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しぇあはうす

【第122回フリーワンライ】

逃がさないよ

風呂上がりには

不穏なキスで熱を高めて

例え誰が何と言おうとも、君の感じた事が君にとっての「真実」

写真

#真剣文字書き60分自習練編


使用お題:風呂上がり


*過去に開催した際のお題をお借りしています*

 どうもみなさんこんにちは。またはこんばんは? もしかしたらおはようかもしれないね。君が今読んでる時間帯の挨拶をしたと思ってくれ。

 今から私が案内するのは童話のキャラクターたちが住む集合住宅だ。まあ要するに、いろんな童話のキャラクターたちが一つの家でシェアハウスしてる的な感じに思ってくれれば構わない。私はそこの大家の一人なんだが――毎日面白おかしいことが起こるもんだからぜひ誰かにも見てもらいたいと思ってね。

 そうそう、その玄関をくぐって。何、鍵はあいてるよ。遠慮せずに。さあさあ。ちょっと覗くくらいの気持ちでいいよ。


 そんなおっかなびっくりしなくていい。強いて身構えてほしいとすれば――君たちの知っている彼らが出てくるとは限らないってことくらいだ。おいそこの君、だからといって頭イってるんじゃとか思ってないか。入っていきなり武器振りまわされたどうしようとか。さすがに私もそこまではしないよ。

 だから安心するといいさ。どうぞ楽しんで、いってらっしゃい。


===


「お風呂上がりにはアイスよね~」

「グレーテル、服を着てくれって俺何度言えばいい?」

「良いじゃないの少しくらい。というか出てきたばかりで暑いのよ」

 ヘンゼルがリビングに入ると、そこには下着姿のグレーテルがリビングテーブルの椅子に座ってアイスを食べていた。毎度のことながら辛うじてバスタオルで体は隠れているものの、ちらちらと見える肌色は非常に彼の目についてしまう。健全な男子にはいささか辛いところがあるものだ。

「ん~、やっぱりこのアイス、お菓子の家のアイスより美味しいわね!!」

 そんなヘンゼルの気持ちがグレーテルに分かるはずもなく――否、何度も彼は言っているのに聞いてくれないところから見て、分かってやっている可能性もあるはあるのだが。彼女はパタパタと足をバタつかせてアイスの美味しさに悶えていた。

 それを見たヘンゼルはやれやれと首を横に振り、リビングの隣にあるキッチンの棚から缶ジュースを一本手にとる。

「今日シンデレラは帰り遅くなるって言ってたわよ」

「デートだろ? 何だかんだで律儀に日付変わる前には帰ってくるんだから。なんならそのまま泊っちゃえばいいのに」

「何言ってるの兄さん。本当デリカシーがないわね。女の子の気持ちが分からないの? そう簡単にできるものじゃないわ」

 眉をひそめる妹に、デリカシーがないのはどっちなのか教えてくれ、と小さく彼は呻く。

「何か言った?」

「いーや? 他の奴らは?」

 キョトンとした顔をし首を傾げるグレーテル。ヘンゼルは否定し誤魔化してから、缶ジュースの蓋を開けつつ妹に問いかけた。彼がそれを飲んでいると、彼女は首だけこちらに向け、アイスをスプーンですくいながら言う。

「赤ずきんと狼はバイト。白雪姫は部屋にいるし、いばら姫は……多分寝てるわねあの子。バイトの二人は夕飯食べて帰るから要らないってチャットがあった」

「それは見た。ってことは四人分か」

 今日の夕飯はヘンゼルの担当だ。基本的にこの家の家事は全員で役割を分担しローテーションで担当していく。ちなみに風呂掃除をした人は一番に入ってもいいことになっているので、グレーテルは今日風呂掃除の担当だったのだろう。

