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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章エダ編
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「鍵は黒部祐次」

「鍵は黒部祐次」



情報交換をするリー。

そこで知ったJOLJUの脱出案。

彼らク・プリにわずかに希望が灯る。

しかしどうしてJOLJUが地球人の味方になったのか。

鍵は黒部祐次!?

***




 すぐにク・プリアン全員が集まり、まずは生きていたリーダーの生存を喜んだ後、それぞれ知っている情報の交換となった。


 ド・ドルトオが語ったのは、レ・ギレタルは生きて日本に向かっていること。日本にはサ・ジリニ他計3人のク・プリアンが保護されている事。そしてもっとも重要な、JOLJUが提示したテラ星系脱出方法だ。



「成程、ブラックホールによるワームホール・ワープか。それならば我々の船にワープ・コアがなくても一度はワープができる。確かにこの星系を脱出できれば救難信号が出せる」

「可能でしょうか?」

「母艦のワープ・コア地球を機材では修理することは困難だ。少なくとも自力でワープするより確実だと思う。JOLJUは我々を助けてくれるということか?」


「真意は測りかねます。<デダブ>の意見は?」


「それは本人に確認するしかない。ただ以前と違って敵ではないというだけでも我々にとっては幸運だ。それにJOLJUが可能だといったのであれば、技術的な問題はない。裏もないだろう、LV2の超生命体は我々を騙しても何も得はない」



 これがLV5やLV4の神であれば文明干渉権があるし自我も強く、何かの経略か……考える所だが、JOLJUほどの存在になれば気にすることはない。本気のJOLJUから見ればク・プリアンの存在だって虫と変わらない。虫を騙して喜ぶ神などいない。


 それにJOLJUは今のところ神の能力を使っていないようだ。先の大侵攻でも使っているのはあくまで自前の知識と知能だけで、神としてではなく個人として動いている。それでもLV4の神に匹敵するが。


 気になるのは、このJOLJUが、ベンジャミンが英雄と呼ぶ日本人の相棒ということだ。しかも転送機やフォーファード、ヴァトスといった地球人が持たない力と知識を持っているし、宇宙世界のことも知っている。教えたのはむろんJOLJUだろうが、JOLJUは8年もの間、その事を地球人には教えなかったのに、ここに来てその日本人には教えて宇宙世界側に引き入れたという事実のほうが大きい。



 ……セントタウンの件もある。どうやらそのクロベという男に会わねばなるまい……。



 今度はリーの番だ。



 彼はベンジャミンたちには旅の目的は「北米生存者の把握のため」と言っていたが、事実は違う。彼はなんとか母艦の修理をするため、北米中を放浪していた。生存者の把握はそのついでだ。北米中にはク・プリやゲ・エイルの非常船や戦闘機などが墜落して各地に散乱している。それらの中から使える部品やエネルギーを集めて直すのが彼の任務だった。



 彼らの母艦も北米中部にある。



「<プレセ・ドガニク>は後一歩で宇宙航行が可能になる。ただしワープ・コアの回復は難しいし、何よりテラの周囲もこの星系の周囲も<ハビリス>があって突破できないし、仮に宇宙航行できるようになったとして飛び出してもすぐにALに襲われる。今度墜落したらもう直せない」



 軽微の損傷による墜落でも終わりだ。チャンスは一度しかないと思っていい。



 だが……そこには僅かに希望が生まれた。


 JOLJUが協力してくれるのであれば、<ハビリス>はなんとかしてくれるかもしれない。それにこれは買いかぶりかもしれないが、JOLJUはク・プリの母艦<プレセ・ドガニク>の修理の目処が立つと思ったから、今になってようやく脱出案を教えてくれたのかもしれない。そのくらいの洞察など本来のJOLJUの能力を考えれば現場にいかなくても造作もない。




 ……とはいえあまりJOLJUに全幅の信頼を置くのも危険だ。



 陰謀や悪意や策略という意味ではない。



 あの超生命体は、能力はともかく人格は抜けたところがありチャランポランで有名な存在だ。嘘はつかないが<神>としてはこの上なく無責任で不真面目な超生命体で、全知全能の能力を持っているくせにそれを使うことを極端に嫌い人畜無害で無能であることを楽しんでいる奴だ。JOLJU流のルールがあり、全宇宙消滅危機でもないかぎり神の能力は使わない。が、時々すごく個人的な理由で使う時もある。とにかく常識的な基準は存在しない。



 神とは思わず、すごく知能の高い最高の科学者だと思うくらいが無難だ。


 それでもLV4の神以上の能力はある。



「ところで、NYの船のフォーファードはどうだ? まだ機関は動いていたはずだが?」

「はい。自動エネルギー増幅器はまだ生きています。ただALの大侵攻があり、我々の転送の往復でエネルギーを使ってしまい、フォーファードが使えるようになるまで1パルド(50日)はかかります」


「…………」


「何か必要でしたか?」

「ハウルが作れればと思ったのだ。これはク・プリとしてではなく、リー=リューとしての問題だが。あまりハウルを地球人に与えたくはなかったが」


「ハウル自体はクロベ以外の地球人も知っているようです。JOLJUが勝手に作って日本や欧州で配布したようですが。クロベも持っていました」



 これもやらかしたのはJOLJUだ。もっとも日本でハウルの提供を申し出たのはサ・ジリニたちのほうからだったが、セッティングしたのはJOLJUだ。


 JOLJUには文句は言えない。それにこの程度は大した違反ではない。



「ハウルくらいは別にルール違反ではないからよいが」


 リーはため息をつく。リーも最後の手段としてハウルを生産して運ぶ手を考えていた。あれならば一日一つ、100人分3カ月でもそれほどの量にならずトラック一台で済んだ。トラック一台ならばなんとか運ぶことができたが、肝心のフォーファードが使えないとなればハウルの量産は出来ない。このド・ドルトオたちの家にも非常食としてハウルの備蓄はあるが、三ヶ月130人分なんて量はない。


