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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章拓編後編
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「玉砕」2

「玉砕」2



凶弾に倒れるレン!

駆けつける横島班で形勢逆転!

そこにさらなる凶報が。


姜、重傷!?


ついに拓は最後の手段!

JOLJU召喚!


そして……再会!

***




「な!」

「!!」

「…………」




 地面に倒れた拓は見た。



 さっきまで自分がいた場所に小さい体の少女がいて……ライフル弾が無慈悲に彼女の体を貫く光景を。



 レンだった。

 咄嗟に拓を突き飛ばしたレンは、拓の代わりに弾丸をその身に受けた。


 ライフル弾3発が、レンの体を貫いていった。


 噴き出す血煙の中倒れるレンの姿が、拓たちにはスローモーションのように映った。現実の光景だと、頭は認識しなかった。



 やがて彼女が地面に倒れても、拓たちは悪夢から覚めない。


 (キム)は絶叫した。




「死ね!!」



 第二射をするべく、(キム)はK3を構える。

 誰も動けない。

 その時だ。

 拓たちの背後から放たれた銃弾が、(キム)ともう一人の男の体を貫いた。



「!?」



 拓たちは振り向く。



 いつの間に到着していたのか……6台の大型SUVが接近していた。そして先頭車の助手席でM16A4カスタムを手にした横島の姿があった。



 そう、彼ら救援部隊がたった今駆けつけたのだ。



「横島さん」



 拓は驚きのあまりそれ以上言葉が出ない。


 横島は日本屈指の戦闘力を持つ男だ。200m先の路上に立つ敵を移動しながら狙撃することなど造作もないことだ。


 6台のうち4台は拓たちの傍で停車し、1台は(キム)の所に。1台は前方の陸橋のほうに向かった。



「無事か! 仲村君!」



 横島が拓の下に駆けつけ肩を掴んだとき、ようやく拓は現実に戻った。



「そこのビルにユイナ姫と大庭さんがいる! 敵はこれで殲滅したはずです! 前方300m先の陸橋に時宗と伊崎さんたちがいるはずだ! 救援を!」

「分かった。後は任せろ!」



 言われなくても知っている。実はついさっき伊崎から現状報告を受けていた。

横島は一台に念のため周囲の哨戒を命じ、車を発進させた。



「レンちゃん!! しっかり!!」


 悲鳴に近い優美の声を聞き、拓は起き上がった。


 そう、すぐ傍でレンは拓の代わりに撃たれた。今優美が駆け寄り抱き上げた所だ。

 抱き上げられたレンは微笑んだ。

 死んではいなかった。



「……よかった……拓……無事……?」


「ああ! ああ、無事だ! レン、大丈夫か!? 傷は!?」


「……すごい……衝撃……ドンって……痛くない」


 レンを見た。拓の血の気が引く。



 撃たれたのは腹の真ん中と左太股と左腕。弾は貫通している。左腕はかすり傷だが残り二箇所からは血がまるで噴水のように噴き出し、見る見る間にレンの服を真っ赤に染めていく。



 拓は目の前が真っ白になった。



 痛みを感じないのは、怪我が大きすぎて脳が痛覚を遮断してしまっているからだ。


 まだ、優美のほうが冷静だった。



「篤志君!! 来て!! 応急処置して!!」

「はい!!」


 優美は篤志が祐次から医学を学んでいる弟子であることを知っている。


 篤志は武装を全部脱ぎ、自分の着ていたトレーナーを脱ぐとレンの腹部の傷に当て、ズボンのベルトを抜いてレンの太股の傷の上を縛った。



「優美さん! 圧迫して血を止めて!! 布で上から強く押さえて!! 啓吾さん! 車の中から応急処置のバッグを!!」

「分かった!」


 応急処置セットはどの班も持っている。啓吾は自分たちのSUVに走った。


 しかし……悲劇はそれだけではなかった。


 その時拓のスマホが鳴った。無線だ。




「時宗か!?」


『やべぇー! 拓!! やべぇー!!』


「どうした!?」


『奴らのトラップにやられた! 大怪我だ!!』


 車のエンジン音が聞こえた。車で移動しているようだ。


 実は時宗と伊崎の持っていた無線機は手榴弾の爆発から逃れるときのジャンプで壊れた。今使っている無線機は迎えに行った仲間が持っていたものだ。


 時宗は無事だった。ならば誰だ!?




