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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第四章エダ編
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「暗中模索の中で」

「暗中模索の中で」



漢方薬を手に入れるためチャイナタウンに来た祐次とJOLJU。

しかしここでもALの群れに襲われる。

それを新兵器ヴァトスで撃退した祐次は、JOLJUと漢方薬店に入ったが

そこで色々JOLJUからALの秘密を聞く。

***




NY マンハッタン チャイナタウン


 10月23日。午後15時16分。


 NYの中華街……チャイナ・タウンは、東海岸最大の規模を誇る。世界が健全であれば、ここには数十万人の中国系住人と観光客で賑わっていただろう。だが、世界が崩壊した手間、この街は無人となり、荒廃していた。


 が……この日は一人の男とヘンテコな生命体が30分ばかり暴れまわっていた。


 そして無数のALも群がっていた。

 それを祐次は一人、路上で片付けていた。


「……ふぅ……」


 祐次は息を吐く。


 今、ヴァトスの一閃で、最後のタイプ1を薙ぎ払ったところだ。

 銃で50体ほど、ヴァトスで30体ほど倒した。



「戦国時代の侍は凄いな」


 祐次は額から流れる汗を拭った。


 確かにヴァトスは有効な武器だった。ALの強酸にも耐えられる。しかし完全に耐えられるわけではなく、10振りもすると刃が溶け始める。しかし、その度に一度刃を消して再び出現させればリセットされて、また使えるようになる。これが地球の剣であれば、精々2体切ったところで剣自身が溶けて無くなっているだろう。


 使える事は分かった。銃と違い弾を消費することはないが、振り回すのは想像以上に体力を使う。祐次ほど体力と戦闘力を持っていても、30体も斬り倒せば汗だくになる。ヴァトスはどれほど剣を伸ばしても、大きさに比例して重くはならないが、それでも1kgちょっとの重さはあり、日本刀と大体同じだ。


「そりゃあ、そうだろう。武士も真剣の斬りあいは5分も出来ないって聞いたことがあるな」


 しかし、これでヴァトスが対AL戦で使える事は分かった。

 銃がなくなっても最悪なんとかなるし、このヴァトスの切れ味と刃渡りがあれば、上手く使えばタイプ3も撃退できるかもしれない。現に、今回タイプ2が二体いたが、どちらも嘘のように容易く両断できた。この剣の切れ味は地球にあるどの刃物よりも鋭く、手応えも軽い。


 祐次はヴァトスを元に戻し、ステアーAUGを持ち直すと、近くの漢方薬局に入った。


 中では、JOLJUが分厚い漢方薬の本を広げていた。


 だけではなかった。


 さっきまでいなかったのだが、ALタイプ1が三体、屋内にいた。

 JOLJUはピクリとも動かない。

 ALはJOLJUに襲い掛からず、ただ歩いている。


 だが、祐次が入ってきたと同時に連中は顔を上げた。


 と、一瞬のうちに祐次はグロックG18CでALを狙撃して倒した。



「ふう~! もう~、ヒヤヒヤしたJO」


 バタン、とJOLJUは本の上に寝転がった。


「いつからALがいたんだ!?」

「祐次が外で暴れているときだJO。もう5分くらい」

「お前……よく襲われなかったな」

「うん。動かなかったし。それにオイラ、第一目標サイズじゃないから」


「第一目標?」


「ALはね。優先的に襲うサイズがあるんだJO。大体150cmから200cmが第一目標なの」

「つまり……人間の大人か?」

「そだJO。ク・プリやゲ・エイルもそのサイズだしね。だって動くものみんな襲っていたら、鳥とか動物も襲いだすJO。そんなことなったら非効率だJO。もともとALは対宇宙人用生物型兵器だから、動物じゃなくて人間の大人サイズが目標設定になっているんだJO。そんでもって動くものだJO」


 だからJOLJUは動かなかった。動かなければ身長50cmのJOLJUは攻撃対象ではない。


 そう言われて、祐次も思い出した。


 そういえば、これまで散々JOLJUと一緒に行動してきたが、こいつがALに狙われた事はない。いつだってALの足元をチョコチョコと駆け回ってきたが、襲われたことはない。道理で横浜のときも、こいつは単身ALの大群の中、トラブルなく祐次のところまでやってくることが出来たのだ。


