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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第四章エダ編後半
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「殲滅作戦・結」1

「殲滅作戦・結」1



祐次たちセントラル駅突入!

こうして作戦は最終局面に!

後はこの一帯を爆破して逃げるだけ。

そして最後の囮は祐次とベンジャミン!

だが……。

***



 11月1日 午前11時53分


 NY セントラル駅


 ALが充満する中、一台のバイクが構内に突入してきた。

 まさに強行突入だ。溢れかえるALを蹴散らしながら入ってきた。


 だけではない。


 周囲のALが次々と消滅していく。


 祐次のバイクだ。後部座席にマークが乗り、HKMP5A5を片手撃ちしている。


 だが祐次の武器は銃ではなく、巨大な剣だった。


 最大2.5mまで伸ばしたヴァトスを左手で逆手に持ち、剣をほぼ水平にして振るう。接近していたALは全て刃で切り裂かれ消滅する。祐次はこの巨大な剣を縦横無尽に動かし、至近距離に入るALを全て薙ぎ倒していく。


 その戦い方は、古代ローマの戦車のようだ。戦車が疾駆した後は屍しか残らない。そこをマークが援護して駆逐の輪を広げる。


 祐次たちは真っ直ぐベンジャミンを目指すのではなく、構内をぐるぐると動き回り、片っ端からALを駆逐していった。


 面白いように、ALが祐次の周辺から消滅していった。



「あいつは本当に人間か!?」


 援護射撃をしながらベンジャミンは思わず呟いた。


 掻き回す事で構内のALは減り、その分外のALがさらに多く飛び込んでくる。作戦の上ではもっとも最良の手だ。


 徹底的に掻き回し空白を作ると、バイクを停め三人は降りて戦闘をしながらフロアーを上がり、ベンジャミン、グレンらと合流した。



「奥だ! 来い!」


 ベンジャミンもエントランスに群がるALを銃撃しながら、フロアー奥の事務所エリアに案内する。祐次たちも作戦のため時間が必要だ。


 祐次も元のベンジャミンの作戦を細部まで知っているわけではない。

知っているのは、ここから地下鉄に移動し、水没した地下鉄内を泳いで脱出する。そのための用意として二人分のフィンと40分用の酸素ボンベが用意してあるということだ。泳ぐのは一駅分で、すでに脱出先の駅のシャッターや扉は開けてあるし、迷わず効率よくいけるようにルートにロープが張ってあり水中用ライトも設置してある。準備は万全だ。


 四人は道具が用意されている駅員控え室に集まった。

 そこに移動するまでに、祐次は作戦を説明し終えた。



 作戦自体は簡単だ。



 地下鉄の最深部に設置してあるプラスチック爆弾の傍に特殊爆弾を置く。後は当初の予定通り脱出しセントラルパークに向かう。他の外の自警団たちも全員セントラルパークに避難するが、こっちはアリシアが指揮を執り、今実行中だ。


 潜水脱出するのは、水泳が得意なマークと若いグレン。道案内がJOLJUだ。


「で、俺とお前は?」


 潜水具は二人分しかない。むろん素潜りでは到底移動できないし、フィンはともかく酸素をシェアしたら一駅分は持たない。


「ベン。アンタと俺はバイクで突破だ。突っ走ってワシントン・スクエア公園まで行く。激戦だが、俺とアンタなら出来る」


 最後の最後に逃げる祐次とベンはセントラルパークにはいかない。

 送り狼がついてきて北側に集めたくはない。

 南側に集めておけば、後で殲滅部隊を出して掃討すればいいし、バイク一台が疾走するのであれば、ALも撒ける。



「お前、簡単にいうぜ。7万の中を突っ切って逃げるなんて正気じゃないぞ?」


 さすがのベンも戦慄を覚える。

 どんなに武器を持っても精々500発、二人で1000だ。7万相手に1000発など数にもならない。


「最高速で突っ切れば、追いかけてくるのは精々2、3000だ。俺が後部座席で迎撃するから、アンタはALを避けながら突っ走ってくれたらいい。爆発後は逃げまくれ」

「机上の論ではな」


 ベンはため息をついた。


 確かに他に手はなさそうだ。それにこの作戦でもう動き出している。

 成功させるにはやるしかない。


 祐次とベンたちが相談している間に、JOLJUがラックトップで時間の計算をしていた。



「迷わず行って10分。設置に3分。脱出に15分……酸素はギリギリだけど、なんとかなると思うJO」


 しかし余裕は12分だ。少しでも迷えば溺死で、マークたちも危険だ。当たり前だが地下鉄内は闇の水中で、明かりは後から設置した非常用のライトしかない。だから完全に地形を知っていて水泳が得意なマークを引き込んだ。JOLJUは……多少方向音痴なところがあり、単独で任せるのは不安があった。



