「JOLJUの話」
「JOLJUの話」
JOLJUは語る。
JOLJUの昔話。
JOLJUが<神>の力を使わない理由。
そして人類に対する愛情。
***
全てを喋ったJOLJUはスッキリした表情を浮かべていた。
基本的に、こいつは朴訥で愚直で素直で、嘘をついたり人を欺くのが嫌いな<いい奴>なのだ。
「そんな顔するな。別にお前を責めちゃいない」
「ホントに?」
「ああ。気にするな」
いえない事はいえない。
だがJOLJUは出来る限りのことはしている。その事は祐次も分かっている。
「……じゃあ、祐次にだけ……もうちょっと愚痴っていい?」
「何を?」
「いや……本当はもっとガッツリ色々聞かれて……そんで愛想なくされるかと思って」
祐次は苦笑した。
「お前、本当はさっさと話をしたかっただけだろ?」
「そんなこともないJO! オイラ元々馬鹿正直が売りのいい子だもん!」
なんだかんだいって、JOLJUは根が善良でお喋り大好きで、嘘や騙したりすることが嫌いなのだ。
ただ立場的に言ってはいけなかった。それがずっとこのちっこい神には重荷だったに違いない。
「しかし二十歳前後の若い女を使徒にするなんて、<パラリアン>の社会はどうなっているんだか。大人や国とかどうなっているんだ?」
「ぬ? あー、だってもうロザミィしかいないもん、パラ人。基本的には。惑星パラ、消滅しちゃったし。本当は<パラリアン>だって絶滅してたはずだし」
「……絶滅していた……?」
「暗黒物質の侵食と巨大隕石衝突で惑星爆発してなくなった」
それはどうにもならない。
「惑星パラの消滅とパラリアンの全滅の責任は<BJ>だけど、オイラも手が出なかったのも事実だし。でもね? オイラ惑星パラに大親友がいたんだJO。600年ほど前だけど。50年くらい前、滅亡が確実になったとき……オイラはその大親友の子孫の赤ん坊を助けたの。オイラの独断で」
「それがロザミアか?」
「うん。宇宙の倫理も神様のルールも全部無視して、かなり強引にロザミィだけを助けた」
その時だけ、滅多に使わない神の能力をJOLJUは使った。
「で、<BJ>と大喧嘩した、と」
「まあ、そんなカンジかしらん? ま、オイラLV2だから、それで誰かに叱られるとか罰受ける事はないんだけど……さすがに反省もしたから……地球では、ルール違反せずに、ただのJOLJUとして活動することにしたんだJO」
「それで神様らしい能力は全部封印した?」
「まあ……そんな感じだJO。そういう事で今は何もできない、ただのJOLJUになったわけだJO。ただのJOLJUなら、オイラの意志で行動できるから」
「…………」
祐次は納得した。
実は多少おかしいな、とは思っていた。
階級が事実上もっとも上のLV2なのに、ただ知力が高く生物として進化の頂点にあるから、という事は不自然だと思っていた。
答えは簡単だった。
こいつは能力を封印されているのだ。それも罰としてそうなったのではなく、人間と一緒にいたいから自ら封じたというほうが近いのかもしれない。
そして、JOLJUが自分自身を封印する原因になったのは、パラ人の絶滅と、神の力でロザミアを助けた事による自戒と自制からのようだ。
神を超える超生命体が文明社会で接触し、そこで生活する上で守らなければなせない自己ルール。それでもJOLJUは文明社会で生きるほうを選んだ。
それほど、この超生命体は、人間が好きだった。
「分かった。気にすることはない。別に俺は神の力で今の世界を救って欲しいとは思っていないからな」
「そなの?」
「そりゃあそうだ。それこそ人類は自力では何もできない、ただの神の玩具になる。そんな馬鹿な話、認められるか」
祐次は面白くなさそうに言い捨てた。
本心だ。
いくら人類が科学未発達の中世文明種族だといっても、誇りはある。
敵が<神>であっても、唯々諾々と従う気はない。それが人類を滅ぼうという意図であるのならば尚更だ。
その答えに、JOLJUはニッコリと笑った。
こういうところが祐次を好きになった理由だ。ちゃんと自分の意志を持っていて、けして神にも運命にも負けない。ちゃんと自分の意見を持ち揺るがない。JOLJUが特別な存在だと知っても、そのルールを侵して人類を助けろ、とも言わない。飽くまで自分たちの運命は自分で切り開く……という信念がある。
「ルールなんて知ったことか。地球人を助けろ」と騒ぐ人間だったら、こうしてJOLJUは付き合っていない。
「祐次といると、昔を思い出すJO」
「なんだそりゃ」
「昔オイラと一緒に馬鹿ばっかやってた大親友も、祐次みたいな奴だったJO」
「何やったんだ、お前ら」
「世界をぶっ壊した!!」
「最低だな。一緒にするな」
「最近オイラ、楽しくて仕方がないJO」
……それで最近、色々反則スレスレの事を、やり始めたのか……。
JOLJUなりに、祐次たちを特別だと思うから、ちょっとずつ自制の箍が緩んできているのかもしれない。
それだけJOLJUの中で、祐次は特別な仲間になってきているのだろう。
祐次は呆れながら漢方薬をバッグに詰め始めた。
「昔話はいいから、お前も荷物をつめろ。沢山あるんだから」
「むー……」
「年寄りの昔話に付き合うほど暇じゃないからな」
「JO~」
……こういうドライなところも、あいつにそっくりだJO……。
JOLJUはふと、600年前の大親友の顔を思い出し、苦笑した。
あの大親友は、世界を完全に破壊し、新しい世界を創造して、惑星パラ史上最初で最後の惑星統一国家を建国し、最高の大英雄になった。そしてその惑星統一国家も、50年前に惑星ごと消滅した。
地球まで消滅させたくない。
それがJOLJUの決意。単純で、簡単な答えだ。
「JOLJUの話」でした。
今回ちょこっと「AL」の前作に当たる「蒼の伝説」クロスオーバー!
JOLJUが語ったアーガス君との話は、作者が別で書いている架空戦記「マドリード戦記」の姉妹作「蒼の伝説」の主人公の事です。ちなみに「蒼の伝説」は惑星パラの戦国時代の戦争戦記で、ここに4歳~のJOLJUも登場しています。(「なろう」で「マドリード戦記」は公開中)
そのアーガスのシソンのロザミアが、今度は「AL」ではどうやら敵のラスボスぽくてJOLJUとは敵、というのが運命の面白さです。
そして本当は驚倒しそうな話ですが、祐次はドライです。こういうあたり、祐次は現実家であまりそういう話は興味はないのか気にしないのか。しかし祐次は気にしなくても、今回の話は実はそこそこ重要な鍵だったりします。
ということで二人の雑談話は今回まで。
次回はエダとアリシアたちの話です。
今回はアリシア闘病編ですし。
どうなるアリシア!
これからも「AL」をよろしくお願いします。