『姐御が重傷だ!! 俺たちを庇って!!』


「何だって!?」


 拓も青ざめた。


『拓! 伊崎だ! 俺も無事だ! 彼女は手榴弾の破片を胸に受けた! 出血は多くないが負傷は左胸だ。意識はあるがはっきりしていない! ショック状態でとても練馬まで運べない!』



「……なんだって……」



 ……運べないとは……それだけ重傷なのか……!?



 どうする!?



 どうするも何もない。練馬の前島の病院に運ぶしかない。医者は彼一人だ。だが運べないというのはどういうことか。破片を受けたということは処置は!?



 医者でない拓には分からない。


 拓は顔を上げ、腕時計を見た。


 午後11時40分。 



「……じき0時……」



 時差は……13時間! 米国東海岸は今午前10時40分で、活動時間だ。



 <京都>で言っていた。この先しばらくは宇宙船で活動していて、リアルタイムで通信が出来るかもしれない、と。



 ……あいつは的確に俺たちの動きをフォローしている。東京にいることも知っている。非常事態が起こるとすれば食料や武器がない窮地は考えづらく、戦闘関係だと医療系であることは予期している。現に過去二度は荷物の中に医療道具が入っていた。



 内科は前島がいるし内科で救急処置を行う状況は限られている。呼ぶときは外科だ。経験豊富で計算高い男だから、準備はしているはずだ。




 ……これが本当の神頼みか……!!



「時宗! ゆっくりと姜をこっちに運べ!! なんとかする!!」


 拓は叫ぶと無線機を切り、スマホのアプリのボタンを押した。

 その20秒後だ。


 ゴーッという音がしたかと思うと、何も無い空間から奴は登場した。



「オイラ! 参上!!」


 JOLJUだった。今回も背中に体より大きなリュックを背負っている。


 突然JOLJUが現れたことに、周囲は驚く。



「寿司パーティー? 鍋パーティー? それともうな重??」


 今回は何故か用意万端で突然の召還も驚いていなかった。

 その理由を、JOLJUは親切に教えてくれた。 



「今回はね! 宇宙船にいて転送信号をキャッチしたんだJO! 毎回無理やり誘拐されたんじゃあオイラもたまらんJO! 今回はエダの予感があったから呼ばれる気がして、 で祐次がこの荷物を――」