「無呼吸潜水なら3分は出来る。時々無呼吸でいけば、5分は稼げると思うぜ」とマーク。

「ところどころ酸素があるスポットもある。途中息継ぎはできるから、10分はなんとかなるぜ」とグレン。


 グレンは元々潜水脱出組で事前の用意にも参加しているし、一度もぐってルートの確認やロープやケミカルライトの設置もしている。ルートは完全に頭に入っていて詳しい。何より水中にだけはALはいないから、その分だけは安全だ。



 決まりだ。



 作戦決行……これが最終局面だ。




***




 マーク、グレン、そしてJOLJUが地下鉄に向かった。使ったのは駅員用の通路で、途中からは浸水して潜ることになっている。


 アリシアたちの撤退も始まった。セントラルパークまで4ブロックほどだが、地上を移動しなければならない。ALの多くはセントラル駅周辺に集結しているが、それでもあぶれたALが周囲に徘徊している。群れを北に引き寄せないため、アリシアたち司令部が屋上からALの動きを監視し、うまく間隙をつき各班の避難の誘導をさせる。


 アリシアたち司令部が避難するのは最後……祐次とベンジャミンが駅から飛び出したときだ。祐次とベンが最後の引き付け役だ。二人が誘導する隙にアリシアたちが避難する。


 これが12時から12時30分の作戦だ。


 この30分でマークたちから無事脱出の報告があれば成功だ。彼らがセントラルパークまで逃げるのに10分。


 つまり祐次とベンジャミンが動き出すまで、40分の休憩があった。


 休むのも仕事だ。

 ベンジャミンは煙草を燻らし、祐次は自分のバッグを漁っていた。



「食うか?」

「何をだ?」

「おにぎり。エダが作った日本の携帯食だ」

「…………」


 意外な提案だった。

 そういうと祐次は保冷バックに入った<爆弾おにぎり>を二つ取り出した。昼食用だ。


「日本食か?」

「ああ。俺たち日本人のソウル・フードだ。冷えても旨いぞ」

「ああ……確かNYにソレの屋台があったな。ハワイアンの屋台だったが。試してみよう」


 ベンジャミンは手を伸ばした。その手に祐次は一つ、包みを乗せた。

 それを開いたベンは物珍しそうに眺める。


「これは<スシ>か?」

「似たようなものだが、生魚は入ってないから欧米人でも食える。旨い」

「…………」


 ベンジャミンは恐る恐る齧った。そしてよく咀嚼し、続けて齧りついた。旨かった。


 祐次も黙っておにぎりを食べた。一つ1合ほどあり、具はツナや塩鮭、スパム、梅干で、卵とハムと海苔を巻いている。米国人でも嬉しい中身だ。



「旨いな。ライスサンドイッチか?」

「そんなもんだ」


 朝6時に食事をして以来二人ともまともな食事はしていない。これだけ働いた後だ。ペロリと平らげた。



「エダ嬢ちゃんが作ったのか? これ」

「俺は全く料理が出来ない」

「お前にも出来ないことがあったか」

「あるに決まっているだろ」


 完璧人間は中々いないものだ。もっとも祐次がこれで家庭生活まで完璧ならば救いがないが。


 そういえば、もう一つ不器用な点が、このサムライにはあったのを思い出した。



「お前たちの仲良し痴話喧嘩は無事解決したのか? よかった」

「何が痴話喧嘩だ」


 祐次はソーダを開け、おにぎりを流し込む。


 相変わらず自分のプライベートはあまり語りたがらない、不器用なサムライだ。


 ベンジャミンもアリシアのようにティーンエイジャの初恋は分からないから助言のしようがない。

 この様子だと解決はまだらしい。


 祐次は話を変えた。



「ところで……武器保管場所には一緒に応急キットも置いていたよな?」

「ああ。お前が口喧しく言っていたからな」

「応急キットはどこだ?」

「弾薬箱の横だが、どうした?」


 祐次は答えず黙って立ち上がると部屋を出ていき、3分後、応急キットを持って戻ってきた。


 そして中から圧迫帯と包帯を取り出すと、タクティカルベストとホルスターを外し、自分の左太ももとわき腹を露出させる。傷口を縛っていた包帯は、真っ赤に染まっていた。さっきの乱戦で傷口が開き、出血していた。


