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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章拓編前半
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「交渉」3

「交渉」3



現れた姜は、どこかいつもと違っていた。

その雰囲気の違いに首を傾げるレン。

姜は去っていった。


そて起こる大事件とAL襲撃の報!


***




「いい家だ。それにレンも……綺麗になった」

「いい服、あるから」



 レンは今、清潔なトレーナーにコットンの短パンといった姿で、サバイバル感はなく、どこにでもいる普通の十代の女の子の私服だ。服は東京に来てから優美や杏奈と一緒に買いにいって色々な普通の服を手に入れた。普通のことだが、これもレンにとっては一ヶ月前までは考えられないことだった。

 中国で手に入る服はどれも質が悪く、頻繁に着替えられるほどの余裕もなく、どうしても丈夫で動きやすく汚れても構わないようなサバイバル重視の服ばかりだった。御洒落な服など論外だ。だが日本は違う。毎日洗いたての清潔な服を着ていられるし、欲しければ簡単に手に入る。


 日本人の生存者の女子の中には、変わらずスカートや御洒落な服を着ている者もいる。


 優美だって調達班の仕事をするときはジーパンだが、シャツは色々で毎日着替えている。少なくとも一つの服を着た切り雀ということはない。


 一方姜の服装は<京都>出発時着ていた上着と作業用ズボン。下に着ているハイネックのシャツだけはどこかで手に入れたのか別のものだったが、質素で実用一点張りだ。



「姜も、服を買えばいい。私、ポイント持っているから買える。お店は昼間ならいつでも店が開いていて使える。姜、美人なんだからいい服着れば、きっと拓や時宗たちも驚く」

「別にあいつらを喜ばせるために服を着るわけではない」


 姜は苦笑しながら答えた。


 他の人間なら睨み返す所だが、日本人のパーティーの中の外国人という共通点と、お互い特殊な境遇にあったことから、以前から姜はレンに対しては態度が優しかった。妹のように思えているのかもしれないし、元々彼女は年下の同性には優しい女性なのかもしれない。



「拓と時宗は今政府の仕事をしているから、昼間は大体出掛けている」

「拓たちは米国に行くのではなかったのか?」

「行く予定。でも、色々準備する間は日本政府の仕事をしてお金を稼ぐみたい」


「レンは違うのだな」


「そうでもない。私も働く。杏奈の世話もある。それも大事だから」


「……そうか……」



 ちょっと姜は虚空を見つめた。何かを考えた。



「拓と時宗、日本の政府の中では重要なポジションにいるみたい。色々偉い人と会っている。姜のことも届け出をしているから、姜も日本で普通に暮らせる」



 <京都>でも特別に歓待を受けたし、拓も色々上層部と話ができる立場だと言っていた。本当だったようだ。



「普通に……な」

「嬉しくない? 私は、普通に暮らせること、嬉しい」

「ありがたいと思うよ」



 そう答えた姜だが、あまり声に感情は篭っていなかった。


 今も、何か別のことを考えているようだ。



 その奇妙な雰囲気を、レンも感じ取り、首を傾げた。



「姜? ここ平和。姜もきっと馴染める」

「馴染む……か」


「姜?」


「日本に飼われて得られる平和が本当に平和かな?」


「え?」


「いや、すまない。言い過ぎたな。忘れてくれ、レン。別に私は日本を悪く言っているわけではないんだ。私もしばらく日本を見て回って知った。少なくとも秩序があり人々も争わず、今の世界で平和を維持していることは凄いことだ。そして我々外国人も同じように受け入れている。それは感謝すべきことだ」


「うん」


「私は、少し疲れているんだ。きっと」



 そういうと姜は残ったお茶を飲み干した。



 その後彼女はレンの好意を受けシャワーと簡単に食事を受けた。



 だが拓や時宗たちが戻るまで待っていれば、というレンの提案には「まだちょっと用がある。また来る」と言って遠慮し、一時間ほど滞在しただけで、またどこかに去っていった。



 レンは気になった。



 姜は去り際にこう言ったからだ。




「自分が来たことはまだ拓と時宗たちには秘密にしておいて欲しい。そのうち二人には自分で会いに行くから」



 こうして姜は消えた。




 その日の夕方……。



 日本臨時政府を震撼させる、驚愕の事件が起きた。



 徳川ユイナが何者かに誘拐されたのだ。



 赤羽事件の捜査のため、日本政府の各班は都内全域に散り、薄くなった警備の隙を疲れた誘拐で、護衛でついてきていた大庭ゆかりも倒されて軽傷を受けた。


 現場には<朝鮮勇士同盟>が残した犯行声明があり、昨日の赤羽の襲撃も連中の仕業だということが判明した。



 要求は、対馬の譲渡と朝鮮人の独立権だ。



 日本政府に緊張が走った。



 敵はALではなく、人間。しかも政治テロリストだ。



 そこに……さらに凶報が。



 約1万のALの大群が所沢で目撃された。



 ALはまっすぐ東京に向かっているという。



 恐れていたALの出現と、予想もしていなかった大事件が、同時に日本政府を襲った。



 このことを拓たちが知ったのは、午後18時過ぎのことだった。


「交渉」3でした。



いいところでCM……ではなくエダ編へ。

一旦ここで拓編は終了です。

ラストで分かった通り、拓編の後半は朝鮮系右翼テロリストのユイナ誘拐とALとの闘いになります。

ここでまた何人か重要キャラと、そして拓編最大の戦いになります。

寄りにもよって拓の相手は人間です!

ALではありません。

そして朝鮮独立派ということは姜も敵となる!?

元々北朝鮮軍軍人ですし、愛国心は強い彼女ですが、拓たちの能力も世界の崩壊も理解しているはず。そう、鍵は彼女になります!

崩壊世界でまさかの現代政治問題再燃!



さて、次回はエダ編……。

とはいえ、まずはちょっと番外的で最初はNYの話。

避難島から帰ったベンジャミンたち。冬を越すための用意の中、一つの男が現れる!

こっちも新キャラ登場! この男が<ラマル・トエルム>か!?


ついに後半戦の話も本題に。

これからも「AL」をよろしくお願いします。

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