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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第一章・エダ編
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「希望をつなげて」2

「希望をつなげて2」


ロンドベルに向かう祐次とJOLJU。

そこで二人は飛ぶヘリコプターを見つける。

トビィだ。

だがそれに群がるALタイプ5、そしてタイプ3も。

祐次は急行する。

間に合うのか……!?

風雲急を告げる!

***



「When the night has come and the land is dark. And the moon is the only light we'll see.(夜が訪れて、大地が暗くなるとき、月明りしか見えなくなる)」


 カーミュージックが流れている。有名なBen・E・キングの「stand by me」だ。

 荷物を大量に積載した大きな黒のシボレー・アバランチが、州道を西に向かって走っていた。


「No I won't be afraid, no I won't be afraid.(恐れはしない 恐れはしないさ)」

 と祐次が口づさむ。

 するとその隣で、JOLJUが暢気な顔でと続きを歌う。

「Just as long as you stand, stand by me.(ただ君がそばに! そばにいてくれれば)」


 JOLJUが歌うといい曲も酷い曲になる。続きを歌う気が失せた祐次は黙る。JOLJUは気にせず気持ちよさそうに歌っている。


 二人はついにフィラデルフィア都市圏を抜け、モンドメリー郡に入った。

 歌を歌い気分よさげだが、実際のところ祐次は全然余裕ではない。


 すでに当初の予定である36時間を過ぎた。無線連絡が途絶えて一日……どうなっているか気が気でない。これでもできるだけ急いできたが、ミイラ取りがミイラにならない程度の装備を整えるのに今朝までかかった。それからは一気にハイウェイを飛ばしフィラデルフィアを通過し、ようやくここまで来たのだ。



「このあたりはALは多いのか?」



 JOLJUが煩いのでカーミュージックを消す祐次。JOLJUは自分のスマホを取り出し『ALレーダー』でチェックする。


「固まってるトコにはいるけど100体単位だJO。田舎町だしね。祐次ならモーマンタイだJO」


 そのくらいの数なら日本でも欧州でも一人で対応してきた。なんとかなる数だ。


 その時だ。

 祐次は進行方向……北西の空に、群がって飛ぶALタイプ5の姿を見つけた。


 ALタイプ5。


 タイプ1の亜種のようなもので頭と胴はタイプ1と変わらないが、大きな腕と蝙蝠のような羽があり、ほとんど巨大な蝙蝠だ。いや、翼竜か。


 タイプ5は常に飛んでいるわけではない。


 基本はタイプ1だ。それが状況に応じタイプ2に変化したり、タイプ5に変化したりする。タイプ5は飛行物を見つけると出現し、その飛行物に群がり一斉にぶつかってそれを落とす。群がるときは数も多く連中の目的は神風特攻で迎撃のしようがなく、狙われたら最後ほとんど助からないが、逆にこいつは空を飛んでいない限り危険はない。



 タイプ5が出現しているということは、何かが飛んでいるということだ。




 ……まさか……?



 祐次は車を止めた。そして耳を澄ませた。


 かなり小さく遠いが……ヘリの音が聞こえる。ヘリの機体は見えないから小型ヘリなのだろう。そして方向はロンドベルの方角からだ。




 まさか!




 祐次は座席から双眼鏡を取った。



 いた。



 10キロほど先か……低空をフラフラと飛ぶヘリコプターの姿を見つけた。どうやら民間ヘリのようで、操縦はかなりおぼつかず運転に慣れているようには見えない。


 祐次は運転席に飛び乗ると、車を急発進させた。


「無線だ! 緊急回線! あのヘリに無線をつなげろ!」

「あいあいさーだJO」


 JOLJUはすぐにスマホを掴む。


 祐次は座席に置いてあるステアーAUGを確認し、予備マガジン3つをベルトに突っ込むとアクセルを目一杯踏み込んだ。シボレーは一気に加速する。


 JOLJUは無線で呼びかける。

 何回目かの呼びかけで、相手は出た。



「ロンドベル・サバイバーか? 俺は黒部 祐次だ! 分かるか?」


 祐次は英語で問いかける。



『こちらトビィ=レタフォード!! あんたユウジさんか!?』


 <ユウジさん>と知っているのはエダとその仲間たちだけだ。


 彼らの生存に一瞬祐次の心は躍ったが、それよりまずやるべきことがあった。


「今すぐヘリを地上に降ろせ!! タイプ5に襲われるぞ!!」


 すでにタイプ5が飛行している。今にも襲い掛かるだろう。

 だがそれ以上の問題が祐次の前に出現した。


 タイプ3が1体いる。




 奴は祐次のほうには向かわず、猛然とヘリコプターの方向に向かって走っている。

 祐次は舌打ちすると、JOLJUを掴んだ。


「運転を任せるぞ!! 全速力で突っ走れ!」

「了解だJO」


 JOLJUは運転席に移動する。このヘンテコ生命体は運転が得意で足は届かないがテレキネシスで大抵の乗り物は操縦できる。JOLJUがハンドルを握ったのを確認すると、祐次は後部座席に移り、山積みの荷物の中から50口径のセミオートマチックライフルを掴んだ。



 間に合うかどうかは、天に祈るしかない。





***




 保安官事務所は無人だった。


 予想していた通り、慎重に物陰を移動することでALには見つからなかった。連中はある程度の数で集まっているが、数自体は溢れかえるほどはいないのかもしれない。


 そこでトビィは保安官事務所が使用しているヘリコプターを見つけた。

 5人乗りのヘリコプターだ。しかし子供であれば全員乗るかもしれない。

 さらに幸運な事に、ヘリコプターの鍵は付いた状態だった。


「ヘリなら一気に脱出できる! 無線機もある!!」


 少なくとも地上を走るより遥かに安全だ。

 そして父はヘリコプターの免許を持っていて二年前に取得した。助手席で三回ほど乗せてもらったことがある。操作法は意外に簡単だ。父のデスクにヘリコプターの操縦法のガイドブックがあったことも幸運だった。


