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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第五章エダ編前半
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「独りのロザミア」

「独りのロザミア」



エダと雑談をするロザミア。

彼女はたった一人の侵略者でたった一人のパラ人。

エダは衝撃の事実を聞く。

ロザミアは人類の敵だが地球人を全滅させる気はない。

真の敵は別にいる?

二人の少女は互いに惹かれあっていく。

***




11月9日 セントラルパーク


 エダは、理解した。


 この人……ロザミア=パプテシロスというパラリアンの若い女性は、とても聡明で、あらゆる星系の文化や科学の知識は豊富で、社交的で理知的で賢い女性だ。だが、自分の事を語るとき、彼女は無邪気になり、些細な事に感激するし、色々好奇心も旺盛で、何でも新鮮さを感じる幼女のような感性を持っていた。


 当然かもしれない。


 彼女は、同じパラレイト……人類の友人は、いたことがないのだ。


 どうやら、パラレイト……パラ人は、ロザミア以外絶滅して存在していないらしい。


 友人がいることが当たり前、友人がいないことが寂しい、といった感覚さえ知らないほど。


 だから、こうして何でもない話をしている時、時にロザミアは幼女のような無邪気な表情を浮かべる。


 かと思えば、時々<指導者>として威厳と知性に満ちた表情が浮かぶ。



 一時間ほど、エダとロザミアは話をした。

 エダは地球の話を。ロザミアは地球とは関係のない別宇宙の話をした。


 時々、今の地球の話や地球侵攻の話にもなったが、この件だけは、何があってもロザミアは答えない。



「駄目」や「秘密」とはっきり言う。



 変に隠さずはっきりいうから、エダも悪い気にはならないし、ロザミアもエダが聞き分けよく引き下がるので、気にしない。


 それでも、エダは聞く。



「もうじきこの街はALの大群に襲われます。ロザミアさんは、なんとか出来ないんですか?」

「それは人類を代表しての総意?」


 そう答えるロザミア。だが表情はけして怒っておらず、こういうやりとりも楽しそうに受けている。


「いえ。あたし個人のお願いです」

「出来ない。貴方だけを助けるのなら、私には出来る。でも、ALはもっと大きな意味があって存在している。その意志には、私でも異議は唱えられない」


「それは<神>の意志なんですか?」


「そうね。あれ、本当は<神>ではないんだけど、存在としては<神>というより他にないから、そうなるかしら? 地球に責任を持っている<神>ではないから、人類から見れば、ただの厄介な超生命体よ」


「<神>の免許証を貰っている存在で……でも、誰も<地球の神様>の免許は取っていない……という感じが近いんでしょうか?」


「成程。いい表現ね。それでいうと、二人は第四階級で星系の神。<BJ>は銀河の神。JOLJUは全宇宙の神の免許を持っている、という事よ。ただ免許を持っているだけで、使っていないだけ。JOLJUは多分その免許を使うことはなさそうだけど。使われたらそれはそれでもっと厄介だからなんだけど」


「…………」


「でもね、エダ。忘れないで。ALの存在をともかく……私は厳密には貴方たちの敵にはならない。むしろ、今、人類にとって直接的な敵といえるのはゲ・エイル星人のほう」


「前回現れた……あの異星人ですか?」


「ALの侵略には色々な意味がある。そして私や<神>の意志が介入している。一つだけ教えてあげる。人類を絶滅させるのが目的なら、とっくにやって、もう終わっている。でも、やっていないの」



「滅ぼす気がない?」



「答えられないけど……本当に滅ぼす気があるなら、私は貴方と友達になろうとは思っていない」

「……はい……」

「ALのリミットを外して全てを凶暴期にしたら、すぐにでも絶滅させられる。でもしない」



 それは、そうかもしれない。



「だけど、ゲ・エイル星人は、貴方たちの尺度で言う<略奪者>で私とは別の意味の性質の悪い<侵略者>よ。直接的な脅威。私にとっても連中は敵」

「だから……あたしたちとロザミアさんは共存できる……ということですか?」

「そう……なるかしら?」


 ロザミアは少し首を傾げた。ロザミア自身、その言葉が新鮮だったようだ。


 それもまた現実ではないのかもしれないが、否定はしない。


 エダは苦笑した。

 ロザミアも、きっとまだ、そのあたりが自分でも理解できていないのだと思う。


 後、地球の食べ物というほど個性はないが、エダの手焼きのクッキーをえらく気に入って、最初の一枚は色々難しい顔をして食べ、その後はパクパクと持ってきた6枚全部食べてしまった。



「どこにでもある穀物の固形食で、使っている材料もシンプルなのに、どうしてこんなに美味しいのかしら? 微妙に全部味が違う」

「ありがとうございます。また、今度用意しておきますね」

「そういえばJOLJUが『料理は楽しい』って言っていたわ。でも、あいつが作る料理は、どれもここまで衝撃的じゃなかったの」


「JOLJUの料理も美味しいですよ? カレーライスとかポトフとか寄せ鍋とか、豪快で贅沢ですごくJOLJUらしくて美味しいです」


「あのJOLJUが料理ね……。そういえば昔も色々作っていた気がするけど、こんなに美味しくなかったわ。やっぱり材料が違うと味も違うものなのかしら? それとも作る人の腕かしら? こういうものって化学的で組み合わせをするだけのはずなんだけど、貴方の<クッキー>? 一つずつちょっと味が違うのよね。面白いわ」

