「侵略者ロザミア」
「侵略者ロザミア」
エダとロザミアは雑談から始めた。
段々打ち解けていく二人。
エダも段々ロザミアが悪い人でないことが分かってきた。
どうしてこの人が地球侵略者の元凶なのか……。
***
この人は、けして悪い人ではない。
「これ、良かったら。クッキーとコーラです。クッキーは今朝、あたしが焼いたものです。コーラは……JOLJUが好きだから、ロザミアさんも好きかな、と思って」
「ありがとう。実はあまり地球の食べ物は食べた事がないの。どれか美味しいか、誰も教えてくれないんだもの」
「そうなんですか?」
「言ったでしょ? いないもの。友達」
「いないんですか? 自分の星の友達も?」
「ええ。だって、生き残ったパラレイトは私一人だもの。そうね、厳密には違うんだけど、現実には一人。この地球に来るまで、ほとんどJOLJUと一緒で、他のパラレイトはいなかったわ」
ロザミアは語りながら、恐る恐るコーラを口につけた。
意外そうな顔をして、もう一口飲んだ。
「うん。<パルタ>ぽいけど、フレーバーが独特。美味しい……うん、美味しいかな? これが地球の味なのね」
「炭酸で咽ないですか?」
「それは大丈夫。炭酸飲料は私の惑星にもあったし、他の文明にもあったわ。うん、これだったら、他の地球の食べ物も問題ないかも。立ち話も何だし、座る?」
「はい」
二人は綺麗な芝生のほうに移動した。そこは陽があたり、太陽が気持ちいい。
そこで並んでコーラを飲んだ。
何気ない話をいくつかしているうちに、エダはいくつかロザミアのことが分かってきた。
彼女は、本当に人間社会を知らない。
知識としては色々知っているし、異星人の友達はいるが、人の友達は本当にいないようだ。だからエダと話す彼女は、色々新鮮な表情をしていた。
エダは思い出した。
JOLJUが「ロザミィには人間の友達がいない。できればエダになって欲しい」と。
悪い人ではない。それに人類を見下しているわけでもなく、差別もしていない。
異星人……という感じは覚えない。
なのに、どうして彼女は<侵略者>なのだろう?
「どうして、地球に来たんですか?」
「JOLJUは、それを言った?」
「いえ」
「じゃあ秘密」
「ロザミアさんたちの……せいなんですよね?」
「そうね。地球がこうなった理由はいくつかあるけど、地球人に罪があったからじゃない。私たち侵略者の一方的な都合。そして誰かに責任があるとすれば、私とJOLJU。でも、あいつはあいつなりに責任をとるつもりで地球人の味方をしているから、後は私ね。私は地球人に頭を下げる気はないし、侵略をやめるつもりはないもの」
「…………」
「だから、エダの友達を失った責任は、私にある。責めていいわ」
「ロザミアさんを責めて……死んだ人間は蘇りますか?」
「それは無理ね」
「じゃあ意味がないですよ?」
「貴方はこの運命を受け入れられるの?」
「わかりません」
エダは苦笑し、コーラを一口飲んだ。
「でも……希望は捨てずに、一生懸命生きようとは思っています。侵略に負けずに……人間らしさを忘れずに」
「人間らしさ?」
「上手く言えないんですけど……世の中がこうなって、すごく悪い事をする人もいて、平気で人を殺す人もいる。だけど、そうなっちゃうのは、きっと人類の敗北なんだと思うんです。祐次やJOLJUが、一生懸命皆のために戦っているのは、きっと自分が負けないように……だと、思うんです」
祐次とJOLJUほど能力があれば、誰も来ない山奥で、ひっそりと、静かに平和に暮らす事も出来ると思う。
祐次たちならきっと何十年も、平和に、寿命が自然と尽きるまで人間らしい生活をしながら。だが、祐次たちは、多くの人を救うために進んで戦う道を選んでいる。そのために傷つき、死にそうな目に遭っても、けして負けたりはしない。
だから、エダもそんな祐次と一緒にいたいと思う。
そして負けたくはないと思う。
「ここがたとえどんなにひどい世界でも……あたしは、希望は捨てません」
「そう。いいことだと思う」
ロザミアは少し楽しそうに笑った。
「希望……か。私も、きっとそれを探しているだと思う」
「ロザミアさんも?」
「そのために地球に来たんだもの」
「…………」
「もう一度聞くけど……何で私を責めないの?」
「ロザミアさん、あたしたちを助けてくれたじゃないですか?」
「あれはゲ・エイルたちからよ。あの連中、話が通じないんだもの」
「JOLJUと会っていなかったら……そして、こうしてお喋りしていなかったら……ロザミアさんのことを恨んだかもしれません。実は今日、こうして普通に話していますけど……会うまで、ちょっと……ううん、半分くらい……文句を言いたかった。でも……ロザミアさんはすごく純粋な人で……人類にとって味方ではないけど、敵とは思えなくて。それに、あたしはJOLJUも大好きだし。あのJOLJUが育てた人が、人類が憎くてこんな事をしているなんて思えない。侵略が事実だとしたら……あたしたちの知らない理由があって……」
「…………」
「理由があるから許せるわけではないんですけど……きっと、それは違うんじゃないかなって。だから、まずは話をしてみて……それで考えてみたくて」
JOLJUからいくつか聞いた。
JOLJUだって、全てを語ってくれているわけではない。JOLJUはALが地球に侵攻する理由も、恐らく知っている。
だがそれを教えないのは意地悪や狡猾なのではなく、<人類には教えられない世界の話>だからだ、と最近分かった。それでも最近、祐次には少しずつ色々話し始めているようだ。そして、それはきっとロザミアも同じなんだと思う。
まずは、知りたい。
そして、その上で色々考えて、それでやっぱり人類にとって敵だということであれば、ロザミアとも戦わなくてはならない。
その覚悟をする。
エダは、そこまで考えて……ロザミアを呼び出していた。
「侵略者のロザミア」でした。
ロザミア接触編です。
第三章ラストに出てきたときはほとんど顔見せだけだったので、本格的にキャラとして登場するのはこれからです。
そう、ロザミアが侵略者なのは間違いないこと。
ただしあのJOLJUが育てた娘で、JOLJUも愛している。
そして友達も他のパラ人もいない孤独な少女。それが孤独で辛いということが分からないくらい孤独に生きてきたのがロザミアです。
ちなみにJOLJU&作者の愛称が<ロザミィ>です。
さて、二人の話の展開は?
これからも「AL」をよろしくお願いします。




