「作戦始まる!」
「作戦始まる!」
ALの一群を殲滅せる作戦。
その推定数は10万。
その大作戦の朝、JOLJUが持ってきた丸秘アイテムとは?
そしてエダの手紙。
ついに作戦は始まる!
***
11月1日となった。
作戦開始は午前10時。作戦予定時間は3時間。
今はまだ午前6時だ。
病院の医師の当直室に祐次とJOLJUはいた。
二人とも、前日は午後8時には寝たから、睡眠も十分で体調も万全だ。
実はJOLJUはある物を持ってきた。
他人に知られるとまずいから、こんな早朝になったのだ。
「改良したし調整もバッチリだJO。これで万全だJO」
そういってJOLJUが四次元リュックから、いくつかの弾の詰まったマガジンを出していった。
「ステアー用2つ。MP5用1つ。グロック用1つ。AR用1つ。DE用1つだJO」
全てマガジンの底が赤い。
「装弾数は先日と一緒か?」
「うんにゃ。先日はテストで300発。今回は最大調整して500発から550発くらい入っている」
全てJOLJUが超科学力で改造したもので、装弾数が約500発という物理的に有り得ない量になっている。普通ここに集められた銃の通常マガジンは全部で180発ほどしか入らないが、ここにあるマガジンには約2500発もの弾が入っている。
普通の人間一人が携帯できる弾数はどんなに頑張っても400発くらいが限界で、それだけ持てば弾が嵩張るし重量で身動きがままならない。これがあればその10倍で、しかも身軽だ。
「お前、これ量産できないのか?」
「祐次以外が持つのはNGだJO。というか厳密には祐次が持つのもNGだから、口外禁止だJO。これこそ完全な反則だJO。ま、反則もバレなきゃいいんだJO」
確かに完全に地球の科学では作れないし、原理すら分からない。
段々JOLJUも暴走気味になっている。祐次にとっては助かるが。
「ちなみにどうやったらそんなに入るんだ? 魔法じゃないんだろ?」
「ゲ・エイルの船に行ったときね、重力制御板を拝借したんだJO。廃艦だしいいやーっと思って。で、ド・ドルトオさんトコから機材借りて、多次元収納空間を作ったの。それはまぁ簡単なんだけど、問題は同じテンションじゃないと駄目じゃん? 後、当然重量は発生するじゃん? だから空間重力の重力定数と空間の物質定数を変えて、ちゃんと三次元で同一均衡になるよう空間重力演算加えて、後はとにかく調整したJO」
「さっぱり分からん」
さすがは30世紀の科学だ。15世紀の科学力しかない地球人には魔法と変わらない。
ただ相当すごい科学力なのは分かる。簡単にいえば、これは四次元マガジンだ。
「もう重力板がなくなったから、これ以上作れないJO。だからなくさないでだJO。マガジンの底が赤いから分かりやすいと思うけど。あ、その赤いのが残弾数確認だJO」
「これが?」
「フル装填だとマガジンの底だけが赤いけど、弾を使うと段々赤いのが上に広がっていくJO。で、真っ赤に変わったら弾切れ」
これは先日にはなかった機能だ。先日テストで使ったとき、残弾数が分からないことが不満だ、と祐次は零した。さすがに300発なんて頭でカウントできない。重さも変わらないから全く残りが分からなかった。ということで、そこをJOLJUは改良した。
原理を聞こうか……と一瞬思ったが、どうせ分からないだろうから止めた。
「こんなに反則尽くめで、<BJ>は怒らないのか? 宇宙の倫理的にいいのか?」
さらに祐次はヴァトスも持っている。もう装備だけは異星人科学満載だ。
「<BJ>の奴なんか知らん! んーとね……アウトなんだけど、一応地球に落っこちてきたものだけを利用したから、オイラと祐次だけなら……まぁ、苦笑いで見て見ぬフリしてくれるJO」
「誰がだ?」
「気にしちゃ駄目だJO」
最近祐次はJOLJUがどういう奴か、よく分かってきた。
こいつは平等博愛主義で誰にでも人懐っこく友達になる奴だが、特別仲良くなった人間に対してはかなり甘くお節介だ。そしてルールよりも親友、というある意味善良なわがままな奴だ。それに宇宙の倫理とかルールとか言っているが、こいつ自身はそのルールより上の存在だから、誰に罰せられるわけでもない。結局全てこのチンチクリンの匙加減なのだ。
しかし、こいつのお節介な分だけ、人類は希望に近づく。文句は言わず貰っておこう。
「ありがとう。今度旨いものでも食わせてやる。サーロインステーキ買ってやる」
「わーいだJO」
「今日はドイツ以来の激戦になる。後ろは頼むぞ」
「任せろだJO! とりあえず、まずは朝ご飯だJO」