「あぁ、ロバのおじさんから貰った野菜が冷蔵庫の中に入ってるわ。いつも町内掃除手伝ってくれてありがとう、って。お礼だそうよ」

 ヘンゼルはそう言われて冷蔵庫の戸を開ける。そこには主に根菜類の野菜が入っていた。彼はそれを見て顎に手を当てて少し悩んだ様子を見せた。

「豚汁でも作るかなぁ……」

「あらいいじゃない。豚汁」

 彼は冷蔵庫の中から大根とにんじんやこんにゃく、余っていた豚肉などを取り出してキッチン台に並べる。次に包丁とまな板を用意して、野菜をを順に洗っていった。

「ここにこぶたらいなくて良かった」

 豚肉をちらりと見てヘンゼルは呟く。するとどこかむっとした声のグレーテルの言葉が返ってきた。

「兄さん、ちゃんと名前で呼んであげて。こぶたじゃないでしょ。トニーとジャックとマークよ」

「あいつらヤケにイケメンだからなんかムカつくんだよ」

 イケメン三兄弟の顔がヘンゼルの頭に浮かんだ。苦々しい顔をして彼は調理をし始める。かつては一緒に遊んだ仲だというのに何故ここまで未来は変わるのかと思いながら。

「本当イケメンよね!! 最近テレビでもよく見るわ」

 一方で同じく頭に浮かぶ三兄弟に、うっとりと目を輝かせているグレーテル。彼女の言葉にヘンゼルは一度手を止めた。

「何? テレビ? ちょっと待って、俺それ知らないんだけど」

「知らないの? 彼ら、スカウトされて一躍有名人になったのよ? 元々SNSでちょっと名の知れた人気者だったのも乗じて、最近バラエティー番組に引っ張りダコよ」

「はぁ!?」

 何だそりゃあと、驚きで持っている包丁を投げそうになったヘンゼルは何とかその気持ちを抑える。グレーテルはテレビのリモコンを手にすると、点いているそれのチャンネルを回していった。

「今日だってどこかに……ほらいた!!」

 包丁を一度置くとヘンゼルはテレビの前へ向かった。映っているのはとあるバラエティー番組。その画面の向こう側には、出演者とにこやかに談笑するあの三兄弟の姿がある。

「あぁもうイケメン……」

 また口元をニヤけさせる妹の姿を見て、ヘンゼルはこんなやつのどこがいいんだかと独り言を言う。

「兄さん、もしかして嫉妬してる?」

 グレーテルもグレーテルで、そんな兄の姿を見て茶化すような言葉をかけた。

「まさか。何で俺がこんなやつらに嫉妬しなくちゃいけないんだよ」

「だってさっきっから不満ばっかり」

 するとヘンゼルはテレビの画面を勢いよく指さして口を開く。

「小さい頃一緒に泥沼に入って遊んでた友達がこんなんになってたら誰だってこうなるだろ!!」

 その言葉で彼女はある程度納得した。あぁ、なるほどね、と。一緒に散々遊んで怒鳴られてたのに、手の届かない遠い人になってしまった気がするのが嫌なのだろうと彼女は考えた。

「私は誇らしいわよ。友人が有名人になったんだもの」

 その気持ちが分からなくもないグレーテルだったが、彼女は特段気に留めることはなかった。ヘンゼルに比べて彼らと遊ぶ時間が少なかったからだ。男同士だからこそというのもあるのかしら? と、彼女は一人考えを巡らせる。

「……あ、でもそうか。友達枠ってことでサイン貰えるか」

「兄さん時々すごく現金になるわね?」

 打って変わってあっけらかんとした言葉、手の平を返すような態度の切り替えにグレーテルはそう言わずにはいられなかった。ヘンゼルがこうやって利害損得で動くことがあるのをすっかり忘れていた。さっきまでの思考の時間を返してほしいとさえ思う。

 ヘンゼルはヘンゼルで、勝手に一人納得がいったように何度も頷いた。

「今度あいつらに連絡してみようっと」

 彼はそう言ってキッチンに戻る。調理に戻る兄を見てから、妹は再びテレビに視線を向ける。しばらくは黙ってそれを見ていたグレーテル。アイスも食べ終わったところで一言ボソリと呟いた。

「私も友達枠でテレビ出れないかしら……」

 ――やはり兄妹、行き着く先の考えは似たモノだった。


「聞こえてんぞグレーテル」

「何よ、兄さんと考えてることと大して変わらないでしょ?」




今度は他の住人たちの話も書きたいなって思います。

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