「スタートレックの世界にようこそ」
「スタートレックの世界にようこそ」
帰宅した祐次とJOLJU。
ク・プリの家でもらったデーターを解析したJOLJU。
新しい異星人の存在!?
それは敵か味方か!?
***
10月26日 午前15時16分 ハーレム
祐次とJOLJUは自宅に帰宅した。
エダはいない。この時間だ。まだアリシアの付き添いをしているのだろう。
祐次は一旦荷物を置き、シャワーを浴びに行く。
その間に、JOLJUはリビングでク・プリアンたちから借りてきたラックトップを起動させて、あるデーターを見て難しい顔をしていた。
やがて祐次がシャワーから上がり、タオルローブの姿でリビングにやってきた。
手にはよく冷えたコーラが二本握られていた。そして、一本をJOLJUの横に置き、ソファーに座って自分も飲み始めた。
「この後、祐次はどーすんの? おやつでも食べに行く?」
「病院に行く。アリシアの夕方の回診だ。ついでにベンに作戦の事も聞いてくる。お前は?」
「オイラ、もうちょっとデーターを調べて計算してみるJO」
カタカタッ……とJOLJUはラックトップのキーボードを叩いていた。
「イタリアを出発して五ヶ月。初めて得られた<ラマル・トエルム>の影……か」
祐次もコーラを喉に流し込んだ。
ク・プリアン……ド・ドルトオたちの話は、あれで終わりではなかった。
アリシアを助けるか、どうするか……その決断は祐次に託された。期限は三日間。それ以上の時間は待てない。
祐次もそれで了解した。
その後、30分ほど雑談をしている時、ふとク・プリアンの一人、ス・テズリタという観測士が、JOLJUに意見を求めた。
何でも、未知のエネルギー反応の痕跡を確認したという。
「この太陽系には我々ク・プリが設置した探知衛星が120個ほどあります。そのうち68個は戦闘で破壊されましたが、残りは今も稼動しています。ただし、受信するこちらの船が壊れてしまったので完全にはデーターを把握できないのだが、それでも数値の異常を受信することは出来ました」
屋外に設置してあるパラボナアンテナは、その受信用アンテナだったらしい。
「しかし、よく分からないのです」
「ふむ?」
そのデーターを見せてもらったJOLJUは、首を傾げた。
そして勝手にPCを触り、色々調べ始めた。
そして妙な顔になった。
「ぬ? ぬう……ク・プリアンのみんな、コレ、何か分かんない?」
「母船のメインシステムで解析すれば、もう少し分かると思いますが、未知の粒子風が、ここの地球に向かっていることくらいしか我々には分かりません」
「ちょっとこの一連のデーター、借りていっていいかだJO?」
そういう事で、JOLJUはデーターの入ったラックトップを借りてきた。このラックトップはただのノートPCではなく、ク・プリの科学で改造されている特別製で、JOLJUは使えるが、地球人には操作方法が分からない。
どうやら、あまり人の心理を重視しないク・プリアンたちは気付かなかったようだが、祐次はJOLJUの態度で何を思ったのか分かった。
このチンチクリンは、どうやらその異常現象の正体がすぐに分かったようだ。
そしてク・プリアンには教えたくない、という表情をしていた。
そこは知識と知能だけでも神を超える超生命体だ。
「で? それ、なんなんだ?」
誰にも教えたくなければ、その場で「わからん」と言っただろう。
JOLJUは「うーむ」と腕を組んだ。
「ちょっと想定外のことが起きてるJO」
「想定外?」
「ま、ク・プリやゲ・エイルの科学だと気付かないと思う。コレ、24世紀くらい案件だJO」
「えらく高度だな」
以前した例え話だ。
地球は15世紀。グ・プリが20世紀初頭。ゲ・エイルが21世紀初頭。ALが26世紀。そしてJOLJUは30世紀以上。
これで24世紀というのはかなり高度な科学力だ。
「完全遮蔽した宇宙船の形跡だと思うJO。一隻だけど……この周辺宇宙じゃあ最新鋭の船じゃないかしら? <ヴィスカバル>並だJO。……このクラスの単独宇宙船は珍しいJO」
「ク・プリかゲ・エイルの救援か?」
