「殲滅作戦・転」2
「殲滅作戦・転」2
祐次とJOLJU、トンネル爆破!
その威力はすさまじい!
街、消失!?
作戦を行った祐次は!?
***
祐次がリンカー・トンネルの目の前まで銃撃でALを蹴散らしながら到達した。
もう周囲のALは全て祐次を敵だと認識し、群がってきている。その数は3000だ。普通の人間なら卒倒しそうな状況だが、この程度なら祐次は恐怖を覚えない。
祐次は周囲にいたALを、フルオートで次々と薙ぎ倒していく。いつもなら無駄弾は使わず狙って撃つところだが、装弾数500発マガジンを装着した自動小銃ならばその必要はない。それに弾をばら撒いても、どれかには当たるほど、周囲はALだらけだ。
祐次は腕時計を見る。もう11時9分だ。
その時だ。
「戻ったJO~」
トンネル出口から、JOLJUがふわふわっと飛びながら戻ってきた。
祐次は一瞥し、怒鳴る。
「遅いぞ!! 後5分30秒だ!!」
「これでも急いで帰ってきたんだJO!!」
「乗れ!!」
祐次は一旦M4CQBを背中に背負い、レッグホルスターのグロックG18Cを抜いた。こっちのマガジンも500発だ。これからはバイクを走らせる。大きな銃は邪魔だ。ALはほとんどタイプ1だから、拳銃弾も自動小銃も効果は同じだ。
すぐにJOLJUがバイクの後部座席に飛び乗り、シートベルトを締めた。
「残り5分切ったJO!!」
「爆発はどのくらいの規模だ!?」
「多分5ブロックは吹っ飛ぶと思うJO」
「当たり前の話をするが、そんな爆発が河の水底下で起きたら、大洪水が起きないか!?」
「……あ……起こるね」
IQ3000の天才は、今頃気が付いたらしい。
「逃げないと飲み込まれるぞ!」
「そういえばそうだJO」
爆発から逃げるだけではない。ハドソン川の水量を考えたら、マンハッタンの半分は波に浚われる。バイクがその波に飲み込まれたら一巻の終わりだ。
だが、周囲のALは、さらに増えて3500は超える。数分もすればすぐに4000は超えるだろう。今もゼリー状からALにと変化している。
「JOLJU! お前が運転しろ!」
「分かったJO! ……って、どこ行ったらいいの?」
祐次はバイクのアクセルとシフトから手を離す。だが運転はJOLJUに切り替わり、エンジンは切れない。JOLJUはテレキネシスで運転するから手足が届く必要はない。
「この周囲を2分間掻き回して、セントラル駅に向かえ! 残党をできるだけ引き寄せろ! 声をかけるまでお前が運転だ!」
「おーきーどーきーだJO」
バイクが走り出した。祐次はしがみつくだけだ。そして目に入るALを片っ端から撃ち倒していく。
どこで学んだのか、JOLJUは運転とか操縦が得意だ。祐次よりバイクを巧みに操る。一応方向を変えるときはちゃんとJOLJUが「右行くJO」とか「加速するJO」と声をかけるので祐次も振り回されず、ALの掃討に専念できる。しかもこういう乱戦に慣れているのか、加減も切り回しも抜群に巧い。しかし感覚的にはジェットコースターに乗って戦闘しているような感じで、お互いよほど信頼感が無ければ、これは出来ない。
祐次の戦闘力が高いと判断されたのか……リンカーン・トンネルの中から、これまでいなかった奴が現れた。
タイプ3だ。しかもどうやら1体だけではなさそうだ。
祐次は舌打ちした。こいつは拳銃弾や自動小銃ではどうにもならない。
対タイプ3用のためショットガンも持っているが、タイプ3だけを相手にできる状況ではない。周りにタイプ1がこれだけ溢れていてはまともに相手はできない。
「JOLJU!! 逃げるぞ!!」
「丁度2分経過だJO! 今から脱走するJO!!」
祐次はグロックG18Cをレッグホルスターに戻してハンドルをしっかりと掴んだ。
と、同時に、バイクは一気に加速した。
巧みにALの間隙をすり抜け。10thアベニューを北上し、42ストリートを東に走ればセントラル駅前だ。
祐次とJOLJUのバイクは街を疾走する。
そのすぐ後を、ALタイプ1の群れと、タイプ3、4体が迫る。
「NY公立図書館に向かえ! ブライアント公園手前で運転を代わる!」
「了解だJO!!」
二人のバイクは一気に加速した。ブライアント公園の敷地内に公立図書館がある。そしてそこまで5ブロックしか離れていない。渋滞も歩行者もいないから、大型バイクが80キロで飛ばせば1分で到着する。
祐次とJOLJUがブライアント公園に到着すると、運転を祐次に代わった。
「シートベルトを外せ! 走るぞ!!」
爆発まで後3分だ。
