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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章エダ編
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「世界の情勢」

「世界の情勢」



リー、エリスを加えた会議。

異星人の組織のリーダーたちで、高度な知識と情報を持っていた。

そしてもう一つ。リーが持ち込んだ難題。

鍵は……JOLJU?

***



 1月16日 NY州北部 ハイフォールズ


 午後2時34分。


 リー=リュー……ク・プリアンのリーダー、ニ・ソンベはよほど腹が減っていたのか、エダが用意したスープとおにぎりとニジマスの干物をあっという間に、旨そうに平らげた。



 その間、最低限の自己紹介は行っていた。



 自分がク・プリの司令官兼母艦艦長である事。強化して高い戦闘力を持っていること。現地調査と墜落した母艦修理のため3年半前から旅に出て、全米を放浪したという事。


 情報は豊富だった。



「ちゃんとした文明社会が残っている大規模なコミュニティーはNYとマイアミ、サンフランシスコ、シアトル、そして米軍のフォート・レオナード・ウッドだけだ。冬が寒いからかカナダやアラスカに大きな共同体はない。精々100人程度の村が点在している。南部に多い。カナダの生存者はシアトルとサンフランシスコやNYに流れたようだ。100人程度の村は北米で大体30ほどだろうか。50人以下の集団もいくつかある。他にBandit(バンデッド)みたいな荒くれ者の流浪者のキャンパーがいくつかいて各地で問題を起こしている。あの連中は精々30人くらいの集団だから取るに足らない。全米で合計すると400人くらいだろうか?」


「10個ほどの荒くれ者の馬鹿グループがいるわけだ」


「南部ほど無法者が多いな。地域の差か大都会はまだちゃんとしている。さすがに大規模共同体と敵対している馬鹿はいない。凶悪で手がつけられないような馬鹿から、話がまだ通じる連中まで色々だが、厄介なのは違いないな」


「自立自活、独立の精神は米国人だけでなく欧州人も似たようなものだ。欧州も最大で500人程度の村が各地にあるくらいで大きな集団や国はない。500人以上になると、国や政府に近い組織とふさわしいリーダーが必要だからな。無国家で無政府になると本性返りするんだろう。白人は根が狩猟民族で保守的だから外国人を嫌がる」


 狩猟民族は家族単位、民族単位で獲物を求めて各地を動く。農耕民族は農業をする関係で一つの場所にとどまり、役割分担をするので人は多い。



 もっとも祐次はあまり不快な待遇は受けなかった。医者であるという立場と日本人ということだからだろう。

 欧米人にとってアジア人でも日本人は他のアジア系より上に扱われる。これは元の日本が世界三位の先進国で悪い言い方をすれば世界的にはアジア人というより<名誉白人>的に思われているからだ。物珍しさや祐次本人の優秀さによるところも大きいが。


 その説明を聞いて、エリスが面白そうに顔を上げた。


 彼にとって地球の出来事は研究対象で当事者感覚ではない。



「そういえばアジアには大きな生存者が集団で比較的固まっていたな。インド、中国、日本……この三箇所は千以上の単位で固まっていた」


「そうなんですか?」とエダ。


「アフリカ大陸やアジア大陸西方面、南米大陸に生存者が少ないのは不思議だ。地球の人口密度と生存者の分布は比例していない。先進国が意図的に選ばれている」とエリス。


「<ハビリス>の直撃が惑星北半球だったのに関係があるのかな? 我々の船が墜落したのもほとんど北半球だ。これは偶然だが」


「この短期間に地球上全てを、もう調べたのか?」


 確かJOLJUの調べでは、エリスたちがこの太陽系にきたのはここ最近のことだ。


「勿論上陸して調べたし、生体スキャンもした。間違いない」

「<ハビリス>があるのによくスキャン出来たな」


 リーが関心を示す。ク・プリの母艦のスキャンは<ハビリス>に阻まれて、そこまで精密なスキャンは出来なかった。


 エリスの<パーツパル>はその点、銀河連合でも最新鋭艦だ。



「簡単ではなかった、とだけ言っておこう。私たちが最後にスキャンした時の地球人生存者の総数は12万6491人だった。面白いことにアフリカ大陸や南米、オーストラリア、中東、東南アジアには生存者は少なく、小規模の村があっただけだ。先進国と呼ばれる地域のほうが人は多い」


