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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第一章・エダ編
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第一章最終話「旅立ち」

「旅立ち」


意識を取り戻したエダ。

そして全てを知る。


ついに、エダはこの町を出る決意をする。

***



 キッチンに温かい湯気が漂う。


 フライパンは二つ。一つにはベーコンとソーセージが焼かれ、一つには卵が炒られていた。


 エダはそれを三つの皿に装った。丁度米が炊けたのだろう、独特の甘い香りがキッチンに広がっている。


 とても清々しい気持ちのいい朝だ。



「ご飯だよ、祐次! JOLJU!」


 声を上げると、隣の部屋から起きたばかりの祐次とJOLJUが連なって現れた。


「いい匂いだ」

「朝ごはんはソーゼージとベーコンと炒り卵。あとはボイルド・コーンとキュウリの浅漬けだよ。キュウリは昨日塩で揉んだから食べ頃だと思う」

「ご馳走に涙が出るJO~」

「ありがたい。これで味噌汁があれば泣いていたところだ」

「ありがと♪ さ、食べよう!」


 三人は食卓についた。そして温かい朝食を三人で楽しむ。

 食事が終わる頃……エダはそっと窓の外を見つめ、呟いた。



「今日、出発?」

「ああ。今日出よう。天気もいいし出発には絶好だ」

「うん」



 エダは頷くと、静かにコーヒーを啜った。




 祐次と合流してから、一週間になろうとしている。





***




 激動の夜、エダは目覚めた。


 そして知った。


 トビィの死。仲間の死。そして自分だけが助かったという現実。


 祐次がオジサンではなくまだ若い23歳の青年医師だという事。JOLJUという可愛い異星人の相棒がいること。



 エダは泣いた。


 体中の水分が全て流れ出たのかと思うほど、泣いた。

 祐次は黙って泣かせてくれた。



 翌日、トビィやジェシカ、そして亡くなった友達全員を埋葬した。



 全員、町の中央にあるロンドベル大聖堂があるタウンパークの森の中に埋めた。ようやく全員が揃って安らぐ場所が出来た。


 ALは、祐次が来た事で脅威ではなくなった。

 祐次にとって100や200など敵ではない。

 祐次曰く500以下であれば大丈夫。1000なら慎重に迎撃、1000以上なら逃げる。それが2000以上なら脇目も考えず逃げる、という事だ。ロンドベルのALは全体で400ほどだったから、祐次は一日で壊滅させて一先ず安全を確保した。



 そして、三日目。



 祐次は重要な決断をエダに求めた。




 このままこの町に残るか、一緒について来るか。



 十分な武器があって、静かに目立たず過ごすのであれば、生きていくことは出来るかもしれない。日本や欧州ではそうやってひっそりと暮らす家族もいた。


 祐次はその話もした。


 エダは自分の人生を選ばなくてはいけない。




「俺は旅をしている。<ラマル・トエルム>と呼ばれている男を探す旅だ。危険は伴うし、この世には法も秩序もない。ALも危険だが、人間も危険だ」

「そんなに危険なの?」

「ドラマの『ザ・ウォーキング・デッド』は観たことあるか?」

「ないです。あれ、R15だもの」

「ALより、人間のほうが怖い世界だ」


 エダの答えはシンプルだった。


「通訳が必要ですよね?」

「…………」

「米国人にとって、日本語は難しいですよ?」


 つまりついていく、という事だ。

 それを聞いた祐次は苦笑した。


「じゃあ、これから俺たちは相棒だ」

「はい」

「敬語はなし。俺は戦う。どんな敵からも君を守る。だからエダ、君は俺たちのために旨い飯を作ってくれ」

「うん。分かった」

「後は俺の通訳兼助手だ。俺は医者で、きっとどこにいっても仕事をすることになる。看護師兼助手として覚えることが色々あるぞ?」

「うん。頑張る」


 そういうと二人は握手を交わした。

 それを見ていたJOLJUが「オイラもいるんだけど?」と両手を差し出したので、二人は苦笑して三人で手を握り合った。




 それからは出発の準備だ。



 医薬品、食料、水、銃に弾……できるだけ集めてシボレーの荷台に乗せる。載せきれない分は病院の一室にかためておく。いつか物資がなくなった時いつでも取りに来られるようにだ。



 祐次とJOLJUを一番喜ばせたのは、エダの家に備蓄してあった20キロの日本米と炊飯器だ。これで米の飯が食えると知り、珍しく二人は子供のようにはしゃいだ。



「できるだけ大きなリュックに着替えを詰めろ。冬服もだ。リュックは二つまで。写真は持って来ていい。ただシャンプーやリンスはともかく化粧品はやめてくれよ」

「うん。分かった」


 最後に皮肉やジョークをちょっこっと言うのが、祐次の癖らしい。


「二度と帰って来られないかもしれない」

「大丈夫。この町に引っ越して1年ちょっとで、思い出はそんな多くないから」

「今夜は家に泊まってもいいんだぞ?」

「祐次とJOLJUだけだと、晩御飯がクラッカーだけになっちゃうよ?」


 今三人は病院を拠点にしている。

 病院なら電気も水も食料もあり防御もしやすい。エダもそれが分かっている。それに自宅に帰れば、家族を失った孤独や悲しみがきっと押し寄せる。


 エダは家族三人で写った写真を一枚。母が愛用していたちょっと大きな冬用のダウンジャケット、そして父がよく着ていたTシャツを一枚選んでリュックに入れた。後は祐次のために醤油や味噌を入れ、自分の着替えを入れるだけ入れて出てきた。


