01-01_魔女の森で
投稿スピードやはり遅くてすみません。
妖精?いるわけないでしょう?
少なくとも日本には居なかった筈だ、子供に読み聞かせるような御伽噺の中ではちらほらと現れていたけど。
それはあくまでも御伽噺の中の妖精であり、現実には存在しない。
しかし、目の前でパタパタと空中を漂うその姿は何度も目を閉じたり開いたりしてみても、ここに居るのが当たり前であるかのように存在した。
そうだ、やっぱり夢なんだ!
きっと、夢に違いない。
「では、おやすみなさい!」
この、非現実的な現実を受け入れる事ができないと私は判断し、諦めて寝ることにする、目が覚めたなら、いつもの部屋の筈だ。
そう考えるしかない。いや、そうに違いない、そうじゃないと困る。
いきなりこんなたくさんの事を考えるのは私は得意ではない。いや、私でなかったとしてもこんな状況をすんなりと飲み込めるような人はいないと思う。
大体、コスプレイベントに行けないじゃないか!!!!
衣装も完成したのに参加できないのは嫌すぎる。
急いで夢から覚めようと目をギュッと瞑り軽く横になった。
草木が髪やうさ耳に引っかかり不快ではあるが眠れないほどではない。
『あ、ちょっと、夢だとしても更に寝るなよ!』
鈴を鳴らすような高い声が響いてきた。
『寝るならベットがよくない?こっちに家?だっけ小屋だっけ?、、、まぁ、あるからそこで休みなよ!』
言うが早いか、私の手を引こうと右手の人差し指を握り、まるで指を綱引きの縄のように腕で抱え一生懸命踏み込みながら引っ張り始めた。
だが、体格差がありすぎる、こんな力では動くわけも無く指に子猫がじゃれついてきているような、そんな感覚しか得られない。
そのまま寝ようかとも思ったのだが、やはり岩や草の生い茂った森の中よりベットで寝たほうが気持ちいいに決まってる。
そう思い上半身を起こしながら、妖精さんの居ない左手でうさ耳と髪についた落ち葉を払った。
「では、案内してもらえるかな?」
『すぐ近くだから、ここだよ』
妖精さんはいつの間にか顔の前に来ており、私の頭の周りをひらひらと一周すると、少し離れ暗闇を小さな手で指した。
指示した場所は意外と近い、しかしどれだけ目を凝らそうとも瞳には黒しか映らない。この暗闇だから建物自体が見えないのはいいとして、部屋の明かりすら見えないのはどうなのか?
そんな、疑問をよそに妖精さんは私のおでこへキスをした。
「ひゃい!?」
余りにも急でびっくりしたために変な声が森に響いてしまって恥ずかしい。
『おでこだけど、ダメだった?でもこの結界の認証は口づけしかないから!』
いきなりの事で頭がぼーっとしているうちに何やら目の前にレンガ造りの建物が現れた。
大きなの両開きの扉が真ん中にあり、左右対称に部屋があるようで元の世界なら豪邸とか呼ばれてもおかしくないサイズのものであった。
手入れも行き届いているようでレンガ一つにすらひびもなく、草木が生い茂る森の中だとゆうのに蔦がはったりもしていない。
いきなりこんな物が現れたことにより再び私の理解能力に処理限界が訪れたようで勝手に口が開いてしまう。
あれ?でも、さっき妖精さん、小屋とか言ってなかったっけ?体のわりに住かは大きくい種族なのかしら?
『では改めまして、ようこそ、魔女の棲み処へ、迷子のうさぎさん』
ポカーンと口を開けてしまっている私をエスコートするように妖精さんがこちらに手を伸ばしてきた。
そのまま、手を取るわけにもいかず口を閉じ、頷くことで応じることにする。妖精さんは意外と力持ちなのか人間サイズの鉄製の扉すんなりと開け入るように促してきた。
妖精で魔女とか設定盛りすぎだろうとかファンタジーすぎるななんてことを考えながら屋敷の扉をくぐった。
入ると同時に部屋の壁のろうそくがともり、次に頭上のシャンデリアのような大きな水晶の形をした少し黄色い石達に光が宿った。
まるで最新の家電のような感覚で明かりがともることに驚きながら見渡してみると大きな階段が左右に伸びておりどちらも同じ二階に続いていることがわかる。
ここらのつくりは海外のセレブ高級別荘といったほうがしっくりくるかもしれない。違う点といえばあまり派手な装飾品がない事くらいだろうか?
壁紙もダークブラウンに統一されておりとても落ち着いた印象を受ける。そのまま妖精さんに手を引かれるように階段下の扉へと足を進めた。
この部屋はダイニングルームのようで大き目のカウンターテーブルがあり、その向こうは調理場のようで鍋や包丁といった調理器具が並んでいる。妖精さんは私にこのテーブルで座って待つように言うとそのまま調理場へと行ってしまった。
今座っている椅子やテーブルなどの家具の大きさはすべて人間サイズで、妖精さんが扱えそうなものは何一つとしてない様に感じる。妖精さんの家ではないのか?なんて疑問を浮かべていると妖精さんは戻ってきた。
妖精さんは相変わらずパタパタと浮いているのだが、その斜め後ろに、妖精さんの体ほどの大きさのマグカップが淡い光を放ちながらふわふわと浮かんでいる。
考えることを放棄した私は当たり前のように眺めているとそのままテーブルの上にマグカップは置かれた、中身は真っ白な牛乳のような液体で湯気が上がっている。香りも漂ってきており明らかにホットミルクの香りだ。
『どうぞ、よく眠れるようにホットミルクを飲んで!』
予想どうりホットミルクだったこともあり夢ならどうにでもなれと思い飲むことにする。
「ありがとう、頂くわね」
ふぅ、ふぅ、と息を吹きかけると今まで飲んだ牛乳よりも甘く濃厚な香りが鼻孔をくすぐる、そのまま口をつけゆっくりと飲んでいく。猫舌なのでごくごくとはいけない。
やはり、というべきか香りの通り甘く濃厚でそれでいてしつこくない甘さだ。すぅーっと胃に落ちていき、体が温まる。そのまま口を離さずにマグカップのミルクを飲み干した頃には、眠気が限界に来ていた。
『ベットまで歩ける?』
そんな妖精さんの問いかけに答えれずに、こくこくと頭を揺らしていると妖精さんが私の頬に軽く触れ、小さく呟いた。その瞬間何やら浮遊感を感じたが微睡の中ではどうでもよく、ふわふわと揺れるハンモックのような感覚の中で意識を手放した。
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