「殲滅作戦・転」1
「殲滅作戦・転」1
予期せぬ西のリンカーントンネルからの侵略!
対応する祐次とJOLJU。
作戦はこの一帯を爆破すること!
しかし……JOLJUは出てこない……。
***
11月1日 午前10時47分
NY パーク通り
ついにALの群れの先頭が、パーク通りに突入した。
ここまで呼び込めば、後は一直線だ。
ベンジャミン率いる囮部隊は、三度目の武器補給を行った。
この僅かな一瞬……ベンジャミンたちの攻撃が止んだ。
「……何……?」
HK MP5A5を掴んだベンジャミンは、予定域ではない西方向から聞こえる銃声に顔を上げた。
自動小銃の音だ。近くは無いが、遠くでもない。フルオートではなく不規則だ。
西は作戦範囲外だ。人員も配備していない。
ベンは武器弾薬を素早くスクーターに積むと、無線機を掴んだ。
「誰が戦闘しているんだ!? アリシア!」
前線のベンには、何が起きているのか、さっぱり分からない。
『リンカーン・トンネルにALが現れた! 数は推定2000から3000! 今のところはね! もっと増えそう! 本部から迎撃を出したから心配はいらない! ベンたちは作戦に集中して!』
「2000以上だと!? ガブスたちの班が動いたのか!? 大丈夫なのか!?」
ガブスのチームはALの北上を押し留める重要な防壁部隊で、その担当範囲は横一線とはいえ広い。それにガブス以外は第二級の戦闘員で3000ものALを相手にするには100人は抜かないと対処できない。だがそれでは防衛線は守れない。
『心配いらないわ。向かったのはクロベだけだから』
「何!?」
『ドクターだけ! だから作戦に支障はない! 彼なら一人でも2000くらいなんとかするわ! それより――……ちょっと待って』
無線の向こうで何か短い会話が交わされた。
『ベン!! アンタはとにかく自分の作戦に集中して! 西は私とドクターがなんとかする。ただ、11時15分丁度に大爆発が起きるから、それには警戒しておいて!』
「なんだそりゃあ!?」
『いいから作戦に戻って!』
「来るぞ! ベン!!」
ベンの相方役のグレンが叫ぶと、迫るALに向け発砲した。
ベンジャミンはすぐに無線をポケットに入れると、振り向くと同時にMP5のトリガーを引く。
ALは、もう30mのところまで迫っていた。その後ろには、6万5000のALがいる。
……結局、クロベの力を借りるしかなかったか……!
確かに祐次は唯一手空きの予備戦力だった。それだけでなく、唯一の一騎当千、最強の手札で、どんな困難な状況でも祐次なら対処できる。手持ち唯一のジョーカーだ。
……しかし、爆発とは何だ……?
11時15分……後25分だ。
この短時間で何をする気か……皆目検討がつかなかった。
***
リンカーン・トンネルはNYのミッドタウンとニュージャージーを結ぶ三本の水底トンネルで、2.4kmの長さを誇る、NYの大動脈の一つだ。どちら側も大きな坑口で、その出入り口は広く大きい。
この大きなトンネルも、出入り口は大丈夫だが、ハドソン川の下は水没し、車は通れない。そして無数のALが浮いている。
今、そのトンネルを抜けたジャンクションには、無数のALがたむろしている。まだ攻撃態勢にならないのは、目標である人間が見つからないからだ。しかし、連中は恐らくイースト川のALたちに呼応し、少しずつマンハッタンの中心に向かって進み始めている。
祐次は、ミッドタウンのジャンクションの物陰にいた。
JOLJUがトンネルに単独突入して4分が経過した。
JOLJUがALのターゲットにならない、というのは本当のようだ。中に入っていくJOLJUに、ALは一切反応しなかった。
祐次はそっと物陰からM4CQBを構え、出来るだけトンネルに近いALを狙撃して、連中の気をマンハッタンから逸らす。だがあまり効果がない。数が圧倒的に多い。
ざっと見て3000は超える。
殲滅させるか、と思ったが止めた。今戦えばトンネルからさらに現れる。それにロングアイランドのALと違って固まっておらず、散る可能性が高い。さらに作戦中のロングアイランドの群れが、こっちに引き寄せられてくる可能性もある。考えた結果、こっちも同じ方法でセントラル駅まで引っ張っていく事にした。
60体ほど狙撃し、祐次は時計を見た。今、11時3分だ。
「何してやがる、JOLJU」
予定では11時には爆弾を設置し終わると言っていた。5分で出るといっていた。もうじき出てくるはずだ。
爆破の起爆装置は、ごく単純なものだ。デパートで目覚まし時計を手に入れ、タイマーでセムテックス爆薬を起爆。その横に<ケリン・レザド>……反物質光子爆弾を置いて遊爆させる。タイマー式だからのんびりしているとJOLJUも祐次も爆発に巻き込まれる。JOLJUは死なないが、祐次は危険だ。
どっちにしても、爆発ではALは死なない。
もうじき時間だ。
祐次はCB1000Rに跨り、エンジンをかけるとM4CQBのマガジンをノーマルからJOLJUカスタムに変えて左脇に担いだ。バイクの運転中は、右手はアクセルとブレーキを使う。
予定時間の11時5分になった。
まだJOLJUは出てこない。
「相変わらず時間にルーズな奴だな」
祐次はインカムを付けた。インカムの有効距離は200m前後だ。
問いかけると、返事があった。
『戻っている最中だJO~』
緊張感のない暢気な声が返ってきた。インカムの無線が届いたから、出口近くまでは戻ってきているようだ。
祐次はエンジンをかけた。
「バイクで出口まで迎えに行く。勝手に乗れ」
『よーれいほーだJO』
作戦開始だ。
ここは全て破壊される。
吉と出るか凶とでるか……結果は分からない。
「殲滅作戦・転」1
祐次とJOLJU、活躍!
こういうとナンですが、ものすごく珍しく前向きにJOLJUが働いています。
JOLJUはワリと友情に脆い奴なので、友のためだと結構色々しちゃうやつです。
設置はどうやら上手くいきましたが、周囲はALだらけ!
そして本当にうまくいくかは分からない。
ベンたちも作戦進行中!
まだまだこれからです。
これからも「AL」をよろしくお願いします。




