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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第五章拓編後半
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「報告」1

「報告」1



今の東京の中心は練馬。

そうなるには理由があった。


そして伊崎にこれまでの報告にやってきた拓と時宗。

二ヶ月ぶりの再会。

伊崎はすでに<英雄>の話について知っていて驚く拓たち。

***




 現在、東京の政治の中心地は練馬区役所だ。


 元々は違った。


 生き残った生存者の中で何人かリーダーが生まれ、<臨時日本政府>が動き出したとき、最初は首相官邸や霞ヶ関の従来の施設を使い、そこで執務をしていた。


 だが、街は死んでいる。

 鉄道も地下鉄も機能せず、電気もない。

 そして大きなビルを稼動させるための電力は膨大で、とても発電機では賄えず、駐車場も豊富にはない。何より高層ビル群は死角が多く、ALは三次元で襲ってくる。



 新宿、渋谷、池袋、上野、秋葉原は何者かに破壊されていた。一部で全域ではないが、攻撃された跡地に本拠地は置けない。



 ある年、台風が直撃し、荒川と隅田川が決壊した。誰も治水調整をしていないから、台風が連続で上陸すれば東京の下町は濁流に襲われる。なので浸水した東側の下町や港区、荒川沿いの北区、足立区、杉並区は選択肢から外れた。



 政治の中心となる場所に、生存者の居住区も集める事になる。


 学校や公園は農地や政府施設とし、見晴らしがよく、地震や水害にも強い場所で、各方面に移動しやすい場所。生存者が住むには高層マンションは不向きで、精々4階くらいのマンションか普通の住宅がよく、古く狭い住宅の密集地も住宅の改造が難しいから適さない。文京区や板橋区、台東区も外された。



 過去神奈川、世田谷方面からALの襲撃を受けた事があり、多摩川で防衛線を張った事があるから、世田谷区もはずれ、最終的に中野と練馬が候補に残り、練馬区役所が周囲に高いビルや繁華街に囲まれておらず、住宅街や学校も周囲に多くて居住に適し、大通りと各方面の高速道路も近いということで練馬が新しい日本の中心地に選ばれた。



 それが、今から4年ほど前のことだ。



 拓や時宗たちが時間を飛び世界の崩壊を知ったとき、すでに練馬が東京の中心地として稼動し、運営は順調に進み安定していた。






***





 4月24日 午前11時08分



 拓と時宗が伊崎に呼ばれたのは、東京帰着から二日後だった。


 同時に、日本政府唯一の医者である前島晋介の予約が取れたのも、この日だった。


 なので、拓と時宗は午前11時に練馬区役所に向かい、優美と啓吾が篤志と杏奈を前島が常駐している浩生会ミズキ病院に連れて行った。



 区役所についた拓と時宗は、伊崎が執務している10階に向かった。


 すでに無線ではやりとりしていたが、こうして顔を合わせるのは二ヶ月ぶりだ。

 伊崎は相変わらずスーツ姿にショルダーホルスターを付けて、部下たちと一緒に執務をしていた。



「生きていたな! お前たちだけでも生きていて良かった」

「伊崎さんこそ、元気そうで何よりです」

「お前たちも元気そうだな」


 拓も、久しぶりの伊崎の元気そうな姿に、思わず笑みを浮かべた。



「時宗も無事でよかった」

「第六班は俺一人になっちまったけどな」


「祐次は生きているんだろう?」

「何で伊崎さんがそれを知っているんです?」


「昨日、レ・ギレタルたちから話は聞いた。それだけじゃないが」



 そう、どういうわけか伊崎は色々何か知っている。それがどうしてか、拓たちも分からない。



 伊崎の話……わざわざ二人を呼んだのには、そこに理由があるのだろう。



 伊崎は宮本純子を呼ぶと、会議室に三人分のコーヒーを用意するよう命じ、拓たちに会議室に行くよう言った。



「まずはお前たちがどんな経験をして戻ってきたのか、教えてくれ。中国がどうなっているのかも知りたい」

「はい」

「思えば、崩壊後に外国から帰って来た日本人はお前たちが初めてだよ」


 そういうと、伊崎は笑いながら自身も会議室に向かって歩き出した。拓と時宗は黙ってその後についていく。


 最初5分ほど何気ない世間話をしている間に宮本がコーヒーを淹れて持ってきた。彼女の分もあったので、彼女も同席するようだ。



「じゃあ、始めようか」


 こうして拓と時宗の報告会となった。


 まずは横浜のク・プリ船探索の件。その後の中国での出来事。姜や篤志たちとの出会い。そして、人類を救うという英雄が存在する、という話を。


 伊崎と宮本は、それを黙って聞いていた。

 伊崎の表情は、やや険しい。



「矢崎と大下は死んだのか」


 矢崎は第八班班長、大下は第六班班長だった。上層部の所属し、元々サ・ジリニの話を持ってきたのも、この両班長だった。



 が、意外な話が伊崎の口から出た。



「俺は今回の話、知らなかったんだ。矢崎と大下とサ・ジリニ……三人だけの計画だったようだ」

「本当に?」

「ああ。サ・ジリニからも聞いたからな」


 それは、拓たちは初耳だ。



 だが、心当たりもあった。あのク・プリの船でのサ・ジリニの独断専行の行動も、矢崎と大下は知っていたのかもしれない。だから「JOLJUはいらない」と、最初に言われたのかもしれない。使われた班の若者たちは、利用されたのだ。矢崎と大下が、手柄を独占しようと考え、たまたま時宗の口からフォーファードの話を聞き、サ・ジリニを誘った……という事のようだ。


 だが、その結果は皮肉な事に、リーダーの大人たちは死に、拓たちが生き残った。


「報告」1でした。



練馬が今東京の中心です。

冒頭で説明したとおり、ああいう事情があって練馬になっています。

東京でも都心の中心街は破壊されているわけです。

電気も限られているし、生存者も集まる、ということで比較的都会すぎていなくて移動しやすい練馬が選ばれたわけです。


そして伊崎の話題もやっぱり英雄の事。

なんだかんだ名前だけは頻繁に出てきて存在感たっぷりなのが祐次です。ちなみに次回も祐次話が出てきます。元々かなりVIPだったわけです。医者はポジション高いですし、それでいて日本屈指の戦闘力がありましたから。


ということで東京編、しばらく続きます。

第五章の東京編は東京紹介回みたいな感じです。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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