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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第七章エダ編
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「運命、動く」

「運命、動く」



エダの誘拐……

JOLJUの意図……

これはただの誘拐ではなかった!?


ロザミアもついに動き出す!

***



 と……エリスはもう一度JOLJUを見た。



「しかし戦闘員が二人で大丈夫ですか?」


「JO?」


「<パーツパル>の保安戦闘要員が18人おります。10人であればお貸しできますよ?」


 JOLJUもいくが、JOLJUは戦闘はしない。何か戦闘機など操縦した時は別として、<ただのJOLJU>は戦闘力というものがないし、本人も個人では戦闘を好んでいない。そこは無害で平和主義者な神だ。


 しかし、祐次とリー二人だけではいくらなんでも無謀だとエリスは思った。相手はただの異星人ではなく戦闘種族だ。



「<パーツパル>の保安員は戦闘経験も豊富ですが?」


「有難いケド、銀河連合職員は同行しないほうがいいJO。これは地球人とゲ・エイルの紛争で処理したいし、ただでさえ少ないパラリアンを危険に晒したくないし」


「ゲ・エイルの戦闘力は地球人やク・プリより上ですよ?」


「祐次ならきっと戦える。祐次強いモン。オイラが<ヴァトス>を持つのに相応しいと判断するくらいには」


「ゲ・エイルの<プル・サゼト>であれば、相当数の<グドビン>も配備されているのではないですか?」


「祐次ならなんとかするJO。1万のALも蹴散らしちゃうようなのが祐次だJO! それにオイラは戦わないけど知識はあるから対処できると思うし。一応保険は打ったし」



「本当に貴方は……」



 ……英雄が好きな超生命体だ。しかも人を見る目は間違いない……。



 祐次が地球人の中でも特別なのはエリスも認めている。


 テラサッテも高く知識も豊富で思考も柔軟、未知の科学に対する理解と適応力もある。そして規格外れの戦闘力もある。彼ならば銀河連合職員にも推薦できるし、銀河連合内でも相当な活躍をするだろう。英雄と呼ぶに十分な資質を持っている。ただカリスマ性はどうだろうか? ただ強いだけでは英雄とは呼べない。祐次は優秀でそれは誰もが認めるし、人を圧するような存在感はあるが人から愛される魅力ではない。その魅力はむしろあのエダのほうが持っていた気がする。



 ……あの二人で、ちょうど一対の英雄……か……。



 しかし、誰にとっての英雄となるかは、まだエリスにも分からない。



 この事件の問題は意外に大きい。ただの拉致事件では済みそうにない。



 JOLJUが口にした「それぞれの種族に課せられた試練」も気になる。その試練が何なのかは、エリスにもまだ分からない。ただ、JOLJUが一番重要だと考えているのは、どうやらそこにありそうだ。




***




 それは全く予想外の通信だった。


 着信のアラームが鳴り、艦橋に移動したロザミアは、メインモニターに表示されているJOLJUからの通信文を見て顔色を変えた。



「ゲ・エイルが動き出した? このタイミングで?」



 今、面倒な状況下にある。



 同じパラリアンとはいえ銀河連合所属の<パーツパル>がテラ星系に現れ、活動を始めた。そしてこのタイミングでゲ・エイルの活動が活発化しはじめたという。


 銀河連合の介入は予め予想されていたことで、その中にパラリアンが含まれることも想定にはあった。恐らく使用される艦船は銀河連合に貸与していた二世代前の汎用戦艦<アイルスタック級>だと予想していたが、そこは予想に反し最新型の<パーツパル>が現れた。


 乗組員が全員パラリアンであることも多少予想と外れた。

 むろんその可能性はあったが低い確率で、もっとも高い確率は銀河連合正規の各種族混成の調査部隊だった。そのため、ロザミアたちの予定は多少変更を余儀なくされた。



 それはいい。

 これまでのことは多少想定とズレたとはいえ許容範囲内で、<使命>に大きな影響が出るわけではない。



 この報告は別にどうでもいい。



 問題は次の点だ。



「エダがゲ・エイルに拉致された?」



 これはロザミアにとっても計算外で、衝撃的な内容だった。



 まず、友人のエダが拉致された衝撃。



 これまで感じたことのない怒りと苛立ち。この感情の高まりに、ロザミア本人が戸惑った。友人を持ったことのないロザミアにとって、友が奪われるという事がどれほど心理に衝撃を与え、思考を混乱させるのか……初めての体験だけに、そのこと自体にも驚いた。



 そしてそれが落ち着くと、今度はその意味に疑問をもった。



 何故エダなのだ?