 均等に生存者がいない点はエリスも多少気にはなっていた。こういう地球規模のアクシデントは特定の地域だけにならないはずだ。もっとも途上国は物資が手に入らずALに対することができず全滅した可能性はある。武器も少ないし民度も低い。


 インフラが完全に死んだ世界でALがいる。100を切る生存者の村など一度の災禍で消滅する。定住ではなくALから逃げながらやりすごしているのだろう。それだと生存率は上がるが文明社会は築けない。


 銃と食料と水とガソリンがある事。これが生存の条件だ。


 祐次の感覚では、最低300人。そして温暖で清潔な水が豊富にあり、有能な人間がリーダーとして率いている事、近くに物資の調達できる大きな町が手付かずである事、ある程度文明社会としてのルールを持っている事、それが数年生存できる村が維持できる条件だ。


 案外都会がいい。都会のほうが物資は大量に残っているからだ。


 後、田舎はALの大規模侵攻には弱い。隠れる場所がないからだ。ALは突然湧くように発生するから見通しがいい悪いは関係がない。


 発展途上国や南半球の生存者が少ないのは、むしろ地理の関係かもしれない。



「日本は主に京都と東京に5000前後集まっている。俺が知る限り暫定でも政府を作っているのは日本だけだ。日本が優秀なわけじゃない。日本人は同調意識が強いし政治の関心も低いからな。できる人間が仕切ってくれるのならば集団生活するほうが向いているんだ」


 別に祐次は日本が褒められても誇る気はない。単なる国民性だ。それに運が良かっただけだ。もちろん賢人や国民の努力もある。最初に村上や伊崎が掌握しなければ日本もいまだ混乱の世界にあったはずだ。


「それにしても他に比べたら日本と米国は生存者が多いな。日本は何故多い?」とエリス。


 14億の中国が精々2万、3億の米国が2万もいないのに1億2千万の日本が1万ちょっとで、しかも唯一政府を作っている。



「推測だが、大陸の連中は殺しあったのもあるだろう。核を撃ち合いした馬鹿もいる」

「日本はそれがなかった?」


「島国だし銃が転がっていないから人間同士で殺しあうことは少ないからじゃないか? 他と違って外国にも行けないし、逆に来ることも少ない。結局強力な組織に集まる以外生存できない。あと、リーダーが元々有名政治家や有名人で人望が得やすかった」と祐次。


 日本が幸運だったのは優秀なリーダー格が素早く政府を作り組織化した事、あとは国民性がマッチした結果だ。生活可能な国土が限られていて島国だった点も大きい。水も豊富でインフラ復旧のノウハウもあるし、もともと災害大国で災害時のマニュアルや避難生活などの知識も行き渡っていた。


 しかし大陸ではそうはいかない。生きるため移動し、そのせいで争いも起こす。


 人類にとって一番の敵は人類。その事を神は教えているのかもしれない。


 JOLJU曰く、元々人類は25万ほど生存していたが、この9年で半分になった。6割はALに殺害されたが、4割は人類同士で殺しあって減った人口だ。4割といえば少なく思えるが約50000人は人類同士の被害だと思うと、人類はなんと愚かなのかと思う。


 リーは食事を終え、温かい紅茶を啜った。



「それはそれで興味深い話だが、俺の本題に入ってもいいか?」

「始めてくれ」

「有難う」


 こうしてリーはバーモンドのセントタウンの窮状について説明を始めた。


 住民は131人。食料はもって後一ヵ月半。雪が深く身動きは取れない。女や未成年や老人も多く、疲れきっている。もうじきガソリンや銃弾も底をつく。


 このままでは二ヵ月後には餓死するか凍死で全滅する。



「元々バーモンドは田舎だ。大都市はないし町も小さい。もう周囲100kmの町の物資は取り尽くしてないし、雪が1mは積もっていて出ることもできない。ベンジャミンはNYに迎え入れてもいいといってくれた」


「つまり、130人三ヶ月分の食料をなんとかするか、なんとかしてNYに送り届けるかということか?」


 祐次はそういうとコーヒーを啜り、しばらく考えた。


「ニューヨーク州北部にはまだ手をつけていない町があるが、三ヶ月分も集めるのは不可能だ。せめて夏ならなんとかなったかもしれんが」


 ニューヨーク州北部も雪が深く、大型トラックは動かせない。完全重装備の4WDかスノーモービルが足だ。しかもNYよりは近いとはいえセントタウンまで約500kmはある。人数は呼べず祐次たちでは集める事ができても何週間もかかる。


