間隙:想う人、待つ人。
空も高いところで、鳥が鳴いた。
青い空を見上げていると、平和になったなぁ、なんて思う。
魔物が地上にたくさんいたころ、そして魔王が君臨していたころは、こんな青空を見ることもなあったからだ。
そう言えば、今私がいる村だってそうだ。こんな長閑な村、昔だったらなかったはずだ。
小さな村の大半は、いつ来るかわからない魔物におびえて、ピリピリしてた。
それも、きっと。勇者様が魔物をすべて倒したから、終わった。
「おや、ミラちゃん。こんなところで何をしているんだい?」
「ああ、ミハエルおじさん。……空を、眺めていたんです」
「空を? 若いのに、渋いことをしているんだねぇ」
「あはは……。その、空を見てると勇者様を思い出すんです」
「勇者様? ……ああ、件の。まったく、ミラちゃんみたいなかわいい子を待たせといて、どこをほっつき歩いているんだろうねぇ」
……違う。
勇者様が私を待たせているわけではない。
私が、勝手に勇者様を待っているだけだ。
……でも、出来れば迎えに来て欲しい、と思う自分もいて。
「……ところで、何でミラちゃんは勇者様を待っているんだい?」
「ああ、それはですね」
いつか、隣で一緒に戦った雄姿を空に見て。
「――お伝えしたいことがあるからですよ」