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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章拓編後編
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「襲撃」3

「襲撃」3



迷う拓。

しかし拓たちも逃げてはいけない。

全員でこの窮地を乗り越える!

拓たちの山場も始まる!

***




 正直なところ残る班の中では拓だけが<金>で、後は優美と大庭が<香車>や<桂馬>で、後は<歩>。辛うじて期待するとすれば篤志は<銀>か。そして<玉将>だが戦力にはならないユイナと麗美。この持ち駒で敵の攻勢を完全に凌がねばならない。



 今、完全に自分たちは追い詰められている。



 正直心細い。弾も足りないし、守らなければいけない人間がいる分攻防の手数も少ない。



 ……JOLJUを呼ぶか……?



 その事が一瞬拓の頭を過ぎった。

 だが辞めた。


 JOLJUはもっと戦闘に向かないし、対AL戦ならともかく対人戦はしない。JOLJUが持っている武器は本当に最後の最後の困ったときのバックアップで、戦争を突破するだけの物量はない。せめて祐次も一緒に来てくれれば一気に形勢は逆転するだろうが、それは無理なのだ。



 そう考えて、拓は思わず苦笑した。




 ……考えろ、拓……祐次が来てくれたらなんて妄想に逃げるようじゃあ思考の終了だ……!



 これは戦争であり頭脳戦だ。戦術で勝たなければ生き残れない。


 不利だが、勝負が決したわけではない。



 ……まだ王手を食らったワケじゃない! こっちだって反撃の手は打った。後は防御するだけだ!



 横島班が到着するまで耐える。


 もしくは伊崎と時宗たちが敵を掃討する。


 それが拓たちの勝利条件。逆にユイナを失えば敵を殲滅できたとしても判定負けだ。



 拓は優美と啓吾を呼んだ。



「ここよりどこかビルに入るのはどう? 少なくとも防御はしやすいよ?」と啓吾。

「今全員が逃げ込んだらこっちの攻撃が止まる。そうすると時宗や伊崎さんたちの反撃がバレる」



 時宗たちか伊崎が敵を征圧することが唯一の反撃手だ。いくら<金>の駒でも人数は少ない。バレれば伊崎たちの命も危なくなる。



「後苦しいのと今苦しいの、どっちがいい?」

「どっちも嫌な選択ね。何か考えがあるの拓?」と優美。


 拓は北側の小さなビルを指差した。

 入口のガラスドアは開いている。



「もう一回掃射すれば10秒は稼げる。まだ敵も混乱しているはずだ。今ならきっと見つからない」


 手を打つなら今しかない。


「啓吾、お前が先導してユイナさんと大庭さん、麗美さんの三人を連れてビルまで避難する。無理にこっちに戻らず監視していてくれ。俺たちはここに残って応戦を続けて連中の目を惹きつける」



 残る人間は伊崎たちのための囮だから、全員が残る必要はない。


 最低限の駒だけ残し、戦闘の出来ない肝心の<玉将>は避難させる。


 仮に拓たち囮が全滅しても、日本政府にとっては最悪の結果にはならない。時間も稼げる。麗美の言葉を借りれば拓たちが全滅しても戦略的な判定勝ちだ。


 だが、残る人間の危険度は段違いに上がる。4人しか残らない。



 拓は決断した。



「いいな!」

「…………」

「MP5を一丁持っていってくれ。残りはこっちで使う。そしてユイナさんとレミさんをどこかに隠して大庭さんに護衛を頼んでお前は警戒していてくれ。当たり前だけどALがいることも忘れるな!」


 はぐれALがひょっこり建物内に残っている……ということはよくある。常に群れで動いているわけではない。



「レンちゃんは?」

「俺のバックアップ。さすがに四人も抜けるとバレる」

「うん、分かった」


「よし。後方は篤志と優美だ。任せる」


 もう誰も安全な配置はない。


 啓吾とレンは「前に向けて銃が撃てる」程度だ。だが調達班にいた分啓吾は機転が利くし臨機応変の対応も出来、修羅場の経験も土地勘もある。その点は信頼できる。拓の補助ならばレンでも出来るしHKMP5なら使える。



