表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第六章拓編前半
256/394

「捜査」1

「捜査」1



夜、事件は突然起きた。

謎の襲撃。

しかも相手はALではなく人間!?

一先ず現場に向かった拓たちだが……。

***





 5月2日 午後21時21分


 練馬区役所。


 伊崎はようやくこの日の仕事を終え、帰宅の準備をしていた。



「一杯やりたいねぇ」



 元々酒好きで結構飲む。バーで楽しむより居酒屋で色んな安くて旨い料理をつまみながら皆で騒ぐ酒が好きだった。しかしこの世界にもう居酒屋はない。


 特に明日は大きな用事はない。たまには飲んで過ごしても怒られないだろう。


 まだ何人か政府職員は残っている。購買部で総菜やスナック菓子でも買って誰かを誘って自宅で飲み会でもしようか……などと考えていたときだ。


「伊崎さん!」

「あれ? 宮本さん? もう帰ったと思っていたけど?」


 秘書兼相棒の宮本は、19時に仕事を終え、政府所属の女友達と一緒に帰宅した……と思っていた。


「花粉症が辛くて……薬を貰いに前島先生のところに行ったら篤志クンがいて、あの子すっごく真面目で明るくて、色々喋っていたらこんな時間になって……」


「ああ、ドイツから来たっていう拓のところの医者勉強中の少年?」


「すっごく可愛くて素直な少年ですよ! しかもハーフの美少年! 女性にも優しくて笑顔が可愛くて礼儀正しくて、それでいて知識も豊富で……持ち帰りたい!」


「一回り以上下の未成年だろ? あ、ちょっと飲んでる?」


「前島先生たちとビールを少々。あ、失礼な! 弟みたいなものですよ! それに別にエッチな悪戯なんてまだ考えて…………って! そうじゃありません! 事件です!」



「事件?」


「偵察第二班が襲われました! 2人死亡3人負傷! 6人は生存です!」


「なんだって? ALに襲われたのか?」


「それが……違うみたいです! その……銃で襲撃を受けたみたいです」


「何!?」


 伊崎の顔色が変わった。


「負傷した3人の傷は銃で撃たれたものです! 今手当て中で命は恐らく助かる見込みですが……死んだ2人は置いてきたというので……大丈夫です。そっちは拓君と時宗君が向かいました! 篤志君が無線を持っていて、夜間だったので武装していてすぐに動ける人間がいなかったので、私の判断で」


 宮本は病院にいた。だから区役所への報告より早くこの事件を知った。

 個人で無線や武装、車を持っている人間は限られている。



「いい判断だ」


「捜査ではなく遺体の回収だけです。拓君たちなら無茶な暴走はしませんし、何かあっても上手く対処すると思います」


「同感だ」



 向かったのは拓と時宗と優美の三人。

 皆戦闘力は高く夜間戦闘にも慣れているし、拓たちは個人で重武装を持っているし車も持っている。それにどうやら中国大陸で人間同士の争いも経験し、対人戦闘も知っている。ALは撃てても人を撃てる度胸がある人間は少ない。