「手焼きですから。味が少しバラつくんだと思います。中に入れたチョコや干しベリーの配分も変わりますし」

「同じ材料で一緒に作るのにバラつく? 不思議な現象ね」


 こういう会話をしていると、どっちが年上か分からなくなる。


 ロザミアには不思議な魅力があった。


 世間知らずかと思えば、凄い知識量があり、地球のことをよく知っているが、どれもデーターとして知っているだけで体験した事や目で見たことは少ない。すごく無邪気な顔をするかと思えば、威厳と高貴に満ちた気高い表情をするときもある。そしてJOLJUの事を語るときだけは、普通の女子っぽくもなる。


 だが、エダは知った。


 このロザミアは、ALを従えている、パラリアンの指導者なのだ。


 いい例えがないが、惑星パラで一番偉い人間だから、地球のローマ教皇や英国王、日本の天皇より身分は上といえる。確かに時々、ロザミアからは、それを感じさせる高貴さと威厳を覚えるときがある。


 1時間半を過ぎたとき、ロザミアは「今日はこのくらいで帰るわ。用事もあるし」と笑って立ち上がった。



「すみません。長々と無駄話ばかり付き合ってもらって」

「いいのよ。友達って無駄話ばかりするものでしょ?」


「本当は……あたし、少し……忘れたかったんです、現実を。大切な友達が死んで、大事な人も大怪我して……ちょっと疲れていたんだと思います。それにロザミアさんを付き合わせてしまいました」


「いいのよ。それにエダ……貴方、強い子よ?」

「え?」

「<テラサッテ>も高いし、私の話も理解できている。貴方は自分では気付いていないみたいだけど、強くて賢い子。それにとても可愛くて魅力的だし。地球人類の代表に選んでもいいくらい」


「…………」


「<オルパル>、ちょっと貸して?」

「え? あ、はい」


 エダはペンダント状にして、首からかけている<オルパル>を取り出した。


 ロザミアは、それを手に取ると、指で何か操作をし始めた。

 すると、<オルパル>が一度光った。


 ロザミアは、エダに<オルパル>を返した。



「<トルザ・テカ・ドラ>。覚えて。<トルザ・テカ・ドラ>」

「<トルザ・テカ・ドラ>?」

「それで、周囲セス・グドイ……ええっと……地球標準単位だと半径48mくらいかしら? ALの活動が完全停止して攻撃を止めるわ。大体4分くらい」


「ええっ!?」


「ただし約束。このことは誰にも言わない。JOLJUはいいわ、あいつは見ただけでどうせ気付くから。後、一度使うと30分は使えない。一日2回まで。3回目を使ってしまうと全エネルギーはなくなるから、これはただの水晶になる。そして、他の地球人には見られないで。出来るだけ知られたくないの」


 間違いなく、これは超科学の代物だ。


「今は起動しないけど、起動させるための手順はJOLJUが知っているから」

「あの……いいんですか? これ」

「バレたら怒られるけど、私を叱るパラリアンは他にいないし。怒りそうなJOLJUが、好き勝手やっているみたいだから、あいつに言われる筋合いないし、気にしなくていいわ」

「はい」


「後、ク・プリとゲ・エイルには絶対に見られないで。こっちは絶対に守って。奪われると拙いの。私の問題ではなく、見られれば貴方は狙われるから」


「……はい……!」


「じゃあ、またね」



 ロザミアは微笑むと、そっと歩き出した。


 そしてマントを掴んだ瞬間、彼女の姿はまた半透明になった。

 と……彼女は足を止め、何かを思い出し、振り返った。



「そういえば、貴方の大事な人でJOLJUがよく懐いている日本人の男……名前、何ていうの?」

「ユージです。黒部 祐次です」

「そう。そのうち、彼にも会いに行くわ。でも、今は秘密。JOLJUにもそう伝えておいて」



 そういうと、ロザミアの姿は完全に消えた。


 多分転送で移動したのだろう。一瞬で姿を消した。


 突然の事に、エダはしばらく呆然と立ち尽くした。

 我に返ったとき、エダは気付いた。



「ロザミアさんは、ただの女の人じゃない。異星人のリーダーなんだ」



 それは……もしかしたら、物凄い事なのかもしれない。


 地球人で、初めてちゃんとパラリアンと接触したのが、エダなのだ。


「独りのロザミア」でした。


厳密にはパラ人はロザミアだけではないですが、事実上パラ人はロザミアだけなんです。

だからJOLJU自身が育てた人間の娘で、ロザミアはJOLJUしか家族を知らず、友達もいたことがないわけです。

そのわりにちゃんと成長して成熟しているのにはちゃんと理由があり、そのうち明かされます。

ALが本気で地球人を絶滅させる気がないことが今回判明しました。

崩壊して約8年。本気だったらとっくに全滅しています。

ではロザミアたちの目的は何なのか? 

それが本作の大きな謎の一つとしてシリーズの最後まで引っ張ります。


そしてエダは<AL避け>の特殊アイテムをゲット!

こうしてエダは少しずつSF世界に入っていきます。


次回、エダとJOLJUの話!

JOLJUが語るロザミアのこととは!?


これからも「AL」をよろしくお願いします。


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