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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第四章拓編+外伝伊崎・ユイナ編
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「日本の防衛大臣2」

「日本の防衛大臣2」


<京都>の政庁は東寺!

そこで<京都>のリーダー徳川真二郎と再会。

だが伊崎を待っていたのは徳川だけではなかった。

それはまさかの人物だった。

***



 東寺は京都市南区にある東寺真言宗の大寺で、五重塔で有名な寺だ。


 京都駅に近く、九条通りに面し、交通の便もいい。


 歴史は古く、弘法大師の寺であり、真言密教の本山だ。そして世界遺産にも登録されている。

 広大な敷地があり、四方は中世から残る城壁のような壁と堀があり、出入り口は頑丈で大きな鉄門だ。ALの襲撃にも強い。お堂や塔堂は多く、歴史ある大寺は半ば城砦でもある。またここには東寺洛南会館という宿泊所もあり、<京都>の重要人物はここに住んでいる。


 いわば東寺が<京都>の政治の中心だった。



 伊崎と宮本の乗ったトラックは、警備員に案内されて中に誘導された。


 そして東寺洛南会館でトラックを停め、降りた。


 警備から連絡が入っていたのだろう。目的の人物は、すでに外に出て待っていた。


 50過ぎの、恰幅のいい中年の男だ。この崩壊した世界では珍しく、きちんとスーツを着ている。もっとも、伊崎もスーツにネクタイという、サバイバル世界らしくない格好をしているが、伊崎はちゃんと拳銃をシルダーホルスターとヒップホルスター、さらにレッグホルスターにつけているのに対して、松平は丸腰だ。



「元気そうだね、伊崎君」

「そちらも元気そうですね、松平さん」

「あはははっ! いやぁ~、なんとか生きとりますよ。今回も物資、すみませんね」


「じゃがいも、塩鮭、干物、加工肉、野菜、加工食品。牛乳も少し持って来ました。後はガソリンと弾薬と銃……ほとんど38口径と12ゲージのショットガンですがね」


「助かりますわ」



 食料は余剰が出れば分け合う。この物資の融通は定期的に行われている。

 東日本ではガソリン、食料だと野菜や肉、魚が多く、西日本では米や麦や野菜を作る。ガソリンは、新潟で僅かに石油が採れて施設もあり、それを稼動させてガソリンにしている。それ以外にコンビナートなどから取り出して精製している。他に地道にガソリンスタンドや放置車から抜き取ったりしていて、潤沢にはないが、今のところ東日本ではなんとか足りている。とはいえ、こんな生活が後五年続けば、移動の足は車ではなく燃費のいい原付か電動自転車か馬になるかもしれない。


「<京都>では、市内や近隣の移動は自転車が主な移動手段です。この冬の暖房と夜の光源は薪と蝋燭ですよ。その点、寺は便利です。蝋燭は一杯あるし、火鉢もいいもんです。薪ストーブを置いてもなんとかなりますからな」


「江戸時代ですね。遠からずですけど」


「江戸時代で思い出しました。実は私、改名しましてね。今は松平ではなく<徳川 真二郎>ですわ」


「徳川? あの徳川……ですか?」


「一応我が家は譜代松平家です。遡れば……どこかで徳川家康の血が混じっているのは事実です。だから、まぁ……アレですわ。日本は世界一素晴らしい歴史を持つ国です。世界的名族が一家くらい世界に残っているというのは、ロマンチックとは思わないかね?」


「ふむ……ま、元が松平家の大名家出身なら、全くのホラではないですし。それに今は戸籍もヘッタクレもないですから」


 松平は多少茶目と見得を張るクセがあるのを、伊崎は思い出した。


「ありがとう。それに、いい事もある。政治家が徳川だっていうと、なんとなく生存者も安心するだろう? 今では皆、私の事を気軽に<殿>と呼ぶんだよ」


 元々松平……いや、徳川 真二郎は、与党の国会議員だった。多少歳の割に軽いところがあるが、悪い人間ではなく、ちゃんと生存者の生活を真剣に取り組んでいる。日本臨時政府も、その才覚と人望を認めて、彼を<京都>のリーダーとして認めている。


