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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章・拓編
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「対面」2

「対面」2


立て篭もる拓と姜。

拓は姜に世界の崩壊を教えるが、彼女は信じようとしない。

そんな状況だが、必要のため宅の話を信じ始める。

そして拓は目と鼻の先にある酒場で見知った人間を目撃する。

なんと、そこにいたのは時宗だった。

***




 拓は話した。



 世界が滅び、<AL>と呼ばれる戦闘エイリアンによって支配されていること。<AL>には確認されているだけで五種類いること。奴らに知能はなく交渉も効果はなく、動くものを猛然と襲ってくること。生き残った人類はレジスタンスとなって協力しあって戦っていること。



 勿論……姜は信じなかった。

 まともじゃない、と姜は失笑した。



「狂っているのか? 大丈夫か、日本人?」

「狂えたら楽だけど、事実なんだ」


 拓だって、この話に説得力がないことは知っている。

 拓も最初すぐには信じられなかった。友達が切り刻まれ、武装した日本人サバイバーに救出されるまでは。


「ここがどこか分かっているのか? 中国だ! いつから日本と中国大陸は陸続きになったのだ?」

「乗った飛行機が墜落した。それで彷徨っているところだ」


 さすがに宇宙船に乗っていて謎の光に包まれ、神によってテレポートで飛ばされた……という話はしなかった。これを言えば彼女はもう一言だって拓の話を信じないだろう。


「この一週間、飛行機なんて見なかったが?」

「だいぶ北だ。俺はバイクでこの町に来た。逆に尋ねるけど、君は一週間、仲間以外の人間に出会った? どこも無人だっただろ? 信じなくてもいいよ、いつか信じられるから。ただし、ALの危険だけは信じて欲しい。俺たちの敵は君じゃないし、君の敵は俺じゃない。あのALだ」

「それを信じろと?」

「任せるよ。俺だってすぐには信じられなかった。信じるまで何人も人の死を見たし戦闘も経験した。ただ現実として周囲にエイリアンが居て、考えもなしに出たら八つ裂きにあう。それだけは断言するよ」


「私が<信じた>と答えたら、どうするんだ?」


「協力してここから脱出する。その後は好きにしたらいい。祖国に帰ってもいいしどこにいったって構わない。俺に君を止める権利も理由もないしね。ただ今ここを脱出するには二人で協力することが必要だ」


「銃が一つで何が出来る?」


 拓は頷く。

 そしてブーツの内側に手を突っ込むと、小さなリボルバーを取り出した。

 銃が隠されていたことに姜は驚く。もしその気になれば拓はいつでも反撃できたということだ。


 この瞬間……初めて姜の顔から笑みが消えた。


 拓はマガジンポウチからベレッタの予備マガジンを取り出すと、その場で5発抜く。今入っているベレッタのマガジンから5発抜いた。そしてリボルバーと弾を彼女の掌に乗せた。計15発だ。



「S&W M942。38口径じゃなくて9ミリパラベラムのリボルバーだ。弾はそれで15発。俺は25発くらい。頼りないかもしれないけどないよりマシだよ」


 姜はそれを受け取る。そしてシリンダーを確認し、予備の弾をポケットの中に入れる。


 そして黙って銃口を拓の頭に向けた。

 拓は特に反応しない。どうせこうなると思っていた。

 しばらく姜は銃を向けていたが、やがて下ろした。


「いいの?」

「ここを出たら、殺す。それまで協力してやる」


 拓の話はともかく、ALが敵なのは理解した。今ここで騒げば外の奴らが飛び込んでくる。そうなると勝ち目はない。


 自由になった姜は、上着から中国産の煙草を取り出し口に咥え、ライターで火をつけた。

 大きく紫煙を吸い込んでから……煙草を拓のほうに差し出した。

 一先ず休戦……一時的な友好関係を彼女なりに示したようだ。

 拓は一本受け取った。ライターも受け取り、黙って煙草に火をつけた。

 一回吸っただけで、咽て咳き込んだ。


「貧弱だな」

「そう言わないでくれ」

 そういうと拓は苦笑する。

「人生で初めて吸う煙草なんだから」


「…………」


「こういうとき吸う煙草は旨いのかも、と思ったけど……キツいな」


 そういいながら、拓は二口目を吸った。二度目は咽なかった。






***





 それから三時間ほどが経過した。


 まだALは周囲を取り巻いていて抜け出す隙がない。


 拓と姜は交代で外の様子を見ていたが、いい案は思い浮かばない。


「夜になれば闇だ。その隙に逃げられるか?」と姜。

「無理。連中は夜目が利く。昼も夜も関係ないんだ」

「奴らの指揮官を狙って殺すのは?」

「あいつらには指揮官も兵士もない。ついでに性別もない」

「打つ手なしだな」


 そういうと姜はその場に座り込んだ。


 明らかに彼女は疲弊している。仲間を殺されただけではなさそうだ。


 ふと壁際に置かれたビニール袋を見た。中には拓がJOLJUから貰った食料が手つかずで置いてある。


「食べないのか? 腹減っているんじゃないの?」

「訓練中だ。それに米帝の食い物など誰が食うか」


 確かに全部米国の食べ物だ。米国にいたJOLJUが持っていたからそうだろう。


 そうか、サバイバル訓練中か……と納得した。彼女が軍人なのに軍服でないのはそのあたりに理由があるからか、とも思った。


 しかし空腹でこの窮地ではどうにもならない。拓が容易に組み伏せることが出来たのは、それだけ姜の体力が低下していたからだ。万全の体調ならいくら拓でも特別な訓練を受けた軍人が倒せるはずがない。


