で自分にとって一番いい才能を自力で覚醒させるかもしれない。祐次が医学と戦闘力を選んだように。



 できれば……エダには超人レベルの戦闘力の才能は持ってほしくない。エダが戦う姿を望んではいない。身を守れる程度にあればいい。それよりは医学なり科学の才能のほうが人類のためになる。



 急ぐことはない。



「エダ。大変なことがあったんだ。しばらくゆっくり休め。ここは安全で危険はないし、数日はのんびりしよう」

「うん。でも体はすごく調子いいよ? 絶好調だよ♪」

「俺はちょっと疲れているから休みたい。急ぐことはない」

「じゃあゆっくりだね」


 本当は左腕を貫かれ背中や頭部も負傷した。ロザミアのお陰で完治したが普通ならば当分動けない重傷だ。エダが知れば血相を変えただろう。



「JOLJU」

「JO?」

「飯食ったら、外にあるキャンピングカーの改造を仕上げてしまうぞ。エリスが転送であの車も送ってくれる。今度は別の生存者の共同体に訪問することになりそうだ。あれを使う」


「バーモンドでいくつかゲ・エイルの船から機材は拝借したし、もう8割くらいは終わっているからそう時間はかからないJO。合点だJO! コンテナ倉庫に食料とか燃料とか積み込めるだけ積み込みだJO!」


「じゃあ俺とJOLJUは、午後はそれだな。エダ、お前はロッジの中の整理を頼む。念のため1/3は残していくが、あとは持てる限り持っていこうと思う。JOLJUのコンテナは20日分くらい載せられるはずだ。10日分くらい積んで、残りはNYで積もう」


「うん、わかった。頑張ろうね!」


「…………」



 やはりエダに変わったところは見られない……。


 午後の予定が決まった。


 と……ユージはふと。



「エダ。30分だけ射撃練習するか? 気分転換に」

「うん、いいよ」


 エダは特に気にすることなく同意した。


 これで何か掴めるかもしれない。




***




 射撃練習とはいっても真面目な練習ではなく、適当に木材など置いて気軽に楽しく撃つプリンキングのようなものだ。祐次もパイソンやSIGP229とコルト45オートで適当に参加している。DE44は弾がメインウェポンで弾が貴重だから今回はあまり使わなかった。


 エダも崩壊から三ヶ月。NYの滞在中、よく射撃練習はしたし、あの大侵攻ではエダもかなり頑張って戦った。これまでさほど意識したことはなかったが、随分銃の扱いにも慣れていた。基本操作は、もう祐次が教えずとも全部自分でやってしまう。


 ちなみに射撃に興味のないJOLJUは、移動用のキャンピングカーの改造を続けている。エダと祐次だけで、場所はロッジ近くの森の中だ。



 まず大体100発ほど、エダは撃った。 


 距離は20mから40mで。ほとんど狙った通りのところに当たっていた。



「上手くなったな」


 素直に感心する祐次。エダは楽しそうだ。


「アリシアさんが言っていた通り、慣れると射撃も楽しい気分転換になるね。でもまだまだだよ。祐次みたいに50m先の葉っぱだけを撃つとかできないもの。」


「それは……」


 祐次は苦笑する。そんなことができるのは祐次だけだ。成程、以前アリシアが「エダは射撃に関する認識が少しズレている」と零していた意味が分かった。


 エダにとって射撃の師匠は祐次で、その「上手」の基準も祐次なのだが、祐次の腕は職業上銃を使ってきたプロであるアリシアやベンジャミンですら舌を巻き真似することすらできない化け物だ。


 だがエダは祐次以外の射撃の師匠といえばアリシアを知っているだけで、アリシアもプロだが精々中級の師匠で、祐次だといきなり超上級者コースに入門しているようなものだ。だから「普通の人間レベル」が分かっていない。


「エダの才能」でした。



長いエピローグ編ですが。

相変わらずエダのエノラについて。

エダは一体何の才能が覚醒したのか、探る祐次です。


祐次もエダも、元々が優秀で才能たくさんありますしね。

祐次の場合は分かりやすい、戦闘力と医学が超越しました。祐次の場合他に戦術能力やドライビング能力、音楽の能力も高いですが、こっちは自前の才能です。元々祐次は平均より上の拓たちからみても特別な人間なので覚醒した感は薄く、なんか成長したな、くらいです。


エダはまだその点普通……と思うのは実は錯覚です。


エダはそもそもまだ12歳。それが大人の上位陣に通用する基礎があるので、元々万能型のある意味天才です。頭もいいし社会性もあるし運動神経もいいし女子力高いですし。

しかし祐次みたいに完全にぶっ飛んだ特化したものはない。

ですが……何かは確実に特化しているはず。


ちなみに半分は実は答えが出ています。

エダが現在一番特化しているのは、多分<美しい事>。

美貌もですし、心もです。

元々「思わず見惚れてしまうくらいの美貌を持つ少女」でした。美人であることはエダ自身も知っていて、エダはそれを内包して自分の武器にはせず控える習慣がついているのでアピールはしませんし自分の魅力を自分は評価していない子ですが、まず確実に特化した才能です。これは祐次にとって戦闘の才能と似ていますね。元々下駄はいていて高いのを自覚しているから爆上がりしていても自分も周りも気づきません。


しかし本当の才能は別です。


次回はその話は出てきません。ちょっとしばらくほのぼの編です。


ただ……気づいているのが一人。

JOLJUは気づいています。


実はこの第七章から、JOLJUは<神>らしい事をしはじめます。そもそも今回エダ奪還で暴走しましたが、これがきっかけで段々封印が緩んできます。本人は緩ませている自覚がないですが。


ということで次回もこの続き。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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