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第1話:タバコ吸ってそうな女

数ある作品の中から目に留めていただき、ありがとうございます!

もし「医療脱毛のレーザーが、そのまま異世界で特殊なスキルになったら……?」

という妄想からこの物語は始まりました。

よろしければお読みいただければ幸いです!

「えー、絶対タバコ吸ってる人かと思った」


 職場の同僚と飲みに行くと、たまに言われるセリフ。

 タバコは吸ったことはない。


 (かわ)()真理亜(まりあ)、26歳。

 現在は医療脱毛クリニックに勤務する看護師。


 女子校を卒業後、看護学校を経て、以前まで病棟勤務をしていた。そこでは夜勤も経験した。

 今の職場へ移ったのは、「推し」のために、より多くの時間を捧げるためだった。


 今日はクリニックの出勤日だ。

 エステ脱毛と違い、医療脱毛の施術は医療行為になる。そのため、施術を行うには、医師免許か看護師免許の資格が必要になる。


 そんな日々の業務において、看護師に求められるのは正確さ。


「それでは、照射しますね。はい。お痛みはないですか? 」


 はい、の掛け声に合わせて、私は手慣れた手つきでレーザーを照射する。


「大丈夫ですね。では続けて打っていきます。もしお痛み辛いようでしたら出力調整しますので、おっしゃってくださいね」


 レーザーは主に、一点に熱を集中させる『熱破壊式』か、連続照射でじわじわ熱を溜める『蓄熱式』がある。どちらにせよ、レーザーは黒色に強く反応する。

 今日使用しているのは『アレキサンドライトレーザー』という波長が短い脱毛レーザーだ。手順通りに淡々と業務をこなしていく。


 休日の日、やることは決まっている。

 「推し活」だ。


 私の推しは、今SNSで大人気のハムスターマスコット『ぷよまるくん』。

 WEBの4コマ漫画として連載されている。過酷な状況に置かれても、頬袋に隠したひまわりの種で生き抜く彼に魅了され、日頃から癒やされていたのだ。


 休みの日は、看護学校時代の友人を半強制的に誘って、ぷよまるくんのコラボカフェにも足を運んでいた。

 コラボカフェで、持参した推しとの撮影をしていたら友人から言われた言葉。


「真理亜って、意外と可愛いもの好きだよね」

「意外?」

「なんか、真理亜の見た目だと、こういう可愛い系好きなイメージないかも。うーん、なんかクールというか、ロックバンドとか好きそうな感じ。あ、そういえば、今度ライブ行こうと思ってるんだけど――」


 人の第一印象なんていい加減なものだ。可愛いものが好きなのだからしょうがない。

 それに、見た目か……。髪の長さはショート。看護師だと職業柄、髪短いほうが楽なんだよね。長いと結ったり、髪洗っても乾かす手間とかもあるし。前は夜勤もあったからヘアセットの時間も考えると、ショートは本当に楽。

 だけど今は脱毛クリニック勤務だし少し伸ばそうかな、なんて思った。

 

 そんなある日のこと。


 クリニックでの仕事帰りに、コンビニで『ぷよまるくん』のグミを買って帰宅した。

 私はいつものように、ぷよまるくんのぬいぐるみを膝に乗せて、スマホを開き――そして、絶望した。


 ぷよまるくんが、死んだ。


 最新話の4コマのラストで、寿命で亡くなったのだ。え、嘘。そんな、待って。

 動物のマスコットキャラって、不老不死じゃないの?暗黙の了解じゃないの?


 SNSのコメントも当然戸惑いが走る。


『え、これで終わり?』

『嘘だろ……』

『生きてますよね?』

『ハムスターの寿命って平均2、3年らしいですよ』

『今日で投稿から丸3年じゃん』

『そんな……』


 追い打ちをかけるように、作者の言葉が添えられていた――『今までありがとうございました。ぷよまるの物語は、これでおしまいです』


 突然の展開に頭が真っ白になり、私はぷよまるくんのぬいぐるみを抱きしめたまま、テーブルに突っ伏して泣き崩れた。


 苦しい。私の生きがいが――。


◆◇◆


 次に目を覚ました時、私は石造りの床に転がっていた。

 

 重い頭を上げると、そこは見たこともない巨大な空間だった。


 目の前にはローブを羽織った男が退屈そうに座って何かを話している。

 ふと見ると、他にも二人の男性がそばにいて、ローブの男と向き合っている。


 一人は、体格が良く、短髪で落ち着いた雰囲気の男性だ。そのガッシリした体格は、どこか安心感を与えそうな佇まいだった。


 そして、もう一人。小柄で、中性的な横顔だ。

 起き上がった私に気付いて、彼が声をかける。


「大丈夫……?」


 少し困ったような顔をしてこちらを見つめている。


「ここは一体……?」


 思わず疑問が口に出てしまう。

 それと同時に、一つの答えが浮かび上がる。


(あ、これ夢だ)


 推しの消失によるショックで、私のちっぽけな精神が崩壊し、防衛本能が現実逃避を用意したに違いない。


 でも、ここはどこだろう。

 どうせなら、ジャンガリアンハムスターの世界が良かったのに。


 私は、そんなことを考えていた。


お読みいただきありがとうございます!


今後は週に1回以上の更新を目標に、不定期で書き進めていく予定です。


すみませんが更新が空いてしまうこともあるかと思いますので、もし続きの話に興味を持っていただけましたら、ブックマークしてお待ちいただければ幸いです。


また、ぜひ評価や感想などいただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いします。


※本作に登場する医療知識や用語はフィクションであり、以降のエピソードについても物語の演出として独自の解釈を含みます。あらかじめご了承ください。

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