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VSヤサギ君 3

今日も今日とてログインをすると、私はベットに寝転がっていた。私のお腹あたりに翡翠ちゃんがいることに安心感を覚え少し伸びをした。少し暗いけど、今日も寝ているのかな?


「翡翠ちゃん、おはよう」


 私がその一言をいったら、寝転がっていた私の胸にへばりついていた翡翠ちゃんがピカピカと輝き始めた。どうやら今日は起きているようだ。


「リア、おはよう」


「お姉さん、おはようございます。昨日はいろいろとすいませんでした」


「いいのよ、リア、昨日もいったけど、私がいきなり戦闘なんて、いろいろとステップを踏んでなかったわ」


 どこかいつものニコニコした中に申し訳なさが混じっているような気がした。まだ引きずっているのだろうか、もう別に気にしていないのに……でもこんなことを言っても話は平行線になるだけだろうし、話題を変えることにしよう。


「お姉さん、結局昨日私どうなったんですか?」


 お姉さんは、どう思ったかは、わからないけどいつものニコニコ90%くらいにはなったから合わせてくれるといことだろう。


「あなたをいつでも助けられるように、一応スタンバイしていたのだけど私より先に翡翠ちゃんが出て、あなたを守ったのよ」


「そうなの、翡翠ちゃんありがとね」


 翡翠ちゃんは、私に褒められたのが嬉しいのか激しく点滅した。翡翠色のその光はもうここまで来ると、新緑と言っても過言ではないほどの光。綺麗だよ?でも、まぶしい。


「じゃあ、ヤサギ君は前のあの頭ヤギで体が人の化け物と同じで自害したんですよね」


「ヤサギ君……」


 お姉さんは困惑しているようだ。その様子はどう見ても、異常のような……


「あっ、ごめんなさい。あの頭がヤギで体がウサギの奴を勝手にヤサギ君と頭の中で呼んでいたんですよ」


 私がそう説明すると、お姉さんはあっそうなのねという顔になった。やはり、唐突にヤサギ君という未知の単語を出したのが原因だったのかな……?


「お姉さ……」


「リア?君をつけて読んでいるけどあの子女の子よ?」


 今知らされる衝撃の事実。お姉さんはサラッととんでもないこ――はないけども、ヤサギ君撃破の手掛かりになりそうなものを一つ知ることができた。いや、こんなことよりも話を戻してっと、


「結局、ヤサギ君は自害したんですか?」


 自害なんて物騒な単語をたやすく放っているけど、私はいたって真剣だ?私としてはヤサギ君に勝ちたいなぁと思っ ていたし、もやもやしているこの気持ちを霧払いしたいのである。まぁ、この前の化け物の自害をしているのを見たら、恐らく自害していると思うけどね……


「いや自殺していないわ、リア。ヤサギちゃんは加護の力が……いやなんでもないわ」


「いや、お姉さん、そこで止めます」


 加護って何?何なの?めっちゃ気になるんだけど。


「リア。ヤサギちゃんは、うさぎとやぎ2匹の動物が組み合わさっているでしょ?」


「だからどうしたんですか」


 期待がまったく湧いてこない。今の私はさっきの加護云々にすべてを持っていかれちゃった。


「だから、力が2倍に……」


「それ、この前の人型の化け物も同じく2倍強かったということになるんですけど」


 お姉さんの、その答えは予測済みだった。というかその答えはさすがにないよねなんて思っていたのだけど。


「お姉さん……まぁいいです。絶対に今のままだったらヤサギ君に勝てないので何か武器だとか何かないですか」


 お姉さんの百面相を見ているのも楽しくはあるけど、可愛そうになってきた。なお、お姉さんは私のこの言葉を好機ととったのか、胸を勢いよく突き出した。


「じゃあリア、魔札を使ってみましょうか」


「魔札?」


 始めて聞く単語なので、当然私がわかるはずもなく、どういったものなのかを問いかけた。


「リア、いい?霊札ていうのは、簡単に言ったら霊力を込めるといろいろなことが起こる札よ」


 謎が深まった。札の意味は何となく分かるのだけど、霊力?この前精霊の下りで出てきた単語なのは覚えている。けどお姉さんが酔いつぶれたせいで結局なにかわからないままあやふやになってしまった。


「お姉さん、霊力って結局なんなんですか?」


「あれっ、説明してなかったけ?あの魚を出した夜の日に……あれっ」


 お姉さんは軽く顔を傾げた。


「どうかしたんですか」


「リア、なんか、その日のご飯あたりの記憶がないのよ……なんでかしら」


 本気で困惑していそうなその表情に私は葛藤に襲われることになった。もしも、真実を言ったとしよう。そうすれば、お姉さんの疑問が解けるだろう。ただ、あの酔っぱらったお姉さんがもう見れなくなってしまう。それはとても駄目なことだ。ほっぺすりすりとか見れなくなってしまうのは……悲しい。


 よし!


