表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第四章エダ編後半
168/394

「作戦前夜」

「作戦前夜」



二日の陽動作戦。

それをやり遂げた祐次とマークとデズリー。

疲れきったマークとデズリー。

だが一番活躍した祐次は、今度は病院勤務にいく。祐次の体力は化け物か。

だんだん住人たちも祐次の超人具合に気づき始めた。

***




 10月30日 マンハッタン 


 イースト川のマンハッタン川、ウィリアムバーグ橋の傍にあるジョン・V・リンゼイ・イーストリバー・パーク。


 ここには、ガブス率いるAL対策班の臨時拠点があった。とはいえテントと銃火器と弾薬、監視装置、食料、簡易トイレ、水などを置いただけの簡易な場所だが。


 午後19時38分……もう日が暮れている。


 ここから橋は目の前だ。そして、橋には大きな篝火が焚かれ明るい。



「いやがるなぁ」


 ガブスは思わず吐息を漏らす。


 橋の上にも、対岸のブルックリンにも、膨大な数のALが蠢いている。この二日で、ざっと10倍は増えたのではないだろうか。もう5万は超えていそうだ。


 テントのところでは、二人の若者が毛布を被り、焚き火の前で濡れた身体を温めていた。


 マークとデズリーの二人だ。

 二人共、疲労困憊で、座り込んだまま立ち上がる事ができず、温かいコーヒーをゆっくりと啜っている。


 二人はブルックリン……ロングアイランド島での陽動を終えて、川を泳いで帰ってきたばかりだ。体力自慢の若者たちだが、疲れきっていた。



「ご苦労だったな、マーク、デズリー。計画ばっちりだ。エイリアンは大分集まったぜ」


 ガブスは労いの言葉をかけたが、二人はその言葉に感動することはなかった。


 陽動作戦は二日連続行った。そしていつ殺されるか分からない、凄まじい激戦だった。


 だが、彼らにとって信じられない事は別にあった。



「ドクターは……どこ行ったんだ?」

「ベンから連絡があった。今さっき病院に着いたようだ。アリシアの診察だろう」


 それを聞き、二人は顔を見合わせる。



「化物じゃねぇーのか、あのドクター。何でそんな体力があんだ?」とデズリー。

「信じられない。あのドクターが一番戦っていたんだぜ? ほとんど無敵だぜ!?」とマーク。


 陽動作戦のメインは祐次だ。二人は道案内とサポートに過ぎない。その二人でも、激しい戦闘で疲れ切っているのに、一番働いていた祐次はまだ働いているなんて、あの男の体力はどうなっているのだろう。


 ガブスたちは見ていないから知らないのだ。祐次がどれだけ凄まじい働きをしていたかを。



「あのドクター、二日でエイリアンを2000以上は倒したぜ!? しかも200くらいは剣でぶった切っていったんだぜ!?」

「あの凶悪な恐竜みたいなデカい化物エイリアンも、20は倒しているんだ。しかも、俺が知る限り5体は剣で斬り殺しやがった。人間の仕業じゃねぇーよ」


「本当か? あのエイリアン……ALの体液は酸だぞ? 剣なんて使えんだろう?」


「知るかそんなもん。とにかくメチャクチャ倒した。あのドクターが10日連続で出撃したら、半分は倒せるぜ」


 マークもデズリーも大分倒したが、祐次の1割か2割だ。しかも祐次は平然とALの大群の中に飛び込み、反撃一つ受けることなく蹴散らしていった。タイプ3を剣で叩き斬ったときは、二人共冗談かと思った。ヴァトスの威力だ。刃渡りを最大にして群れの中を駆け抜ければALは面白いように倒されていった。そして周囲を排除すると、絶妙のタイミングで後ろにいたJOLJUが銃を渡し、今度は離れたところにいるALを駆逐していく。そうして挑発して、その場を離れる。こうして次々にALを西側に集めた。そして今日の夕方、十分集まったと判断し、川に飛び込み帰って来た。


 と、思ったら、祐次はさっさとマンハッタンの本部に戻って、今度は医者としての仕事をしているという。この働きは誰も理解できない。体力はどうなっているのだろう。



「あのドクターが10人いたら、エイリアンを全滅させられるぜ」


 マークは苦笑しながらそういってコーヒーを啜った。


 祐次の異常さは、その目で見た人間でなければ、いくら説明しても信じることはないだろう。





***






 ベンジャミンは自治体の事務所で作戦の総指揮を執っている。


 住人たちへの対応と処置はなんとか終えた。そしてガブスの班からも準備完了という報告を受けた。後はバリケードと水の防壁を増やす事だが、これは明日一日あれば、なんとかなりそうだ。


 31日は、本作戦の準備だ。迎撃用の銃器をセットし、人員の配置を決める。そしてバリケード組以外の実戦参加者は休ませる。体調が万全でなければ本作戦の成功は危うくなる。


 忙しく働くベンジャミンのところに、食料担当のリーダー、マギーが晩御飯の弁当を持ってきた。そこで彼女の口から、祐次が大学に戻ってきていることを知らされた。




「あいつの体力は底なしか?」


 さすがのベンジャミンも驚いた。


 丁度10分前、ガブスとマークから、祐次の陽動作戦の成果を聞いたところだ。作戦は成功、祐次は凄まじい働きを見せた。本当ならもう家に帰って飯を食って寝ていいのに、あの男はまだ働くらしい。


