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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第四章エダ編
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「究極の選択」

「究極の選択」


アリシアの救命を求める祐次。

同時に知ったベンジャミンの反撃計画。

これによってどちらかを選ばなければならなくなった!


祐次の決断はどっちだ!?


そしてここにきて、初めて<ラマル・トエルム>のヒントが!

***




 話を聞いたク・プリアンたちは黙った。


 こういう場合、どういう話の仕方をしたらいいか、祐次は知っている。ク・プリアンには情で訴えても効果はない。この連中は理屈と利害をはっきりと証明することが一番いい。


「アンタたちはこのNYで8年も暮らしたのなら、NY自治体の世話になっているだろう? 地球人に貸しがある。そしてもっと明確な貸しが俺にある。俺が日本からヨーロッパまで飛ばされたのは、そもそもサ・ジリニの無茶な要望を聞いた結果だし、ドイツでレ・ギレタルを助けて日本に向かわせた。どっちも死に掛けたが、どっちもク・プリから対価を得たわけじゃない」


「対価がないのに、人を助けるのは勇気ある地球人の美徳だな」


「貸しは認めるな? その貸しを返してくれ。アリシアのために、船の救命装置を使わせてほしい」


 これが祐次の本題だ。


 ド・ドルトオたちは黙り、顔を見合わせる。


 何を言いたいかは分かっている。

 これが日本人相手なら、先回りせず相手が言い出すまで待つのが礼儀だが、ク・プリアンは別だ。無神経より賢しい人間を好む。


「ルール違反なのは承知だ。俺たち地球人は、アンタたちの科学を利用できるほどの存在ではないし、文明レベルも倫理観もまだ未熟なのは承知している」


「成程。分かっているのに、君はそれでも我々に要求するのだね?」


「ああ。何故なら、俺の力が必要だからだ。このNYでアンタたちが特別な異星人ク・プリアンだと知っている地球人はいない。ただの変人科学者集団で、3000人の中のただの5人の命だ。特別扱いはされない。だが俺は違う。俺はアンタたちの正体を知っているし、人類のためにアンタたちが殺されてはまずいと思っている。だからアンタたちを守るために戦おう。これでアンタたちは俺にさらに貸しが増える。本当にゲ・エイルとも一戦交えるのなら俺の力は必要なはずだ」


「君が強いという根拠は?」

「俺はコレを持っている」


 そういうと、祐次はベルトに装着していたヴァトスを見せた。


「ゲ・エイルの<ミドレクト・エアラ>用のだJO」


 それを見たク・プリたちの表情が変わった。


 祐次にはいまひとつ分からないが、このヴァトスというのは、JOLJUのいうとおり相当名誉があり貴重なものらしい。



「貴方が作ったわけですか? JOLJU」

「だJO」

「そして授けた?」

「だJO」

「つまり、クロベ君は<ミドレクト・エアラ>と同等の戦闘力があり、それだけの存在だと認めているわけですね?」

「だJO」

「地球人の平均戦闘力より遥かに高い戦闘レベルですが?」


「俺は<BJ>のエノラで戦闘力を強化された。だから強い」


「成程。納得した。随分君は特別らしい。ふむ……確かに君の存在は貴重だ。それは認める。そして、君との協力関係を固めるために一番効果的なのは、アリシアの命を救うという事だね?」


「そういう事だ。さっき、無人島に遭難したようなものだ、と言ったな? 地球の法律では、そういう極限状態のときは<緊急避難>ということで、超法規的な手段が認められる場合がある。ルール違反かもしれないが、俺たちだけに限定すれば、もう宇宙世界のことを知った。このことは誰にも他言していないし、アリシア本人にも言っていない。必要であればアリシアは眠らせて、彼女にも宇宙船の中のことは知らせないようにする」


「ルール違反である上に、技術的にも困難だという事は分かっているかな?」


「それも聞いた上で相談している。貸しを返すのと、将来への投資だと思ってくれ」


 祐次の協力には、JOLJUの協力も含まれる。少なくともJOLJUはク・プリより祐次のほうについている。いわば祐次とJOLJUは一対だ。


 その事は、ド・ドルトオたちにも大きな価値がある。


「君に対する評価が低いわけではない。そうだね……一考はしてみよう。しかし、一つ……ルールや技術的な問題を横において、一つ大きな問題がある。君には関係のない話だったのだが、こうなると関係ある」


「?」


「これを見たまえ」


 ド・ドルトオは立ち上がると、近くのPCデスクの前に移動し、そこで一つの紙の束を手に取り、それを祐次に手渡した。



「君が会いたい、という旨を伝えに来たNY自治体の使者が、コレを置いていった。以前NY防衛のため大量の爆薬を調合したりビルの爆破を手伝ったりした事があってね。ベンジャミンは我々に相談を持ちかけてきた、というワケだ」


 祐次とJOLJUは、そこに書かれた計画書を見つめる。初めて聞く話だ。


 そして、ベンジャミンたちが思いついた作戦は、思っていた以上に大掛かりで大規模だった。



「セントラル駅と周辺を……爆破する……!?」


 一読してすぐ、祐次は顔を上げた。


「AL侵攻を少しでも削ぐため、囲いの一部を解き、マンハッタンに引き込み、セントラル駅に集めて、ALごと駅を爆破して殲滅する。かなり無謀で粗い作戦だが、それは別にいい。問題は、その爆薬をどうやって手に入れるか、です。協力といっても我々の兵器は使うわけには行かないし、そもそも我々の船の兵器システムは機能停止している。ただし方法が一つある」



