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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第五章拓編前半
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「巫女」2

「巫女」2



拓たちの歓迎会。

そこに呼ばれたJOLJUは、大喜び!

そしてユイナとの初対面。

だが、JOLJUがおかしなことを言い出す。


やはり彼女は特別な少女?

***



 午後6時21分


 東寺の大広間で、篤志のヴァイオリン演奏会が開かれた。


 <京都>の人間が約300人。そして拓たち。食事の前に、皆で演奏会を楽しもうということになった。


 拓たちも、全員集まっていた。



「相変わらず、すごいな。篤志のヴァイオリン」

「ねー」


 拓の言葉に優美も同意する。


「私たち、ウィーンの音楽科のある高校に留学していたんです。篤志は有名な音楽コンクールで入賞したこともあるんです。作曲だってしてるんですよ?」


 杏奈は誇らしげに微笑む。彼女はマスクをしての参加だ。


「祐次さんからも色々学んでいましたし、篤志、器用なんです」

「あー。だから祐次とも馬が合ったワケね」


 時宗は嘆息をついた。


 祐次もギター好きで、作曲まではしないが編曲したりオリジナル・アレンジをしたりすることは好きだった。もっとも祐次の場合は本職ではなく、ただの暇つぶしの趣味だが、腕は相当なもので、音楽でも十分食っていける才能があった。杏奈曰く、ドイツ滞在時期、よく祐次は篤志と音楽を習ったり音楽会をして過ごしていたらしい。まるで兄弟のように仲が良かった。


「他にも色々祐次さんから教えてもらっていました。この世界の事とか、サバイバル術とか、車の運転とか、医術とか。お兄さんみたいに慕っていました」


 杏奈は懐かしそうに笑った。

 拓は時計を見た。演奏会は6時30分までだ。


「宴会は誰がくんの?」

「徳川さんとその娘さんと大庭さん。他に大内さんっていう京都の防衛隊長の人。宴会はそれだけ」

「随分いい待遇だな? 俺たちただの調達班だぜ?」

「そうだな。ま、ちょっと特別かな」


 それに特別な奴も呼ぶ。徳川はちょっと驚くだろう。



***




「うわぁー! すごいご馳走! 料亭みたい!」


 思わず優美が声を弾ませる。


「ご馳走。日本料理すごい」


 レンも嬉しそうに微笑む。


 驚いているのは、拓たちも同様だ。



「はははっ。そりゃあ、うちらだっていつも食っとるわけじゃないですよ。実は皆さんは口実で旨いモンを用意させるわけですよ」


 徳川は笑いながら座敷に座った。


 そこには色んな野菜の煮付け、鯉の旨煮に焼き物。湯豆腐。サラダ。イノシシと鹿のロースト。鯖の押し寿司に虹鱒の刺身と唐揚げ。酢の物。冷凍苺だ。全て京都らしいご馳走だ。


 そして特別に用意してもらった、うな重だ。


 このご馳走に全員喜んだ。



 こいつも喜んだ。



「やったJO!! うな重だJO~!!」


 うな重を見たJOLJUが、小躍りして喜ぶ。実際本当に20秒ほどどこで知ったのか阿波踊りを踊っていた。本当は日本人なんじゃなかろうか。


 宴会にJOLJUを呼んでやったのだ。


 これまでは厄介事ばかりだったし、日本に着いたら一度呼ぶ、と約束していた。味噌や醤油やみりんなどの調味料や食材が欲しいと言っていたから、それも揃えた。そして何よりうな重がJOLJUの大好物だったのを拓は思い出した。徳川から川魚の養殖を聞き、うなぎの事を思い出した。琵琶湖でうなぎの養殖をしていたり、よく獲れることを京都人である拓は知っている。なので徳川に聞いたら、用意できるというので、特別に12食分用意してもらった。しかもJOLJUの分だけは一匹丸ごと使った豪華版だ。今回はJOLJUへのお礼だ。



「滞在時間1時間だろ? 今回はご馳走するために呼んだから、先食べていていいよ」


 拓がそういうと、JOLJUは挨拶もそこそこに大盛りうな重に食らいついた。そこからは無我夢中、もうJOLJUの頭に拓たちはいない。こいつの大好物なのだ。



「このエイリアンは何だね?」


 当然、初めてJOLJUを見た徳川は驚いたが、拓と、元の姿に戻ったレ・ギレタルが「無害で有能で食いしん坊」「ただの善良野良エイリアン」「一応人類の味方」「知識だけはある奴」「無害なポケモン」と説明したので、とりあえずほっておくことになった。


 他にサ・ジリニが残した手紙があり、それはレ・ギレタルに渡された。


 内容は拓たちに教えてくれなかったが、何か数語、JOLJUと会話していた。


 それから、JOLJUは何か思い出し、「あ、祐次からコレ~」と一冊のノートを篤志に手渡した。前回の召還で祐次も篤志が拓たちと合流したと分かり何か用意していたのだろう。篤志も何か分かっているようで中を確認せず笑顔で受け取った。そして仕事を終えたJOLJUはまたうな重を食べ始めた。



