「出立」1
「出立」1
JOLJUのお土産確認!
そしてJOLJUが語る祐次の現状と米国の話。
もしかしたら祐次と直接会話ができる?
こうして奴は帰っていった。
***
4月19日
拓たちは荷物をまとめた。
今日、<京都>を発ち、ついに東京を目指す。
用意は終わった。そしてやるべきことも終わった。伊崎からの連絡も来た。
4月16日 午後7時16分。
食事が終わった後は、JOLJUとの別れだ。
「いや~! 今回は楽しかったJO♪ 今度は寿司パーティーに呼んでくれだJO!」
JOLJUはお土産の特製うな重5人前を風呂敷に入れて、幸せほくほく顔だ。
お土産のうな重は、祐次とエダ、ついでにJOLJUのおかわり分だ。健啖家の祐次とJOLJUは二人前くらいあっても食うだろうと拓がはからい、多めに用意してもらったのだ。米国では食べられないだろう。いや、もしかしたら、もう二度と祐次は食べる機会がないかもしれない。
他に調味料や漬物、鯉と虹鱒の味噌漬け、するめ、日本酒なんかもお土産だ。
そして今回も一応JOLJUの土産解放タイムとなった。
おやつとコーラは相変わらず。もう祐次は完全に慣れたのか、他にグロックG17とマガジン2つ、グロックG26。S&WM60PC357マグナム仕様。357マグナム100発一箱。銃をグロックに統一しているのは、マガジンなどの共通性を考慮して入れているのだろう。他に大型ナイフ。そして杏奈の抗生薬と内服薬。他に外科用処置道具と各種薬……麻酔、モルヒネ、止血薬と止血帯、包帯、医療用ホッチキスと接着剤、縫合セットが入った応急キットで、今回は医療関係が多かった。拓たちでは使えない点滴や縫合セットはどうしたらいいのだろう?
おやつ以外、用意したのは祐次だ。
「今回、医療品関係が多いな」
「祐次がね。多分拓たちは沖縄で武器手に入れただろうし、オイラを呼び出すとしたら緊急事態で多分怪我人出ている可能性高いからって」
「あいつは予言者か? 俺たちの事監視してンじゃねぇーの?」と時宗。
相変わらず祐次の洞察力に感服する拓たち。沖縄に寄ることも全部計算している。
「銃や弾は補給できるけど医者だけはどうにもならないからね」と啓吾。
「内科なら前島さんがいるけど、外科は祐次だしな」
東京には前島がいる。しかし神から医術スキルを貰ったという祐次のほうが今では腕は上だろう。祐次も「世界中回ったが自分が一番」と言い切っていた。そもそもそれ以前から祐次は平気な顔をして前島を無視して勝手に外科手術をこなしていたが。
前回の召還で東シナ海だったから、一週間以上あれば、計算では拓たちは日本に到着している。JOLJUが緊急で呼ばれるとしたら、怪我人が出たときだろう、と祐次は考えた。確かに今回のような宴会に呼ぶのは特別で、それ以外となると緊急事態だろう。基本JOLJUは対AL戦では役に立たない。日本だったら、対人戦で問題が起きるという可能性は少ない。銃弾はある。人と争って問題が起きる可能性も東京なら低い。とすれば、呼ばれるとすればALに襲われて窮地に陥ったときか、医療関係だ。だから医薬品と銃弾を入れていた。
「僕が頂いておきますね、JOLJU」
医療品は篤志がまとめて受け取った。
「そういえば、お前今回もレ・ギレタルとなんか喋っていたな?」
あの宴会の後も、ク・プリ語で二人は何か喋っていた。悪い話ではなさそうだったが、二人共教えてくれなかった。
「実は米国で他のク・プリアンの生存者と仲良くなったんだJO。その情報交換だJO。拓たちも米国に来たら分かるJO」
「あいつ段々活動範囲広がるな。友達100人計画か?」
「あー……今回色々貰ったから特別サービスだJO? タイミングにもよるけど、一ヶ月以内で米国時間が早朝か深夜じゃなかったら、祐次と電話で喋れるかもしんない。あ、米国東海岸時間だJO」
「マジで? 電話通じんの!?」
「電話じゃないんだけど、ク・プリか、もしくは別の宇宙船にいるかもしんない。その時は船の通信機が使えるJO。オイラのスマホには宇宙船通信機機能があるから、運がよければ通じるかもしんない。祐次も今危険いっぱいだから、オイラも武器より医薬品を持っているってワケだJO。ま……大体何かしら事件の只中にいるケド」
「SF世界突入だな」
「米国東海岸時間だと、時差13時間……か。覚えておくよ」