 徳川真二郎は、会館のほうに伊崎と宮本を誘いながら、先導で歩き出した。



「それに、娘は<松平>より<徳川>というほうが相応しい子だからね。あの子は生存者たちから、<姫>と呼ばれて愛されているよ」


 <殿>に<姫>……まさに江戸時代だ。


 こんな時代だ。リーダーとなる人間の人間性を全員が把握することは難しい。いわば愛嬌なのだが、そういった歴史の権威を持ち出すほうが、手っ取り早い人身掌握法かもしれない。徳川という名前ならば誰もが一度聞けば覚える。


「娘? いらしたのですか? 独身では?」


「正しくは姪なのだが……どうやら無事生き残っていて、2年前、島根で救助された。妹のほうはインフルエンザに罹っていて救出後すぐに死んでしまった。今はあの子が唯一の肉親だから、養女として娘として育てることにしたんだよ。そういえば政府には知らせていなかったな」


「家族が再会できたことはいいことですね」と宮本。


「ちょっと変わった娘でね。実は娘を紹介するのが用件の一つだったんだ。それが本題ではないがね」


「おいくつなんです?」

「14歳だよ」

「大変ですね」

「色々とね」


 三人は会館の中に入った。


 ここは元々宿泊所で、徳川家の人間や、<京都>の幹部たち、それを世話する家政婦たちが住んでいる。


「それで……<東京>に用があるというのは何です?」

「私たちは初めて会った相手で色々戸惑ったのだが、聞けば日本臨時政府の関係者だというのでね。ただ他の人間に知られてはまずい。丁度物資交換の時期でもあったし、呼んだわけだよ。君がくるとは思わなかったけどな」

「500kmの遠征が出来る重要人物は俺くらいですよ」


「伊崎さんは少し腰が軽すぎるんですけどね。少し自重を覚えて欲しいものです。貴方は防衛大臣ですよ?」


 宮本が冷たく突っ込む。彼女は伊崎の秘書兼護衛だ。

 だが彼女の苦言も、伊崎は苦笑するだけで、答えない。


 やがて、三人は二階奥の一室にやってきた。


「では、入ってみてくれ。君ならすぐに分かる……らしいよ」



 伊崎は頷くと、ドアを三度ノックしてから、中に入った。


 部屋は10畳の部屋で、和室だ。よく旅館にあるテーブルと座椅子、そしてベッドがある。そして、座椅子のところに、頭からフードを被った長身の人間が座っていた。


 見た瞬間、伊崎に衝撃が走った。



「お前」

「元気そうで何よりだ、伊崎君。こうして再び会えて嬉しいよ」


 そこにいたのは見知った男……いや、見知った異星人だった。



「サ・ジリニ!?」



 そう。そこにいたのは日本臨時政府に匿われていて、そして若者たちを唆して横浜を壊滅させて姿を消した、ク・プリ星人……サ・ジリニだった。


 彼も、死んではいなかったのだ。

「日本の防衛大臣2」でした。


徳川さん……まぁ本編でもいっていますが、本当の徳川さんではないですが、松平さんとなるとたくさんいますし先祖をさかのぼると徳川家に当たるのも多分間違いないので、偽りではない、ですが。


そして、登場したのは、まさかのサ・ジリニ!



プロローグ以来の登場です。


思えば全ての発端は、あの横浜の宇宙船爆発事件から。

あれが生存していた拓や祐次たちは時間も場所も関係なく飛ばされたわけですが、それでいけばサ・ジリニも生きて遭遇しているので、当然生きてどこかにいたわけです。

それまではク・プリ星人は3人ほど日本臨時政府で保護されているので、政府上層部の伊崎は知っているわけです。


さて、サ・ジリニが出てきた理由は?


次回はサ・ジリニが色々語ります。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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