 本当はもっと色々持っていきたい。父や母の思い出は、二つのリュックには収まりきらない。


 入れようと思って、やめた。

 旅の途中失うかもしれない。それは嫌だ。


 


 もう……きっと……ここに戻ることはないだろう。




 エダはロンドベルで最後の涙を、ここで拭った。




「行ってきます。お父さん、お母さん」



 日本語でそういうと、エダは頭を下げ、そして車に乗った。






***




「If I could reach the stars. Pull one down for you.(もし星に手が届くのなら、君のために1つとってあげよう)Shine it on my heart. So you could see the truth.(僕の胸で輝けば、君は僕の本当の気持ちを知ることができるだろうから)」



 車は移動する。北に向かって。

 カーミュジックを聞きながら。

 運転席には祐次、助手席にエダ。そして真ん中にJOLJU。



 シボレー・アバランチは大きい車だから、三人が並んでもなんてことはない。そしてエダの足元に当たり前のように自動小銃……ステアーAUGが置いてあった。



 どこまで行っても人はおらず、時折ALがいるだけだ。

 祐次は目前に現れ襲ってこない限りALは無視する。いちいち倒していては限がない。

 エダもそのうち風景の一部……と思えるくらい慣れてきた。


「いい曲だね」

「なんだ、エリック=クラプトンを知らないのか?」

「祐次は歌詞分かるの?」と少し意地悪に微笑むエダ。むろんジョークだ。



 ……本当に強い娘だな、もう元気になった……と、祐次は苦笑した。



「元の車の持ち主の趣味だ。クラシック・ミュージックが多い。悪くない趣味だ」


 どこかの高級住宅地で拝借した車だ。ありがたく使わせてもらっている。



「日本の曲はなさそうだね」

「時間があればCD屋に寄るか?」

「選び放題だね。日本の歌手はあるかな?」

「誰が好きなんだ?」

「日本にいたときはlisaやkokiaやいきものがたりが好きだったよ?」

「ないだろ、米国のCD屋に。お前、もしかしてアニメ好きか?」

「うん、好き。祐次は誰が好き?」

「古い洋楽と……日本人だとGLAYかな? 俺、北海道出身だから」

「アニソンならオイラのスマホにたっぷり入ってるJO?」

「却下だ。というか何故お前がアニメを知っている?」

「そりゃあ暇なときDVDで観たからだJO」


 異星人の神がアニメ好きというのはどうなのか……。


 エダはクスクスと笑う。


「でも、この曲いいね。うん、好き」


「You would think my love was really something good (そうすれば、君も僕の愛が素晴らしいものだって分かるだろう)Baby if I could change the world (ベイビー、世界を変えることができたらいいのに)」



 祐次は歌う。エダが想像していたより上手くてちょっと吃驚する。



 エダは微笑み、そして歌った。




「Change the……world!(世界を、変える)」



 そう、世界を変える旅が、今始まった。

第一章最終話「旅立ち」です。



こうしてエダと祐次(とJOLJU)はパーティーとなりました。


そう、二人の出会いはここから。

そして二人の途方もない冒険もここから。


実はこの第一章は、「本編エピソード0」でした。元々は外伝で、祐次とエダは本編では元々一緒にいるというところから話は始まっていました。なのでトビィたちは全滅が前提だったわけですが。


実はこの「AL」、作者にとって四度目のリマスターです。第二稿まではこの話は外伝でした。元々エダは主人公でもなくヒロインですらなくただのマスコット少女でした。当時は拓ちんルートだけです。


それがヒロイン&主人公に昇格して、ストーリーの重要性と「ALの世界観導入に最適」ということで、外伝だったこの話が第一章となりました。というのも拓や祐次たちはプロローグを読んでもらったら分かると思いますが、いきなりALに遭遇するのではなく、すでにある程度馴染んだところからスタートなのでALの恐怖が分かりづらいという事があり、ALとの初接触編があるエダ編が第一章となりました。


エダ・ルートは基本北米ルートです。もちろん祐次と一緒です。エダ・ルート=祐次・ルートです。


サバイバル、戦闘、無法地帯となった米国での生存者たちとの対立、そしてやがて世界の謎に迫ります。


一方拓ルート(次回からですが)はアジア・日本ルートで、どちらかといえば人間ドラマが多いルートです。ALが恐ろしい敵なのはどっちのルートでも変わりませんが、拓や祐次がいることで、今度は数の恐怖です。


尚、一点ややこしいのは時間経過です。


祐次は350日遡り、三ヵ月後がこの第一章のエダの話です。拓ルートは横浜の爆発から変化がないので、エダ・ルートは拓ルートより8ヶ月ほど前の出来事です。いつか合流する時は時間経過は一緒になります。それら時間がグチャグチャなのはちゃんと理由があって、いずれ判明するのでしばらく見守ってあげてください。



さて、これからはこのALが溢れる崩壊した世界での旅と生活と戦闘の話です。

ALとの対決だけでなく、生き残った人類同士の戦いもあります。

そしてルートですが、アジア編の拓ルートと、北米編のエダ&祐次ルートのエピソードを交互に公開していきます。

共に<ラマル・トエルム>という英雄を探すというのがクエストです。

それによって人類に希望が生まれます。


第二章は前半が拓編。後半がエダ編です。


そしていつかはこの二つのルートは合流します。

ちょっと長い大長編ですが、最後まで楽しんでもらえたらと思います。


「AL第一章」ここまでありがとうございました。

これからも「AL」をよろしくお願いします。

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