「あ、そっか。フォーファードで増やせばいいんだJO」


 それなら簡単だし大きなルール違反ではない。

 ダイナマイトでもC4でも、一つ手に入れれば好きな量だけ増やす事ができる。

 しかし……その時、祐次は気付いた。


「そういう事か」


「そうです。私たちが知る限り、船のフォーファードに地球の爆薬は登録していませんから、登録のためメインシステムを起動させるため、いくつか修理をする必要があります。そしてJOLJUの協力を受けてフォーファードを使ったとする。あの巨大なセントラル駅と周辺ビルを完全破壊してALを一網打尽にするほどの爆薬は、膨大です。地球で使われている建築物破壊用爆薬が輸送コンテナ分は必要でしょう」


「船のエネルギーが尽きる?」


「そうなるでしょう。そして、我々は今度のALの襲来に際し、最悪の場合船の緊急転送機を使って別の場所に避難する計画を立てていましたが、それも使えるかどうか怪しい」


 祐次は舌打ちした。


 なんと残酷な二者択一だ。


 ベンジャミンの作戦は、ロングアイランド湾への避難を確実にするためには、絶対必要な一手だ。その重要性を説いたのは、他ならぬ祐次である。そしてベンジャミンが立てた計画こそ、このトラップ作戦だ。


 この作戦自体まだ完全版ではないが、悪い手ではない。それに近いことを東京でやった。おそらくこの計画の根幹は祐次が語った東京作戦からだろう。懸案の爆薬も、フォーファードを使えば手に入るし、調達方法はなんとでも言い訳できる。作るしかない。これだけの爆薬を、この大都市の中で、他で見つかる可能性は限りなくゼロだ。


 そして、それでク・プリの船は廃艦となり、使えなくなる。


 時間があれば、直せるかもしれない。だが一ヶ月では無理だ。ましてやアリシアに救命処置をするのであれば、メインシステムを修復させて、医療システムを直して、色々実験をしなければならない。ここにいる5人は勿論、JOLJUもそれにずっと関わる事になる。


 そこまでやって、アリシアが完全に治癒できる保障はないし、そもそもアリシアの体調が船の修理が終わるまで保つかどうかも分からない。


 そしてアリシアを選ぶ以上、ALの大襲来の危険度は圧倒的に上がり、ク・プリアンや祐次たちも最後の手として考えていた転送機によるNY脱出は使えない。フォーファードの起動くらいであれば転送機の作動は間に合う可能性があるが、アリシアの治療は諦めなければならない。その上そもそもアリシアの治療は宇宙人たちにとってはルール違反で、彼らも進んで選びたい選択ではない。


 祐次はチラリとJOLJUを見た。

 JOLJUも苦虫を噛み潰したような不機嫌な表情を浮かべていた。JOLJUとしても、どっちが最良なのか判断ができない。

 元々JOLJUも困難で成功しがたい話と言っていた。そこにこのベンジャミンの作戦がさらに加わり、話はより難しくなった。



 いや。問題はJOLJUではない。


 決めるのは、祐次だ。


 JOLJUも、ク・プリアンたちも、その決断に従う。いや、JOLJUはともかく、ク・プリアンたちは、祐次がどう回答するか試している。この決断で祐次がどんな人間か分かる。何を大切にするのか、先のことが計算できる人間かどうか。



 祐次はため息をついた。



「悪い。考えさせてくれ」

「いいよ。大きな問題だからね。だが、あまり時間は与えられないよ? 私たちもALに対しては対策を立てなければならないからね。君の決断で、我々の方針も変わる」

「それも分かっている」


 問題が増えた。

 これはエダにも相談できない。エダが知ればきっと祐次以上に悩むだろう。


 話が一旦一息つき、飲み物が用意された。よく冷えたアップルジュースだった。


 ジュースを飲みながらいくつか雑談をして一休みしていた時だ。

 ふとド・ドルトオが祐次に向かって言った。



「もう一つ、面白い話がありました」

「面白い話?」

「貴方にとって重要な事です」


 ニヤリとド・ドルトオは笑った。



「<ラマル・トエルム>……少しですが、思うところがあります」

「…………」



 <ラマル・トエルム>を探す旅を始めて五ヶ月。


 初めて祐次は<ラマル・トエルム>のヒントに触れる。


「究極の選択」でした。



まさに究極の選択!

アリシアの命か、共同体全員の安全か。

問題なのは、アリシアは死ですが、後者は必ずしも死ぬわけではなく回避策もなくはないですが、それでも生存率がぐっと下がる。しかもアリシアを選んでも生存率は100%ではない。


医者ですし、祐次は若干人見知りする奴なので、親しいかそうでないかで態度が違います。アリシアは親しい人間です。


ちなみにある意味こんなすごい会談をあっさり主導するあたり、祐次は実は高い交渉能力と度胸があります。後の続編「黒い天使」では<死神捜査官>としてマフィアから政府相手まで堂々と渡り合えるのは、元々こっちの政治家的才能があったワケですね。


さて! 祐次に与えられた決断。

まぁ……祐次だから、そんなに長くは悩みません。

問題は……エダがその決断を知ったとき……です。


ドラマが盛り上がってきました!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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