「祐次がいるんだな! 宇宙船に!!」


「へ? あ、うん。一時間くらい前から皆でク・プリの宇宙船に。今色々宇宙船の修理したり調整したりしてるんだJO。最近そういう活動してるって前言ったじゃん」


「祐次を呼び出してくれ!! 今すぐ!!」


「なんで?」



 ぐいっ! と拓はJOLJUの顔を掴んで強引にレンを見せた。



 理解したJOLJUは滑稽なほどうろたえた後、自分のスマホを取り出して大声で何か叫ぶ。



 相手は確認するまでもない。



 ビデオは別として……実際の肉声を、二ヶ月ぶりに聞いた。



『調整する。3分待て』


 紛れも無く、祐次の声だった。



「かなり危険だJO!? どうしよう!?」


『バッグの中の<D>セットを篤志に渡せ。一通り用意はしてある』


「分かったJO!!」


 JOLJUはスマホを地面に置くと、リュックの中から荷物を取り出し始めた。


 JOLJU特製の四次元リュックだ。中からは銃器、非常食、飲み物が出て、そして60cmはあるバッグが4つ出てきた。バッグには<A>から<D>のタグが付いている。


 その間に篤志が駆け寄ってきた。


 だけではなく、啓吾も。ユイナや麗美や大庭も。そして車で戻ってきた伊崎、そして時宗に抱きかかえられた姜が合流した。



 伊崎たちは突然JOLJUが現れて、あたふたしているのを見て驚いている。



 時宗はレンの負傷を見つけ、蒼白となった。



「嘘だろ!? ふざけんな!!」

「時宗! 姜はこっちに! レンちゃんのほうが重傷だ! いいか皆! よく聞いてくれ! 今から祐次が遠隔治療する! 車のライトを全部こっちに集めてくれ!」


「時宗手伝って! 血が止まんない!! 私じゃ無理!!」



 優美が悲鳴を上げる。時宗は祐次の相棒で助手をしたこともあるから、応急手当の心得がある。



「なんでもいいから布もってこい! 下に敷け! 優美、姐御の装備と服を脱がしてくれ! いや、服は切れ! 綺麗なタオルや水も集めろ!! 全員手を洗って消毒!!」



 時宗は叫ぶ。姜は戦闘班の人間が引き受け、優美と時宗は担当を交代する。


 現場は戦場から野戦病院へと変わった。


 傷口が見えるよう、二人の傷周辺の服をナイフで取り除く。


 血が溢れ続けるレンに対し、姜の傷は左胸の15cmほどの鉄片が刺さっている。場所は心臓のやや上だが、あまり出血はしていない。しかし意識は朦朧としていて呼吸が苦しそうだ。ちょっと動かすだけでも姜は苦痛で呻き声を上げる。だから抜けないしこのまま移送できなかったのだ。


 左胸部の傷だ。素人では怖くて触れない。


 篤志はJOLJUの横にいた。


 JOLJUは祐次とコンビを組んで2年、二人だけで旅を始めて1年以上だ。祐次は各地で医療行為をしてきたと言っていた。その相方をずっと務めていたのだろう、予想していたよりJOLJUは慣れた手つきで医療器具や薬を出していく。



「ええっと……確かこの<2-G>がモルヒネだJO! ええっとねー……祐次は大体一回分ずつ分けてちゃんと注射器にセットしてるから、とりあえずこれを打つんじゃなかったっけ?」


「こんな沢山のセットを祐次さんはいつも持ち歩いているんですか!?」


「そりゃあ祐次だってしょっちゅう怪我するし、しょっちゅう怪我人の手当てするから、大抵の怪我は治療できるようにバッグにセットにして入れてるんだJO! もうほとんど歩く病院だJO」



 こうして持ち歩いているのは別に拓たちの事態を予期して準備していたわけではない。北米を色々動き回る祐次は、常に救命治療が出来るセットを用意していて、それをJOLJUにも持たせているだけだ。必ず施設があるNYの病院に運べるわけではなく、往診する機会も多い。そして救急の処置の大半はALに襲われたときの外科処置か、骨折か、深刻なインフルエンザか、外傷からくる感染症だ。


 バッグの<A>が内科用、<B>が整形外科用、<C>と<D>が外科用だ。


 きっかり3分後……JOLJUのスマホから着信音が鳴った。



「拓、スマホ貸してだJO!」

「俺の?」


 理由を聞いている時間はない。拓はすぐに自分のスマホをJOLJUに手渡した。

 JOLJUはそれを少しいじった後、自分のスマホと重ね合わせた。


 ピコン、と機械音が鳴った。



「アプリ入れた! ビデオカメラの録画機能出してだJO!」

「それでどうしたらいい」

「その映像が祐次のほうに転送されて祐次が見れるJO」


 そういうとJOLJUは、今度は自分のスマホを操作した。

 そしてそれを上に向けたとき……拓たちにとって驚くべきことが起きた。


 現れたのは1.5m×1.5mの立体モニターで、そこには祐次の姿が浮かび上がっていた。




「……祐次……」



 拓たちにとって二ヶ月ぶり。祐次にとっては1年2ヶ月ぶりの再会だった。


「玉砕」2でした。



JOLJU、登場!!


そして


祐次登場!!


ついに拓編で祐次が出てきました!! 立体ホログラムの通信ですけど、それでもリアルタイムで登場です!! これで完全にクロスオーバー回!


撃たれたのはレンちゃん! そして重傷が姜!!


思えば実は伏線はありました。

この二人だけは防弾ベストを着ていません。レンは着ていましたがユイナに渡しています。

あのレンちゃんが、実は身を挺して拓を庇った!!

健気です……そして無慈悲です。


しかし祐次が限定的とはいえ召喚というところに希望が残るか!?


ついに拓編もクライマックス!


衝撃の展開がラストまでいくつかまっている!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 姐御も出血は思ったほどではなくても 相当辛そうですね レンちゃんが身を挺して前に飛び出して守ってくれた ただその犠牲はあまりにも大きくすぎるほどに・・・ 衝撃度が半端なくて読みながら震えが…
2022/06/27 19:51 クレマチス
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