 拓は水を二口飲み、ビーフジャーキーをポケットに入れると、残っていた水とクッキーとクラッカーを姜の前に置いた。


「施しは受けん」

「施しじゃなくて買い物。煙草と交換してくれ。何本でもいい。レートは任せるよ」

「…………」

「食べてくれないと、同盟者として君の戦闘力に期待できない。困る」



 姜はしばらく考えた。そしてポケットから煙草箱を取り出し、三本だけ抜くと箱のほうを拓に投げた。まだ箱には10本ほど入っている。



「案外気前がいいな」


 拓は苦笑すると煙草を一本咥え、煙草箱を上着のポケットに入れた。


「ライターかマッチ探してくる」


 そういうと拓は二階に上がった。すぐに彼女が貪るように食べる音が聞こえ、拓は苦笑した。案外いい娘なのかもしれない。


 拓は二階でマッチを見つけた。

 そして煙草に火を点けながら、二階から外の様子を伺う。


 ALたちは全然減っていない。

 もうじき陽が暮れそうだ。夜になれば圧倒的に不利になる。



 その時だ。



 反対側の店の二階に、ぼんやりと明かりが灯っていた。


 小さな明かりが、そっと動いている。



「…………」



 14mほど先の通りの向かい側の小さな飲み屋兼食堂で『酒家』の看板がある。明かりはその二階だ。



 ……誰かいる……?


 拓がそっと窓を開けた。するとどうだろう、向こうも拓に気づき、そっと窓を開けた。


「あっ」

「あっ……」


 二人は同時に声を零した。


 そこにいたのは、ショットガンを肩に背負い煙草を咥えた、時宗だった。


 思ってもいない再会だった。



 拓は思わず声を上げそうになったが、すぐに時宗は口に手を当て「静かに」と口パクで言うと、「お前、銃ある?」とジェスチャーで問う。すぐに拓はベレッタを見せ、「2マガジン!」とジェスチャーで答えた。それを見て時宗はパイソンとショットガンを見せ両手を開き「二十!」とアピールした。三人合わせて50発ちょっとだ。


 時宗は腕時計を叩いた後片手を見せ、そして手招きすると最後に親指をグッ! と立てた。<五分したらこっちに来い!>という意味だ。そして階下にと消えた。


 何か策があるのだろう。


 拓はすぐに下の階に降りた。


 下では、姜が水を飲んでいた。


「俺の仲間がいる。すぐ向かいの酒場に」

「…………」

「五分後、合流しろ……という合図を貰った」

「そいつが指揮官か?」

「友達だ。あいつもただの大学生。ただ俺よりこの世界に慣れている優秀なレジスタンスだ。あの化物エイリアンと戦って長い」


 そういうと拓はベレッタのマガジンを新しいものに交換し、ドアの前に立った。


 姜は黙って立ち上がり、小さなリボルバーを構えた。どうやらついてくるようだ。


「俺は正面と右側。君は左側。15mだから走れば10秒かからない。自分の身を守る以外は撃たないほうがいい」

「五発しかないからな」


 リロードするような時間はない。


「君が先、俺がバックアップ。どっちがALに巻き込まれても助けない」

「もちろんだ」


 二人は時計を見た。時間はバラバラだが、5分は数えられる。


「行くぞ」


 二人は見つめあい、頷く。


 拓はドアを蹴破った。

 二人は飛び出す。


 と、同時に目の前にいた8体のALを射殺した。


 周囲にいたALが、一斉に二人を睨みつける。その数50。増えていた。

 奴らに作戦などない。敵を認識すれば群がって襲う。それだけだ。

 最初に蹴散らされた8体の穴など、すぐに埋め二人を包囲する。

 10mも進めたものではなかった。ALに行く手を阻まれ、二人の足は9mのところで止まった。


 その時だ。


 人の頭ほどある大きな塊が空を舞った。


 そしてそれが二人の頭上を飛び越えたとき、轟音が鳴り、それは砕け、爆発した。


 水だった。


 その飛沫を浴びたALは奇声を上げのたうちまわる。

 水の爆弾だ。

 人間にはなんともないが、ALにとっては致命的な攻撃だ。



「ほれ! 第二弾!」



 時宗が酒場の入り口にいた。そして足元には水の入った大きなウォーターサーバー用のボトルが3つある。その一つを掴み上げ、空に放り投げると、すかさずショットガンでそれを撃ちぬく。ボトルは強力な散弾を受け爆発したかのように破裂し水を撒く。


 拓は目の前に残った3体のALを狙撃すると姜の背中を押した。


「今のうちに走れ!!」


 姜は無言で酒場に駆け込む。拓もその後に続き駆け込んだ。


「二名様ご来店」


 時宗はニヤリと笑うと最後の6L用―のペットボトルを道路の真ん中に向かって蹴飛ばした。


「そして本日は閉店だ」


 そういうとショットガンでボトルを狙撃し、周囲を水浸しにすると酒場の中に戻り、重い鉄製のシャッターを閉めた。



「対面」2でした。



姜もこの世界の話を聞きました。信じているかどうかは怪しいですが。

そして一先ず休戦、そして共闘です。


今回時宗登場です。

まぁ時宗は横浜の事件の時、拓のすぐ後ろにいましたから、飛ばされたとしてもそれほど遠くはないわけです。

しかし時宗だって武装がいいわけではありません。横浜のときは撃ち切ってましたし。なので全然ピンチは脱していません。ちなみにプロローグのときもそうでしたが、時宗はコルト・パイソン愛用、そして長物はショットガン愛用です。使いこなせるというよりは「ヒーローぽい」っていう好みの問題ですが。


さて、合流した三人はどうなるのか!?

まだALに取り囲まれています。

しかし彼らはALとの戦闘には慣れているので、どう切り抜けるかというところです。このあたりが第一章のエダ編と違う点です。


ということで拓たちのアジアの旅はこれからです。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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