「その絶望の中」
「その絶望の中」
エダの力でALの動きが止まる!
その中を一時避難すべく駆けるエダと祐次。
時間は4分!
時間はギリギリ!
そしてついに光子爆弾、爆発!
***
「<トルザ・テカ・ドラ>」
エダが唱えた瞬間、<オルパル>から凄まじい光が起きた。
機能停止……といったらいいのか……その光を浴びたALが、ピタッと停止した。
停止したのは周囲半径約40mのALで、その外側のALは動いているが、普段と違い襲い掛かってくる様子はなく、遠巻きを無関心そうに動いている。
「すごい」
祐次は目を見開いた。
自分とエダ……いや、エダを中心に、ALが全て停止した。
ALに詳しい祐次だが、こういう光景は初めてだ。
「今のうちだよ! 行こう、祐次!」
「……動いて大丈夫なのか……?」
「うん。さっきデズリーたちといる時使ったけど、あたしと一緒なら大丈夫だった。でも4分しか効果がないの。それに一日に二回しか使えない」
よく見れば……半径40mあたりまで、何か光の波紋のようなものがうっすらと見える。この範囲内のALは動きが完全に停止するようだ。エダが動くと、この光のバリアーのようなものも動いた。
エダと祐次は、それぞれ銃を構えた状態で進んでいく。
小学校までは、1ブロックちょっとある。
最初はゆっくりと歩いていたが、ALが反応しないことを確認すると、二人の足は早歩きになった。
「4分まで止まるんだな?」
「うん。一気に解けるんじゃなくて、段々範囲が狭まって半径10mくらいになったとき時間が切れて、ぱっと途切れる感じ。でも、それでもすぐには飛び掛ってこなくてゆっくり反応する感じだった。多分4分20秒くらいまでは大丈夫」
「それはお前が第二目的対象だからかもな」
「第二?」
「ALは子供より大人に反応する。デズリーたちといたのなら、お前に反応したんじゃなくデズリーたちに反応したんだ」
「そっか」
さっきがそうだった。
さっきはそれでパニックを起こしたミレインが走り出し、それに反応してALは一気に凶暴化した。そしてエダがミレインを庇って負傷した。エダはともかくデズリーとミレインは第一目標対象だ。
だが、今回は二度目だし、相棒は祐次だ。
対ALの知識と戦闘力にかけてはエダが知る限り世界一の男で、どんな時でも冷静さを失う事はない。
祐次は腕時計を見る。ストップウォッチ機能付きで、しっかりタイムを計っている。
「ギリギリだな。学校に飛び込むときは戦闘になる」
「……うん……」
「このあたりの施設の出入り口は開いているはずだ。俺たちが飛び込んだ4分後にJOLJUが爆弾を撃ち込んで大騒ぎになる。窓の近くや建物の外側、一階は危険だ。二階以上で、できるだけ建物の真ん中で、周りに窓のない場所だな。教室より倉庫か、もしくは音楽室か」
このあたりはNY共同体の生活圏内で、万が一ALが現れたときに逃げ込めるよう、鍵はかかっていない。
祐次は、やや足を速めた。
が……祐次がエダから少しでも離れると、ALは反応し、動く。襲ってはこないが。
あくまでエダが<AL避け>の対象で、祐次はオマケ……ということのようだ。
「JOLJUがDNA登録をしていたの。だから基本はあたしだけを襲わない……みたいなんだけど、多分、あたしを中心に半径何十mかは攻撃しない状態になっちゃうみたい」
「異星人のアイテムだからな」
祐次が使っているヴァトスもDNA登録をした。祐次以外の人間が触っても剣は出現しない。それどころか、敵対者が触ると毒針が出る。DNAで使用者を登録することが異星人の科学の基本らしい。
残り2分だ。
小学校の正門が見えた。
二人は早歩きから駆け足に変わった。
「エダ。残り30秒になったら、お前は先に校内に飛び込め。そして戸を開けて俺を待て」
「祐次は?」
「周辺を蹴散らす。今は止まっていても、動き出せば見えているだけでも数百はいる。ギリギリだとその<オルパル>の効果が切れた瞬間、中にも入ってくる。俺は周りを蹴散らすから、先に入ってどこに逃げたらいいか見つけておいてくれ」
「分かった!」
3分が経過した。
少しずつ光のバリアーは縮まってきた。
それでもALには何かしら影響があるのか、すぐには戦闘モードにはならない。だが、それもこっちが撃つまでの事だ。こっちが攻撃をしたり走り出せば、すぐに反応して動き出す。