 トビィは決断した。


 ヘリコブターに飛び乗りエンジンをかける。ヘリは動いた。

 ヘリはゆっくりと上昇した。そこまでは良かった。だが無免許でヘリの経験の少ないトビィには加減が分からない。

 ヘリは急加速すると、町のほうではなく東の空に向かって飛んでいく。

 必死に方向を変えようとしたが、中々巧くいかない。

 ようやく安定したときには、すでにロンドベルの町の郊外約10キロのところだった。


 方向転換をしようとしたとき、トビィは見つけた。

 州道路をまっすぐロンドベルに向かって走る一台の大きな車を。



「ユウジさん!!」



 トビィは方向転換をやめ、さらに上昇した。上昇のほうが簡単だし車を確認できる。

 その時だ。無線が鳴った。


 なんだか間の抜けた声で呼びかけている。


 何度か無線機の周辺を触り、30秒ほどしてようやく無線の応答はヘッドフォンマイクで行う事を思い出した。


 それを頭の嵌めた。


 相手は祐次だった。そして接近している車も祐次だった。それを聞き、トビィは飛び上がりそうな気分になった。


 だが警告は全く逆だった。



『今すぐヘリを降ろせ!! もう奴らはそこまで来ている!!』


 トビィは顔を上げた。

 その瞬間、無数のタイプ5がヘリに激突した。


「くそったれ!!」


『ゆっくり降りろ!! 下まで降りたらなんとかする!!』


 襲い掛かってきたALタイプ5は、自分の体を機体に激突させ破裂していく。そうして自分の体液を撒き散らし、飛行機をあっという間にスクラップにして墜落させる。それが奴らの役目であり狙いだ。この恐るべき特攻があるから、祐次たちも一切飛行機やヘリの類は使わなかったのだ。


 ALの体液は瞬く間にヘリの機関部を破壊した。速度が一気に落ち、墜落を始める。



『パニックを起こすな!! ALは無視しろ!! 俺がなんとかする!! ゆっくり着陸することだけ考えろ!!』


「やれるか! そんな事!!」



 視界、四方八方突撃してくるALタイプ5だらけで禄に前も見えない。計器の見方なんか分かるはずがない。


 しかし祐次からはヘリが見えている。



『後20mだ。ゆっくり降ろせ! 道路じゃなくて土の上に降りろ。衝撃はそっちが少ない!』


「そんなのできねぇーよ!!」


 それでも操縦桿を必死に握り、降下させていく。

 ついにタイプ5の突撃が止んだ。



 その時だ。



 タイプ3が目前に現れた。



「うわぁぁぁっっ!!」

 絶叫するトビィ。


 ヘリコプターはタイプ3と正面から激突した。


 凄まじい衝撃、タイプ3の絶叫、そしてトビィの悲鳴が重なった。


 ほとんど半壊したヘリは、タイプ3とガッツリと組み合う形となった。タイプ3は強靭な腕力で胸に飛び込んできたヘリを引き裂こうとするが、時速100キロは出ていたヘリの運動エネルギーは凄まじい。ヘリの半壊したロータリーウイングがタイプ3の体を抉る。


 タイプ3は絶叫した。

 ついにその巨大な爪が、ヘリを地面に叩きつけた。


 ヘリのガラスは砕け、機体は真っ二つになり、そしてトビィの体は外に投げ出された。


 トビィは地面に放り出され、そのまま意識を失った。


 タイプ3と激突したことで、墜落のエネルギーの多くは相殺された。それが偶然トビィの命を救う結果になった。

 右腕を失ったタイプ3が鎌首をもたげるように顔を向けた。



 そこに、祐次が駆けつけた。



 祐次は車から飛び降りると同時にバレットM82を構え、一瞬にしてタイプ3の頭を撃ち抜く。


 一撃ではない。続けて3発、同じ場所に叩き込んだ。


 タイプ3はゆっくりと倒れ、破裂して消滅した。


 祐次は撃ち終えた50口径ライフルを無造作にシボレーの荷台に放り投げると、周囲を警戒しながらトビィのところに走った。



 トビィは頭と腕から血を流している。だが生きていた。



 祐次は触診で状態を確認すると、トビィを抱きかかえシボレーに向かう。



「大丈夫かだJO?」

「俺は、な!」

「祐次の心配はしてないJO」

「治療が必要だ。確か1キロくらい前にダイナーがあった。そこに向かえ!!」


 シボレーの後部座席にトビィを運び入れると、祐次はすぐに助手席に乗り込んだ。




 希望が、僅かに繋がった。



 だが、その事をエダたちは知らない。

「希望をつなげて2」でした。


ついに祐次とトビィが接触です!

ご覧の通り、タイプ3もフル装備した祐次は脅威でもなんでもありません。ただこれは祐次が特別なだけです。祐次はこの状況を予期して最高の武装を整えているし経験が違います。


ヘリコプターは米国の保安官事務所にはワリと置いてあります。保安官は警察業務の他救助業務もあったり米国の管轄範囲は広く車ではカバーしきれないので珍しいことではありません。


ただ4WDではなくヘリを使ったのは、やはりトビィも疲れて焦りが出てきてます。タイプ3にバスを破壊されたことがあったのでヘリなら……ということですが、実は祐次がタイプ5は避けろということで説明は聞いていました。ただタイプ5と遭遇したことがなかったのでつい急ぐ気持ちのほうが先立ちました。


結果として祐次と合流できましたが、はたして……!?


ついにクライマックスです。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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