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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章エダ編
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「北へ!」

「北へ!」



まとまる作戦!

あとは動き出すだけ!


祐次たちの休暇は一か月ちょっとしかなかった。

そのことを惜しむエダ。

と……

その気持ちは祐次も同じだった。

***




 後は、飛行機だ。

 こっちはリーに心当たりがあった。


 セントタウンから20kmの南にいったところに州の軍基地がある。武器と生活物資は全て取りつくしたが、崩壊世界では無用な軍用ヘリや輸送機などは残っているという。それならばC130輸送機もあるはずだ。あの大型輸送機ならば、詰めれば130人を乗せることが出来る。弱っていても20kmの移動であればできる。乗り心地は最低だろうが、僅か2時間我慢するだけだ。


 軍用輸送機で速度は出ないが頑丈だし馬力もあり悪天候にも強い。


 その後全員で夕方まで打ち合わせを続け、ようやく計画の全貌が固まった。


 リーは結局この日はロッジに泊まることになった。


 エリスは打ち合わせが終わったあと、「色々調整と計算をしなおす。後日君たちに合流します。また会いましょう」と言って去っていった。


 リーはよほど疲れていたのか、難題に光が見えて安心したのか、夕食を食べ終わると「悪いが12時間ほど休ませてくれ」と言って笑いながら客室に入っていった。



 もしくは祐次たちだけにして、色々話し合う時間を作ってくれたつもりなのかもしれない。



 残った祐次とエダとJOLJUは、いつも通り静かな夜を迎えた。



「次から次に起きるな、事件が。ゆっくりする間もない」


 祐次はため息をつきながら寝酒のブランデーを舐めた。


「できるかな?」

 エダは温かいココアを飲んでいる。

「今回ばかりは分からん。俺も初めての体験だ」


 大西洋を素人二人で渡るより、ALの大侵攻から街を抜け出すより、今回の作戦は未確定要素が多く、ほとんど未知の冒険だ。しかも今度は何かあれば祐次たちだけでなく、130人の住民の命も失われる。責任は重大だ。そして今度に限っては、祐次に出来ることは事前の用意だけで飛び立てば祐次個人に出来ることはない。運を天に任せるだけだ。



 鍵はエダとJOLJUなのだ。



 JOLJUについては確かめようがない。

 本人は「昔似たような無茶はしたJO。でも二時間もできるかしらん? なるようになれだJO」と頼れるのか頼れないのか。


 JOLJUの操縦は作戦の根幹で大前提だから、本人がやると言っている以上信じるしかない。



「お前はいいのか?」

「うん。だってあたしも重要な要素だし」


 エダの<オルパル>も鍵の一つだ。離着陸の時は<オルパル>を使うことが作戦の大前提で、エダがいなければならない。


 本音をいえば、ここまで無茶な作戦にエダを付き合わせたくはなかった。もし<オルパル>の件がなければ、エダだけはJOLJUに頼んでヘリコプターでNYに送り届けてもらおうかとも考えた。しかし<オルパル>が必要な以上エダも来るしかない。



「だって、あたしは祐次のパートナーだもん。祐次とJOLJUが行くところなら、どこにだって行くよ」

「そうだな」


 祐次は否定しなかった。

 それを聞いてエダは思わず耳まで真っ赤に赤面して、そして微笑んだ。



 ……お前は危険だから残れ……。



 そういわれると思っていた。それも仕方がない。今回の作戦では<オルパル>以外はエダの役目はなく、本当に安全を考えるのならば、ここに残って留守を守っているほうが、祐次も安心する……と思う。



 でも、危険でも一緒に生きたい。

 離れたくない。



 パートナーだから。



「お前にも仕事があるんだ」

「本当?」

「セントタウンの人間は大分弱っている。旨いもの食わせたり励ましたり治療したり、無茶な冒険に参加する気になってもらわないと困る。そういう説得は俺よりお前のほうが得意だからな」



 祐次の能力を思い知っているNY共同体の人間や異星人たちは素直に作戦に賛同するが、初めて接触する人間たちはそうはいかない。リーがリーダーとして人望を得ていてエダのことも理解しているようだから、リーも説得するだろうが、到底不安は拭えないだろう。そういう普通の人間の不安を取り除き希望を与えることはエダのほうが遥かに向いている。



 エダにはそういうカリスマ性とアイドル性がある。リーダー向きなのだ。


 祐次は多才だが、そういったカリスマが自分にはないことを熟知している。その点でいえば物凄い神であるJOLJUもリーダー性は皆無で、この二人はリーダーには向かない。



「うん。頑張る」

「JOLJUとリーと三人でもう少し詳細を練り上げて……それから出発だ。お前は物資の整理をしてくれ。食料と医薬品をできるだけコンパクトにまとめて持てるだけ持っていく。ヘリの中には詰めないから、ネットかワイヤーでコンテナをぶら下げて運ぼう。手ぶらでいくよりは住民たちも喜ぶし安心するし信用もしてくれる」


 倉庫代わりのコンテナが三つほどある。キャンピングカーで移動するとき、車の屋根に設置する予定で調達していたものだ。アルミ製で軽く、ヘリコプターの馬力であれば一つなら持ち上げて運べるだろう。