ほぼ昼夜逆転だと覚えておけば間違いない。夜が駄目ということは、日本が夜であれば祐次は電話に出られるということだ。
しかし……祐次が今どういう状態なのかは、さっぱり分からない。米国にいるというだけでなく宇宙船にも頻繁に出かけていくような状況なのだろうか? こうなるとさっぱり想像できない。そこは、どれだけ誘導してもJOLJUは喋らない。
「ま、いいさ。ありがとうJOLJU」
「持ちつ持たれつだJO」
今回はうな重が食えたから、JOLJUも上機嫌だ。
日本まで来た。
これからが本当のスタートだ。
太平洋を渡れば拓たちも米国に着く。祐次との連絡は必須になる。もう乗り越える壁は太平洋があるだけだ。
船はある。武器もある。日本なら食糧も用意できる。
旅立つだけだ。
「多分、一週間で俺たちは東京につくよ。杏奈ちゃんは前島さんにお願いするし、祐次のお陰で大分よくなったって伝えておいてくれ。食い物も東京にいる間はなんとかなる。だから非常用の武器と医薬品、頼むよ」
「了解だJO。武器と薬は必須だしね」
「あ! そうだ、東京のポイントカード! まだ持っていたら貰って来てくれよ。あいつ、もういらねぇーだろ?」
「財布は今も持っているけどまだカードは持ってたっけ? NYドルなら結構持ってるけど、銀行ないから使えないか。ポイントカード……覚えてないケド分かったJO。伝えとくJO~。さ! オイラは帰って、またうな重、満喫するJO!」
「本当お前うなぎ好きだな」
「うな重とお寿司がなかったら、オイラはこんなに日本人を好きにならなかったJO」
えっへん、と胸を張るJOLJU。それを聞いて拓と時宗は苦笑した。
そういえば、最初にうなぎ弁当をご馳走したとき、JOLJUは馬鹿みたいに感激したし、寿司なんか無我夢中で食べていた。あの横浜事件のとき同行しなかったのは、荒川にうなぎを釣りに行っていたからだ。あの頃はまだJOLJUが神だとは知らず、ただの放浪野良マスコットエイリアンだと思っていた。もしあの時知っていたら引きずってでも連れて行っただろうし、仲間が全滅することもなかったかもしれない。結局は祐次の助けには来たが。
なんだかんだいって、JOLJUがいなければ祐次も拓たちも、どこかで死んでいた。他の皆も死んでいただろう。
ヘンテコな奴だが、命の恩人だ。そして唯一人類に味方してくれている神だ。
そう考えれば、最大の功労者はうな重と寿司なのかもしれない。
「じゃあオイラ帰るJO~。今日は暇でよかったJO。でもオイラたちも本当にハードなんだJO? 祐次も今はNYだったり別のところだったり」
「本当、お前らどういう活動してんだ?」
「全米中を色々行ったり来たり。主に東海岸側だけど。中々ハードで楽しい日々だJO」
「エダちゃんは元気?」
「なんでエダの事知ってるんだJO?」
「前回ケーキと手紙貰っただろ?」
「そうだったJO。元気だJO。エダも拓たちと会えること楽しみにしているJO! エダは日本育ちで日本人も日本も大好きだし。だから頑張って来るがいいJO! オイラのまい・らばーだから口説いちゃ駄目だJO?」
「マイ・ラバー?」
人間の女の子に興味があったのか? この生命体。
そういうとJOLJUは「でわ!」と手をあげるとテレポートで消えていった。
「これで一つ、あいつに借りは返したな」
何事も起きなければ、東京で寿司パーティーか寄せ鍋パーティーをしたときでも呼んでやろう。できれば緊急事態で呼ぶようなことは起きないでくれることが一番だ。
あいつを緊急事態で呼ぶときは、本当に切羽詰ったときで、そういうトラブルは起きて欲しくはない。
「出立」1でした。
ということで今回はJOLJUのお土産と米国事情編。
何度もいいますが、米国編のエダ編の半年先の未来の話です。
祐次はほぼ拓たちの行動パターンを掴んでいますね。別に監視しているわけではないですが。
うな重は……いくらエダが料理が上手でも作れないから、感動するでしょうね。多分日本育ちのエダも好きでしょう。JOLJUの株が上がる!
さて、こうして拓たちも<京都>を出発です。
目指すは東京!
ここが故郷でありスタート地点!
ゴールになる人間もいればスタートになる人間もいる場所!
これからも「AL」をよろしくお願いします。




