表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第四章エダ編
136/395

「今そこにある侵略」

「今そこにある侵略」



祐次が偵察した結果。

もう完全にALに取り囲まれ、その数40万以上。

戦える自警団は200人しかいない。

祐次が守りきれるのはエダだけ。

絶体絶命のNY共同体だった。

***



 USBメモリーの中には、20枚以上の写真が入っていた。

 そのどれにも、ALの群れが映っている。半分はNY……マンハッタンとブルックリン市街で、残りは高いビルに登りニュージャージー方面を撮ったものだ。撮影したのはカメラの高さからしてJOLJUだろう。


 写真を見ただけで、祐次の言わんとするところが分かった。


 ALが多い……なんてものじゃない。大群が群れている。特にニュージャージー側の数は多い。しかも明らかに、このNYに侵攻しようとしている。



 そして、黒緑の体にはっきりと赤い斑模様が浮かび上がっている。先日の橋のときよりはっきりと。



「第四期。あと少しで第五期の凶暴期に入る」

「連中の大群が、また押し寄せるということか」

「しかも今回はとびきり数が多い」


「くそったれめ」


 ベンは苦々しそうに椅子に座った。


 祐次も椅子に座る。そしてJOLJUはテーブルの上に座った。


「ぱっと見て回ったが、ニュージャージー側にはとても行けない。それどころか、完全に封鎖ができていないぞ? 地下の大きなトンネルの周囲にたくさんいた」

「ホーランド・トンネルか? あそこは水没していたはずだ」


 ホーランド・トンネルはNYとニュージャージーを繋ぐ巨大トンネルで、ハドソン川の下を通っている。しかし今はその大半が水没して通れない。ALは水辺が苦手だ。


 だが凶暴期は別だ。それに完全に水没したわけではない。


「確証はないが、周囲をうろついているALが多かったから、ゼリーの塊になってやってきているのだろう。それだけならいいが、もしゼリー状の奴でトンネルが埋まれば、ALの大群が殺到するだろう」

「ゼリーの上を走ってくる、というわけか」


 ゼリー状態のときは浮く。それがびっしり貯まれば、ALの橋が出来上がる。そうなったが最後、ALは大挙して押し寄せてくるだろう。


 対岸は、もはや大洪水目前で、大群が犇いている。今はまだなんとか保っている囲いも、小さな穴一つ空くだけで大決壊に繋がる。


 それは、いつ起きてもおかしくない。


 ベンは苦々しそうに頷き、「手を考える」と答えた。


「差し出た真似をしたくないが、アンタは過去ALの凶暴期の襲来を何度経験した?」

「俺は五度だ。しかし、全方向からやってくるなんて初めてだ。大体一方向か二方向で、逃げる余裕があった。数も最大5万程度だ」


「意外に少ないな。東京が襲われたときは60万だ。あれはかなり例外で多かった。俺は三度だが、世界中放浪したおかげで凶暴期じゃないが大規模襲撃は沢山経験した。俺の感覚だと、今回は最低でも20万。最大で50万はいる」

「しかも囲まれている……と、きたか」


 ベンも先日JOLJUが撮ったALレーダーの写真を見ている。あのレーダーでもマンハッタンの周囲はALの反応だらけで、ざっと見ただけでも30万くらいはいそうだ。さらにその外側にもいれば、50万という数字はあり得る。


「まずいな」


 マンハッタン島はサバイバル生活と通常ALに対して有利な場所だ。大きな川は挟まれ、海に面し、大きな橋とトンネルで結ばれているが、小さい橋はなく、バリケードで封じてしまえば隔離することができる。米国の都市の中では小さいが、元々の人口や建物は多く、物資は豊富。セントラルパークの他、比較的大きな都市公園がいくつもあり、川があるから農業用水には困らない。無駄に大きくない分生存者もまとまって生活できる。


 が……その代わりに囲まれたら逃げ場がない。


 ベンはPCのモニターに、先日JOLJUが入手したALレーダーの画像を出した。


「前回は東から来た。だからマンハッタンの高層ビルに避難してやり過ごした。前々回はニュージャージーから大挙してきた。その時は北に逃げた。他も似たようなものだ。だが、今度はどっちも無理だな。いつ来ると思う?」


