表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章・拓編
29/394

「対面」1

「対面」1



無人の村を見つけた拓。

村の通りには死体が。

そして突然襲われ何者かに拘束された拓。

現れたのは、北朝鮮軍兵士を名乗る女だった。

***



「…………」



 頭が痛む。視界は真っ暗だ。


 拓は動けなかった。


 両手はしっかりと縛られ、麻袋を被せられているから何がどうなっているのかさっぱり分からない。


 1時間ほど前だ。


 ボロボロのバイクで移動していた拓は、激しい銃声を聞き、足を止めた。



 そして拓は無人の村を見つけた。

 ただ惨劇はすでに起きていた。


 数人の遺体と飛び散る血。そして至る所に散らばっている薬莢と自動小銃。


 死んで間もない。戦闘はついさっき終えたばかりのようだ。

 死体は4人で、農民らしいが、農民がどうしてAK47MSやVZ61スコーピオンを持っているのだろう?


 

 拓はホルスターからベレッタを抜くと、そっと歩き出す。


 <AL>はどこかにいるようだ。特有の奇声が微かに聞こえる。

 村の中の中心街に入ったときだ。近くの民家で物音がした。


「誰かいるのか?」


 拓が銃を構えたまま店内に入ったとき……突然後頭部に衝撃が走り、その場に倒れた。



 そして、今に至る。




***





「誰か知らないが、俺は敵じゃない」


 拓は頭を振りながら言う。人の気配は近くに感じる。

 何度か問いかけたとき、ようやく頭に被せられた麻袋が外された。


 そこにいたのは、若い女性だ。


 20代前半か……黒く長い髪を耳の後ろで束ねている。服装は黒のトレーナーにカーキ色のズボンといった地味で粗末な格好だ。美人といっていいが、化粧っ気は全くなかった。



 ……中国の生存者か……と思ったが、彼女が纏う鋭い殺気は只者ではない。



「ようやく尻尾を見せたな、ヤンキー!」


 彼女の口から出た言葉は、英語だった。


「俺は米軍じゃないよ」

 

 拓も英語で返す。幸い英語は得意で会話は出来る。


 女は一笑する。と同時に拓を殴った。そして首から下げてあるペンダントを掴む。


 ドッグ・タグだ。



「認識票を身に付け、米軍の刻印の入ったベレッタM9を持っている! 装備はみんな米軍仕様だ。兵士でないなら何者だ?」




 ……ああ、こりゃあ誤解は解けないぞ……。



 認識票とベレッタM9だけではない。拓の上着、ズボン、ブーツ、全て米軍のマークが入っている。日本で戦うため選んだ装備で全て米軍基地から調達した。そして今英語で応答している。これでは疑われても仕方がない。



「俺は日本人。仲村 拓。こんな格好しているけど、大学生だよ」


 拓は日本語に切り替えた。だが女は動じなかった。


「面白いジョークだな。自衛隊はついに米帝と共に中国へ侵略戦争を始めたというわけか?」


 彼女はサラリと日本語で言った。イントネーションに癖はあるが、ちゃんと喋れている。


 どうやらただの兵士ではないらしい。


「あの生物兵器の監視か? 効果は絶大だったぞ、米軍のスパイめ!」

「生物兵器……ALのことか?」

「知っているじゃないか! だが捕虜の扱いは変わらん。貴様はこのまま我が祖国まで連れて行き洗いざらい喋ってもらう!」


「アンタ、軍人か? それに……」

 拓は彼女の正体に気づいた。

「北朝鮮の人間か?」


「…………」


 女は黙った。だがそれこそ間違いない、という反応だ。



 まず中国人や中国軍なら「我が祖国まで」とは言わない。ここは広東省で中国で国内だ。


 顔立ちは日本人とよく似ている。だから東アジア人だ。韓国軍ではないとすれば北朝鮮という事になる。英語や日本語をこれほど自由に使えるということはただの兵士ではなさそうだ。