「それだと子供は襲われないのか? エダもか?」

「そこまでは無理だJO。第一目標がいないときは、第二目標サイズ身長80cmから550cmになるJO。だからエダも狙われるんだJO」


 第二目標サイズは、子供から車や戦車の類のようだ。


 成程。確かにALは人と車の場合、人のほうを優先的に襲うし、車に対する反応は人ほど機敏ではない。そして50cmのJOLJUはここでも除外される。



「でも、エダは第一目標じゃないな?」

「エダって身長何センチ?」

「確か145cmくらいだ」

「ギリギリ第二目標だJO」


 もしALの大群に襲われたとしても、まず襲われるのは祐次でエダではない。その時身動き一つしなければ、エダだけは窮地を脱する事ができるかもしれない。


 祐次はもう一度入念に周囲を確認する。その間にJOLJUも自分のALレーダーでALがいないか確認した。どうやらもう周囲にはいなくなったようだ。


「それにしても、100単位の群れが、マンハッタンに当たり前に出るようになったな」


 しかも赤い斑模様がはっきり出ている。

 もう第四期だ。マンハッタン島は封鎖しているのに、100程度の数の群れが頻繁に徘徊するようになっている。祐次も今日、ここに来るまでに250ほど倒した。恐らくゼリー状で渡河してきているのだろう。対岸の数はその何倍も多く溢れ返っているはずだ。




 ……凶暴期はそう遠くない……ヤバいな……。




 だが、今はやることがある。


「少しは漢方について分かったか?」 


 ここに来てすぐに漢方薬の辞典のような本を見つけた。

 これには名前と写真と薬効が載っている。祐次が表でALを蹴散らす間、JOLJUができるかぎり調べる……そういう分担だった。


 JOLJUは難しい顔でページをめくる。


「なんとなくは分かったけど、中々難しいJO。だって、どれ見ても何にでも効果があるし、似てるし、何でも効果がある……みたいなこと書いてあるんだもん」

「それが漢方だからな」


 科学的な西洋医学とは違い、漢方は自然医学だ。成分表がついているわけではないし、科学で判断するものではない。漢方も医者の領分だが、分野は全く別だ。効果があるなしも絶対ではなく個人差が大きい。


 祐次は普通の医者で、しかも本来の専門は外科だから、漢方医療については大学時代習っただけで専門ではなく取り扱ったことはない。それでも一応勉強したので一般人よりは知識がある。


「今アリシアに必要なのは免疫力を上げるものや基礎体力をつける滋養のあるもの、栄養補剤系のものだ。薬用人参系や十全大補湯、冬虫夏草、麻黄、牛黄、乾姜、甘草……このあたりは効果があるはずだ。後は動物系の滋養強壮系もいい。蝮やスッポン、鮫や熊の肝臓、肝油もかな?」


 このくらいの知識はある。


「みんな茶色で干からびていて同じに見えるJO」

「俺にも同じに見える。丸薬になっていたり粉末になっていたりするものはラベルがあるはずだ。的外れでもいいから、それっぽいものを集めるだけ集めてみよう。値段の高い奴も集めておいてくれ。値段が高いほど希少で薬効が高いはずだ。見つけたやつで名前が分かったものは分かりやすく付箋を貼っておいてくれ。あ、日本語でな」


 ラベルは英語か中国語で書いてある。どっちでも読めるが、使うのは祐次だから日本語にしてしまうほうが分かりやすいし、日本語にしておけばエダも分かりやすい。


 そういうと祐次のカウンターの中に入り、物色を始めた。


「普通の薬より分かりづらいJO。でも見事に自然のものばかりだJO」

「そういうものだ。ま、半分くらいは医学的な薬というより、基礎免疫力の向上とプラシーボ効果だからな」

「プラシーボ効果?」

「『治ると信じる気持ちで体調がよくなる』っていう、心理学的な効果だ。ガンも末期になれば科学より患者の気持ちとストレスの軽減が一番の特効薬になったりするんだ」


「うむうむ。やっぱ人間って面白いJO」


 JOLJUは感慨深げに頷くと、本を持ったまま薬品棚のほうに向かっていった。


 この調子だから、今日は分かる分だけ持ち帰るだけになりそうだ。

 勉強をしたり、他の店舗をみたりするのはまた後日の事になる。

 とりあえず18時の診察で何種類か飲ませてみて、様子を見ながら、もっと効果のありそうなものを調べて集める。

 後一時間ほど集めて、後は漢方関係の本を探して病院に戻り、病院で正しい抗がん剤治療を始める。


 多分夜まで忙しいだろう。



「暗中模索の中で」でした。


そう、JOLJUはALに襲われません!

ALにとってJOLJUは敵ではない、のではなく認識されていません。

尚、認識されないのに今回冒頭でJOLJUが動かなかったのは物音には反応してALの凶暴度が上がり祐次が危険になるからで、自分の安全のためではなかったりします。


しかし祐次も米国で漢方を探す羽目になるとは思わなかった。

いくらスーパードクターでも、専門外ですし。それでも一般人よりは詳しいですが。


次回も二人の雑談。意外な話が出ます。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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