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VSヤサギ君 2

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。私はじくじくと焦燥感に焦らされていた。


 ヤサギ君に言葉によるコミュニケーションを試みようとしたら、相手の言葉が全く分からなった。もともとできたらいいな程度でやったことだけど、私に今打つ手がなくなってしまった。


 相手のことを観察もできる限りした。わかったのは最初は体が白かったけど、いまは黒くなっている。この程度である。というか、ヤサギ君はものすごい速さで移動しているので詳しくは見れていないのだけれども。道を行く車に誰が乗っているかなんてわからないみたいな感じだ。


 お姉さんをちらっと見ても、いつも通りニコニコしているだけで何もヒントを与えてくれるわけでも、


 あっ、右に避けるときに重心が横過ぎて、バランスが、っ!


 私はコケてしまった。そう体を横にたたきつけるようなその行為に腕がジーンとしてしまった。急に倒れたのもあってか、私がよけようとしたヤサギ君の突進は私の上を通り過ぎることになった。


「うっ」


 立たなきゃ、立たなきゃ、ジンジンする腕に思考力を奪われながらっ。


 感じなれた悪寒が来たので、私は全力をかけて前に転がりこんだ。服が汚れるとかそんなこと考えている余裕がない。


 ヤサギ君は私が地面に倒れたのを好機と取ったのか、そのウサギの手を突き出して、私がさっきまでいたところに地面に突き刺さった。いままでとは比較にならないほどの速さで突進したらしい。


 その手を突き出した突進は、全力で転がったおかげで手が地面に突き刺さるという形で終わる形となった。


 ゾクッと恐怖感に襲われた。もしも、あそこにいたら……いやそんなことよりも早く立ち上があらないとっ。


 はぁ、ふぅ。立ち上がれた。


 今回のスリップするという致命的なミスは奇跡的に立て直すことができた。これまで1、20分はよけ続けていたので、ミス、自己は起こりうることであったけど、私は意識の外に放り投げていた。最初は避けることに必死だったので、慎重避けていたけど、今の私はパターン化、作業ともなったこの避けるという行為に慢心してしまったのだろう。気をつけなければ。








 状況は依然として変わることがなく、私の中に諦めと現状に対する絶望感に侵食されていた。今のヤサギ君の攻撃は依然としてただ四方八方から車が飛んでくると程度の単純な攻撃ですんでいるのだけど、


 もしかしたら、パターンが変わるかもしれない。


 もしかしたら、このまま避け続ける羽目になるかもしれない。


 もしかしたら……


 不安の種が落ち葉みたいに落ちては落ち、落ちては落ちている。この落ち葉を撤去するために、ヤサギ君の特徴、弱点などを知りたいのだけど、コミニケーションもできない、うさぎもヤギの習性もなにもわからないので落ち葉は積り、積り、積もっている。


 ああ、このままよけ続けるだけだったらいいんだけど……


 そんな私の不安は的中することとなってしまった。


 単刀直入に言おう。ヤサギ君の突進スピードが車くらいの早さから新幹線くらいの早さになった。新幹線は言い過ぎかもしれないけど、目に見えて変わった。


 さすがに、ヤサギ君、怒ったのだろうか。30分近く避けてたらそりゃそうかぁ。ついに来たかという気持ちになった。


 私は、さっきまではなぜか、すぐにヤサギ君の突進が襲ってくる状況に慣れ、するすると避けていたが、今私は、必死になって、はぁはぁ、言いながら、よけ続けることしかできないでいた。


 シャトルランを、限界までしたかのような疲れが、私の体に溜まっていき、もう限界ともいえる状況の中、


「つかまりたくない」


 その一心、で右に、左に避、けてい、た。


 そんな私の、汗、が、頬、、を、顎……をツタ、ウ。ああっ、体gmったく勝手n








「はっ」


「おはよう、元気かしら?」


 私は意識を失ったのだろうか、お姉さんの家にある私の部屋のベットに横になっていた。お姉さんは、いつも通りニコニコしているけど、少し暗さがちらちらしており、私の胸の位置にいる翡翠ちゃんもどこか暗い。


 結局あの後私はどうなったのだろうか。最後あたりの記憶が曖昧でよく覚えていないが、お姉さん、翡翠ちゃんに心配をかけてしまった。


「心配をかけてしまってすいません」


「いいのよ、むしろ私がむちゃな難題を出してしまったことを謝るべきね」


 確かに、ヤサギ君との戦闘は少々、いや絶対私に適正の難易度では……あれ?