「エリスが帰ったし……バレないうちにコンテナを改良しよっかだJO? うんとね……四次元倉庫にしちゃうから、見た目の五倍くらいは収納できるようになると思うJO」


 コンテナは民間用で3m×3mくらいの大きさだ。五倍だと丁度大型トラックのコンテナ一杯分くらいの物資になるだろう。焼け石に水だが、弱った住人たちの息を吹きかえらせる程度の食料は提供できる。調達は途中の町でスーパーマーケットかモールに寄ればいい。それで人心も掌握できる。


「お前、本当にちょくちょくズルをしているんだな」

「いいっこなしだJO。気にしちゃ負けだJO」


「本当……祐次こそ<英雄>だね♪」


 ロンドベルでエダを救った。NYでは多くの生存者を救い、多くのALを撃退し、ク・プリアンたちも助けた。一度だって見返りを求めたことはない。



「何をいってやがる。この作戦が成功して株が上がるのはニ・ソンベだ。そうなると、本当にあの男が<ラマル・トエルム>なのかもしれない」


「…………」



 エダは何も言わず、嬉しそうに微笑んだ。




 ……あたしにとっては、<英雄>は祐次だよ……!



 たとえ<ラマル・トエルム>ではなくても、他にもっとすごい英雄がいたとしても、祐次こそがエダにとっての英雄だ。



「もうちょっとゆっくり平和に過ごしたかったのに」


 JOLJUがコーラを飲みながらボヤいた。今度の作戦は準備から実施まで全てJOLJUこそ鍵だ。JOLJUは基本事件より平凡な日常が好きだ。


 エダもそれは同感だ。



 ……この幸せな生活をもう少し長く続けばよかったけど……。


 でも、この世界は祐次を必要としている。

 ならば、自分はどこまでも祐次についていくだけだ。



 と。



「もう少し、三人でのんびり過ごしたかったな。俺の休暇は一ヶ月しかなかった。怪我は治ったし息抜きはできたからいいけどな」

「…………」



 その言葉を聞いたエダの心臓は、ドキンと大きく脈打った。

 祐次も同じことを思っていたことが、衝撃的であり、何より嬉しい。



 今……三人の気持ちは一つだ。



 それはもう、仲間でも相棒でもなく……一つの家族になっているといえるかもしれない。





 ***





 二日後の1月18日。ニ・ソンベことリー=リューは十分な食料を持って先行してセントタウンに向かった。

 一人であれば飛ばせば三日ほどで着くらしい。

 スノールービルの旅だから容易ではないだろうが、そこはもう何年も一人で放浪し生きてきた男で慣れているしこのあたりの土地勘もある。


 その間祐次たちは荷物を整理したり、物資を整理したり、足りないものを近隣の町に調達しにいき天気を待った。


 出発する時の天候は決まっている。

 できるだけ大雪で天気が荒れた日だ。


 大雪の中飛べば音はかなり掻き消えるし、雨や雪が降る間、ALはゼリー状になって活動を低下させる。そのタイミングを狙うのだ。当日飛行機の避難も悪天候の日に行う。雪でカモフラージュするのだ。むろん操縦するJOLJUは相当な操縦技術が必要になるが、悪天候に飛ばすのも今回のテストだ。今回はALを避けながら飛ぶ練習と悪天候の中飛ぶ練習で、本番ではさらに雲の中を飛ぶという悪条件も加わる。


 普通は飛行中止になるような状況下を飛ぶわけだが、本人は超楽天家で操縦に関しては完璧な自信があるのか「なんとかなるJO」と暢気に笑っていた。




 1月21日。天候は早朝から大雪。風は北風が時折強く吹いている。



 この日、三人を乗せたヘリコプターはクローブコテージ・キャンプ場を飛び立った。



 今度はいつここに戻れるか分からないし、もう戻ってこないかもしれない。それはそれで構わない。こういう非常用秘密基地は何カ所か用意しておくほうがいいのだ。いつでも戻れるように、物資は大量に残して出発した。




 再び、無謀な作戦が始まろうとしている。


「北へ!」でした。



ついに祐次とエダとJOLJUの活動再開です!


最悪の悪天候に飛行機を飛ばす……また無謀なことを思いつく……。

しかし悪条件だからこそ可能かもしれない作戦です。

それくらいALは厄介だし、冬はどうにもならないものです。

何せ人も燃料もないので除雪車とか走っていないし、除雪する人はいないし、道を走る車もほとんどいないので、完全に埋もれてしまいます。


今祐次たちがいる米国北東部はほぼ北海道南部の気候。

この寒さがあり燃料の問題があるので、大体人類が住んでいる北限がこのあたりになってしまいます。これ以上北で規模の大きい村はあまりありません。


そして今回は爽やかホッコリ……ラブパート?w


もうほとんど恋人同士というより夫婦みたいな関係で結ばれているエダと祐次。

(とはいえ二人とも本人に好きだと告白していない恋人未満ですがw)

JOLJUも入れて、仲良し家族生活。


この平和な生活は、当初は春まで続く予定でした。

しかし世界は彼らをほっておかない。

こうして三人は北のバーモンドに!


ちなみに実際の避難作戦は第七章で、準備編までが六章です。


さて、実際のセントタウンの現状は!?


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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