 もし船の転送装置が生きていてエネルギーもあれば、バーモンドにハウルを転送するという手も使えたが、エネルギーがないとなるとその手も使えない。



 50日後ではセントタウンは全滅している。



「ここにハウルはどれくらいある?」

「50食ほどはあります、<デダブ>」

「15食ほど分けてもらえるか?」

「構いませんが、どうするのです?」

「俺の食料だ」


 そういうとリーはマフラーを強く首に巻きつけた。


「そのクロベという男に会いに行ってみる」


「成程。良い考えだと思います。ク・プリの<デダブ>としても得られるものはあると思います」


「どれだけ宇宙文明を知ったかも知りたいからな。地球人自体は宇宙文明に達していないが、元々の能力はけして低くない。平均すれば我々に及ばないがベンジャミンやアリシアのような、我々に匹敵する聡明な人間もいる。ベンジャミンやお前たちの話からするとクロベのテラサッテはさらに上のようだ」


「良い判断だと思います。すぐにハウルを用意いたします」



 ハウルであれば荷物はかさばらないし元もク・プリ用の食料だから食べ慣れている。この地球で生活をして9年、地球の食事にも慣れたが、今回は荷物が少ないほうがいい。



「我々も協力いたしましょうか?」


「いや、いい。テラの冬は過酷だ。強化をしていないお前たちでは命を落とす危険が大きい。それに正体が露見するのもまずい。地球人はまだ宇宙生命体の理解がなく知れば敵対心を抱く。もうク・プリアンは一人でも失うわけにはいかない。<プレセ・ドガニク>を動かすには最低10人は必要だ」


「了解です」


 頷くド・ドルトオ。

 と、何かを思い出し苦笑する。



「きっとクロベは貴方を歓迎するでしょう。貴方に会いたがっていた」

「俺に? 何故」

「<ラマル・トエルム>はご存知でしょう、<デダブ>」


「パニエメル星系の伝説の魔人か? なんでそんな伝説の魔人の名前が出てくる?」

「クロベは貴方を<ラマル・トエルム>だと思っている……かもしれません」


「どういう事だ?」


「これも興味深い話です」



 そういうとド・ドルトオは祐次から聞いた<ラマル・トエルム>の話をした。


 それを聞いたリーは複雑な顔で黙った。



 そういえば地球人に変装するとき、骨格的なデーターから東洋人に近い造形を選び、もっとも人口の多く、世界中どこにでもいる中国系の名前を名乗った。米国は基本白人の国だ。白人も源流となる出身地で民族が違う。地球の歴史についてそこまで自信がなく、妙な疑いを受けないためわざと東洋人を選んだ。


 地球人から見れば、自分は東洋人で、ク・プリとしてはかなり反則に近い強化をして戦闘力も高く、しかも放浪しながら人助けの旅をしている。



 地球人が遥か遠いパニエメル星系の伝説の魔人を知るはずがなく、この名前を最初に口にしたのはこの星系にもう一人存在する絶対的な神、<BJ>だという。<BJ>はLV3の神で文明干渉権はないが、JOLJUと違って能力を封じなくても活動権は一応ある。JOLJUは文明の中で生活するためには(自己申告の自己判断だが)能力を封じなければいけないが<BJ>は封じなくても活動できる。最もルールではなくモラルというだけだが。なので、現状この星系で一番強い能力が使える超生命体は<BJ>ということになる。


 つまりこっちは何かしら<BJ>の意図が秘められている。


 問題のクロベは、この<ラマル・トエルム>を探して世界中を旅してきたという。


 JOLJUが協力している以上、戯言ではない。実在するのだ。


 しかも徒名は<ラマル・トエルム>……つまり地球人だけの英雄ではなく、ク・プリアンにとっても英雄的存在だという推測が成り立つ。名付けたのは異星人……この場合ク・プリかゲ・エイルだ。




「…………」



 こっちは、何か秘密が隠されているかもしれない。




 どうやら神の資格をもつ者たちが何か企んでいる。




 しかしそれが何かは、非力な彼らには想像もつかない。





 鍵は……黒部祐次にある。


「鍵は黒部祐次」でした。



前半はク・プリ話+JOLJU話。

後半が祐次の話題です。


「宇宙戦争編」を公開しているのでわかると思いますが、JOLJUはもともとはク・プリの敵です。もっとも明確に敵だったというより単にロザミアのサポートをしていただけで敵意はなかったわけですが、その後助けなかったのも事実です。

そのJOLJUが地球人側につき、そしてその関係でク・プリに協力してもいい、という事がク・プリのリーにとっては大きな状況変化です。巡り巡って回ってきたジョーカー・カードです。


しかしそのジョーカーを直接握っているのは祐次!

バーモンドの件もあります。


こうして再び注目が集まる祐次!


ということで次回です。

ようやくエダと祐次とJOLJUの話。

あの大規模侵攻から脱出した三人は、その後どうしていたのか。そしてエダにはある変化が。


これからも「AL」を宜しくお願いします。

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