「私は、結局あの後どうなったんですか?」


「あなたに限界がきて倒れた時に私がキメラを止めたのよ」


「あ、」


 お姉さんは私の口に人差し指を当てた。何も言うなということだろうか。


「今日はもうこの話はやめにしましょう。今日はもう『寝ましょうね』」


 私に抗がいようのない睡魔が襲ってきた。それはとても心地いいもので、私の瞼がゆっくりと閉じていく。


「おやすみなさい」


 その一言と共に私の意識が深いところまで、落ちていくのが……とても、心地いい。


 ただ、一つ心残りなのは、お姉さんの表情が……


 私が目を覚ますと、周りの景色は自分の部屋になっており、外はもうまぶしくなっていた。







「雪……私の初戦闘経験聞いてくれる?」


「どうしたのよ、そんな神妙な顔をして」


 私は結局どうすればいいのか学校の授業中に考えていたけど、まったく答えがでなかったので、雪に助けを借りよう、そうしようということになった。


 ということで、今はお昼時。いつも通り、教室で私製のご飯をもぐもぐ……というわけではなく、今日は雪の提案でひとけのない場所でご飯をもぐもぐしていた。ひとけのないと言っても美術の準備室ってところだけど。


 雪はなぜか、美術の先生と仲がいいので誘われる形でたまに遊びに来ていたのだけど、今日は唐突に3時間目あたりにこそっと今日は美術室で食べようねと言われたので、唐突だなぁなんて思っていた。なお今は先生はおらず二人きりの空間となっている。


 まぁ、今はそんなことよりもヤサギ君の……


「ねぇ、そんなことよりも先に私の話を聞いてくれるかしら」


「どうしたの?」


 雪はとても真剣な顔をしながら、私の話に割り込んできた。そんなに重大な話なのだろうか、雪が割り込むなんて珍しい。

雪が私の話に割り込みをかけてくるなんて珍しい。


 そんなできる美少女こと雪はおもむろに息を吐き出した。


「あなた、今日エロくない?」


 雪は顔を赤らめながら、ぼそぼそっと呟いた。恥ずかしいなら言わなければ……、うん?


「私がエロい?そんなわけ」


 自慢ではないが、私は高身長でも低身長でもなく、顔も平均的な顔だ、即ち普通のおんにゃの子だ。考えれる可能性としては化粧とかがあるけど、学校は化粧禁止なので別に化粧をしているわけでもない、というかできない。服装も制服アレンジとかもすることない、というかできない。


 そんな私だからこそ棚から牡丹餅みたいな気分になった。いや、意味合いは違うけど雰囲気はあっているだろう。


「あなた……なんか視線を感じない?」


「いや、別に?」


「そうね、私たちが出る前にクラスに人が30人くらいいたでしょ?」


 お昼時というのもあってか、クラスに人がいるのは当たり前だろう。

だが、しかしこんな短絡的な考えはすぐに崩れ去ることとなった。


「その3割はあなたを見ていたわよ」


「うぇっ?」


 その雪の具体的な数字から、私は冗談でしょなんて思えなくなってしまった。


「そうね、他クラスの人も廊下で見ていたりしていたけど気づいたかしら」


 人の視線に無頓着な私はまったく気づかなかった、それが答えだ。今日はなんかちらほら人が廊下にいるなぁと思っていたけど、原因は私だったのかぁ……いや、待って。


「私、化粧もしていないし、今日私これと言ってなにもしていないよ?」


 友達に……いや中のいい親友にあなた今日エロくないと言われた私は、冗談と思いたくなった。思い当たる節は多々あるけど、そりゃね、認めたくなんか……


「その発言はどうかと思うけど、今日のあなたはなんだか食べたいなぁと思うほどなのよ」


 あっ、うん、そっかぁ。


「嘘よ、だからじりじりと私から離れないで、ねぇ」


 なんだ冗談かと思いたかったのに、雪の少し寂しそうなその表情を見ると冗談で片付けられなくなった。裏づけするように今日の雪の様子を振り返ってみると、おかしかったところが多々見受けられた。というか、今日だけで雪と8回くらい目が合った、一限の授業中の間にだ……


 私は雪が寂しそうなので、誤魔化すようにいつものように右手を突き出して雪のそのマシュマロ(比喩)をもむことにした……


「……ぁ」


 抵抗しない?なんで?


 普段、何かとの冗談でその魅惑のプリン(比喩)に手を伸ばすことがあるが、やめてよねと一言で軽くいなされることが常だ、別に本気で揉みたいわけ……あるけど、いつもは苦渋を飲む気持ちで我慢していた。


 あれっ?雪なんか言ってない?


「あっ、んっ」


 聞かなかったことにしよう、このことはなかったことにしよう、そうしよう。私はたしかに女の子のおっぱいは大好物だけど、そのね、わかるでしょ?


 結局、この何とも言えない状況は、美術室の先生が来るまで味わう羽目になってしまった。


 なお帰宅後ヤサギ君の相談何もできなかったことに気付いたけど、後の祭りだった。

方針変換などが原因でストックがなくなってしまったので、明日投稿が遅れるかもしれないです。申し訳ないです。

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