祐次はM4CQBのセレクターをフルオートにセットして肩に担ぐと、ヴァトスを取り、剣を出現させた。
残り1分を切った。
エダは走り出す。それに合わせて祐次も駆ける。
駆けながら、周囲にいたALを片っ端から撫で斬りにしていく。
ALは反応を始めたが、まだ影響が残っているのか、すぐには飛び掛ってこない。その隙に祐次はできるだけ周りのALを切り倒していく。
そして正門前。
エダが先行し、祐次がそこに残る事で祐次が<AL避け>の範囲から外れた。
ALが反応して動き出した。
祐次はすぐにヴァトスを元に戻すと、担いでいたM4CQBを掴み、フルオートで薙ぎ倒していく。
もうどこに撃ってもどれかに当たるほどALだらけだが、祐次は的確に近くのALから素早く倒していく。マガジンは500連発の特別製で、数分は弾切れを気にしなくてもいい。瞬く間に周囲のALは消滅し、大きく開けた。
すぐに遠くにいるALも気付き、祐次に向かってくるが、その隙に祐次は正門を閉め、迎撃しながら小学校の正面玄関に向かった。
周囲50m以内のALを完全に制圧すると、祐次も学校の玄関に飛び込んだ。そして飛び込むとすぐに大きなドアを閉めた。
中で、エダが入口の近くにあった校内案内地図を睨んでいた。
「祐次! 二階に音楽室があるよ! 校舎のほぼ中央! 階段登ってすぐ!」
「行け! もう残り2分だ!」
「祐次、四階にITルームも――」
エダが階段のところで振り返ったときだ。祐次はエダの後ろにALタイプ1の姿を見た。
エダは祐次のほうを見ていて気付いていない。
「後ろ!!」
祐次は叫ぶと、懐からDE44を抜いた。が、エダのすぐ後ろで撃てない。
咄嗟にエダを掴み、自分のほうに抱き寄せ、ALとの間に入った。
「祐次!!」
ALがぶつかるのと、祐次が背面撃ちでALを撃ち抜いたのは、ほとんど同時だった。
鮮血が散った!
祐次はエダを抱きしめたまま転がり、階段の先を見た。ALが1体だけとは限らない。
予想通り、階段と踊り場に、計4体のタイプ1がいた。
祐次はそれを一DEの6連射で、一瞬で倒した。
「祐次!!」
エダは起き上がって叫ぶ。すぐに床に散った鮮血が目に入り、顔色が変わった。
祐次は起き上がった。
レザージャケットの左腕の部分が大きく裂け、胸と腹の二箇所のシャツが裂け、血が滲んでいる。一番大きな傷は腕で、血が指先まで滴っている。
だが祐次本人は顔色一つ変えない。
「かすり傷だ」
「腕! 治療しないと!」
「残り40秒だ! いいから行くぞ! ちょっと切れただけだ、動くし問題ない。屋内だからって油断するな! 走れ!」
祐次は傷口など頭になく、エダの背中を押すと駆け出した。今度はエダがそれに続く。
二人は駆けた。
手当てなどしている時間はない。
<ケリン・レザド>の爆発力を、祐次はよく知っている。
戦術小型核爆弾並といったが、核爆弾と違う化学反応を起こし、炎や熱波や熱線はないが衝撃波はかなり強烈だ。JOLJUは陽動用と言っていたので、威力は街を破壊しない程度には調整しているのだろうが、かなり強力な大爆発が起こる事に違いはない。
幸い、他にALはいなかった。
二人が音楽室に飛び込んだのは、もう予定時間15秒前だった。
祐次はエダを掴むと、教壇の中に飛び込み、そして強く抱きしめた。
その直後だ。
閃光が走ったかと思うと、次の瞬間、イースト川の真ん中で、青白い巨大な爆発が発生し、その衝撃波がNY全土を襲った。
「その絶望の中」でした。
正しくは二回目ですが、描写としては初めてになる<オルパル>です。
本当にALは動きません。
この反応……よくみてみると、ロザミアのときと同じですね。ロザミアに対しても機能停止します。一方同じ襲われないのがJOLJUですが、JOLJUの場合は攻撃対象ではないので気づかれない、という感じでALも自然に動いてはいます。
祐次負傷!
祐次、最強キャラですが割としょっちゅう怪我しますね。その分無理しすぎているだけですが。普通の人間なら死んでいるところを負傷で済んでいる、くらいです。他のキャラと違い祐次だけは自分で治療できる分他のキャラより死ににくいですが。
そしてついに放たれた光子爆弾!
これでNYは大津波が襲うのでALの隙はできますが、時間もない!
二人は果たして脱出できるのか!?
これからも「AL」を宜しくお願いします。




