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VSヤサギ君 4

 はい、なにも対策できずにヤサギ君の前に来ました、リアです。今目の前には、全身が真っ白なヤギが頭で体がウサギの私よりも体が大きい化け物が居ます、ヤサギ君のことですけど。


「リア、今日の分始めていきましょう」


「……お姉さん」


 お姉さんは私のジト目をいつものニコニコした顔で軽くいなした。お姉さんは、外に出るにあたって少しラフな格好になっていた。ダボっとしたピンク色のその服、この服は昨日の時も着ていた服だ。パジャマのようなその格好に私はただ夢女子かななんて頓珍漢なことを思っていた。まぁ、とってもかわいいからなんでもいいけどね。


 なお、今日はすでに翡翠ちゃんはお姉さんのところでふわふわしている。


「リア、ルールをもう一回おさらいするわね、あなたがヤサギちゃんを戦闘継続不可にしたら終わり」


 戦闘継続不可―――即ちぼっこぼこにしろということが終了条件か……私は昨日のことを思い出す。ヤサギ君の突進を避けるばかりで何もできず、そのままヤサギ君がスピードアップ、私はダウン……うん、無理。


「おねえ」


「じゃあ、開始。頑張ってね、リア」


 私の声を遮るような開始の宣言と共に、ヤサギ君が突進を勢いよく仕掛けてきた。


「ちょ、待って」


 目の前から突進をしてきたヤサギ君を私は、右にサイドステップをして避けた。その、1秒後くらいにヤサギ君が渡しいた場所を通り過ぎた。あれ、遅い?いや、遅いわけじゃない。うん、でも。


「はっ」


 ブルっとするという感覚を頼りに前、後ろ、右、左に飛んでいく。この感覚は昨日さんざん感じたものだけど、昨日よりもさえているような気がする。第六感……ともいえるこの感覚がもしもなかったら私はなにもできずにやられていることだろう。


 あと、昨日も少しひかっかったんだけど、私運動神経がよくなっている――まるで私の体じゃないみたいに。いや、この言い方適切じゃないまるでもとからこの体が私本来の体みたいにしっくりはきているけど、今のヤサギ君のスピードが車程度だけど、私はそれをしっかりと認識し、思考し、突進を素早く避ける。現実の私の体ができることではない。今もこんなことを考えながら、ぶるっとするという感覚を頼りに前、後ろを避けている……VR技術って凄いなぁ。そう思うことにしよう。


 で、今は(体が)白モードのヤサギ君だから問題ないけど(体が)黒モードになったら昨日の二の舞だ。だから今のうちにいろいろを考えておかないとダメだ。制限時間は30分といったところかな。よし、いやよくないけど頑張ろうかな。


 右、後ろ、前、前、右、後ろ、前、前、感覚を頼りに避ける。


 だんだんと慣れていくその行為に慢心することなく繰り返していく。その単純行為をしていくうちに徐々に周りの景色が遠くなっていく。今ここには、私とヤサギ君しかいない。ヤサギ君は依然として突進を繰りかえすのみでなぜこの行為を繰り返すのかがわからない。まずはここから考えていくことにしようかな、もしかしたら何か取っ掛かりになるかもしれないしね。


 どうして、ヤサギ君は突進しかしないのかなぁ。昨日もここの点については疑問に思っていたけど、あまり触れることはなかったと思う。仮説1、ヤサギ君な中にその攻撃しかインプットされていない場合。仮説2、そうせざる理由がある場合。頭の弱い私はこれくらいしかうかばないことに呆れを覚えてしまう。まぁいい。


 右、右、右、右っと。


 仮説1から考えてみようかな。ヤサギ君がその攻撃しかしない、つまり馬鹿の一つ覚えともいえるこの行為なのだけど、私はこれはないと思っている。理由としては雪がスライムやウサギを相手した時にも、相手の行動パターンに苦労した、まるで敵が生きているようだなんて聞いた。あの序盤の雑魚敵スライムでさえある。だから、とまではいかないけど、この説は薄いんじゃないかぁって思っている。


 後ろ、後ろ、後ろ、後ろっ。、まだ、依然として白いヤサギ君を無意識を頼りにして避けていく。


 じゃあ、仮説2、なにか突進をしなければいけない理由があるだとか?うーん、ふわっとしすぎていて掴みが取れない。理由なんて適当に考えるだけでもたくさんある。私が美少女過ぎて襲いたくなった、私を掴みたくなったと……あれ?そもそもどうして私だけヤサギ君に襲われているんだろうか。私以外にもお姉さんがいるはずなのにどうして私だけを目の敵のようにしているのかな?