 物資集めは賭けだ。人員とガソリンと銃弾を消費する。手付かずの大きなショッピングセンターでも見つければ別だがそういう好条件の場所はもう取り尽されているだろう。それに見つけたとしても大型トラックで搬送することになるが、この雪が障害だ。それにそういう場所には間違いなくALもいて戦闘は避けられない。


「避難させるしかないだろうな」

「しかし大型バスに乗せたとして5台分で、この雪だと二週間はかかる。その間の食料とガソリンはない。それにこの冬では無理だ」


「ALに襲われて全滅するか凍死するのがオチだな」


 ほぼ自殺行為だ。9割は途中で死ぬ。餓死、凍死、遭難、ALによる被害でだ。


 このロッジには十分な物資があるが、それは元々3人が三ヶ月乗り越えるためのもので、全部かき集めても130人だと一週間分にしかならない。


 それに今の祐次たちがセントタウンにいくのも十分冒険だ。


 現にリーですらNYからハイフォールズまで来るのに5日かかった。


 普通ならば「不可能だ」と言い切るところだが、ここには特別な異星人たちが偶然集まっている。

 その可能性から当たることにした。

 まず祐次は話を聞いていたエリスを見る。


「全員転送でNY周辺に飛ばす、ということは出来るか?」

「無理だ。私が乗ってきた小型船の転送機はDNA登録をしていない大人数の異星人を転送させるほどの出力はない」

「エリス艦長。銀河連合の母艦の転送なら出来るのではないか?」


 リーが言う。もうリーもエリスが何者か知っている。800kmは転送距離としては近距離だし、<パーツパル>が太陽系のどこにあったとしてもすぐに駆けつけられることは分かっている。宇宙航行用の大型戦艦の転送距離はこの太陽系内全土を覆えるはずだ。


 だがエリスは首を横に振った。


「<ベッタテッド法>に触れる。現地人の現地の問題に超文明の介入は許されていない。これがALかパラの侵略というのならば別だが、現地人の現地問題に我々から進んで介入はできない。<デダブ>なら分かるだろう?」


「そうだった。<ベッタテッド法>があった。俺も随分地球人化してきて忘れてきた」


 祐次とエダは顔を見合わせる。<ベッタテッド法>の詳細は知らないが、推測は出来る。JOLJUも宇宙文明ルールで未発達文明に宇宙科学の介入が禁止されていることは散々言っていた。JOLJUは多少暴走してルール違反をするが、こいつは叱られないが組織に所属しているエリスたちは処罰対象になる。


 エリスには自然死する地球人を助ける義務も責任もない。それどころかルール違反で、超文明人の介入は<神>の介入とレベルは変わらない禁則事項だ。人類が生態観察で野生動物を調査していて、弱っていく自然動物を人間の都合で助けたりしないのと理屈は近いのかもしれない。


 だが、祐次もエダは知ってしまったからには見捨てるのも気が引ける。

 祐次たちにとっては同じ地球人の問題だ。



「おいJOLJU。なんとかしろ」


 祐次は横でクッキーを貪り食べているJOLJUを小突いた。エリスは元々当てにしていない。なんとかできるとすればこのルール度外視の超生命体だけだ。


 神の力ではなく、頼るのは自前の知力と科学力だ。


 JOLJUは食べる手を止めた。



「今 地球にあるモノでなんとかする分には<ベッタテッド法>には触れないよね? ク・プリの墜落船の転送機はともかくフォーファードはなんとかなるんじゃないかだJO? フォーファードはもうオイラもク・プリも何度か地球人用に使ったから」


 その手しかないか、と祐次も思う。

 現地人の知らないところで祐次たちが作って出所をいわず運べば現地人たちは異星人の存在を知られずに済む。


 これは日本でもNYでもやったから、その<ベッタテッド法>にギリギリ抵触しないのだろう。


「世界の情勢」でした。



今回は世界情勢がちょっと分かる話。

北米はリーが見て歩いて知った知識。

エリスは超科学で調べた情報。

どちらも今の地球人には知ることができなかった貴重な情報ですが、それだけ祐次は特別だということです。


そして後半は本題のリーの難題。

バーモンド住民の避難。

これの鍵はJOLJU!

ぬぼーっとして神の力は使わなくてもIQ3000ですからね。滅多に頭を働かせませんが。

ということで珍しくJOLJU活躍か!?


こうして始まるバーモンド救出編!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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