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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第五章エダ編後半
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「希望の脱出」

「希望の脱出」



絶体絶命!

その時エダは叫ぶ!

「諦めない!」と!

絶望しない、最後まで希望は捨てない、最後まで戦う!

そのエダの言葉で甦る祐次!


そして奇跡が起きた!

***


 祐次は絶望した……。


 だが……それは嫌だ! どっちも嫌だ!



「一緒だよ!」

「…………」


「諦めないで……最後まで戦おう? 二人で。それが、あたしたちらしい選択だよ?」


「…………」


「あたしたち、パートナーだよ? 最後まで一緒! あたしは、諦めない!」


「…………」


「生きるのを諦めるのは、<人類の負け>だから!」


「…………」


「祐次は、絶対に負けないよ!」


 エダが叫んだ。


「あたしたちは絶対に負けない!」



 その時、空いた扉の穴からALが2体、這い出てきた。

 祐次は決した。



 それを射殺した。



 これで銃はなくなった。



「…………」

「……祐次……」


 が……祐次はやはり常人とは違った。

 瞳に生気が戻った。


 右手にヴァトスを握り、剣を出現させると、立ち上がった。



「死ぬときは一緒だ。いいか?」

「うん!」


 エダも立ち上がった。


 不思議と……もう……恐怖も絶望もなかった。


 エダは胸のペンダントの<オルパル>を握った。


 一日二回。だが、全エネルギーを使えば最後の一回が使える。丁度30分経過したから、もう一度だけ使える。ただしこれを使えばこの<オルパル>は全エネルギーを使いきり、ただの水晶になってしまうが、二人で死ぬよりいい。使えば4分は生き永らえられる。


 もう次のALの群れが到達し、ドアを破壊し始めた。



 祐次は身構えた。



 ついにALが屋上に飛び出してきた。その数は20を超える。時間が経てば、その数は無限といっていいほど増え続け、途絶える事はない。絶対に全滅することはない。下にいるALの数は数万で今の状況では無限といっていい。



「俺から離れるな!」


 祐次が身構えた。


 両腕から血が滴り落ちる。祐次がいくら強かろうが、数分ももたないだろう。


 だが、それでも戦う!

 その時だ。



「!?」



 上空から、HKMP5Kがふわりと落ちてきた。



「え!?」


 エダは上を見上げた。


 そこには……。

 そう、真上には、無音で飛ぶ一機の小型ヘリコプターがあった。


 驚くほど近く、僅か8mほど上だ。

 上空高くでホバリングして二人を待っていて、今降下してきたのだ。


 その操縦席から、JOLJUが姿を見せた。



「JOLJU!!」


 エダの顔に笑みが浮かんだ。


 そう、JOLJUのヘリコプターだ。


 祐次もその声に気付いた。


 考えている暇はない。


 祐次はヴァトスを地面に突き刺し落ちてきたHK MP5Kを掴むと、一気にフルオートで屋上に上がってきたALを薙ぎ払っていく。


 マガジンはノーマルだが、予備マガジンが二つ金具で連結されていた。



 祐次がALを掃討している間に、JOLJUはヘリコプターを着陸させた。


 二人乗り用の小型ヘリコプターだ。音はしないが、ちゃんとローターは回り風は吹いている。



「祐次! エダ! 早く乗るJO!!」

「うん!」

「行け!」


 まずはエダが操縦席に乗り込んだ。ヘリは二人乗りの小型機だ。JOLJUがいるが、サイズ的に小さい奴だから問題ない。


 祐次は1マガジンを撃ちつくし、次のマガジンに交換すると、ALのいるいない関係なく出入り口を銃撃しながら隣の助手席に飛び乗った。


 二人が乗り込むと、JOLJUはすぐにヘリコプターを上昇させた。



「もう! 祐次、遅刻だJO!! いつもは時間厳守ってうるさいくせに! 冷や冷やだJO」

「道が混んでいたんだよ!」


 中に乗ると、外にいたときと違いヘリのローター音が煩く響いている。JOLJUが外からは音が聞こえないよう細工したようだ。


 タイプ5はエンジン音で寄ってくるから、有効な対策だ。むろん地球の科学力ではなく、これはゲ・エイルの科学力を流用した。だからルール違反ではない。



「撃墜されたんじゃなかったのか!? お前」

「あー、さっきのアレ? あれ、リモート操縦で飛ばした囮だJO。あれでタイプ4の目を逸らしたンだJO。そんでもって目立たないよう、一番小さいヘリコプターを選んだんだJO」