 女は答えなかった。だがここまで聞けば確認するまでもない。


 彼女の様子を見る限り、ALとの接触はあるが他の人間との接触はなさそうだ。だからこの世界がどうなったのか知らない。



「村の通りの入り口で死んでいたのは仲間か?」

「優秀な我が同志たちだ。我が軍の精鋭だった。お前たちの生物兵器に対し果敢に立ち向かい誇り高く戦って死んだ!」


 女がそう叫んだときだ。

 窓が割れた。

 そしてALが3体、飛び込んできた。声に反応したのだ。

 拓は咄嗟にその場に倒れる。ALはそれを飛び越え女兵士に飛びかかった。


 しかし相手は兵士だ。戦闘経験があり手には銃がある。ここまでALとも戦ってきた女兵士だ。すぐに襲い掛かるALに銃を向けトリガーを引いた。7発で3体を始末した。


 だが、この迎撃は周囲のALを呼び寄せる結果となった。


 ALの奇声が辺りに充満する。連中はいつの間にか取り囲んでいたのだ。


 女は窓の外を見た。見える範囲ではざっと30体。


 彼女が焦り、完全に拓から気を外したときだ。拓は拘束を解き、女兵士の足を払った。



「!?」



 砕けたガラスで、縛っていた縄を切ったのだ。


 そして瞬く間に彼女から銃を奪うと、地面に組み伏せた。元々空手二段、柔道二段で鍛えている。不意をつければ組み伏せる事くらいわけないことだ。女兵士は必死に抗ったが、長身で鍛えている拓に完全に押さえ込まれては逃げようがない。



「殺せ!」


「…………」

「それともレイプしてから殺すか!? 貴様ら――」


「生きる意志はあるか?」


「死ぬ覚悟はいつでも出来ている! 殺せ」


 拓は銃を握ると女兵士の両手を素早く紐で縛り、彼女から離れた。


 ALが4体飛び込んでくる。それをきっちり4発で仕留めると、ドアを閉め、テーブルで開いた窓を塞いだ。



「くそ! これで完全に気づいたな! 30体はいるのか」


 拓はベレッタの残弾を確認し、周囲を確認する。この店は二階建ての粗末な家で上は居住用のようだ。逃げ場はない。折角<神>から弾を貰ったが、使い切りそうだ。


 下ではALたちがガリガリとドアや窓を引っ掻いている音が聞こえる。だが強引に入ってこないのは、連中の戦闘モードがまだスイッチが入っていないからだろう。まだ第一段階のようだ。多分最初の群れと死んだ北朝鮮軍兵士はほぼ相打ちだったのだろう。その後別の群れが現れた。こいつらはまだ徘徊段階だ。


 女兵士は壁に凭れ、不敵な表情を浮かべている。


「俺は仲村 拓。あいつらは生物兵器じゃない、エイリアンだ。俺たちにとっても敵で、それと戦っている。人類同志の戦争じゃない、エイリアンの侵攻だ。信じるか?」

「信じると思うか?」

「信じるかどうかは自由だけど、信じなければ死ぬだけだよ」

「お前が殺すのだろう?」

「俺は君を殺さない」


 拓は近くに落ちているガラス片を取ると、彼女の両手を縛っていた紐を切った。


「俺は日本人で自衛官でもスパイでも軍人でも警官でもない。今はエイリアンと戦うレジスタンスだよ。装備は滅んだ米軍から拝借した。君は自由にすればいい。だけど外は今ALで溢れかえっている。出て行けば死ぬだけだ」


「…………」


「それより話を聞くなら聞きたい話はする。その上でこの状況から抜け出すのに協力してくれるなら、協力して欲しい」


「分かった。そんなに話がしたいというのなら聞いてやる」

「名前は?」

「姜 英姫(カン・ヨンヒ)。所属は答えんぞ」

「必要ないよ」



 世界が滅んだ今、国や政府など関係はない。興味もない。



 生き残るためには、この女兵士……姜の力も必要だ。

「対面」1でした。



いきなり拓ちんはピンチになっていますが、まぁそういうものです。

今回、拓ちんルートのメインキャラになる女性キャラ、姜英姫さん登場です。

まさかの北朝鮮人です。

今回の挿絵は彼女です。

実は旧バージョンとキャラデザを変えました。元々もっと地味だったのとユージと似たデザインだったので、今回のリマスターで思い切ってデザイン作り変えました。とはいえ雰囲気とかは変わりませんが。一応ヒロインになると思いますがあまりヒロイン感ないです。強いし。


とはいえ気づけばALに包囲された二人。さて、これからどうなるか……です。

拓ちんの旅はまだまだこれからです。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