そういうとJOLJUはリュックの中から大きなバスケットを取り出した。こいつの四次元リュックも容量の10倍は入る超アイテムだ。
「朝飯?」
「朝ご飯と昼ご飯のおにぎりだJO」
バスケットの中には、アルミホイルに包まれた大きなおにぎりが8つも入っていた。
そして一枚の小さな手紙が。
おにぎりが作れる人間はNYで一人しかいない。
手紙を取り、開いた。中には日本語で短い文章があった。
『ユージへ。
色々ごめんなさい。全てが終わったら、ちゃんと謝罪します。
ユージ、無茶はしないで。必ずアリシアさんと一緒に帰ってきてください。私は貴方の相棒だから。自宅でユージの帰りを待っています。身体には気をつけてください。絶対に生きて帰ってきて。
エダ=ファーロング』
「…………」
「祐次?」
「飯を食おう。で、用意をしてアリシアを迎えに行く。今日は忙しいぞ」
祐次はエダの手紙をズボンのポケットに入れると、無造作におにぎりに手を伸ばした。そしてJOLJUも同じくおにぎりを掴んだ。
二人だけの出陣前の食事だ。
ALとの対決が、待っている。
人類の反撃の始まりだ。
***
午前8時30分 コロンビア大学前
作戦に参加する全員が集結した。
全員、ミリタリー服や軍用ベストを装着し、それぞれ自動小銃やショットガンを手に持っている。
皆の前に、ベンジャミンが立った。
今日はいつもの私服ではなく、ミリタリー服に軍用ベスト、そして軍用ブーツ、レッグホルスターを着けている。愛用の44マグナムは御守のようにショルダーホルスターでぶら下げている。
「これまで、俺たちはあのエイリアン……ALに怯え、逃げ、守るために戦ってきた。だが今日は違う。俺たちは連中に対し攻撃を仕掛ける。初めての試みだが、俺たちは優秀で勇敢だ。何より完璧な作戦がある。NYは俺たちの町で、俺たちの庭だ。俺たちなら出来る!」
ベンは仲間たちを見渡す。
皆、覚悟は出来ている。
「前線は俺が直接指揮をする。全体指揮はアリシアが行う。そのサポートとして、ドクター・クロベが就く。状況によっては俺ではなく全体を把握しているアリシアかクロベの命令を優先して動け」
そこにはアリシアの姿があった。
彼女だけは私服でミリタリー装備はないが、愛用のガルコのショルダーホルスターに愛用のM1911カスタムが吊るされている。病人の格好ではない。
彼女も当初フル装備で身を固めると言っていたが、何かあった時脱がすのに手間取り処置できない、と祐次が認めなかった。他に医療部のリチャードが白衣と私服姿で立ち会っているが、彼は作戦には関わらず病院で怪我人の受け入れのため待機する。
そのアリシアの後ろに、祐次とJOLJU。いつものレザージャケット姿ではなく、タクティカルベストと軍用ズボンをつけている。DEは持っているが、いつものレザーホルスターではなくアンクルマイクスのナイロンのショルダーホルスターに変わっていた。
今回、状況によっては濡れるかもしれないし、胴体を切られたらホルスターも切れる。ワンオフ物の大事なレザーホルスターを劣化させたくないからミリタリー用のナイロンホルスターを用意してもらった。
「今日、俺たちが相手にするALは膨大だ。だが仲間がいる。装備もある。恐れるな。この戦いに勝てなければ、俺たちに明日はない!」
「みんな! 必ず勝てるわ! やるわよ!!」
アリシアが拳を振り上げ気合を上げると、全員が同じように拳を突き上げ、声を上げ、彼らの気勢が空気を震わせる。JOLJUもノリノリで拳を振っていた。
祐次は黙って自警団の面々を見て、アリシアの顔色を確認し、最後にベンジャミンを見た。偶然、ベンも祐次を見て、二人の目線が合った。
ベンジャミンは力強く祐次の肩を掴み、握った。
「頼むぜ」
それだけ言って、ベンジャミンは揺るぎのない強い表情で笑った。
こうして、『ロングアイランド殲滅作戦』の本番は始まった。
「作戦始まる!」でした。
ついに第四章の山場!
<ロングアイランド殲滅作戦>始まります!
この作戦中、エダは自宅なので、祐次とJOLJUの二人がメインになります。
ちなみにエダですが、祐次のことを手紙では「ユージ」と書いています。<祐次>の漢字を知らないんです、実は。まぁユージも自分の名前を漢字で書く機会なんかもうないですし、いくら日本育ちとはいえエダが分かりづらいだろうということでサインはカタカナで書いていたんでしょう。
さぁ、次回から大作戦が始まります!
フル装備しているとはいえ、20人(最大で200人)VS10万!
どうなるか、お楽しみに!
これからも「AL」をよろしくお願いします。