 全てJOLJUの計算だった。


 ALの事に関しては、誰よりもこいつは詳しい。


 そしてこう見えても凄い知能の持ち主で頭は抜群にいい。計画と計算力では誰にも負けないし、地球以上の科学の改造など造作もなくやってのける。



「じゃあ脱出するJO!!」


 JOLJUはスマホを取り出して何かいくつかボタンを押すと、操縦桿を握った。

 ヘリコプターは一旦20mほど上昇すると、ゆっくりと北上を始めた。



「タイプ4は分かったが、タイプ5はどうなる!?」

「このヘリは完全防音と重力調整と空間遮断装置とフォースバリアーを張ってるから、簡単には気付かないJO。それに、これが最後の奥の手! ビッグな陽動作戦だJO!」


 JOLJUはまだ加速させない。ヘリコプターをホバリングさせながら何かを待っていた。


 2分後だ。それは起きた。


 ニュージャージーとブルックリン南部から、何かが飛び立つのが見えた。


 一つではない。

 次々と何かが空に向かって飛んでいく。



「あれは!?」とエダ。

「飛行機だJO」

「飛行機?」

「空港にあった飛行機全部を自動発進で飛ばしたんだJO! オートでどっかに飛んでいくように。タイプ4とタイプ5はみんなそっちにいくはずだJO!」



 これこそJOLJUの奥の手、最大の陽動作戦だった。


 事前にNY周辺の国際空港……JFK空港とニューアーク空港に行き、そこにあった飛行機……ジャンボジェット機全てに細工して、ボタン一つで勝手に発進するようにセットしていたのだ。別に距離も目的地の設定も必要ない。海のほうに向かって飛ぶようセッティングすればよかった。どうせ、ものの数分もしないうちにタイプ5が群がって撃墜してしまう。それでよかった。飛行機にタイプ4とタイプ5を集めておけば、逆方向に飛ぶ細工をしたヘリコプターにALは気付かない。基本ALはまず大きい目標から狙うからだ。


 稼ぐ時間は10分でいい。それでヘリコプターは凶暴期のALの大過の包囲を突破できる。それを突破してしまえば、細工したヘリコプターを通常ALタイプ5は気付かない。


 国際空港のジャンボジェット機だ。大きくて目立つしすぐには墜落しない。囮としては絶好だ。



「発進だJO!」



 JOLJUはヘリを加速させた。


 エダと祐次は、背後で繰り広げられる飛行機の撃墜劇を見つめていた。



 それは、壮大な光景だった。



 空港から次々と飛び立っていったジャンボジェット機は、数kmも進まないうちに数百のタイプ5に取り付かれ、次々に破壊され、海に落ちていく。



「すごい」

「ほとんどピラニアだな」


 それを確認すると、JOLJUはヘリを急加速させた。


 飛行機群は海、JOLJUのヘリコプターは逆方向の北。飛行機の数は十数機あり、ALは全て飛行機のほうに向かったので、小さいJOLJUのヘリコプターには気付かれない。方向もちゃんと計算されていて、全て南東の大西洋に向かって飛んでいるから避難した島のほうには向かわない。

JOLJUの作戦勝ちだ。


 ヘリは一気にマンハッタン上空を抜けていく。

 この小型ヘリの速度は約240km……NY市をあっという間に通り過ぎていった。


 5分も飛べばNY市を抜ける。すぐに安全圏だ。ALは凶暴期でマンハッタンに集まっていた分その包囲網を抜ければALはかなり少なくなる。細工したヘリコプターに気づくことはない。


