ほんはいちゃんパニック!
やはり言語でしか表現できないジャンルってあると思います。
李虹海ちゃんは中国の小学校四年生の女の子です。
お父さんのお仕事の関係で一家そろって日本に来ました。
それで、ホンハイちゃんは日本の公立の小学校に転校しました。
日本でもこの学校のある地域はいい子ばっかりで、すぐにホンハイちゃんのお友達になってくれました。
さっそくクラスの女子生徒たちはホンハイちゃんに学校のなかを案内します。
「ホンハイちゃん。ここの女子トイレは、花子さんが出るっていううわさだから気をつけてね」
ホンハイちゃんは驚きました。なぜなら中国では『花子』という言葉は『乞食』という意味なのです。
「なんで学校のトイレに乞食が出るの?!」
ううむ・・・たしかに小学校の女子トイレにホームレスのおっさんがいたらと、想像してみるとリアルに怖いですね。
クラスのお友達は、ホンハイちゃんを、地元の大型スーパーマーケットに連れていきました。
どうも、この子たちは中国にはそんなものは無いと思っていたようです。
ホンハイちゃんは、日本では『超級市場』のことを『スーパーマーケット』と呼ぶのね、わかりやすいわと思っただけでした。
ホンハイちゃんはトイレットペーパー売り場に来ました。
「わあ、日本って色んな種類の手紙があるのね」
「ホンハイちゃん何言ってるの、これって手紙じゃないわよトイレットペーパーよ」
実は中国では『トイレットペーパー』のことを『手紙』というのです。
「うん、だから手紙でしょう・・・」
「えーっ。中国の子って、トイレットペーパーに書くの?!」
なんだかホンハイちゃんは日本のことが分からなくなってきました。
頭がくらくらとしてきてスーパーマーケットの中をさまよいました。
『卵十個入り大安売り』と書いたポスターの文字が眼に入りました。
「卵、卵!卵?なんで超級市場でこんなものを売っているの?!」
中国では、こーがんのことを『卵』と言うのです。ちなみに中国では食べる『卵』のことは『蛋』と言います。
「こーがん十個入り大安売り・・・ご、ご、五人分・・・」
ホンハイちゃんは、口からぶくぶくと泡をふいて倒れました。
「きゃーホンハイちゃん」
「どうしたのホンハイちゃん。しっかりして!」
「救急車!救急車!」
スーパーマーケットは大騒ぎになりました。
ホンハイちゃんは三日間学校を休みました。
そして、お父さん、お母さんから、日本と中国では文字が同じでも言葉の意味が違うことがあるのだと教わりました。
ホンハイちゃんはそれで気を取り直してまた登校しました。
「ホンハイちゃんごめんね。私たち中国語のことよく知らなくて・・・」
「本当にごめんね」
どうやらみんな先生によほど叱られたようです・・・。
「三日間休んだので勉強おくれちゃったね、私のノート見せてあげる。見てね」
「教科書のここ重要だからね」
「がんばってみんなで勉強しようね」
「勉強がんばろうね」
ホンハイちゃんは泣きたくなりました。
なぜなら中国では『勉強』という言葉は『嫌なことをむりやり・・・』という意味だからです。
ホンハイちゃんは日本から中国にひとりで帰りました。
田舎の親戚の家にお世話になることにしました。
今はホンハイちゃんは大草原で馬を駆り風になっています。
私はこの小説を書いている最中は、ホンハイという家電メーカーが有ることを完全に忘れていました。
ホンハイの人ごめんなさい。