 自分と接触した地球人だからか?



 二ケ月半前、初めてエダと知り合った。


 その時ゲ・エイルとも遭遇し、連中もエダを知った。


 しかしあの時はJOLJUもいた。


 JOLJUの知人を拉致するなど、文字通り虫が神に喧嘩を売るようなもので勝算などあろうはずがなく、怒りを買うだけではないか。いくらゲ・エイルが野蛮で短気だからといっても、JOLJUを相手に出し抜いたり、ましてや勝てるなど考えるはずがない。



 JOLJUを怒らせてただで済むと思っているのか?



 現にJOLJUは<パーツパル>の通信機からゲ・エイルに対して、ほとんど恫喝とも取れる抗議と警告を突き付けている。エダに危害を加えればこの銀河にいるゲ・エイル全てを一瞬で抹消する、とまで言わせている。脅しではなくJOLJUがその気になればまさに一瞬で実行される。それどころかこの銀河連合全域に散らばっている全ゲ・エイル種族を一瞬で消滅させることも容易い。さすがにそこまでしないだろうが。



 ゲ・エイルもそこまで馬鹿ではない。



 JOLJUの怒りは計算していたはずだ。もっともここまで本気で怒るとは思っていなかっただろうが。


 これ以上怒らせれば、本当にそれくらいはするだろう。たった一言発するだけの労力で。

そのことはゲ・エイルもさすがに知っている。




 だとすれば狙いは……。



「<星の子>?」


 JOLJUとロザミアだけが知っていて、同じパラリアンでも銀河連合出向者は知らない、それはロザミアの使命と<星の子>計画。これは地球存亡にかかわることだから、どれだけ仲が良くなったとしても絶対JOLJUは地球人や銀河連合関係者には言わない。万が一言ったら、その瞬間二人の神がJOLJUを地球から連れ出す、という約束だ。



 JOLJUの本来の能力でいえば二人の神も虫と変わらないが、そこにはパラリアンの命運もかかっている。JOLJUはパラリアンも愛している。その守護者である二人の神を消すことはしたくない。基本喧嘩は嫌いな超生命体だ。



 JOLJUの通信は報告だけで、ロザミアに協力要請や行動の命令は入っていない。判断はロザミアに任された。



 ただ誘拐されただけならばロザミアには報せない。ロザミアの助勢などJOLJUがちょっと力を使えば必要はない。



 報せたのには、別の理由……ロザミアの<使命>に関係するからだ。



 ロザミアは即座に決意した。



「この段階でゲ・エイルを滅亡させる計画ではなかったのだけど」


 ゲ・エイルは敵だ。


 僅かに生き残ったゲ・エイルなど、ロザミアが本気になればいつでも全滅させることができた。ただ、ある計画の遂行上連中の存在も必要だったのと、好んではいないとはいえ博愛主義のJOLJUが「ゲ・エイルにも生存権の試練は与えるべき」と主張したので放置していた。もっとも、そのゲ・エイルがJOLJUの親心など知らず、肝心のJOLJUを怒らせてしまった以上その点を留意する必要はなくなったが。



「中途半端に知恵と科学があるとこういうことになるのよ。JOLJUの寛大に甘えていれば生存の確率もあったのに」



 殺人鬼が自分の弁護士を殺したようなものだ。もう殺人鬼を弁護する者がいなくなれば、判決は死刑確定ではないか。



 いや……。



 ロザミアは、エリスたちよりJOLJUを知っている。その深慮遠謀と先の使命まで。

 これは動き出したのかもしれない。


 ロザミアたちだけが知る、もう一つの使命が。



「<ラマル・トエルム>が動く」


 それも、当初の予想より急激に早く!