「それ、ない。実は<BJ>の馬鹿ちんの作った<ハビリス>のせいでほとんどの宇宙船は太陽系に入れないンだJO。でもこの宇宙船、<ハビリス>を破壊せずに上手に突破して太陽系に来てるの。しかもまっすぐ地球に向かってる。亜空間光速移動してると思うから、もう地球近くに来ているはずだJO」
ク・プリアンのデーターを見る限り、ソレはまっすぐ地球に向かっている。
「また異星人が増えるのか? 何しに来るんだ、地球に」
まるでアニメではないか。そんなに地球が珍しいのだろうか。
「そこが問題で……ク・プリやゲ・エイルやロザミィに用があるんなら、一隻じゃなくて艦隊で来るはずだし、こんなに隠れながら来る理由がないんだけど、かなり巧妙に隠れているんだJO。<ハビリス>は外宇宙から太陽系を見ると、ハッキリと見えるから一隻で様子見に来るとは思えないし、第一こんな高度な船、この近辺5000光年内の文明惑星は持ってないはずなんだJO。銀河連合でもトップクラスだJO」
「段々話がSFになってきたな」
到底地球に関係あるようには思えない。
「で……一つ心当たりがあったんで、ク・プリの家にいるとき、オイラ、こっそり確認信号出してみたの。反応があれば確定なんだけど……ま、信号は光速だから近くにいればもう気付いて返事があっていいはずだけど、ないから今は地球からは離れてるのか、無視されたのか、違うのか、だJO。広い宇宙で光速は遅いほうだし」
「敵になるのか?」
「オイラの予想が当たれば、敵じゃないJO。ただ……いるはずないんだけどなぁ……味方になってくれるかもしれないけど、窮屈になるかもしんないし、ALを倒してはくれない。そんでもってとりあえずオイラは叱られる」
「なんだそりゃ。また<神>が増えたりはしないだろうな?」
「大丈夫。乗っているの、色んな星の冒険家だし」
「は?」
「多分……コレ、最新鋭の宇宙探検用の万能戦艦だJO。太陽系で騒動が起きているから様子を見に来たのかもしんない。多分これだけ強い遮蔽装置を使っているから、どこかの文明惑星が派遣したんじゃなくて、宇宙銀河連合の所属船だと思うJO。多分連合の最新の<セーサ・ラファセド>級か、それに匹敵する万能最新戦艦」
「エンタープライズ号か?」
「あー、近いと思うJO。D型かF型だJO」
JOLJUはウンウンと頷いた。
ちなみにJOLJUがこんなに宇宙の事やク・プリとの会談で祐次に色々喋るようになったのは、ドラマ『スタートレック』を観たのも一因だった。
面白かったらしい。
そして祐次も昔観ていて、最近暇な夜はスタートレック話で盛り上がっている。
この結果、地球人は思っているより宇宙の事に理解力がある、とJOLJUが勝手に理解……いや、誤解した。
祐次はすぐにJOLJUの誤解に気付いたが、これは有利な勘違いなので黙っている。
JOLJUが<エンタープライズ号>のD型かF型と言ったということは、宇宙科学世界でも最新鋭戦艦ということだ。
「ロザミィが相手してくれていたら話は楽だけど、オイラが勝手に遊びまわってるってバレたら、説教されそう」
「お前を叱る存在がいるのか?」
「叱られるというより説教というか小言食らうJO。ま、無視するけど」
叱れるな存在はいないが、「何してるんですか!?」と小言をいう存在はいる。
こいつもこいつで色々面倒があるらしい。
「スタートレックの世界にようこそ」でした。
「スタートレック」というタイトルにしたのは比喩ですので、そういう宇宙SF話ほくなってきた、ということです。
実は三章で祐次がゲ・エイルの船で「スタートレックだ」といったのが事の始まりで、その後JOLJUはDVDで観て、「地球人は思ったより宇宙世界に柔軟なのかも」とJOLJUは誤解し、結果今回ク・プリには教えないことを祐次には教えていたりします。まぁ親友だからですけど。
今回も話は宇宙SF! タイトル通りスタートレックを知っていると分かりやすい話ですが、知らなくてもこれ以上専門的にはならないので大丈夫です。
ということで謎の存在接近!
しかも25世紀と今のところ最高科学!
本当に段々SFになってきました!
これからも「AL」をよろしくお願いします。