 科学技術に制限があるとはいっても、ALをもっとも知っているJOLJUがカスタムしたヘリコプターだ。絶対ではないが、今の状況ならばまずALに見つからない。


 JOLJUのスマホにはALレーダーがある。群れを避けていけば一時間か二時間くらいならばなんとかなる。


 10分も飛ぶと、大都会から自然と住宅街中心の風景に変わり、ALの姿もほとんど見えなくなった。



 助かった。

 祐次とエダは、その事をようやく実感した。


 と同時に、疲れが一気に押し寄せ、二人共座席に沈むようにもたれこんだ。


 背後では、10機以上の飛行機が、次々と襲われ、海に沈んでいった。


 脱出が確定した今、その光景も、ある種の爽快さがあった。まるで祭りのような騒ぎだ。まさかこんなに派手な脱出劇になるとは思ってもいなかった。



「JOLJU。スマホを貸せ」

「JO?」

「別れの挨拶だ」


 今にも倒れこみそうな疲労だが、言っておかなければならない。


 祐次はJOLJUのスマホを受け取り、無線機機能を立ち上げると、避難島にいるベンジャミンを呼び出した。JOLJUの無線は他の無線より効果範囲が広いから、離れても通じる。



『クロベか!? なんだこの騒ぎは!?』


 ベンジャミンたちからも、この派手なジャンボジェット機の撃墜風景は見えている。


「ベン。俺たちは無事NYを脱出した。今ヘリコプターで移動中だ。北部にある秘密のキャンプ場の隠れ家に避難する。だから心配はいらない」


『無事なのか!?』


「ああ。俺もエダも無事だ。ただ、俺はちょっと傷だらけで、療養が必要かもしれん。エダは無事だ。これからは雪も降るし、冬は動けないと思う。落ち着いたらNYに帰ってくる。多分な」


『分かった。こっちの事は俺たちに任せろ』


「皆を頼む」


『お前たちもな。無事を祈る』


 報告は終わった。


 祐次は数秒沈黙してから、そっと別れを告げた。



「じゃあな」


『帰ってこいよ? 待っているからな。お前は俺たちが誇る仲間で英雄だ』


「そっちも無理はするなよ。元気でな」


 祐次は無線を切った。


 もうじきNY都市圏を出る。どうせもう避難島には行かない。あっちの状況を聞いても仕方がないし、無事脱出できたことが伝えられたらそれでいい。


 この怪我もあるし、これから冬本番になる。雪の多い北部に避難するから、容易に戻ってくることはできないだろう。



「すごい」


 エダは遠くなったマンハッタンの街を見て呟いた。


 街は、真っ赤に染まった凶暴期のALと埋め尽くされている。さらにJOLJUが囮で使った爆発の爆炎と黒煙で、まるで戦場のようだ。



 いや、まさに空前といっていいほどの規模の戦争だった。



 NYは、街としては壊滅した。



 あの中を戦いながら進んできた事を思うと、どれほど過酷で激しい戦いだったか。



 この中から脱出できたなんて、奇跡というしかない。


「希望の脱出」でした!



クライマックス!

脱出!


そう、JOLJUは無事で、ちゃんと上空にいました。真上だから見えなかっただけです。

しかし二人が自害したらどうしていたのか……まぁJOLJUだって全て見えているわけではないですし二人の会話が聞こえているわけではないですし、ALがいる間は降りられないといっていましたし。


ということで二人はJOLJUと共に脱出です。


そしてJOLJUの大規模囮作戦!

自動操縦でとにかくジャンボジェット機を海に飛ばして襲わせて、その間に逃げる!

これは実は一か月くらい前からJOLJUがこっそり用意していた作戦です。実はこいつ、他にもいくつかNYに囮作戦をこっそり用意してたりします。それは後に判明します。見た目と違ってすごく有能ですw


これでクライマックスも完了です。


次回最終話!

エダたちの今後と、最後のロザミアが出てきます。

エダたちのシーンはぶっちゃけクライマックスが長いので二分割したものですが、ロザミアのシーンはエピローグで前半のまとめと後半の伏線、布石のようなシーンです。

後半部は、エダたちはサバイバルというより完全SF編に突入します!


さて、前半も次回がラスト!


でも物語はここが折り返し地点です。

本当に長い物語ですが最後まで楽しんでもらえればと思います。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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