 だとすれば、<BJ>の思惑がついに動き出す。


 それは厳密にはロザミアの背負っている使命とは違うものだが、全く無関係でもない。この二つは別々の使命だが、ある一点では交差し、最終的には同じ方向を向く。


 ただロザミアも予想しえなかったこともあった。



「まさか鍵がエダだなんて」



 ……これがあの娘の背負った巨大な運命……!?



 これは全く想定していなかった。


 そして、エダを拉致したゲ・エイルの意図も、ロザミアですら完全には理解できない。ただし、エリスたちと違って凡その検討はついた。



 ゲ・エイルは気づいたのだ。ロザミアが抱える<星の子>の使命と、ロザミアにとっての急所を。そしてその鍵として選ばれたのがエダだった。



 ゲ・エイルの目的は地球人でもク・プリでも、ましてやJOLJUでもない。本当の目的はロザミアであり、銀河連合も利用しようとしている。自分たちの現状を打破する方法として、狡猾な発想に辿り着いた。これに対し、ロザミア側の二人の神は手出ししない。そこまで読んでいる。



 ゲ・エイルは暴力を好み短気で粗暴だが、戦争にかけては老練でリーダーは高いテラサッテを持っている。ゲ・エイルは勝負に打って出てきたのだ。



 ついに運命が動き出す。



 同時に……。



 保留となっていた地球人の完全滅亡の計画が始動してしまった。



 それを止まられるか、運命を打ち破ることが出来るか。



 これはロザミアたちと地球人の問題だ。保留にしていた運命の流れをゲ・エイルが動かしてしまった。



 その鍵は<ラマル・トエルム>と、エダに懸かっている。



 もうその動き出した運命を、ロザミアでも止めることは出来ない。



 だが、このまま傍観する気はない。



 保留にして傍観することもできる。だがロザミアはその道を取らなかった。



 ついに自分たちと地球人の運命が動き出す。



「<ヴィスカバル>始動! 目標<プル・サゼト・デパトレバ>! 時空次元視覚遮蔽を解除して戦闘態勢を発動、微速で接近」



 ロザミアはそう命じると、艦橋を後にした。



 ロザミアも、動き出した。



「運命、動く」でした。



実さは……大人げなく怒っていたJOLJUでしたが、それは感情面だけの話で、実際はちゃんと先を考えていました。


JOLJUとロザミアだけが知っている、全種族の運命。

地球人だけではなくパラ人にとっての運命。

その関連性に気付いたから起きた、今回のゲ・エイルのエダ誘拐。


そう、元々エダ誘拐は地球人は関係なく、ク・プリも関係なく、ロザミアが目的!

銀河連合は多少関係してくるかもしれませんので今は秘密。


エリスは「ロザミア様は巻き込まないのですか」と言っていました。JOLJUは嘘ついていたことになりますが、厳密には嘘ではなく、JOLJU自身はエダ誘拐の助けをロザミアに求めたわけではありません。あくまで教えただけで、どうするかの判断むはロザミアに委ねています。もっとも人間観察に長けているJOLJUはロザミアが参戦してくることは知っていたと思います。


あくまで決断は人間にさせて、自分は神の立場で命令したり決断することはしないのがJOLJUです。


実はちゃんとJOLJUはゲ・エイルのことも心配して保護はしてくれてたんですよね。多少依怙贔屓はありますが。このあたりはさすがに神様。


今回の話はいろいろ鍵です!


<ラマル・トエルム>の運命が動く!

すでに第六章で拓が<ラマル・トエルム>=祐次、と確定させましたが、これは未来の話。

まだ祐次は<ラマル・トエルム>になっていません。

つまり、これからなるわけです。

間違いなく今回の事件がきっかけです。

これで祐次が宇宙側+神の世界に入ることになります。

そしてその結果は……希望とは限らない。


ロザミアの言葉が事実であれば、あえて保留にしていた過酷な侵略が、逆に始まってしまう示唆。


これはJOLJUとロザミアだけが、何があるか知っています。

この件だけはJOLJUは絶対に喋りません。


さて、エダの命運は!?

相手は<エイリアン>から<プレデター>です!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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