祐次は公園の中にバイクを乗り入れると、公立図書館ゲート前にバイクを停めて、武器の入ったバックとJOLJUを掴み、図書館の中に飛び込む。ここはセントラル駅の目と鼻の先で、この周辺の建物は全ていつでも逃げ込めるように扉の鍵は開けられている。
正面ホールに転がり込むと、祐次は腕時計を見た。11時14分20秒だ。
祐次はJOLJUに扉を閉めるよう命じると、バッグの中にある無線機を取った。
「アリシア!! ベンジャミン!! リンカーン・トンネルを爆破する! 30秒後だ!! 衝撃と爆風に備えろ!! 何が起きるか分からん!!」
『爆破!?』
「戦術核爆弾クラスだ!! とにかく伏せろ!!」
そういうと祐次は返事を待たず無線機をポケットに入れ、近くの窓の傍まで走った。
そして外を見た。
その直後…………西のハドソン川の真ん中で、大爆発が起こった。
***
最初は小さな爆発だった。
その直後、青白い巨大な光の球が川を包んだかと思うと、それが爆発し、閃光がマンハッタン全域を包み込んだ。
そして、次の瞬間、地響きと地震、途方も無い爆発音と凄まじい衝撃波がマンハッタンを襲った。
ビルが砕け、全ての建物のガラス窓やドアが衝撃波で木っ端微塵に砕け散った。
作戦にあたっていた、野外にいた全員がその爆発の衝撃波で地面に叩きつけられた。
そして衝撃波が過ぎ去ったと思った瞬間、今度はバケツをひっくり返した様な豪雨が襲い掛かった。
いや、豪雨ではない。
爆発によって吹き飛んだハドソン川の膨大な量の水しぶきだ。
周囲の湿度が、一気に上がる。爆発によって水蒸気のようになった川の水が、ハリケーンのように吹き荒れる。
まさに嵐だ。
「な……何をしたの!?」
アリシアはずぶ濡れになった顔を手で拭いながら、爆発の中心……リンカーン・トンネルのほうを見て、思わず絶句した。
リンカーン・トンネルは完全に消滅していた。
だけではない。その周囲……7thアベニューあたりの建物も跡形も無く破壊し、巨大なクレーターが出来上がっていた。凄まじい爆発で、川底まで見えた。さらにこの爆発によって、その下流にあるホーランド・トンネルも破壊されたのだろう、ホーランド・トンネルの上の川面に決壊し水が流れて巨大な渦が生まれ、出口からは津波のように水が吹き上がっている。
マンハッタンのミッドタウンは完全に消滅し、セントラルパークより南のマンハッタンの1/6が大きく破壊された。
あまりの光景に唖然となっている時だ。無線機が鳴った。
『無事か!? アリシア』
祐次だった。
「アンタ! 何したの!? 本当に核使ったの!?」
思わずアリシアは叫ぶ。祐次が無事な事を喜ぶより驚きのほうが大きい。こんな破壊力はプラスチック爆弾がいくつあっても出来るはずがない。地形が変わるほどの爆発だ。地球上で一発でこれほどの威力を持つ爆弾は小型戦術核しかない。核爆弾だとしたら放射能で全員の命が危険だ。
『核じゃない。異星人の船から頂戴した爆弾だ』
「一言言ってよ!!」
『俺だって使うのは初めてだ! どうなった!?』
「消滅したわよ! 街も一緒にね!! そしてびしょ濡れよ!!」
『屋内に逃げ込んで正解だった』
「アンタ、どこにいるの!? 無事なの!?」
ようやくアリシアは作戦実行者の祐次の状態が気になった。離れているアリシアたちですら、ほとんど爆発の直撃を受けたかと思うほど強い衝撃波を受けたのだ。この爆発を起こした祐次はもっと爆心地の近くにいる。もっとも祐次は無線で連絡してきているし、声はいつも通りなので、無事なのは間違いないが。
『さすが欧米の古い建築物は頑丈だ。生きているよ』
「どこにいるの?」
『公立図書館だ。JOLJUと一緒だ』
その時だ。無線の向こうでJOLJUが騒いでいるのが聞こえた。何を騒いでいるか、よく聞こえない。
「ドクター?」
『ちょっと休憩してから合流する。ベンジャミンたちのフォローを頼む』
そういうと祐次は無線を切った。
「…………」
アリシアは無線を握ったまま考え込んだ。
あの祐次が休憩、とは?
何か悪い予感がした。
「殲滅作戦・転」2でした。
すごい爆発です! ほぼ核爆弾。
ただし核と違って放射能は出ていません。これでもJOLJUがパワー落としてコレです。
なんとJOLJU、バイクまで運転できるとは!?
脚が届かないのにどうやってギアチェンジしているのか。……念力でやってるんですけどね。
元々JOLJUってエースパイロットしていたので操縦系は何でも得意なんですよね。まぁコイツの場合手足ではなく脳内イメージコントロールだからある意味操縦方法が違いますが。
無事成功したトンネル爆破。
しかし祐次に異変!?
緊迫する物語!
これからも「AL」をよろしくお願いします。