 左、左、左、上っ。リズムに乗るようにして避けていく。


 もしかしたら、些細な理由かもしれない、でも今は藁にもすがりたいのだ。一考するに値するだろう。お姉さんと私の違いなぁ……あれ?私、お姉さんの違いが何もわからない?ダメじゃん。とってもラブリーなんて違いのうちに入らない。


「お姉さん、愛してますよ、ちゅっ」


「…………」


 あっ、ほんの少し口角が上がった、かわいい。うん、戻ろう。


 おそらく何らかの違いのせいで、私が襲われているのは確かだけど、お姉さんの方が強いからとかそんなオチだったら笑えないなぁ。お姉さんのペットという線も……ないけど。


 右、左、右、右。足を滑らさないように細心の注意を払いながら飛ぶ。


 早くも八方ふさがりになってしまった。お姉さんのこともっといろいろ知っていたらよかったなぁ。好きな食べ物だとか、好きな色、すきな……色?お姉さんの服が保護色になっている可能性も一応ある……。ピンク。うん、はい。絶対ないね。この森は木樹が生い茂りもしも保護色だったら緑色とかそんなところだろう。却下で。


 どうしようという焦りはまださほどない。まだヤサギ君は白が少し汚れた程度だからまだまだ余裕がある。でも、もう考えてどうにかなるようなことがないような気がする。


 右、後ろ、右。一拍おいて後ろ。作業感がぬぐい切れない。







 少しずつ変色するヤサギ君のその体に何もできないでいた。ゆっくりとだけど確実に黒色に変わっていくそれはタイムリミットという形で私にのしりかかってくる。いっそ、このままよけ続けてヤサギ君のスタミナをなくそうかなんて思ったりしたけど、絶対に体力がもたないのはわかりきっている。


 まだ、灰色。まだ、いける。






 黒色になりかけのヤサギ君が私のすぐそばを通る。少しかすってしまうほどの。昨日同様、黒色になったヤサギ君は新幹線のような速さで私のタックルをしかけ続けていた。昨日はここらあたりでリタイヤしたんだったけ、今日はまだいける。ただ、もう足に乳酸がたまって辛い。止まってしまえれば楽になる。そんな悪魔のささやきが左右から語り掛けてくる。とまったらぶつかる。止まったら。






「はっ」


 私は、お姉さんの家のベットで目覚めた。いつの間にか気を失っていたらしい。どこから気を失っていたのだろうか。私は昨日のようにベットでいるということに混乱を覚えた。頭がふらふらする。


「おはよう、リア」


 私の右側から少し高めの女性の声――お姉さんの声が聞こえてきた。私はお姉さんを見るために横を向くと、そこには昨日と同じで申し訳なさそうなお姉さんがそこにはいた。


「お姉さん、またダメでした」


「リアにはやっぱり、早かったみたいね」


 私もそうとしか思えない。でも、ね、やっぱりこう思う。


「いや、ヤサギ君はどうにかして倒したいです」


「リ、リア……ごめんな」


「その代わり、もしも私が勝てたら、そうですね、お姉さんと一緒の部屋で寝たいです」


 また、謝罪ループになるのは見たくない。


「……?、!リアっ、それは、ちょっと」


 お姉さんは、最初私が何を言っているか理解できなかったのであろう。首を傾げ、その後私のいっていることがわかって顔を赤くさせた。


「お姉さんも、無茶ぶりをいっているんですよ、これくらい許してください」


 私の頭がぼーっとしているのもあるけど、もしかして変なことを言っている可能性があるかもしれないけど、お姉さんがかわいいからどうでもいいや……眠い。


「お姉さん、すいません。ちょっと疲れがたまっているようなので、少し寝ますね」


「……わかったわ、おやすみなさい、リア」







 お姉さんと朝チュン……?あれ?


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