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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第五章エダ編後半
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「脱出プラン」

「脱出プラン」



一時間は動けないエダと祐次。

もう用意していた脱出プランはない。

残るのはJOLJUの脱出プラン、ただ一つ。

しかし、それも時間制限のあるもの。

猶予は2時間。

そして目標は国連ビル!

***




「でも……祐次、避難は?」


「……もう1時を過ぎた。最後の避難船もデズリーたちの非常時用のモーターボートも出ただろう。探せばまだ船はあるかもしれんが、そんな時間はない」



 下手に船で移動していてALに見つかり、避難島におびき寄せてしまったらNY共同体全員の避難の意味がなくなる。それにリバーパークの基地周辺にはもう船がないことは分かっている。


 それに一時間もここにいれば、基地周辺までALは一杯だ。



「大丈夫なの?」

「だからプランBだ」


 祐次はエダの血色がよくなったのを確認し、上着のポケットから無線機を取り出した。


 相手は避難島のリチャードだった。


 祐次からの連絡ということで、最初リチャードは驚いたが、祐次は構わず報告を始めた。


 ベンジャミンが負傷している事。その容態と今後の処置を伝え、続いてボートで向かっているデズリーとミレインのことも伝えた。


 そして最も重要な事を告げた。



「俺とエダは乗っていない。まだマンハッタンだが、自力で脱出する。島には行かないと思う。死ぬつもりもない。なんとかする。だから救援はいらん」


 リチャードは驚き、色々抗議をしたが、祐次は一方的に「また連絡する。生きろよ」と言って、無線を切った。


 すぐに祐次は次の相手に無線を繋げた。

 今度はJOLJUだ。



「エダは救出した。怪我をして治療中だ。もうお前の脱出プランしかない」


 周囲のALの数は尋常ではない。もう数万がマンハッタンに雪崩れ込んでいる。どこかに一日二日避難して過ごす事も、用意をしていないから不可能に近い。



『そういうと思って、プランBに移行したところだJO! で、いい話と悪い話があるJO!』


「なんだ?」


『オイラ、後15分でゲ・エイル船から出る~! ヘリコプターを取りにいって色々細工してくるんだけど……スマホは当分使えなくなるから連絡が取れないJO』


「なんで?」


『このスマホを改造道具で使うからだもん。そんでもってメッチャ忙しいから祐次たちのサポートはできないJO。移動中はまだしばらくは通じるけど。大丈夫?』


 ゲ・エイルの船を出れば、もう異星人の船のシステムは使えない。


 つまり反則的な脱出案はなくなる。


 ヘリコプターもただ飛ばせばいい訳ではない。タイプ5対応の改造が必要で、そのためにスマホを使うのだろう。通信はできなくなる。



「仕方ない。で? そのプランは?」



『んーと……今午後1時10分かぁ~……んー……んー……ぴったり午後3時に、オイラがヘリコプターで救出に行くJO! でもどこかいい場所あるかだJO? 高いビルの屋上で、ALがいなくて…………あ! 国連本部ビル! あそこならそこからちょっとしか離れてないし、建物も壊れてないし、陽動作戦の範囲外だし、目立つビルでオイラも知ってるトコだし、見つけられると思うJO!! 屋上で回収するJO』


「国連本部ビルだな?」


 国連本部ビルは、イースト川沿いのミッドタウンにある。繁華街から僅かに外れているし、先日のロングアイランド殲滅作戦の爆発被害も受けなかった。そして元々国際的な組織の大きなビルで、屋上は広く、ヘリコプターの離着陸も可能だ。先日の作戦でJOLJUも下見をしているし、ヘリコプターで回収するならば理想的な場所だ。

確かに遠くはないし目立つ場所でいいポイントだが、ここから4kmちょっとはある。


 車があれば別だが、徒歩でいくには少し遠い。


 しかしハーレム方面にはヘリが降りられる目立つビルはないし、ミッドタウンは先日の作戦で廃墟になったから、ここしかない。JOLJUは多少方向音痴なところがあり、NYに詳しいわけでもない。



 タイプ4やタイプ5が上空にいるから、あまり悠長にヘリを飛ばすことはできない。最短距離を最短時間で救助するのが条件だ。


 しかも、ただ迎えに来るだけではなかった。



『ちょっとAL対策とALの陽動の仕込みがあって、それを3時丁度にセットして作動させるから、遅れたらこの作戦もオジャンだJO! タイプ4が出現してるから陽動がいるの! 後、難しいかもしれないけど、屋上にALは集めないでだJO! ALに見つかったら台無しになっちゃうから! もうホントにこれが最後のプランだJO!』