「日本人は人間じゃないのか?」


 凄いというより、ここまでくると異常人としか思えない。


 祐次のタフさをよく知っているつもりのベンジャミンも驚くのだ。ガブスやマークはさぞ驚いただろう。


 ベンジャミンが避難計画を発表してから、購買部は人で賑わい混雑していた。皆避難のため食料や生活必需品を買い込んでいるのだ。


 が、目立つ男だ。

 肩にJOLJUを乗せているし、居たらすぐに分かる。


 マギーに聞くと、食堂でJOLJUと晩飯を食べた後、購買部に向かったらしい。晩飯が足りなかったのだろう。医者としてよく働いて、かなり金を稼いでいるから、いくらでも食材は買える。


 特に用はなかったが、ベンジャミンは祐次に会うべく、立ち上がった。


 丁度購買部の入口のところで、ベンは祐次と出会った。

 案の定、祐次とJOLJUはサンドイッチやらパンやら惣菜を買って、出てきたところだった。



「ご苦労様。疲れただろう、クロベ」

「ああ、疲れた。だが病院でやることがあってな。ゴードンの処置とアリシアの診察がある。後、緊急用の医療キットの用意もしなきゃならない」

「お前の体力と精力は底なしか? 医療パックはリチャードに頼め。あのオッサンのほうが今は暇だ」

「そうする。そのくらいならリチャードでもできるしな。だが重傷者の処置は俺しかできないから、やるしかない」


 そういってからベンは思わす苦笑した。本当に医療部のリーダーは祐次になってしまった。


「ゴードンとジョエインは今週の投薬と処置を乗り切れば、避難に耐えうる。ただし車椅子を用意してくれ。Bandit(バンデッド)にいたニックはギリギリまで治療するが、こっちも一週間程度なら避難生活できる。アリシアは今夜ちょっと薬を試して、明日本格的に用意する」

「助かる」

「後、悪いがステアーAUGの予備バレルがあったら2本ほど用意してくれ。もうバレルが駄目だ。あるのなら新しいAUGをくれ。フルオートのやつな。ないなら今使っている奴を手入れして使う。ミリタリーモデルでスコープとかダットサイトとか余計なアクセサリーはいらない」


 自動小銃は無限に撃ち続けられるものではない。大体2万発を超えると故障が出る。クリーニングなしだと500発が目安で、バレル交換が必要だ。ドイツで入手して以降手入れはしているが、使い続けているからそろそろ寿命だ。


「用意する。しかしAR系のほうが使いやすいだろう?」


 それにAR系ならば、米国だと簡単に、いくらでも手に入る。メインウェポンとして使うなら一番適している。


 だが祐次の意見は別だった。



「そんなことない。俺にはAUGのほうが使い勝手がいい。セレクターがないし、ワンタッチでバレルが交換できるしブルパップで小回りが利くし片手で使える」


 ステアーAUGは優秀な自動小銃で、オリジナル設計が多い。セミ/フルの切り替えはトリガーコントロールで出来るのと、プラスチック多用で軽く、バレルはワンタッチで交換できる。欠点は最近の自動小銃のようにアクセサリーを沢山取り付けられないことだが、対AL用で使い手が祐次ならそういうアクセサリーはいらない。そういうアクセサリーが必要なときは別のものを選ぶ。


 それに、ステアーAUGを愛用する理由がもう一つ増えた。JOLJUの丸秘道具だ。



「お前、過労で死ぬなよ? 笑うに笑えんぞ」

「アンタもな。シャワーくらい入って髭くらい剃れよ」

「お前は女か?」


 そういえばこの日本人ドクターは毎日入浴するらしい。世界が崩壊した今、ベンたちなど五日に一度入るくらいだ。

 もっとも、祐次たちの家は毎日湯が湧かせるよう改良されているからそれが可能だということもあるし、医者が不潔では患者も不安がる。



「清潔にするのが感染症予防の基本だ」

「オイラは丸秘アイテムの微調整があるから帰宅するJO~」


 JOLJUのほうが疲れているようだ。JOLJUは祐次の肩から飛び降りて、夜食を受け取ると、ふらふらと自宅に向かって歩いていった。



「…………」


 正直……さすがの祐次も疲れきっていた。しかし、まだやることがある。


 体力の問題ではない。疲れなど関係ない。


 もう、人生の残り時間が限られている人間が一人いる。


 アリシアのために、やらねばならないことがある。



「作戦前夜」でした。



祐次、化け物!

一人で一日で2000のALを倒して(つまり二日で4000)川を800m泳いで帰ったと思ったら、本部にいって食事してすぐに病院です。付き添っているJOLJUもヘトヘトなので、かなり疲れているはずですが、仕事がある限りやすまないのが祐次。そう、エダが見ていないと、この男は休むということをしないんですね。この意味からいうとエダの存在は実はかなり重要で、唯一祐次を管理していた人物だったわけです。それをベンジャミンたちもなんとなく察してしまったエピソードです。


しかし祐次のおかげで前作戦は上手く行った模様。

本作戦はこれからです。


そして次回、祐次とアリシア、最後の打ち合わせ!


ハードモード突入です。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