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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第五章エダ編前半
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「ある男の我侭」

「ある男の我侭」


第五章エダ編前半スタート!


あの激烈な「ロングアイランド殲滅作戦」から五日後。

祐次は監視付きで休養させられていた。

祐次の怪我は思ったより重かった。

だがこの男は全然反省をしない……。

***



 11月4日 NY セントラルパーク。


 『ロングアイランド殲滅作戦』から三日後。


 ついにロングアイランド湾の無人島への避難計画は動き出した。


 ロングアイランド島のALは、1/4まで減った。それでも島全域に凡そ2万以上のALはいるが、ハドソン川やロングアイランド湾で活動しても、ALの目に止まることは激減した。


 自治体は、これを機にウエスト・ポイントから非常用設備を入手し、それを無人島に運び始めた。テントや仮設トイレ、発電機、ガソリン、組み立て式の三段パイプベッド、毛布、フェンス、そして飲料水のタンクなどだ。まずはそれら大きな設備を運び、それが上手く行けば、今度は食料と武器。最後が人だ。


 一週間とはいえ3000人分だから、相当な量だ。


 しかしフェリーや貨物船といった大型船はALを引き寄せるから使えない。中型船をピストンさせるしかない。


 その計画を進めると同時に、自警団では避難者の割り振り、収容人数の計算、出発のプランだ。自警団の中でも優秀な人間を選抜し、まず移住させる。問題がないようであれば、順次避難させていく。


 ロングアイランド……ブルックリン方面のALは減った。そしてイースト川の二つのトンネルが大破したので、ニュージャージー側のALも今は一時的に減少したが、すぐにまた溢れかえるだろう。残されたルートはワシントンブリッジと南のヴェラザノ=ナローズ・ブリッジ経由、ウッドサイド経由とブロンクス経由、そしてキングス・ブリッジ経由で、その方面のALは日に日に増えていて、完全にマンハッタンは包囲されている。


 それに『ロングアイランド殲滅作戦』でマンハッタンに逃げたALが約4000。これは邪魔なので、毎日殲滅部隊を出して駆逐している。数は多いが、こいつらは密集しておらず、各個撃破でなんとか対処出来ている。


 これらの対応で、ベンジャミンたちは多忙を極めていた。



 が……もうひとつの問題が、迫ってきていた。





***




 NY ハーレム 


 ここはエダと祐次の自宅だ。


 祐次はあれから自宅療養だ。外出も禁止されている。

 先日の疲労もあるが、それだけではない。




「そんなに怒ることないだろ?」


 祐次は面白くなさそうに、リビングのソファーでコーラを飲みながら銃の手入れをしている。


「怒るのは当然だよ! もう! 信じられない!」


 珍しくエダは不機嫌だった。しかも、不機嫌はここ三日続いている。


 仲直りをしたのも束の間……エダが仰天する事実が判明した。

 隠していた祐次の重傷がバレたのだ。


 バレるのは当然だ。祐次の怪我は本人がいうほど軽いものではなく、結局リチャードの手を借りて再手術をした。それだけなら普通だが、この男は信じられない事に、傷口の縫合と処置を終えると、一休みした後その夜にはアリシアの胃穿孔を内視鏡手術で処置してみせたのだ。むろんリチャードは止めたが、聞くような祐次ではなく、ついにリチャードはエダに報せて、エダもこの重大事を知った。


 作戦当日もっとも働いて、大怪我した挙句、ほとんど休まず一人でアリシアの手術をしたのだ。いくら祐次が超人的な体力と技術と意思の持ち主でも、これだけやればぶっ倒れるのは当然で、アリシアの処置を完璧にやり終えた後、祐次は高熱を出した。それでも倒れず平然と、今度は高熱を出した自分の処置をしていた。ここまでくると頑強というより一種の異常者だ。


「単なる炎症と抗体反応だ。傷を負って熱が出るのは当然で特別じゃない」

 本人は全く平然だ。


 リチャードは呆れて言葉も出なかったが、エダは激怒した。



「無理しすぎ!! 祐次!! ちゃんと自分を大事にして!! 休んで!!」

「医者がいないんだから仕方がないだろ?」


 悪びれることなく答えた祐次。

 こういう点が祐次の悪い点だ。自分のことを全然大事にしない。相棒のJOLJUもずっと頭を悩める、祐次の欠点だ。祐次の頭に自分が休むという言葉はない。


 これには、さすがのエダも、珍しく激怒した。


 慌ててJOLJUが間に入ったが、つい口を滑らせて、ただの怪我ではなく動脈損傷と内臓損傷したことを言ってしまった。これにはリチャードも顔色を変えた。一歩間違えば命に関わる大怪我だ。


 しかも怪我は二箇所だけでなかった。リチャードが診察すると、流血するほどではなかったが、乱戦で負った切り傷や打撲が背中と足と腕合わせて五箇所もあった。


 あれだけの乱戦と爆発に遭って、この程度の怪我で済んだのは上出来なほうだ。


 前の喧嘩はエダの失言でエダに非があったが、今度は全面的に祐次が悪い。なので大人しく叱られている。



「完璧に処置したから問題ない」


 と、祐次は言ったが、エダとリチャードとミショーンの三人が怒りまくり、さらにベンジャミンとアリシアも加わったので、さすがの祐次も閉口し、疲れもあったし熱も出て、言い逃れも出来ず最終的に根負けし、珍しく降参した。さすがに仲直りしたばかりのエダに多少悪いと思ったのもある。