「つまり3時までに国連本部ビルの屋上に行って、しかもALを寄せ付けるな、ということか?」


『だJO』


「もうハーレムはALだらけだ。あそこまで4kmちょっとはある。外にも出られそうにないぞ」

 もう1000や2000ではない。数万といった数のALが入り込んでいる。いくら祐次が強くても倒しきれないし、第一そんなに弾がない。


 平時ならともかく、このALだらけの中そこまで進むのは至難だ。


 だがやるしかない。


 自力突破は不可能になり、避難案は崩れ、これだけ充満した中では篭城もできず、転送プランも無理……となれば、JOLJUが最後に用意したヘリコプターの脱出プランしか残っていない。



『マンハッタンの南エリアのビルに陽動のための爆弾を仕掛けてあるJO。爆発させたら、少しはこっちにおびき寄せる事ができるJO。もう爆発させよっか?』


「俺たちは一時間は動けん。今じゃあ早い。2時に爆破させることはできるか?」


『わかったJO。じゃあタイマーでその時間にセットしておくJO! くれぐれも遅れないでだJO? 一応細工するし色々誤魔化すけど、完璧にはできないから長時間ヘリコプターを飛ばしてると見つかるJO。時間厳守、3時ピッタリ! 遅刻は駄目だJO!』


 3時を超えると、ALは完全にマンハッタンに充満し、どんなに細工をしても見つかる。JOLJUが計算したギリギリの時間が3時だ。


「それはお前だ。遅れるなよ!」


『合点だJO! じゃあ、祐次! 後でまた会おうだJO!!』


「おう」



 無線通信が終わった。

 祐次は無線を上着のポケットに入れた。



「聞いたか?」


「あ……うん……。ごめん……半分くらいしか頭に入らなかった……」

「3時に国連ビルでJOLJUと合流だ。一時間は輸血するから俺たちは今すぐは動けない。だから、45分で国連ビルまでいかないと脱出は出来ない」

「……できる……?」


 すでにバリケードのほとんどは突破されて、ALが雲霞の如くマンハッタンに押し寄せている。その数は約40万。マンハッタン島の大きさを考えれば全域溢れかえるほど……ではないが、100単位の群れがそこら中にいて、一度戦闘を起こせば、すぐにその群れはどっと増えて、凄い数に囲まれてしまうだろう。



 この状況は、時間が経過するほど悪化する。


 今、一時間動かないという事は、ALの数を増やすだけだ。

 それに気付いたエダは、思わず顔を落とした。


「ごめんなさい。……あたしが足手まといに……」


「関係ない。気にするな。それに弱った体で飛び出しても体力切れで死ぬだけだ。それなら体力が回復してからのほうが勝算はある」


 そういうと祐次は背負っていたエダのリュックの中から、入っていた食料を取り出した。


「丁度いい、飯にしよう。どうせ動けないからな。ハウルを食って腹は減ってないだろうが、少しずつでも食べて栄養を採ろう。たんぱく質と糖分はとっておくほうがいい」


 そういうと祐次はエダ特製のおにぎり三つ、チョコバー、ドライベリー、ビーフジャーキー、ソーダを取り出して並べた。



「実は腹ペコペコだったんだ」


 祐次は早朝から動き回っていた。朝、おにぎりを二つ食べたが、それくらいでは祐次には足りない。


 祐次はさっさとおにぎりを掴み、食べ始めた。



「どうせ一時間は動けん。ゆっくり飯でも食おう」

「……うん……」



 エダは苦笑すると、そっとおにぎりを手に取った。



 数万のALが犇く街中で、二人は静かに昼食を採り始めた。



 だが……二人の本当の苦難……絶望的ともいえる激戦は、これからなのだ。



 無事脱出できるか……。



 正直、祐次ですら勝算はなかった……。



 これほどの数のAL凶暴期は東京以来の体験だ。過去二度経験したが、十分な計画や優秀な仲間たちがいた。今回はそのどちらもなく、数は桁違いに多い。


 東京のときのほうがALの数は多かったが、入念な計画と多くの人員と準備期間があり、優秀な指

導者と仲間たちがいた。今は二人とJOLJU、この三人だけだ。


 だが、不思議と恐怖はなかった。


 二人とも……。

 二人ならば……きっと……奇跡は起こる。




 そう、信じていた。


「脱出プラン」でした。


タイムリミットは午後3時!

夜になればもう祐次たちに勝機はありません。ALは夜は関係ないので人間が圧倒的に不利になります。

国連ビルはマンハッタン内のほぼ中央の川沿いにあり第四章でも出てきました。

セントラルパークの北側にあるハーレムからセントラルパーク南の国連ビルまで約4km。普段や車があれば近距離ですが祐次たちはもう車がありません。そしてもう周囲はALだらけです!


二人だけの脱出、始まる!


これぞクライマックス編!!

これからも「AL」をよろしくお願いします。

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