 その傷を見たベンジャミンは驚いた。



「お前! 大怪我しているじゃないか!」

「俺だって人間だ。不死身じゃない。怪我くらいする。大丈夫、傷は大きいが深いところの処置は自分でやった。見た目ほど酷くないし死にはしない」


 祐次は傷をもう一度医療用ホッチキスで止め、血を拭うと、左太ももの傷からもう一度縛り直していく。


 祐次は平然とデスクワークでもするかのように顔色ひとつ変えず手を動かしているが、見ているベンジャミンは驚きで唖然としている。


 普通なら病院に運ばれているようなレベルではないのか。



 だがよく考えれば……病院に運んだところで、処置をするのはこの男本人だ。



「この作戦が終わったらちゃんと処置する。見た目ほど酷くないし、痛み止めも局部麻酔も打っているからそんなに痛くはない」

「大丈夫なのか!?」

「大丈夫だ。気にしてくれるなら、悪いが手伝ってくれないか? 足は自分で巻けるが、腹は巻きづらいんだ。強く締め上げておけば圧迫で出血も止まるし、動いても傷口は開かない」


 祐次がいかに優れた医者で強靭でも、自分の腹を自分で締め上げるのは難しい。JOLJUに頼んだが、JOLJUはそこまで力があるわけではない。


 祐次の理屈を、ベンジャミンはすぐに理解した。


 黙って祐次の後ろに回ると、祐次の手から圧迫帯と包帯を受け取り、きつく締めた。


 その時、ベンジャミンは祐次の背中にある二つの大きな傷を見た。こっちは完治しているが軽くはない。


 こんな化物のような男でも、ALと戦い続ける限り生傷は絶えない。



 考えれば、この男は今回一人で数千のALを相手に戦い、一方面を全て片付けている。普通ならば10人以上必要な任務を一人(JOLJUもいるが)でこなし、今も作戦の要にいる。



「あの30分の時か」

「手術中は出られないだろ?」

「普通は負傷したら交代するもんだ」

「作戦の最中で戦場のど真ん中だ。交代するのも避難するのもできない。どうせ出来ないなら作戦をやり遂げる方がいいし、見た目ほど酷くはない。素人の判断じゃなくて医者が言うんだから間違いない」


 こういう点が、祐次の生意気で可愛げのないところだ。

 心配しても医者の立場を持ち出して気にもしない。祐次以上の医者はいないから、他人も黙るしかない。


「そうやって嬢ちゃんをまた泣かせるんだな、お前は」

「俺の勝手だ。いいから縛ってくれ」


 この若造には、何を言っても無駄らしい。



 しかし……この日本人の英雄的行動がなければ、今回の作戦は失敗だった。そして恐らくもっと死傷者は出た。


 これだけの事をして、負傷者が祐次だけというのは奇跡だ。




「殲滅作戦・結」1でした。


ついに作戦も最終局面です!

祐次、可愛げのない若者(笑

米国社会人からみれば祐次の年齢は駆け出しも駆け出しのまだ未成年枠に近い人間ですからね。それがこんなにふてぶてしく偉そうなのだから大人たちの言葉が出ませんね。

しかし叱りたくても経験値も戦闘力も祐次が上なので何もいえないという、この小憎らしさ。実際のところ、これが祐次のマイナス点ですが、そこを補っているのがエダの存在ですね。エダは愛想と愛らしいさでカバーしています。こうして二人は完璧な関係、と周りは認めているわけですが……当人たちがどこまでわかっているかは……ワカリマセン。


ついに作戦、最終局面です。


後は爆弾を設置して逃げるだけですが、爆弾は光子爆弾で破壊力は想定不能!

そして祐次とベンが逃げ切れるかは未知数! この二人は敵陣正面突破です。


ということでついにクライマックス!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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