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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第三章エダ編・後半
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「その連中、凶暴」

「その連中、凶暴」



拉致された祐次。

エダとの再会。おびえるエダの無事を確かめる祐次。

そして出てきた二人の重傷者。

祐次の腕が試される!

***





 起き上がったスティーブは、仲間たちに銃を下げるよう命じると、祐次の顔面を渾身の力で殴り、さらに腹を蹴り上げる。


 祐次は地面に転がった。


 スティーブは倒れた祐次を掴み上げると、ホルスターから大型リボルバーを抜き、祐次の顎の下に突きつけた。


「今回だけは許してやる。殴りあったのは友情の確認だよな? だが次やったら俺のレイジングブル44マグナムがお前の足を撃ち抜く。俺たちが必要なのはお前の頭脳と腕だけだ。足はいらん」


「分かった。覚えておく」


 祐次は脅しには屈しない。全く怯えない。


 その不敵な態度を見てスティーブは笑った。



「中々ガッツある若造だ。パンチもいい。俺は気に入ったぜ。この友情が続けば、お前らは無事だ」


 祐次は立ち上がり、唇の血を拭った。


「患者を連れて来い。後、清潔な部屋を用意しろ。こんな埃まみれの場所じゃあ話にならん」

「悪いな、ドクター。ここにはそんなスペシャル・ルームはねぇーんだ。それにお前の診察の腕を見てみたい」

「なら作業用のベッドをひとつ用意しろ。トラックの中にアルコール噴霧器がある。ベッドをそれで滅菌しておけ」

「そんなものよりウイスキー1ダースのほうがよほど有難いのに」

「後――」


 その時だ。祐次の視界に怯えながら歩いてくるエダの姿が目に入った。そしてエダも祐次に気付いた。



「祐次!!」


 堪らずエダは駆け出すと、祐次の胸に飛び込んだ。


 祐次は強くエダを抱きしめる。


「祐次! 祐次!!」

「大丈夫だ。もう大丈夫だ。安心しろ」


 我慢していた不安と込み上げる安堵感で、エダは自分の涙を堪える事ができなかった。祐次は嗚咽するエダを強く、だが優しく抱きしめる。



「大丈夫か? 何もされなかったか?」

「うん。何も。ほら、服も乱れていないし……確認してみて……どこも怪我はしていないし、ココも触られていない」


「?」


 エダはそっと祐次の手を掴むと、自分の体を撫ぜさせる。



「!?」


 祐次は気付いた。確かにそこは無事だった。


「ね? だから、変なことはされていないし……祐次のおかげだよ?」

「…………」



 ……アリシアの知恵か……!



 こんなことを想定していたわけではなかっただろう。これがあるということは確かに連中はエダには何もしていない。していれば気付いたはずだ。これは怪我の功名だ。



「おい。イチャついているところ悪いんだが、患者を連れてきた。それとも二人でPublic Displayするんなら、俺たちはビールの用意でもするぜ?」

「黙れ」

「会話は日本語ではなく英語でやれ。俺たちに分からない秘密の囁きはなしだ」


 祐次とエダは二人だけの会話は日本語だ。連中には何を喋っているか分からない。


 祐次は頷いた。


「エダ。今から医者として仕事だ。手伝ってくれるか?」と英語で尋ねる。

「うん。大丈夫。手伝う」とエダも英語で返事をした。

「荷物を運ぼう。ひとつ持ってくれ」


 そういうと祐次はエダを引きつれ、乗せられてきたセダンに向かった。そこには祐次の医療用具が詰まったバッグが二つある。祐次一人でも運べるが、今は少しでもエダと離れたくはない。それにエダが助手である印象をできるだけ連中に与えことが、エダの命綱になる。





***





 患者は仲間たちに背負われてやってきた。


 二人だ。どちらも30代前後の男性で、具合はひどく悪くどっちも自力では歩けない。一人は詳しく調べるまでもなく負傷者で、腕や腹に巻かれた包帯が赤黒く染まっている。


「エダ。マスクと手袋をしろ。そして消毒だ」

「うん」


 祐次もすぐに医療用マスクと手袋をつける。


 スティーブ他三人ばかりが、祐次たちのすぐ近くで状況を見ている。


 消毒されたベッドはひとつしか用意されていなかったので、明らかに急を要しそうな外傷者をベッドに寝かせた。もう一人は近くの毛布に寝かせる。


 顔色を見ただけで分かる。重傷で、そして重症だ。炎症反応が全身に広がり、発汗と悪寒があり脈が弱い。意識はあるがひどく弱っている。


「この男の名前と症状を教えてくれ」

「フレディ=ボート。歳は……30は越えている。エイリアンとの戦闘で腕と背中と足をやられた。血は止まったが感染症を起こしたんだろう、一気に体調が悪くなった。抗生剤は飲ませたぜ」

「症状に適合した抗生物質でなければ効き目は少ない。菌とウイルスでも違う。それに敗血症と腹膜炎を併発させている。ちょっと背中の傷口を見るぞ? エダ、ナイフを」

「はい」


 祐次はナイフを受け取り、フレディの背中に雑に巻かれた包帯をナイフで切り取り傷口を確認した。そして眉を顰めた。


 縫合されてはいるがかなり雑で、傷口は膿み皮膚が裂けて凝固してひどい状態だ。


「どうだ? 治せるか?」

「手術で傷口の組織を切除して整形。背中の傷が腹膜を破り、そこが炎症して腹膜炎を起こしている。そして敗血症もだ。すぐに手術して炎症部分を切除して傷を塞ぎ直す。一ヶ月は集中治療が必要だ。人工呼吸器もいるし大量に輸血と抗生物質もいる。ここじゃあ無理だ。病院に入院が必要だ」

「入院?」

「確約はできん。リチャードじゃあ無理だ。俺が知る限り、今全世界でまとも医者は三人しかいない。その中で一番外科が得意なのは俺だ。つまりはっきりいうが、俺以外の人間じゃあお手上げ……世界で俺しか治せないということだ」

「成程なぁ。すごいな若造」

「動けるようになるまで一ヶ月。全治3カ月かかる。その間は入院だ」


 祐次は立ち上がる。

 ここで処置する気はない。そんなレベルではない。

 しっかりした設備のある病院でなければ手も足も出ない。持ってきた薬では焼け石に水で使っても意味がない。精々解熱剤を打つ程度だ。



「容態安定の鎮静剤と解熱剤と抗生剤を打つ。三度は手術が必要だ。家族は入院の用意をしろ」


 そういうと祐次は薬を取りにいく。


 スティーブが微笑みながらフレディを抱きかかえて、ベッドから降ろした。


「良かったな、フレディ。医者が来てくれたぜ?」


 スティーブの右手が動いた。


「これで楽になるな、フレディ」


 その時だ。銃声が倉庫に響いた。



 命の消えたフレディの体が床に倒れた。



 スティーブの右手には、愛用のレイジングブル44マグナムが握られていた。銃口からはまだ硝煙が昇っている。



 祐次もエダも最初意味が分からなかった。



 愕然と立ち尽くす。



「その連中、凶暴」でした。



今回からバイオレンス系から医療系にかわります(笑


よく漫画とかで死なない程度の大怪我して、布まいて止血して終わり! というのが多いですが、実はほっておくとこうなるよ? という一例です。特に汚い場所にいるので感染症を起こしたり傷口が膿むと……というか実は傷口ってよく膿むものなんですけど……そこから組織が傷ついて酷くなっていきます。


しかし診察したと思ったら……射殺!?

一体連中の狙いは何なのか!?

混迷する祐次たち……はたして!!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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