「玉砕」1
「玉砕」1
ついに勝敗は決した……かに思えた。
敵陣の沈黙に不審を覚える時宗と姜。
その直後爆発!?
そして不意の襲撃を受ける拓たち。
凶弾が、ついに!
まさかの急展開!
***
午後11時38分 調布 甲州街道
銃声が止んだ。
止んでから、もう3分ほどが経過している。
敵……<朝鮮勇士同盟>の最後の勢力は、陸橋の上に土嚢を積み、背後は車を盾にして簡単だが強固な攻撃陣地を作り上げていた。
「本気で戦争モードだな。何人いる? 下からじゃあ見えねぇーな」
すでに時宗と姜は陸橋の傍まで接近して観察していた。
そして伊崎も到達している。だが合流はせず、彼はそのまま陸橋の後ろ……東側に移動していった。
あそこを攻略するには前後から挟撃するしかないが、50m以上丸見えになる。そして前後を土豪と車で遮蔽していて下の街道側からは様子が伺えない。周囲の建物は高いが、陸橋を見下ろせるような好立地な場所はなく、無理に上ってもすぐに見つかるだろう。これだけの用意をしているのだ。当然そのくらいの対策はしている、と姜が言っている。
「前後から強引突破しかねぇーか。最大でも四人だ」
幸いM4カービンが2マガジンあるし、拳銃ならまだ十分に弾がある。姜と伊崎もいる。負ける気はしない。
「…………」
「どうした姐御?」
「戦闘が始まって、20分だ」
「あっという間だぜ」
「……銃声が止んで5分……」
「くらいか?」
姜は顔を上げた。
「時宗! 援護しろ! 私が突入する!」
「待てよ姐御! 伊崎さんと連携も――」
「行くぞ!」
姜はウージーのボルトをコッキングすると右手で持ち、撃たれた腹部を左手で押さえながら駆け出した。
「おい!」
時宗はすぐに壁に凭れ、スコープを覗き構えた。連中が撃ってくればすぐに応戦するためだ。そして構えながら肩につけている無線機のボタンを押した。
「伊崎さん! 突入する! 俺は援護!」
『分かった! 俺も行く!』
予定外の突入に、時宗も伊崎も慌てて合わせる。
が……。
その結果はもっと予想外だった。
まず姜……そして15秒後、伊崎が飛び込んだ。
「…………」
「どういうことだ?」
戸惑う伊崎。すぐに援護で控えている時宗を手招きで呼んだ。
駆けつけた時宗も、何があったか知った。
そこには死体が一つしかなかった。
女だった。額を撃ちぬかれている。
「南朝鮮……韓国海軍出身の雀だ。私が入るまで<朝鮮勇士同盟>のNo2だった女だ」
「一人?」
「そんなはずねぇーぞ? 少なくともマシンガンが三丁はあったぜ!?」
最初に銃撃された時、確実に三丁はあった。運転手を狙撃した二丁、掃射用一丁だ。
遠距離で当ててきた。使われたのは自動小銃とライフルだ。
「金がいない」
そういうと姜は据え置かれたHKG21を掴み、100連発のボックスマガジンを抜いた。マガジンにはもう弾が入っていなかった。銃身は温かいが熱くはない。
「やはりそうか」
「姐御?」
「私が渡したのは500発。7.62NATO弾は他にはない。交戦して20分、あの制圧射撃の速度を考えれば、もうとっくに撃ちきって弾はない」
伊崎は死んでいる雀の身体を探った。他に肩と腕に二箇所銃創がある。
「俺たちの銃撃が当たっていたのか?」
襲撃を受けた最初の5分は双方凄まじい銃撃戦だった。300mならば5.56ミリも射程距離内で十分届く。
「待てよ。最初の乱戦の時弾に当たっていたんなら……その後は誰が撃ってたんだ?」
「金だろう。奴がいない」
「逃亡した?」