「一ヵ月後ぐらいだJO」


「時間が足りんな。3000人の避難の準備に一週間はかかる。仮にどこか避難場所を見つけたとして、そこまで移動して、キャンプや生活の準備をするのに一週間。しかも、そこが安全だという保障は今のところどこにもない」


「俺は情報を伝えに来ただけだ。どうするかはアンタの仕事だ」


「…………」


 ベンは、懐から煙草を取り出し咥えた。静かに火を点けた。


 ベンの何か言いたげな表情を見て、祐次は立ち上がるのを止めた。


「俺に何か用か?」と、祐次。


「何日か前だ。今回のALの襲撃についてアリシアと相談をしたことがあった。そこで彼女は興味深い話をした。お前、エダ君とそこのちっこいエイリアン君の三人だけなら、この包囲網を突破する自信があるというのは本当か?」


「このまま、NYでALの大襲撃を受けるよりは、な。できるかできないか、という話なら、多分やれなくはない」


 こういう言い回しは祐次の癖だ。

 つまり可能だ。絶対、ではないが。


 ベンも、祐次とエダとJOLJUなら、この包囲網の中でも脱出できる気がする。


「お前、化け物みたいに強いからな。で、だ。聞くだけだが……お前、何人なら連れて行ける? 同行者は誰でもいい。自警団を何人連れてもいい。それで10人の子供は守れるか? 20人は連れていけるか?」


 子供はエダだけではない。この共同体には10歳以下の子供が20人はいる。共同体にとっては大切な子供たちだ。


「俺が安心できるのはアンタだけかな? 子供は……二人。俺が守るんじゃない、アンタが守れる数だけだ。だから精々二人だ」


「…………」


「俺はエダを守るだけで精一杯、二人で生き残るなら逃走できる可能性はある。だから他に同行者がいても、俺の力では守りきれない。結局、車に乗る最大人数が限度だと思う」


 いくら祐次でも、ALの大群の包囲の中、子供たちを守って突破する自信はなかった。子供は足手まといになる。エダとは連携が取れるし、助手にもなるし、エダならば何があっても守りきるが、祐次でもどれだけ奮戦しても守れるのはエダ一人だけだ。


 ベンは黙る。祐次の言う通りだろう。


「アリシアは……この街が絶望的ならば、お前と嬢ちゃんだけで脱出させるべきだ、と言っていたが、どうなんだ?」


「…………」


「お前も元々そういうつもりだったのだろう? だから『旅人』と名乗ったし車もキープしている。お前、人探しで寄ったというが、もうここに日本人も東洋人もいないって分かったはずだ。お前の目的が本当に人探しなら、とっくに出て行っている。だが出て行っていない」


「アリシアの件があるからな。医者がいるだろ?」


「そのアリシアは、もう持たないだろう? 言うな、分かっている。お前が奇跡を起こしてくれたとしても、エイリアンの大襲撃があれば助からない」

「……95%は、な」

「その、僅か5%のために、お前は死ぬつもりか?」


 ここに残るということはALの大襲撃の災禍に巻き込まれるということだ。しかもこれまでで最大の襲撃だ。3000人が全滅する危険がある。はっきりいえば、残るということは死ぬということだ。


 そして、祐次が死ぬという事は、エダも死ぬという事だ。

 祐次は答えられず、目線を逸らした。


 その事を考えていないわけではない。正直、凶暴期前の今ならば、エダとJOLJUの三人だけなら逃げられる。

 だが、祐次が去るということは、アリシアが100%死ぬということであり、重傷者のジョエインとベイトも生存し難く、住人たちの多くも死ぬということだ。祐次はそこまでエゴイストになれない。


 だが、決断しなければならない時期に来ていることは、祐次も分かっている。


 猶予は一ヶ月、ない。



「今そこにある侵略」でした。



地図をみないとわかりませんが、俗に言うNYマンハッタンは、中洲の島です。しかもあまり大きくはないのです。なので橋を封鎖すれば隔離できるのですが、逆に囲まれると脱出方法がないんですね。

これまで全方位から同時襲撃ということはなかったのでなんとかなりましたが、今回は同時侵略です。


第一章のロンドベルが500。

第三章拓編の遊園地内が約8000。


と、考えれば、最低40万というのがいかに多いか分かります。


ベンジャミンたちには策はないのか……!?


が、次回なんとJOLJUがある事に気付く!


ということで次回です。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