「お姉さん、疲れてたんじゃないですか?あの後意識を失うように寝たじゃないですか」


「そうだったかしらねぇ、リア……?」


 まだ、過去の自分の行いを回想しているのだろうか、お姉さんが頭を左右に振り子のようにゆっくりと揺れている。押し通せないかなぁ。


「そんな過去の話はどうだっていいじゃないですか、お姉さん!霊力について教えて下さい!」


「どこか腑に落ちないけど、時間も有限ですし……まぁいいでしょう。じゃあリア、今から霊力についてわかりやすく教えてあげるわ」


「よし、じゃなくてよろしくお願いします」


 少し本音が出てきてしまったが、押し通せた。よし。

 お姉さんは、少し納得がいかないけど、まぁいっかみたいな表情の変異をした。


「霊力っていうのはね、簡単にいうとエネルギーの元の物質なの」


「エネルギーの元?」


「例えば、霊力から熱エネルギーにも、光エネルギーにも、電気エネルギーを作り出すことができるわ」


 言いたいことは何となくわかる。けど、そんな便利なものがあるのかなぁ。


「リア多分だけど、あなた今そんな都合のいいものがあるかーって思ってるでしょ」


「なんでわかったんですか」


 思っていることが顔に出ていたのかなぁ?


「私もね、リアと同じで最初はそんな感じだったのよ、そんなものあるわけないじゃないって」


「そうなんですか」


「まぁ、現実はそんなに甘くなかったってすぐにわかったんだけどね、リアもすぐにわかるわ」


 現実?どういうことだろう。


「リア?霊力って、確かに何のエネルギーでも変換できるんだけど、手順がもう複雑てめんどくさくて」


「どういうことですか?」


 お姉さんは指をパチンとした。すると空中からお皿とよくわからない豚肉みたいなお肉がでてきた。


「リア、料理で例えるとね、お肉を食べれるようにしようと思ったら、焼く、煮る、蒸す、除菌の魔術を使うとかがあるけど」


 除菌の魔術?なんとまぁピンポイントなものを。異世界とだなぁ。でも除菌をつかったら、たたきとか、ユッケが作れるなぁ。


「もしも焼くというのを霊力を使ってやろうとすると、まず掌に霊力を留めてその霊力を熱エネルギーに変換、そしてその熱エネルギーに変換する際に焦げすぎないように温度、燃焼持続時間を考え、それをお肉に向かって放出、リア、どう?」


 お姉さんは実演するように、お皿にのったお肉に向かって何かを投げるような動作をした。ただお姉さんの手には何も握られていないように見えた。そして不思議なことに何も触れてさえいないお肉がだんだんと黒く変色していき、香ばしい香りが漂ってきた。


「今説明した動作以外にもやらなければいけないことはたくさんあるんだけど、結局そのまま霊力って使いづらいのよ」


「今の話聞いて霊力についてあまりいい印象を受けないんですけど」


 なんというか、胡散臭いものからまったく役に立たないものにまったくうれしくないチェンジをした。霊力の存在意義が……


 ただ、私のそんな様子は想定済みなのか、お姉さんはニヤリと笑い艶のある黒髪をかきあげた。


「霊力のいいところもちゃんとあるのよ?」


「いいところ?」


「しっかりとリアみたいな健康的な生活を送っている限り無尽蔵ってことと、しっかりとした手順さえ踏めば大体のエネルギーに帰れるってことね」


「うーん」


「で、その手順の一つが霊札ってわけよ、リア」


 私はこのお姉さんの話を聞いてなんというか、その、


「お姉さん、説明下手ですね」


「ねぇ、リア、それ本人の目の前で言う?」


 あっ、しまった、本心がでてしまった。お姉さんは別に傷ついてなさそうだしいっか。


「でね……」






~数分後~






「お姉さん、つまり私使えないじゃないですか」


 霊札はどうやらとても便利なものということはわかったのだが、いざと作ろうと思ったら意味が分からない霊回路というものを覚え、いやそもそも貴重な紙(ブラックボックスでは貴重らしい)、素材を使わないとダメなのは話にならない。


「……リア、ここにいる間は使えると思ったの」


「ここを出るための修業なのに今しか使えないものを使えるようになってどうするんですか」


「そうね」


「いや、そうねじゃないですって」


 本気で今しか使えない霊札を使わせるつもりだったらしく、お姉さんは驚きを隠せないようだ

った。なんというか、お姉さんからポンコツ臭が漂ってきたような気が、が、が、ここはさほど問題ではなかった。


「お姉さん、私にあまり霊力が使ってはいけないってどういうことですか?」


 私は、ヤサギ君撃破から遠ざかっていくのをひしひしと感じ始めていた。

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