「5分くらい前までは射撃があった。今にして思えば明らかに火力は落ちていたな。しかし逃げるとしても車がいるだろう。車の音はしなかったと思うが」
無音の世界だ。音がしたらすぐに気づく。
お互い襲撃部隊を繰り出したときはまだ援護射撃があった。逃げたとしたら時宗たちが襲撃班を殲滅したと知った以降だろう。5分もないし時宗たちも近くにいて車が出て行ったのならば音は聞いたはずだ。しかしそれはなかった。
その時時宗の無線が鳴った。拓からだ。
拓が後方部隊を殲滅した事、そして横島班と連絡が取れて、後5分もしないうちに到着するらしい。
これで完全に勝敗は決した。
「どうするよ? 伊崎さん」
「逃げた……と見ていいか。とりあえずお前たちはよくやったよ。ありがとう」
伊崎は死んだ雀のポケットを触っている。何か手がかりになるものがあるかも、と思った。
その時、ふと……。
姜は見た。
地面に落ちていた、小さなピンを。
すぐに分かった。
「伊崎大臣!!」
姜が叫ぶ。
伊崎が雀の体を起こそうと掴んだのと同時だった。
伊崎の目に見えたのは……遺体の下に仕掛けられたトラップ……手榴弾だった。
よくあるトラップだ。遺体に爆弾を仕掛けて、遺体に触ると爆発する。軍人にとっては基本的な戦法だが伊崎も時宗も対人戦は素人だ。
手榴弾は、地面に転がった。
姜は伊崎と時宗を塹壕の中に突き飛ばすと、手榴弾を掴んでいた。
***
山場は越えた……そう安堵した、その直後だ。
前方の陸橋で爆発が起こった。
「何!?」
思わず振り向く拓。
優美、啓吾、篤志、レンも愕然と前方を見つめた。
拓はすぐに自分のスマホ……無線機を取り、時宗、伊崎を呼ぶ。だが返事はなかった。
「手榴弾!?」
自分たちも使ったから分かる。今のは手榴弾の爆発だ。銃声は聞こえないから交戦中使われたものではない。
「トラップか!?」
それしか考えられない。
手榴弾の爆発範囲は15から20m。物と条件によっては30mでも被害を受ける。この甲州街道の真ん中で爆発すれば建物に逃げ込まない限り巻き込まれる。
拓たちは言葉を失った。
その時だ。
路上に人影が現れた。
50m……遠くない。
<朝鮮勇士同盟>のリーダー、金と、その仲間がもう一人。二人とも自動小銃を持っていた。
二人は時宗たちの襲撃を知り、秘かに陣を脱し、拓たちが後方を迎撃している隙に闇に紛れて接近していたのだ。
「伏せろ!!」
拓は叫ぶとベレッタを抜いた。
だが金のほうが速い。拓たちは全員爆発のショックで反応が遅れた。
「死ね!! 日本人!!」
金が引き金を引いた。照準は拓に向けられていた。
間に合わない!
その時だ。
誰かが拓を突き飛ばした。
「!?」
銃声が甲州街道に鳴り響く。
鮮血が舞った。
「玉砕」1でした。
勝負あったと思ったら、まさかのダブルで反撃!?
時宗たちは爆発を受け、そして誰かか撃たれた!?
まさかの急展開です!!
実はここからが本当の山場、クライマックス!!
実は戦争編が山場ではなく、救護編が最大の見せ場です。
今度ばかりは間違いなく誰か……レギュラーキャラが被害を受けた!
だれかは分からないです。あえていいとこで次回です!
この事態は拓たちだけではどうにもなりません。医者はパーティーにはいません!
そう! ここで次回登場するのが<困ったときの定番助っ人>のあいつ!
しかしあいつが来てどうにかなるのか?
風雲急を告げる展開!
次回、被害者が判明!
ついに拓編クライマックス!
これからも「AL」をよろしくお願いします。