「場所は?」



「赤羽です。駅周辺と聞いています」



 赤羽ならここから10km。拓は高性能無線機を持っているから連絡圏内だ。


 彼女がすぐに練馬区役所にいる伊崎に連絡しなかったのは、事は急ぐと判断し、彼女が拓たちに情報を伝え、独断で指示を出していたからだ。



「どうします?」

「第二班は……高谷君の班だ。高谷君は?」

「腹部を撃たれて手術中です。急所は外れているので助かりそうですが、治療中で事情は聞けません」


「警備部の夜間班を集めてくれ。俺は病院に行ってくる」



 どうやら酒を飲んではしゃぐプランはなくなったようだ。





***





 北区 赤羽駅



 無灯火のSUVが、ゆっくりと走る。


 月明かりがある。大通りであればなんとか視界は利く。


 それにライトは必要ない。対向車も飛び出す人間もいない。運転している優美と助手席の拓は、暗視スコープを頭に付けて見ている。空に雲はなく月光だけでも視界は悪くない。


 三人共、自動小銃の他に防弾チョッキをつけていた。これは時宗が自前で見つけて持っていたものだ。宮本はその事も知っていたから、拓たちに遺体の回収を依頼したのだ。


 今回は深入りはせず、遺体の回収だけが任務だ。



「第二班はこんなところで何してたんだ? 近場だぜ?」

「多分埼玉方面に偵察に行った帰りに寄ったんじゃないか? 確か伊崎さんが出している偵察圏だ。赤羽は北区一番の繁華街だし、手をつけていない個人商店は多いし大きなスーパーマーケットもあるし」

「スーパーや大型店は回収済みみたいよ?」

「だから商店街にいったのかな?」


 拓は政府が配布している地図を見つめながら答えた。


 銃撃は東口の商店街の中で、突然起きたらしい。すぐに2人が射殺され、第二班はすぐに応戦……3人が負傷し、その後逃げた。判断としては間違っていない。逃げるほうが被害は抑えられるし応援を呼べる。仲間の死は確実だった。遺体の回収はいつでも出来る。

時宗はパイソンの弾を確認する。



「犯人を見つけて俺たちが始末する?」

「とりあえず遺体の回収だけ」



 拓もヒップホルスターからコルト・トルーパーを抜いて、同じように弾を確認した。38口径が6発装填されている。



「ただし犯人がいたら、捕まえる」

「いつから俺たちは刑事になった?」

「この世界に警察が残っていたか?」



 練馬から赤羽は環七を北上すればすぐだ。飛ばせば早い。


 5分もしないうちに現場についた。拓たちは戦闘準備をしっかり整えた後、車のライトを点けた。


 周りは静かだ。人の気配も殺気は感じない。


 拓は優美にバックアップを命じ、時宗と2人で外に出た。自動小銃に付けたライトを点ける。

 2人の遺体はすぐに見つかった。路上で放置されている。




「ALもいねぇーな。襲撃しやすい場所でもねぇーぞ?」

「だな。第二班は武装していた。誰が撃つ? 強盗かな」


 拓たちは遺体の傍に寄った。すでに死後一時間は経過している。


 胸部を4発。確実に殺す目的で撃たれている。


 ぱっと見て、拓の表情は険しくなった。


 2人は丸腰だった。レッグホルスターとヒップホルスターを付けている。レッグホルスターは9ミリオート用、ヒップホルスターは警察用の38口径リボルバー用だ。

周りを見ると、数発9ミリの薬莢が落ちている。応戦したのだろう。しかし多くはない。第二班は襲撃を受けたが、すぐに撤退を決めたようだ。その判断は恐らく正しい。

が……銃がない。


 拓たちは中国や沖縄で装備を手に入れてM4系他最新の高性能銃で武装しているが、日本政府の偵察班の基本装備は自衛隊用の89式自動小銃とSIGP220だ。M16やM4系、多弾数のベレッタM9やグロックは選ばれた人間かALの襲撃時持ち出す兵器に分類されている。

拓たちの武装は拓のベレッタ以外は自前で他の班より装備がいい。


 これは拓たちの戦闘力の高さが評価されているのと、ほぼ自前の銃だからだ。




「拳銃と89式が無くなっている」



 つまり奪われたのは銃だ。自動小銃と拳銃が奪われた。


 犯人は間違いなく<人>だ。異星人という線もなくなった。



「ヤバくね、それ」

「ちょっと周囲を見てくる。お前は遺体を運んでくれ」



 そういうと拓はライトを消し、静かに歩き出した。



 嫌な予感が、拓にはあった。




「捜査」1でした。


事件発生です。

ただ調達班が襲われたのではなく、人間による銃撃です。

これが他所の国ならよくある話ですが、ここは日本。統制もとれているし銃も転がっていません。

では一体何者が?

目的は銃だけだったのか?

何か大きな事件の前ぶりか?

これが拓たちにどんな影響を及ぼすのか?


これからも「AL」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