「OK。僕で出来ることがあるなら何だってやるよ」


 啓吾は苦笑した。戦闘力は低いが度胸はある。伊達に前回の大規模侵攻とあの横浜事件を生き残ってはいない。


 それに、啓吾は拓の判断に絶対の信頼を置いている。


 いや、それは啓吾だけではない。全員……伊崎やユイナ、大庭たちも、拓の能力と判断力を信じている。



 この信頼感こそ、拓たちの武器だ。



「やるよ!」

「やるわ!」


「極力隠密だ。MP5は大庭さんに渡してくれ。戻ってくるときは拳銃だけだ」


 そういうと拓はトルーパーを啓吾に手渡した。ベレッタでもよかったが予備マガジンはホルスターの中だし啓吾はオートマチックが苦手だ。二丁を両手で撃てば12発は撃てるから牽制にはなる。


 啓吾は受け取り、すぐにユイナたちのところに走った。そして拓の作戦を説明する。


 彼女たちも了解した。


 その時だ。



「これ、ユイナさんに」


 レンは自分が着けていた防弾ベストを差し出した。この中で防弾ベストを着ていないのはユイナだけで、後は全員身に着けている。



「それなら俺の」

「サイズ、合わない。私だけサイズが合う」

「…………」


 拓は一瞬黙った。


 レンの危険が増す。だがユイナに防弾ベストを着せる事は必要だ。そしてレンの言うとおりサイズが違う。拓たちは日本人としては大柄で、優美と大庭も日本の平均女性より大きくサイズが1つ大きい。合わないサイズを着ていては肝心の胸部が保護できないし、レン以外はタクティカルベストやショルダーホルスター、弾薬ポーチなど装備品をその上につけていてすぐには脱げない。


 ユイナのサイズが合うのはレンだけだ。


 レンの表情には決意がある。説得は無駄だと悟った。


 言い合いをしている時間はない。それに15歳の篤志を前線で使う以上17歳のレンを子供扱いするような事態ではない。それにレンは前線の戦闘員ではない。



「頼む」

「うん」


 レンもすぐに駆け出す。


 篤志はDE357を抜いていた。



「後ろは援護します。100mなら357マグナムが届きますから」


 自動小銃の弾は貴重だ。誤魔化すだけなら何だっていい。弾が近くを着弾するだけで相手は怯む。357マグナムならば弾は届くし銃声も大きく牽制にはなる。


 優美もグロック17を抜いた。



「じゃあ前方は私。1マガジン乱射するから! 拓は警戒していて!」



 どうせ前方は何を撃っても届かず有効打にならない。連中も銃声で対応しているから連射ができれば何でも構わない。


 二人はすぐに前後に駆けた。


 拓はM4カービンの残弾を確認し、スコープのナイトモードを起動させた。



「誰も死ぬなよ! こんなところで死ぬのは馬鹿馬鹿しいから!」

「了解!」

「OK!」



 直後、前後からの銃弾が飛んできた。まだ前後の道には爆発の煙が余韻で残っている。連中も牽制しているのだろう。



「行くぞ!」



 拓は鋭く叫んだ。



 そして拓の作戦が、動き出した。


「襲撃」3でした。



一瞬出てきたJOLJUの名前!

つまり……これはあいつがまたどこかで出てくるフラグ!

実はなんだかんだいって各章で一度は拓編でも出てきているJOLJUです。拓にとっては最後の隠し駒で便利ですが戦力にはなりません。

そのくらいの総力戦です。

今までは襲撃を受けて態勢を整えるだけ、これからが反撃です。

しかし勝算はどれほどあるか……それは拓にもわかりません。

ある意味AL相手にする場合は計算しやすいです。今回は人間相手、敵の攻撃力がどこまで続くかわかりません。むしろ焦っているのは敵のほうでしょう。援軍が到着すれば勝敗は決しまするそれまでにユイナを再奪取するか皆殺しにするか。


敵も必死です。


調布戦争編、本格突入!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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