 結局祐次は輸血と投薬のため一晩入院させられた。翌日は全員の制止を振り切り強引に退院したが、傷の事を知っているベンジャミンも加わって、自宅での絶対安静が命じられた。出かけられるのは、アリシアの容態が急変したときだけだ。


 自宅では、エダが付きっきりで看病している。半分は監視だ。隙を見せると、この男は出かけて仕事をしようとするのだ。さすがのエダも、この祐次の身勝手には腹を立てっぱなしだ。もっとも、怒っているのではなく、ほとんど心配で堪らないだけだ。


「祐次が悪いJO。怪我人は安静にするもんだJO」


 JOLJUも祐次の怪我に動揺した一人だ。気持ちはエダと同じだ。


「オイラが知る限り、今回が一番大きい怪我だJO。すんごい血が出たJO」

「だからク・プリの治療器で治しただろ? 足はちょっと膿んだが、この程度は普通だ」


「合計42針だよ!? 大怪我だよ! 熱だって下がってないし! 駄目! よく休んで!」

「二箇所は内出血処置と血抜きのため自分で切開したんだ。怪我じゃない」


 背中も傷があって、追加で8針縫った。普通の人間なら二週間は入院だ。


 他に医者がいれば強引に休ませるのだろうが、性質の悪い事に一番の腕利き外科医が負傷者本人で、自分の怪我を機械のように処置するような男だ。リチャードやベンジャミンぐらいでは止めても到底聞かない。それどころか口を出せば専門知識を吐きまくって問題ないと屁理屈を並べ言うことなんか聞かない。結局、理屈ではなく感情で訴えるしかなく、全員がエダに祐次の監視と世話を頼み込んだ。


 さすがの祐次も涙を浮かべ怒るエダには抗弁できず、折角エダが気持ちを整理させて仲直りした直後だけに強気にもなれず、「5日間だけ休む」というところで妥協した。


 祐次が自分で計算したとおり、三日で熱は下がり、傷口からの膿も止まった。そこは外科のプロフェッショナルだ。最初の化膿をきっちり防げば、傷口は塞がり感染症も起きない。熱が出たり膿が出るのは抗体反応で、体が治り始めた証拠だ。


 自分の治療は自分で自宅でできる。そのために自宅に薬や医療器具を持ち帰っている。



「これでシャワーに入れるな」


 正直、これが一番堪えていた。祐次は潔癖症ではないが入浴好きで、こんな世界でもちゃんと毎日シャワーに入っていた。この三日はさすがに怪我では入れなかったし、エダとJOLJUが目を光らせて入らせてくれなかった。



「駄目だよ! 傷口濡れるよ!? 治りが遅くなるよ?」

「よく勉強したな」

「体なら……あたしが、拭くよ?」


 そう言ってから、少し恥ずかしそうに頬を赤めるエダ。

 祐次はそんなエダを見ず、サランラップとダクトテープを取った。



「普通の患者なら俺もそういうが、俺は入りたいんだ。髪が長いから、洗わないと気持ち悪い」

「切っちゃうよ? その髪!」

「願掛けだ。世界が平和になるまで髪は切らないって決めてるんだ。医者が不潔じゃあ患者は診れないしな。で、コレを使う」

「ラップとテープ?」

「これで防水する。これで大分防げるんだ。防水ジェルも塗るから大丈夫だ」


 そういう点は、さすがに祐次はプロフェッショナルだ。


 そこまで言われると、エダでもシャワーを入るくらいのことは止められないし、さすがにバスルームでそれを手伝うのは恥ずかしくて出来ない。エダも同じくらい入浴好きだし、家の中でずっとじっとしていては祐次もストレスが溜まっているだろう……と、結局入浴は祐次のわがままが通った。


 シャワーと処置で一時間ほどしてバスルームから出てきた祐次は、JOLJUを呼んだ。そして二人は何か打ち合わせをすると、JOLJUは「ちょっと出てくるJO」と出かけていった。


 エダは祐次によく冷えたアイスティーを差し出しながら、出て行ったJOLJUの後を見つめていた。


「JOLJUは、どこに行ったの?」

「自治体本部と病院。俺の代わりだ。避難計画と病院の状況を聞いてきてもらう」


 今、祐次は自宅安静が厳命されている。病院はともかく、今自治体基地に顔を出しても、ベンジャミンもガブスも何も教えてくれない。


 ここ最近の活動で、JOLJUはかなり自治体の仕事をして彼らから信頼を得ているので、意外と色々聞いてくるだろう。



「ある男の我侭」でした。


ついにエダ編第五章です。

そしていきなり痴話喧嘩です。

ある意味エダと祐次の痴話喧嘩は珍しいですし、逆に言えばこの二人は痴話喧嘩ができるほどの仲だということです。JOLJUはもう祐次と喧嘩にならないので。(聞く耳持たない)

もはやエダだけが祐次を制御できる人間です。

42針……もう合計で100針越えていますね、この男。

ネタバレだと最終的にはこの男、なんだかんだと300針くらいいくんじゃないかしら?

人類最強の男は人類でもっとも怪我する男です。

後、祐次がロンゲなのは世界が平和になるまでの願掛け! といってますが……まぁこれは言葉だけですね。永遠に髪は切れません。祐次がロンゲなのは大好きなお姉さんがロンゲが好きだったからです。後、祐次は日本人の男の割には実は顔が小さく髪が短いとえらくノッポが目立つので伸ばして誤魔化しているという話もあります。


さて、暢気に始まりましたが、すぐにあることが迫ります。

いうまでもなくアリシアのことです。

そして全員の大避難です。

前半部最大のクライマックスにむけて動き出します!


これから「AL」をよろしくお願いします。

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