「実は私も会わせたい人間がおりましてね」


 そういって徳川は一旦廊下に出て、そして戻ってきた。


 現れた徳川は、一人の身なりのいい、見るからに雰囲気の違う少女を伴い現れた。



「徳川 ユイナです。初めまして」

「初め……まして……」


 現れた美少女に、拓たちは全員戸惑った。


 濃い銀髪にライトブルーの瞳。肌は雪のように白く、着ている服はおしゃれな女学校の制服のようだ。日本人ではないと思う。14、15歳で、篤志や杏奈と同年代か。


 無邪気な明るさはないが、闇夜に輝く月のような、神々しさがある。


 繊細で可憐で、頬に浮かべた微笑がえらく清らかで特別だ。


 まさに<姫>……もしくは<巫女>だ。

 こんな崩壊した世界には似つかわしくない、神韻とした不思議な放っている。



「ユイナは皆さんに歳が近いから、ユイナも楽しいかと思いましてね。私の姪なのですが……今は娘として育てております」

「ご両親は日本人ではない?」


 日本人には見えない。


「はい。父はロシア人です」

「じゃあ、僕や杏奈と同じハーフですね? 僕たちはドイツと日本のハーフです」と篤志は無邪気に答えた。篤志はこういう時無邪気で人見知りがない。


「私たちは結構日本人顔なんだけど、ユイナさんはロシア系なんだね」と杏奈。

「そうですね。瞳や髪は父に似たようです」

「でも日本語ペラペラですね」

「育ったのは日本ですから」


 同世代の二人が屈託なく語りかけ、ユイナも微笑み頷く。やはり歳がほぼ同じだから、気を使わなくてよく、彼女の緊張もほぐれていく。それで拓たちの空気も和らいだ。



「そう考えると、多国籍だね。ロシア、ドイツ、中国、北朝鮮、で、日本人とク・プリアンと……あ、JOLJU」


 啓吾が笑いながら仲間たちを指差す。その言葉に、皆は笑った。これで場の空気が和んだ。



 その時、ふとJOLJUがどんぶりから顔を上げた。



「……JO……?」

「…………」


 JOLJUを不思議そうにユイナを見て、二人は目があった。


 二人は数瞬見つめあったが、やがてユイナはニッコリと微笑み、JOLJUに手を差し出した。



「JOLJU……というのですね? 初めまして。ユイナです。地球はいかがですか?」

「楽しいトコだJO! ところで……ユイナ? その名前、誰がつけたの?」


 二人は和やかに握手する。


 が、奇妙な質問だった。ユイナは首を傾げ「生まれたときからユイナですよ?」と答えた。

 だが、その後も奇妙だった。



「オイラに何か見える?」

「見えませんよ?」

「オイラ、知ってる?」

「今日、初めてお会いしますよ?」

「…………」


 なんだ? この噛み合わない会話は。


「この子に何かあるのか? JOLJU」


 拓が二人のやりとりを見て入ってくる。JOLJUは意味ありげに一度レ・ギレタルを見た。だがレ・ギレタルは「分からない」と、首を傾げる。


 JOLJUは「ま、いいや」と言って、蒲焼のタレでベトベトになった口元を拭き、熱いお茶を啜った。



「ユイナ、昔の記憶ないんじゃないかだJO?」


 その言葉を聞いたユイナが、目を見開く。


「はい、ほとんど。……気がついたときは母と二人で、世界が滅んでいました。以前の記憶が、ほとんどないんです」


「やっぱ記憶喪失かだJO」


「お前、何でそんな事分かンだ? 見ただけで」と時宗。


 JOLJUはお茶を啜った。


「<ハビリス>の粒子が僅かに残っているJO。それで多分<ハビリス>の影響を何か受けたんだろうなーと思ったンだJO。えーとね……地求人でもね、ええっと……第六感だっけ? そういう自然感覚力を持っている人間が極稀にいるんだけど、<ハビリス>の感化を受ける人間がたまにいるんだJO。で、第六感が<ハビリス>の影響で強化されるんだJO」


「第六感って……霊感か?」


「まあ……日本語で一番近い言葉はそれかしらん? ユイナ、霊感強いんじゃないかだJO?」


 その言葉を聞き、徳川とユイナは顔を見合わせた。


 妙な雰囲気に、拓たちも会話がなんだか妙な話になっていることに気付いた。





「巫女」2でした。



もはや定例となったJOLJU登場!

拓編ですが必ず一度は出てくる特別ゲスト、JOLJU!

何度もいいますが、このJOLJUはエダ編からみて五ヶ月ほど未来のJOLJUです。

そしてユイナ姫も登場!

なんと! 

ユイナの能力にJOLJUは気づいた!??

忘れてしまいがちですがあいつ、アレでも神ですしね。

ワリと馬鹿正直なのでペラペラ喋る奴ですが。

さりげにJOLJUの話にエダ編の<ラマル・トエルム>関連の伏線が入っていたりします。


さて、次回はユイナの用件とは。ただ顔合わせではありません。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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